患者への支援

2020/11/17

患者への支援

精神保健福祉士が扱う社会資源について

  精神保健福祉士の仕事は、精神に障害を持った人が、日常生活をスムーズに行えるように相談に乗る仕事です。その中で、利用者に社会資源の活用を提案することは大切な業務のひとつです。では、社会資源とは何でしょうか?     社会資源とは   利用者が少しでもよい状態で自分らしく日常生活を送れるように活用できる、資源です。公的な資源には、公的機関や医療機関、福祉事業所などがあげられます。これらの資源をうまく活用できるように、必要としている人に橋渡しをするのが精神保健福祉士の仕事です。   また、公的でない資源もあります。利用者の家族や友人、ご近所の方々や地域のボランティアなど、法律や制度で定められていない資源です。これらもうまく活用することで、利用者の生活をサポートしていくことができます。特に家族は最も身近な存在ですから、病気について理解を深め生活を支援できるようにアドバイスすることで利用者は生活がしやすくなります。     社会資源の種類   社会資源をもう少し詳しく見てみましょう。種類別に列挙します。   ■相談の場 ・相談支援事業所 ・保健所 ・市町村障害福祉課 ・精神科の医療相談室 ・精神科緊急システム など   ■活動の場 ・自立訓練事業 ・生活介護事業 ・就労移行事業 ・就労継続事業(A型・B型) ・地域活動支援センター ・精神科デイケア など   ■生活の場 ・グループホーム ・ショートステイ ・ホームヘルプ ・訪問介護 ・介護保険施設 など   精神保健福祉士は、利用者に合った社会資源の橋渡しができるよう、これらの資源をよく知っておく必要があります。密に連絡を取り合い、担当者と関係性を築いていくことも重要でしょう。特に公的な窓口については、利用者は複数の場所に何度も行かなければならないとストレスを感じてしまいます。たらい回しにされているという感覚に陥ることもあるでしょう。適切な場所へ、目的をわかりやすく説明した上で案内する配慮が必要です。     社会資源の活用で注意すべきこと   1人の利用者に対して、関わる人間は大勢います。その場合、うまく連携が取れないこともあるでしょう。   例えば、利用者が関わっている人が、医師・精神保健福祉士・ヘルパー・相談支援専門員・ショートステイの職員・地域活動支援センターの職員、だとします。しかし、利用者を支える家族に精神的なストレスがかかっている場合、家族にも医師・心理士・精神保健福祉士の支えが必要かもしれません。これら全員がうまく連携を図れたら素晴らしいのですが、全員が同じ方向を向くことは難しく、時間がかかります。それぞれ全く別の仕事をしている専門職ですから、片方が「利用者のためにこうしてください」と言っても「こちらの方が利用者のためになります」と思う場合もあるでしょうし、施設の基準で「そんな無茶はできません」となる可能性もあります。   大切なことは、違うプロフェッショナルが集まっているので多種多様な考え方があると理解することと、絶対に正しい答えというものが必ず用意されているわけではないと理解することです。また、利用者1人1人が違う人間なので、ケースとしては酷似していても全く別の解決方法が良いというパターンもあります。毎回丁寧に親身になって対応を考えていくことが重要です。社会資源をうまく活用していくために、こういった心構えを持っておくと良いでしょう。     具体的な活用の仕方   社会資源を活用するにあたって、どんなことが必要なのか列挙していきます。   ・目標を明確にして共有する ・目標は、本人のニーズの実現であること ・精神保健福祉士だけでは達成できない目標であることを認識し、目標達成のために社会資源を活用する(他機関に連携をお願いする)ことを意識すること ・精神保健福祉士自身のために資源を活用するのではなく、利用者のニーズを実現するための活用であること ・社会資源の活用が決まったら、臨時的なつながりを目的意識化し定期的に連絡を取るよう決める ・職種間の援助体制を明確にする

2020/08/21

患者への支援

精神病患者が抱える人間関係の悩み

  今回は、精神病患者が抱える人間関係の悩みについて、よくある内容をまとめます。   精神病の原因となる悩みではなく、生活していく上で関わり合う人たちとの人間関係について指しています。一般の人が同じように悩むこともあれば、精神病を患っているがゆえに悩みの種となってしまうこともあります。精神保健福祉士を目指す方は、患者の悩みについていろんな事例を知ることで将来の相談業務に役立つのではないでしょうか。     Q1、友達が欲しいです   友達が欲しいという気持ちは自然なものです。ですが、精神疾患をわかってほしい、悩みを聞いてほしい、というこちらの要望が先に立ってしまうと友情関係は成り立ちません。お互いに相手を理解して同じ時間を過ごしていきたいと思う必要があります。何かしらの精神疾患がある場合、それを自分の中で受け止め、相手のことを考えて相手を見るという余裕は必要です。   まずは少しずつ共通点のある友達を探しましょう。これまでの友達や趣味が同じ友達、同じ疾患を経験している友達を作っても良いでしょう。そういった友達を作る場は市町村区で開催されていることも多いので、精神保健福祉士が探して提供することもできます。     Q2、近所の人が悪口を言ってきます   精神病患者と近隣トラブルはたまにあることです。もし心当たりがあれば素直に謝り、関係を修復することですが、全く心当たりがない場合は難しいです。大家さんや市町村区の方、民生委員などに相談するのも方法かと思います。ご近所さんが例えば精神病患者について偏見や誤解がある場合、第三者が介入した方が話がうまくいく可能性が高いです。   患者側の問題ではなく、そのご近所さんが少し厳しい人であったり変わった人であるということも考えられます。他のご近所の方に聞いてみて、どんな風に関わっているのか相談に乗ってもらうのも良いでしょう。     Q3、親になまけていると言われてつらいです   精神疾患の治療では「休む」ということも重要な治療方法です。しかし、ご家族にその理解が得られないケースは多いようです。例えば初期のうつ症状を治すためにストレスの原因である会社を一定期間休む、といった場合、家族の理解が得られないと「もっと頑張れ」「なんとか続けながら治療できないのか」などを言われることがあります。また統合失調症の回復期では「回復したのになぜまだ休むのか」「なまけ癖がつく前に働かせないと」という声もよく聞きます。   まずは家族に正しい知識をつけてもらうことです。患者本人が説得しても良いですが、そのエネルギーが出なかったり説得が難しい場合は精神保健福祉士の出番です。正しい知識を得てもらい、一番辛いのは患者本人であること、正しい治療を正しい形で行っているということを理解してもらいましょう。     両親が死んでしまった後が不安です   これは本人のみならず家族も不安に思い、精神保健福祉士へ相談してくることの多い内容です。   まずは具体的に何が心配なのかを考えることから始めます。精神的支柱である家族がいなくなる不安、住むところやお金のこと、通院や服薬のサポートが受けられないこと、食事や料理や買い物が一人ではできないこと、漠然とした寂しさ、など理由は様々です。   支えの中心である両親がいなくなることは大きな不安ではありますが、実際細分化してみるとそれぞれ事前に対策しておけば代替案が見つかります。生活のサポートを受けたり、身の回りのことは自分でできるよう練習したりなどです。精神的支柱に関しても、兄弟や友人に頼れる人を見つけて信頼関係を結んでいくのも準備のひとつです。   住まいや金銭的なことに関しては福祉制度やサービス、医療サービスを利用できるよう検討していきます。障害があっても自立して働くことも可能です。自分らしい生活を続けていけるためにゆっくり準備をしていきましょう。