精神保健福祉士の仕事

2020/11/17

患者への支援

精神保健福祉士が扱う社会資源について

  精神保健福祉士の仕事は、精神に障害を持った人が、日常生活をスムーズに行えるように相談に乗る仕事です。その中で、利用者に社会資源の活用を提案することは大切な業務のひとつです。では、社会資源とは何でしょうか?     社会資源とは   利用者が少しでもよい状態で自分らしく日常生活を送れるように活用できる、資源です。公的な資源には、公的機関や医療機関、福祉事業所などがあげられます。これらの資源をうまく活用できるように、必要としている人に橋渡しをするのが精神保健福祉士の仕事です。   また、公的でない資源もあります。利用者の家族や友人、ご近所の方々や地域のボランティアなど、法律や制度で定められていない資源です。これらもうまく活用することで、利用者の生活をサポートしていくことができます。特に家族は最も身近な存在ですから、病気について理解を深め生活を支援できるようにアドバイスすることで利用者は生活がしやすくなります。     社会資源の種類   社会資源をもう少し詳しく見てみましょう。種類別に列挙します。   ■相談の場 ・相談支援事業所 ・保健所 ・市町村障害福祉課 ・精神科の医療相談室 ・精神科緊急システム など   ■活動の場 ・自立訓練事業 ・生活介護事業 ・就労移行事業 ・就労継続事業(A型・B型) ・地域活動支援センター ・精神科デイケア など   ■生活の場 ・グループホーム ・ショートステイ ・ホームヘルプ ・訪問介護 ・介護保険施設 など   精神保健福祉士は、利用者に合った社会資源の橋渡しができるよう、これらの資源をよく知っておく必要があります。密に連絡を取り合い、担当者と関係性を築いていくことも重要でしょう。特に公的な窓口については、利用者は複数の場所に何度も行かなければならないとストレスを感じてしまいます。たらい回しにされているという感覚に陥ることもあるでしょう。適切な場所へ、目的をわかりやすく説明した上で案内する配慮が必要です。     社会資源の活用で注意すべきこと   1人の利用者に対して、関わる人間は大勢います。その場合、うまく連携が取れないこともあるでしょう。   例えば、利用者が関わっている人が、医師・精神保健福祉士・ヘルパー・相談支援専門員・ショートステイの職員・地域活動支援センターの職員、だとします。しかし、利用者を支える家族に精神的なストレスがかかっている場合、家族にも医師・心理士・精神保健福祉士の支えが必要かもしれません。これら全員がうまく連携を図れたら素晴らしいのですが、全員が同じ方向を向くことは難しく、時間がかかります。それぞれ全く別の仕事をしている専門職ですから、片方が「利用者のためにこうしてください」と言っても「こちらの方が利用者のためになります」と思う場合もあるでしょうし、施設の基準で「そんな無茶はできません」となる可能性もあります。   大切なことは、違うプロフェッショナルが集まっているので多種多様な考え方があると理解することと、絶対に正しい答えというものが必ず用意されているわけではないと理解することです。また、利用者1人1人が違う人間なので、ケースとしては酷似していても全く別の解決方法が良いというパターンもあります。毎回丁寧に親身になって対応を考えていくことが重要です。社会資源をうまく活用していくために、こういった心構えを持っておくと良いでしょう。     具体的な活用の仕方   社会資源を活用するにあたって、どんなことが必要なのか列挙していきます。   ・目標を明確にして共有する ・目標は、本人のニーズの実現であること ・精神保健福祉士だけでは達成できない目標であることを認識し、目標達成のために社会資源を活用する(他機関に連携をお願いする)ことを意識すること ・精神保健福祉士自身のために資源を活用するのではなく、利用者のニーズを実現するための活用であること ・社会資源の活用が決まったら、臨時的なつながりを目的意識化し定期的に連絡を取るよう決める ・職種間の援助体制を明確にする

2020/10/29

精神保健福祉士の仕事

精神保健福祉士(PSW)とカウンセラーに仕事の違いとは

精神保健福祉士(PSW)もカウンセラーも、人の心の問題に関わる仕事です。 実際にキャリチェンジを目指すときに、その違いについてわからなかったり、 迷ってしまったりしていませんか?   『どの資格を取ったらいいの?』 『精神保健福祉士とカウンセラーの違いがよくわからない』 『自分に目指している仕事内容だと、どちらがいいの?』 『実際に就職先があるのは?』   今回は精神保健福祉士(PSW)とカウンセラーとの違いについて それぞれどこか違うのかわかりやすく説明します。   1、カウンセラーと呼ばれる資格とは?   「カウンセラー」といっても、国家資格から民間の資格までさまざまあります。 これまで心理の専門職としての国家資格はありませんでしたが、 平成29年に「公認心理師法」が施行し、国内初の心理職の国家資格として 「公認心理師」が誕生しました。   「公認心理師」と似ている職業で、民間資格ではいくつかの資格があります。 一般的に“カウンセラー”として認知されているのが「臨床心理士」かもしれません。   この資格は指定の大学院を修了して受験することなど、 比較的カウンセラーの資格取得のなかでは高学歴とも言える資格です。 心理系の民間資格のなかでは最も高い信頼性として位置付けられてきた 資格と言えるかもしれません。   ただし、あくまで協会認定の資格のため、国家資格ではなく民間資格と いう位置づけになります。   そのほかに、「産業カウンセラー」という資格名をご存じの方もいらっしゃると思います。 この資格は協会の養成講座を修了した方に受験資格があり、 「臨床心理士」とおなじく民間資格になります。   さらに、「認定心理士」という資格もありますが、こちらも学会認定のため、 民間資格です。   このように、「カウンセラー」と呼ばれるにはいろいろな資格があり、 必要な学歴や取得条件にも違いがあるので、それぞれ確認してみるとよいでしょう。       2、国家資格である精神保健福祉士とは?   精神保健福祉士は、臨床心理士など民間資格とは異なり、 資格取得ルートでも違いがあります。 「精神保健福祉士」は国家試験を受験するためにさまざまな方法があり、 高卒の方や福祉系大学を卒業していない方でも、 養成施設に通って国家資格を得ることができます。 「臨床心理士」のように指定の大学院を卒業していないと受験資格が得られず、 さらに資格に取得後に5年ごとの資格更新審査の義務付けということもありません。 国家資格である「精神保健福祉士」は、国家資格ということもあり社会的な信用度もあり、民間資格であるカウンセラーよりも良い待遇で働けるケースが見られます。   3、「精神保健福祉士(PSW)」と「カウンセラー」の仕事内容の違い   精神保健福祉士とカウンセラー(ここでは臨床心理士)は、 精神疾患をお持ちの方から精神的情緒に課題を持つからと接していく という点は変わりません。 ただし、仕事内容には大きな違いがあります。   ①精神保健福祉士の仕事  社会復帰の実現をするために「生活レベル」でのアドバイスやサポートを おこなったり、 地域で利用できる福祉サービスの情報提供をおこないます。  精神科ソーシャルワーカーや精神科ケースワーカーとも言われ、相談援助が仕事です。   ②カウンセラー(臨床心理士)  心理的な側面が強く、カウンセリングを用いたり、個々の患者と 心の問題を解決していくことがおもな業務です。     このように、精神保健福祉士は日常の支援、 カウンセラー(臨床心理士)は臨床心理技法によって相談者の心の問題を 解決することを目的としています。 そのため、仕事内容は別のものとなります。   4、「精神保健福祉士(PSW)」と「カウンセラー」の働く場所の違い   精神保健福祉士とカウンセラー(臨床心理士)では活躍できる場所でも違いがあります。 それぞれのおもな職場について知っておくとよいでしょう。     ①精神保健福祉士の就職先 おもに一般病院、精神科病院、精神科クリニック、心療内科クリニック、障害者施設、 一般企業、公的機関 など     ②カウンセラー(臨床心理士) カウンセリングルーム、病院、NPO法人、一般企業 など     臨床心理士の資格を持ちつつ、さらに活躍の場を広げるために 国家資格である精神保健福祉士の国家資格を取得といったキャリアアップをする カウンセラーの方もいます。   精神保健福祉士はこの資格だけでも専門職として就職できるため、 加えて民間資格を取得しなくても正規雇用はされるケースが多いようです。 なかには公務員試験を受けて行政でソーシャルワーカーとして仕事をしている 精神保健福祉士もいます。   このように、精神保健福祉士とカウンセラーにはそれぞれの仕事内容や就職先に 違いがあることがわかります。 人の心に寄り添う専門職として、どのような関わり方で、 どのような職場で働きたいのかによって目指す資格を考えてみると 整理しやすくなります。   今日の少子高齢化やストレス社会によって精神保健福祉士やカウンセラーの需要は 益々高まっており、これまで以上に教育機関、司法施設、更生施設など 活躍の場が増えることが期待できます。 これからのキャリアアップ、キャリアチェンジの参考にしてください。

2020/10/22

精神保健福祉士の仕事

精神保健福祉士って独立開業できるの?

  精神保健福祉士というと医療機関や福祉施設など働く場所は多岐に渡ります。では、独立開業することはできるのでしょうか?   結論から言うと、独立開業する人は少ないですが、可能です。   方法は3パターンあると考えられます。     1、NPO法人などの経営   精神保健福祉士としてその専門性を活かしたNPO法人・社会福祉法人を立ち上げ、地域の法人と関わり合いながら事業を作っていくのが最も考えられる方法でしょう。冒頭に挙げた医療機関や福祉施設といった箱を自ら作り、経営するイメージです。   精神保健福祉士の業務の特性は、患者の生活を支えることと各専門家と連携を取ること、退所後の社会復帰までのサポートなどがあげられます。これらは精神保健福祉士一人だけでは成り立たせることができませんので、スタッフと設備などを整える必要があります。   そのため精神保健福祉士の知識だけでなく、経営や経理についても知った上で計画を考えなければならないでしょう。道のりは長いですが、自分の理想とする精神保健福祉の形を実現できる、やりがいのある道だと言えます。     2、成年後見制度の後見人 成年後見制度というものをご存知でしょうか。認知症や知的障害などの理由で判断能力が衰えてしまった方の、財産を保護する制度です。その保護を行う人を成年後見人と言います。家庭裁判所が選任する場合、本人の親族のほか、弁護士や司法書士、税理士、行政書士、社会福祉士、社会保険労務士、そして精神保健福祉士などの専門職が対象となります。選ばれた場合、精神保健福祉士の資格を使って個人的に報酬を得ることが可能です。   しかし、後見人としての仕事は精神保健福祉士としての主な業務とは違うことに留意しなければなりません。財産の保護・管理や生活の見守りなどを行います。また、一般的な独立開業とは違って報酬が見込めないため、後見人の仕事のみで暮らすことは難しいでしょう。     3、別の資格と併用して独立開業する 精神保健福祉士の知識を活かしながら、別の資格を取得して独立開業する方法です。例えば社会福祉士であれば併せて取得している人も多い資格であり、独立型社会福祉士として独立することもできます。精神疾患のある人に限らずより広い範囲で相談業務・相談援助を行いたい方は社会福祉士の取得がおすすめできます。   その他には介護福祉士を取得し介護施設の開所を目指したり、心理カウンセラーやセラピストにまつわる勉強をして独立を目指すこともできます。  

2020/10/02

精神保健福祉士の仕事

ストレス社会で活躍できる精神保健福祉士とは

新型コロナウイルス感染症で緊急事態宣言の最中、テレビ画面で「精神保健福祉センター」という文字をご覧になった方も多いのではないでしょうか。 精神保健福祉センターでは心の問題や病気で困っているご本人やご家族、関係者の方からの相談を受けており、東京都内では3か所設置されています。   アルコール依存症や薬物依存症の問題、思春期・青年期等における精神医学的問題について専門の職員が相談に応じています。精神保健福祉士もまたその役割を担っている専門職です。   1、精神保健府保健福祉士とは   精神保健福祉士は、精神に障がいを持つ方を相談業務でサポートする専門職です。 社会福祉士、介護福祉士とともに国家資格であり、「福祉系の三大資格」や「三大福祉士」とも呼ばれています。 職場では、「医療ソーシャルワーカー」や「生活相談員」という肩書で働いていますが、その中でも精神保健福祉士の国家資格を持っている人だけが、「精神保健福祉士」と名乗ることができます。   2、精神保健福祉士の仕事とは   精神保健福祉士が活躍する場をさまざまありますが、おもには先に述べた通り、精神的に障がいを抱えた方や、そのご家族の相談に乗ることです。 相談に乗るということでイメージする職業としては心理カウンセラーを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。 心理カウンセラーは精神疾患を治すことを目的としてカウンセリングをおこないますが、精神保健福祉士は自立した生活を送れるように社会復帰を目的としていることに違いがあります。 精神保健福祉士の仕事は、「生活費に困っている」「職場に復帰したい」など地域での社会復帰に向けて生活面で困っていることに関してサポートをおこないます。 そのためさまざまな支援制度を理解し、その相談者の悩みに対して活用できる支援制度を紹介することも大切な仕事です。   3、精神保健福祉士と社会福祉士の違い   相談援助の資格を目指す方からよく質問をいただくのは、『精神保健福祉士と社会福祉士とはどのように違いがありますか?』や『自分がやりたい仕事の場合、どちらの資格を目指したらいいのでしょうか』という内容です。 どちらも相談援助業務がメインであり福祉の専門職ですが、その支援対象者の範囲異なっています。 精神保健福祉士は、精神疾患を持っている方をメインにサポートします。専門領域は精神障害に特化しており領域は狭く、専門性が高くなります。 社会福祉士は、高齢者・身体障がい者・児童・生活困窮者や幅広い人々の支援をおこないます。専門領域は広く、様々な分野で活躍できる資格です。   一方で、老人性のうつ病や貧困からくるうつ病など、生活に福祉制度のサポートを必要としている方はうつ病など心の病になりやすいため、対象領域が社会福祉士であっても、精神保健福祉士の力が必要なケースもあります。 相談者の抱える悩みはとても複雑なことも多いため、精神保健福祉士と社会福祉士の両方の国家資格を持っていると多方面からの支援をすることができるため、ダブルライセンスを目指す人も多いです。 4、精神保健福祉士の仕事のやりがい   精神保健福祉士の仕事でのやりがいはたくさんあると思いますが、一番はなんといっても、 『人の役に立てること』ではないでしょうか。 人の役に立てる仕事はほかにもたくさんありますが、社会のなかで精神疾患によって働けなくなったり、自信を失ってしまったりした方が、精神保健福祉士の支援によって心の健康や身体の健康を取り戻し、再び社会復帰していく姿を間近で見たときに、大きなやりがいと達成感を感じることができるでしょう。   アルコール依存症、薬物依存症、うつ病、統合失調症などの心の病気は、その病から自殺を選び自死するケースも少なくありません。精神科や心療内科などの医療機関で働く精神保健福祉士の中には、“また来週!”と相談援助を終えたのに、自殺してしまうことも時にはあるのです。このように医療機関でも重要な仕事を担っているのです。   逆に、医療機関では精神疾患が原因で休職している方向けに、復職を目指すリワークもやりがいある業務のひとつです。 リワークプログラムでは、精神保健福祉士だけでなく、医師・看護師・作業療法士などの医療系国家資格の専門家がチーム医療となってリハビリテーションをおこないます。   5、精神保健福祉士の就職先 このように、精神保健福祉士の仕事は『人の役に立つ』さまざまな場所に就職することができます。 精神科、心療内科、メンタルクリニックなどの医療機関のほかにも、冒頭に述べたように精神保健福祉センターといった行政機関、ハローワークなどの就労関係施設、スクールソーシャルワーカーとして教育現場、企業内サポートとして一般企業、認知症や老人性うつ病の専門家として介護施設などが挙げられます。   コロナ禍の中で経済や雇用に不安な気持ちの人も多いのではないでしょうか。 あなた自身のキャリアチェンジのための資格取得であったり、 社会に人に役立つ仕事への挑戦であったり、 この世の中だからこそさらに注目される国家資格と言えるのかもしれません。   >精神保健福祉士をもっと知りたい   >精神保健福祉士の国家資格を目指したい方はこちら  

2020/09/23

精神保健福祉士の仕事

ノーマライゼーションという考え方

ノーマライゼーションという言葉をご存知でしょうか。簡単に言うと、障害の有無に関わらず平等に生活できる社会を作ろうという考え方です。障害者だけに限定されず、高齢者や社会的マイノリティなど対象は様々ですが、全員が生活や権利の保障されたノーマルな生活を作ろうという考え方をノーマライゼーションと言います。     ノーマライゼーションとは   ノーマライゼーションは、北欧諸国から始まった考え方です。今の日本の福祉において基本理念として定着しています。精神保健福祉士を目指す方にとっては馴染みのある言葉かもしれません。   しかし、一般的にはまだまだバリアフリーといった言葉の方が浸透しているのではないでしょうか。バリアフリーは「障害者にも対応可能である」ということを指し、もともとは建築用語でした。バリアフリーな施設や道具を使って、ノーマライゼーションを実現するのが理想です。例えばバリアフリーの代表として車いす利用者専用トイレがありますが、ノーマライゼーションとは全ての人にとって安全で平等という意味合いが強いので、すべてのトイレに車いすでも利用できる設備が備わっているようなイメージです。また施設の設備だけでなく文化や意識の面でも障害者と健常者の障壁をなくしていくことを指します。   似た用語としてもう一つ、ユニバーサルデザインがあります。これは言葉の通りデザインを指し、デザインのコンセプトを「すべての人が利用できるデザインにすること」を意味します。バリアフリーからもう一歩進んでノーマライゼーションの考え方に近いですが、思想などは含まれず建物や製品の設計に使われる言葉です。   ノーマライゼーションの概念は、スウェーデンのベンクト・ニィリエという人によって「社会の主流となっている規範や形態にできるだけ近い、日常生活の条件を知的障害者が得られるようにすること(1969年)」と文章で原理化されました。     ノーマライゼーションの8つの原理   先ほどご紹介したベンクト・ニィリエは、ノーマライゼーションについて8つの原理に整理しました。   【生活リズムやサイクルに関する原理】 ①1日のノーマルなリズム ②1週間のノーマルなリズム ③1年間のノーマルなリズム ④ライフサイクルにおけるノーマルな体験 【経済、環境、自己決定など成文化した原理】 ⑤ノーマルな要求と自己決定の尊重 ⑥異性との生活 ⑦一般市民と同じ経済水準 ⑧ノーマルな環境水準   この8つの原理が満たされることで、ノーマライゼーションの実現した社会が訪れます。それぞれ解説していきます。   ①1日のノーマルなリズム どんな障害があっても、朝に起きて身支度をし、学校や会社に行き、家に帰ってから夕飯を食べてお風呂に入ってベッドで眠るといったような、ごく普通の生活リズムのことです。 これが例えば、一日中ベッドで横になっていてそこでご飯を食べたり、保護者の都合でお昼ごはんが夕方になってしまったりすることがなく、健常者と同じように生活リズムを保っていくことを指しています。   ②1週間のノーマルなリズム 週単位でのリズムとは、一般的に平日は学校や仕事に励み、土日は休みを取ることなどです。賃金の発生する仕事という意味合いでなくても、家の手伝いをする日でもよいでしょう。休日には楽しく友人と遊びに行ったり、のんびり家で過ごしたりします。障害の有無に関わらずメリハリのあるリズムを作ることです。   ③1年のノーマルなリズム 日本においては四季がありますから、四季に合わせた食事をしたりイベントに参加したり、仕事でも繁忙期があったりなどの変化があるでしょう。社会人にとっては学生ほど長い休みでなくとも、夏休み・冬休みといった季節の感覚は持っているものです。   ④ライフスタイルにおけるノーマルな体験 健常者であればあたりまえに行われている、子供の頃に公園で遊んだり、思春期にはおしゃれや恋に興味を持ったり、大人になって責任を持ったりすることを、障害の有無に関わらず体験していくことです。年を取ればその分経験や知識が増え、思い出に浸ることもできる環境が、ライフスタイルのノーマルな体験です。   ⑤ノーマルな要求と自己決定の尊重 普通に生きていれば持つ、自由や希望を持ちたいといった要求を、誰もが主張できることです。誰もが主張でき、周囲もそれを認めて尊重できる社会を指します。 一定の年齢からは住みたいところに住む自由を求めたり、働きたい仕事についたり、好きな時に好きなところへ遊びに行ける権利を持つことです。   ⑥異性との生活 これは現代においては必ずしも異性愛者とは限らないので異性に限定されませんが、子供も大人も、異性との良い関係を築くことを指しています。異性と交際したり、恋をしたり、結婚や同居を意識できるような生活のことです。   ⑦一般市民と同じ経済水準 全員にお金を配るべきだ、というような意味ではありません。誰もが、平均的な経済水準を保証され、公的財産援助を受ける権利を持ち、その責任を全うすることです。社会で設置されている児童手当や老齢年金を受け取ることや、最低賃金基準法がしっかり守られた環境で働くことなどを指します。そしてその上で、自由にお金を使える環境で欲しいものを買えることも含まれます。   ⑧ノーマルな環境水準 住居をはじめとする生活環境を指します。ここまでの7原則が守られないような劣悪な環境は論外ですが、逆に大規模な施設で社会から隔離されて暮らすこともノーマルとは言えません。無人島のリゾートで暮らす姿をイメージしてみてください。普通の場所で普通の大きさの家に住み、地域の人と関わり合いながら暮らしていく環境を求めることです。     精神保健福祉士が気を付けたいこと   ノーマライゼーションは、身体障害者だけでなく精神障害者ももちろん目指していくべき理念です。精神保健福祉士が気を付けたいことは、身体障害に比べると精神障害は目に見えないため、上の8つの原則のどこかが成り立っていなくても気付けないことです。自ら望んでその環境や生活をしているのか、精神障害によってできなかったり不便を感じているのかがわかりにくいためです。   しかし、その悩みごとや困りごとを救いあげ、寄り添いながらサポートしていくのが精神保健福祉士の仕事です。家族や周囲の人間が、精神障害者にノーマルな状況を作れないとしたら、その課題を橋渡しして全員で解決していく必要があります。    

2020/09/01

精神保健福祉士の仕事

精神保健福祉士の仕事と就職先ガイド

コロナ禍のなかで、社会に不安を抱える人が増えてきています。 またその反面で精神保健福祉センターをはじめとして、人々のこころの健康の保持などを援助する機関やそれらを担う精神保健福祉士という専門職が注目されています。 今回は『精神保健福祉士』の役割、仕事内容、就職先についてご紹介します。 精神保健福祉士と目指す方に役立つ情報をご紹介します。 1、精神保健福祉士とは? 精神保健福祉士は精神的障害を持つ方が円滑な日常生活を送れるように支援をおこなう専門職です。平成9年(1997年)制定の「精神保健福祉法」に基づいて生まれた国家資格で、精神科ソーシャルワーカー(PSW)と呼ばれています。 日本では、社会福祉士、介護福祉士と併せて、福祉系三大国家資格(三大福祉士)と位置づけられています。 2、精神保健福祉士の役割 精神保健福祉士の役割は、精神障害を抱える方の生活問題や社会問題を解決するために援助をおこなうことです。具体的には、精神障害者の社会復帰や自立生活のサポートをおこなったり、相談を受けたりします。 そのため、精神保健福祉士は精神障害者の保健・福祉に、関する専門知識や技術が必要とされます、さらにそれだけでなく、冷静さ・包容力・柔軟性・忍耐力など自らの精神面の資質も必要となる専門職と言えます。 また、精神保健福祉士には倫理観について定められた文書があります。 【公益社団法人日本精神保健福祉士協会倫理綱領より】  ①精神保健福祉士の専門職としての価値を示す  ②専門職としての価値に基づき実践する  ③クライエントおよび社会から信頼を得る  ④精神保健福祉士としての価値、倫理原則、倫理基準を遵守する  ⑤他の専門職や全てのソーシャルワーカーと連携する  ⑥すべての人が個人として尊重され、共に生きる社会の実現をめざす 3、精神保健福祉士の仕事内容 先述の通り、精神保健福祉士は精神障害のある方やそのご家族の相談を受けてアドバイスをする仕事です。その相談内容は、社会復帰・生活訓練施設の紹介・就職相談などさまざまです。 就職先によって仕事内容が異なることがありますので、ここでは大きく分けて3つのカテゴリーでご紹介します。 【相談・助言】  ・医療費や生活費、減税措置などの公的支援制度の紹介  ・社会復帰に向けた障害者支援施設の紹介  ・家庭環境の改善や家族の理解を深めるための助言  ・医療機関からの退院後の住まいや就労についての提案 【日常生活訓練】  ・入院生活から退院に向けた日常生活の訓練(規則正しい生活や交通機関の利用など)  ・掃除、洗濯、買い物などの日常生活訓練  ・会話や生活マナーの訓練 【そのほかの支援】  ・休業、休学に関する手続きの援助  ・医療費確保の手続きの援助  ・家庭や学校、職場における受け入れ体制の確認  ・地域の家族会などへの参加や講習会開催など 4、精神保健福祉士の就職先 精神保健福祉士の就職先というと精神科病院など多くの方は医療機関をイメージされていると思います。もちろん多くの精神保健福祉士は医療施設で勤務していますは、ほかにもさまざまな場所で活躍しています。 【医療施設】  ・精神科病院、総合病院の精神科、精神科クリニック、医療機関併設のデイケアなど 【生活支援施設】  ・小規模作業所、グループホーム、ケアホーム、地域活動支援センターなど 【福祉行政機関】  ・精神保健福祉センター、保健所、福祉事務所、自治体など 【就労関連施設】  ・ハローワーク、障害者就労支援施設など 【司法施設】  ・保護観察所、少年院、刑務所など 【介護施設】  ・特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、有料老人ホーム、グループホーム   デイサービスなど 【その他】  一般企業、教育施設など  同じソーシャルワーカーの資格として、精神保健福祉士は社会福祉士と混同されることがありますが、社会福祉士との違いが支援対象者です。 社会福祉士の援助対象者は高齢者、障害者、児童など福祉全分野に対して、精神保健福祉士は精神障害者に特化して援助するという違いがあります。 仕事の幅を広げたいと両方の資格を持って働く人も多くいます。精神保健福祉士と社会福祉士の国家資格では共通科目があるので、併せて取りやすい資格です。 このように、精神保健福祉士は医療施設や障害者支援施設で精神障害者とそのご家族を対象に仕事をおこなうことが中心でしたが、近年ではその活躍の場が大きく広がってきています。 うつ病や心の病などで休職中に方は約50万人にも増えていると言われています。そのため、企業ではメンタルヘルス対策に力を入れています。休職中の社員の職場復帰支援、人事部門のメンタルヘルス対応について支援やアドバイスをおこなうなど企業でのニーズも高まっています。 また、最近では障害のある子どもたちの「放課後デイサービス」でも精神保健福祉士の活躍の場があります。発達の遅れが気になる児童が増えていることもあり、精神保健福祉士を求める現場の声が高まっています。さらに児童分野では、いじめや不登校の問題に対してスクールソーシャルワーカーとして精神保健福祉士がその役割を担うこともあります。 子どもから高齢者まで多くの方と関わり、その症状もさまざまで難しさもある仕事ですが、精神に障害を抱える方や心の問題を抱えた方の人生のサポートをする大きな役割を持つ職業です。コロナ禍で膨らむストレス社会に益々需要が高まる職業として求められる仕事を言えるでしょう。     >精神保健福祉士の仕事に興味のある方はこちらへ

2020/08/21

精神保健福祉士の仕事

精神保健福祉士に求められる家族支援

  精神保健福祉士に求められる業務のひとつに、家族支援というものがあります。   精神保健福祉士は精神病を患った患者だけでなく、その家族とも関わる仕事です。それぞれの患者にはそれぞれの家族とその形があるため、決まった家族支援のフォーマットというものはありません。   例えば、その名の通り家族を支援する業務があります。患者が父親でその子供に病気について理解させるよう支援をしたい。もしくは母親に自宅でのサポートの仕方を指導し金銭面で行政の支援を受けられるよう案内する、などです。   また、家族が原因で患者が精神疾患を患ってしまっている場合、原因を取り除くために家族支援を行う業務もあります。患者の父親が暴力を振るうために引きこもってしまった学生であったり、母親からのプレッシャーが原因でうつ状態になってしまった子供であったりします。   このように直接的に原因となっている場合でなくても、いじめが主な原因ではあるが家族にも相談できる人や理解してもらえる相手がいない、といったケースも考えられます。いじめや過去のトラウマなどは一枚岩で解決するものではないですが、家族が支えるのは解決へのまずできる一歩です。   もしくは、患者の家族があまりに責任を負いすぎてしまい、家族自身も精神的に不安定になってしまうケースもあります。家族としての役割を大きく捉えすぎてしまい、家族が支えれば乗り越えさせることができるはずだと信じていると陥りがちです。   このように家族支援は多岐に渡りますが、今回は「問題を抱える若者とその家族への支援」に絞って精神保健福祉士が留意することを記載していきます。     問題を抱える若者とその家族への支援   ①相談を受け、受診の必要があれば勧める これは当然のように感じることかもしれませんが、家族の認識によっては受診と服薬に抵抗がある方も多いです。病名がつくことを嫌い、なかなか受診に足が向かないという理由も多いです。服薬してコントロールができる病気であればそうするに越したことはないので、誤解のないよう説明をし受診を勧める必要があります。   ②家族に依存しすぎていないか確認する 家族との関係が薄いがゆえに起こる精神疾患もありますが、逆の場合もありえます。家族への依存が大きいと、家族という世界に閉じこもってしまって外に出るのが怖くなり、他者からの評価が得られずまた家族とだけしかコミュニケーションを取らない、という悪循環が生まれます。精神疾患の原因が家族とは関係がないように思えても、根底の部分で家族依存が関わっている場合も多くあります。   ③家庭内暴力への対処 家庭内暴力について、一番は警察に通報し避難をさせることです。危険性があると判断すれば、そのように指導しましょう。また暴力に暴力で対抗することは勧めません。まだ未遂であり予防の段階であれば、できるだけ相手を刺激せず、2人きりにならないよう第三者を介入させることや、距離を取って会話をするように心がける事などの予防原則を指導します。   ④家族の中で役割を見出す これは精神疾患の段階にもよりますが、全く何もしていない状況が続くよりも何かの仕事が生活の中にあった方がやりがいに結びつくケースもあります。小さい社会である家族の中で、働く意義や責任を見出せると社会復帰への足掛かりになるでしょう。家族と話し合い、例えば新聞受けから新聞を取ってくるでも、掃除や洗濯でも構いません。些細なことでも、失敗してもいいです。それが社会活動に繋がります。     具体的な家族支援の流れ   ①家族の誰か(一般には親など,本人もあり得る)からの相談を受ける(来談・訪問) 相談者が何を問題にしているのかと、家族の関係をつかむ。   ②問題を抱える本人(本人からの相談の場合は家族の誰か)の話を聞く(来談・訪問) ①と②の相談者の違いを明らかにする。問題はそれぞれの人物の認知であり、事実の追求は意味を持つとは限らない。   ③会議を開き、問題の明確化・支援の目標設定・有効な資源の検討・アセスメントの必要性の検討・環境調整の必要性の検討を行う 初回面接の担当者の記録をもとに印象を交えて報告してもらい,必ず複数の「眼」で検討する。また,目標は「最低限クリアする」実現可能な設定を心掛ける。   ④家族に対し、③の会議で検討した支援の方向性について説明する 同意が得られる場合、具体的にスケジュールを立て本人の行動を促すように協力する体制作りを進める。支援における家族の役割をアドバイスする。 同意が得られない場合、本人・家族と支援者の信頼関係ができていないので、まずは定期的に連絡を取り信頼関係の構築に努める。   ⑤家族との相談のプロセスで会議を開き、方向性とそれぞれの役割、関わりによる変容の確認を行う 本人と家族の関係を調整しながら支援を行う。支援されるのは表面的には「問題を抱える若者本人」だが、本質は「家族全体の関係性」であるから、本人の人的環境である家族は「支援者であると同時に被支援者でもある」という視点を失わないようにする。   ⑥目標となる行動や関係性の再構築に向かう変容や方向性が見えるまでケース検討と支援を繰り返す 関係性は動的なもので完璧な解決などないため、見守りフォローする体制を維持する。  

2020/08/07

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精神保健福祉士に興味のある方へ―就職先とは―

新型コロナウイルス感染症の予防によって、私たちの生活様式が新しいものになりました。 「コロナショック」と言われるなか、私たちの仕事観・会社感への影響も出ているでしょう。 契約社員や派遣社員、アルバイトの契約をはじめとして雇用状況が厳しくなり、今後失業者が急増する可能性があるとも言われています。 そして、雇用情勢が悪化すると、自殺者が増えてしまったり。こうした望まない社会的損失を私たちは考え、社会的な対策を防いでいかなくてはなりません。 このような社会の変化の中で、いま、注目されているのが『精神保健福祉士』という国家資格です。 コロナ禍を受けて、多く人がこれまでのよりも緊張感の高い生活を送っているなかで、“人々を支え、自分自身もやりがいを感じる仕事に就きたい“、このような転職を希望する社会人が就活をする大学4年生に注目されつつある国家資格です。 今回は、心の寄り添う医療系国家資格『精神保健福祉士』について、そのおもな就職先を説明します。 1、精神保健福祉士の仕事内容とは? 精神保健福祉士は、精神面に障害のある方を対象に生活面での支援を行うのは主な仕事です。Psychiatric Social Workerを略して、「PSW」と呼ばれており、精神障害者に特化して相相談援助や社会資源を提供する専門職であり、国家資格です。   具体的にどのような役割があるでしょうか。 障害のある方を密接に関わりのあることと言えば、医療費と生活費です。 ご自身はもちろんですが、そのご家族にとっても医療費は大きな負担です。そして、障害を抱えた方が世帯主だった場合には生活費の捻出も困難を強いられるでしょう。 厚生労働省が代表例としてあげている精神障害者は、統合失調症、てんかん、依存症、気分障害、高次脳機能障害などがあります。いずれも症状が悪化すると仕事を続けることが困難になりやすく、休養をとりながら治療をしていくケースが多いです。 障害者ご本人の医療費や生活費として活用できる公的支援制度を斡旋するのも、精神保健福祉士の仕事のひとつです。 もちろん、できる限り社会復帰を支援して、本来の自立した仕事ができるようにサポートしていくという重要な役割もあります。社会復帰に向けて、日常生活に必要な訓練や会話の練習など直接精神障害者の方と向き合うことも欠かせない仕事です。 さらに、再び社会に出て働くための支援や、就職を果たした後も仕事に定着できるまでのサポートなどもおこないます。 精神保健福祉士がこのように多岐に渡る仕事を担うことになった背景には、2006年に施行された「障害者自立支援法」と、2012年に施行された「障害者総合支援法」があります。 この2つの法律がきっかけで、それまで入院医療が中心だった精神障害者の方が、地域での生活へと変化していきました。 これまで病院で生活していた精神障害のある方が地域で生活するとなると、専門知識を有する支援者が必要となります。そこで、精神保健福祉士が、精神障害をお持ちの方と社会がつながりを持てるように導く役割をしていくことになったという背景があります。 2、精神保健福祉士と社会福祉士との違いは? 社会福祉士も、精神保健福祉士と同じく国家資格のひとつです。 心身に障害を抱えるさまざまな事情から通常の生活を送ることが困難な方を支援することがおもな仕事です。 社会福祉士が支援するのは、障害を抱えて社会参加や自宅での生活が難しい方だけではありません。突発的な災害や失業といった何らかの働けない事情を抱えて生活が困難になった方への支援も社会福祉士の仕事です。また、不登校や虐待など子育てに関する問題も対応することもあります。 社会福祉士は、社会の中で何らかの支援を必要としている方やその家族の相談を受けて、その方の状況に合った適切な紹介や申請をおこなって、自立した生活になるように支援をする専門職です。 精神保健福祉士との違いは、その対象者です。 精神保健福祉士が支援をするのは精神に障害を抱えた方で、対象となる人が限定されているという点が違います。それだけ専門性が高く、専門領域が特化していると言えるでしょう。 なかには、社会福祉士の国家資格を持ちながら、さらに精神保健福祉士の国家資格を取得する人もいます。社会福祉士の国家資格で全般の相談援助はできますが、さらに精神保健福祉士の国家資格を取得することで、精神面に障害を抱えている方に対しても特化した支援をおこなうことが可能となります。 3、精神保健福祉士の就職先 ①病院 精神保健福祉士としてまず挙げられる就職先が病院です。 精神科の専門病院、総合病院の精神科、心療内科クリニックなど、さまざまな形態の医療機関が挙げられます。いずれも地域を支える拠点です。 医師と連携して精神障害のある方の生活に関わる情報を把握し、社会復帰に向けて生活を支えていきます。 精神科病院では、集団精神療法や認知行動療法、グループワーク、リハビリ、デイケアといった業務をおこなっています。また、在宅生活に関わる相談では訪問業務をおこなうこともあります。  ②福祉施設 病院の次に挙げられるのは、福祉施設です。 おもな福祉施設として、就労継続支援事業所、地域活動支援センターなどの精神障害者福祉施設の現場です。これらの福祉施設では、利用である精神障害者の方に対して、就労に関するトレーニングや職場への定着、電話や対面による相談など、日常生活に関わるさまざまなサービスを提供していきます。 それ以外にも、地域への情報発信や精神障害者の方の居場所づくり、関係機関相互の連携の中心となることでネットワークを活用できるハブ機能を果たしたりもしています。 精神障害者の方やそのご家族がよりよい生活を過ごせるように支援します。 ③養護施設 福祉施設だけでなく、養護施設も精神保健福祉士の就職先です。 生活支援サービス分野のなかでも、グループホームやケアホーム、生活保護法で設置されている救護施設、児童福祉法で設置されている児童養護施設などがあります。 また、保護者がいなかったり、虐待などの環境上養護を必要とする児童に対して、相談援助や自立に向けての援助、衣食住への健康管理や作業訓練などのリハビリなど、地域で生活できるようになるための指導をおこないます。 ④行政機関 精神保健福祉士は医療機関だけでなく、行政機関でも活躍することはできます。 行政機関としておもには、市役所区役所、保健所、精神保健福祉センター、福祉事務所などがあります。コロナ禍でテレビ画面でもよく精神保健福祉士センターの電話番号が案内されていますが、これらで心の問題について専門的な相談と援助などの相談業務をおこなっている専門職が、まさに精神保健福祉士です。 また、精神障害者への偏見をなくすための地域住民への啓蒙活動やボランティア活動、患者会や家族会を発足する仕事などもしています。  ⑤司法施設 2003年に「心身喪失等の状態で重大な他害行為を行った精神障がい者の医療及び観察に関する法律」が制定されました。この法律は、精神障害が原因で善悪の判断がつけられずに重大は犯罪を犯してしまった人を対象とする法律です。 精神保健福祉士は、法律に基づく指定された医療機関で医療チームの一員としてや、保護観察所などの施設で精神保健参与員や社会復帰調整官としての役割を果たしています。 ⑥企業・教育機関 企業では、ソーシャルワーカーとして職場でのストレスやうつ病のケアや、理解を深めるためのプログラムやシステムを作る仕事をしています。 教育機関では、小学校や中学校ではスクールソーシャルワーカーとして子どものケアや、いじめ、不登校などの学校で起きるさまざまな問題の解決ができるようにすることも担っています。 精神保健福祉士の活躍の場として今後さらに期待ができる就職先と言えるでしょう。   このように精神保健福祉士の活躍の場は多岐に渡っています。 そして、少子化や高齢化が進んだり、ストレス社会、さらにはコロナ禍による社会不安など、精神保健福祉士が必要とされる場面は広がっていくでしょう。 精神保健福祉士に興味をお持ちの方は、どのような形で貢献し、人々と関わっていきたいかとしっかりと定めるとよいでしょう。 ご自身の一生できる職業として、精神保健福祉士の国家資格取得にチェレンジすることも素敵なキャリアプランです。  >精神保健福祉士のことをもっと知りたい こちら

2020/07/21

精神保健福祉士の仕事

行政分野で働く精神保健福祉士について

  精神保健福祉士の活躍できる場所は、行政分野にもあります。都道府県庁の障害福祉担当課、精神保健福祉センター、保健所、都道府県立の医療機関、児童相談所などが行政分野にあたります。   業務内容は所属機関によって様々ですが、精神保健福祉に関する知識・技術が必要とされる部署に配属されることが多いです。これは当然のように感じるかもしれませんが、近年特に重視されている動向です。厚生労働省が「精神保健医療福祉の改革ビジョン」を定め、地域生活支援の強化などを推し進めていることが背景となり、都道府県、市町村にて精神保健福祉士の活躍が期待されています。   行政で働く精神保健福祉士の大きな役割は、日本国民全体の精神保健福祉の向上です。直接の支援だけでなく、間接的に市民と協働することや、支援制度や施策を立案することも業務としてあります。     行政分野で働く精神保健福祉士の業務とは   行政分野で働く精神保健福祉士の実際の業務を、大きく分けて9つ紹介します。   ①精神保健福祉相談 ②サービス利用に関する支援 ③技術支援・助言・指導 ④調査研究・企画立案・計画策定 ⑤普及啓発 ⑥研修・組織育成 ⑦関係機関及び団体との連携・協力・連絡調整 ⑧行政機関の責務等が規定されている法令に基づく業務 ⑨精神保健福祉サービスの充実や資源定着のために行う業務   ①の精神保健福祉相談が、最も想像しやすいかもしれません。精神保健福祉の課題を抱える人に対して、問題を理解、整理し、解決へ導くことです。その解決策の中で②のサービス利用に関する支援が含まれることが多いでしょう。患者や相談者の希望を踏まえた上で、適切な社会資源を紹介するのが精神保健福祉士の仕事です。また、紹介だけでなく、利用支援と調整も行います。   ③の技術支援・助言・指導とは、精神保健福祉士の視点から、地域の支援体制の基盤強化を目指し、関係機関の位置づけや機能に応じた技術的な協力や支援及び助言や指導を行うことです。簡単に言うと②と逆で、関係機関から精神病患者の相談を受けることが主でしょう。   ④の調査研究・企画立案・計画策定においては現場で精神病患者を直接支える業務とは少し変わってきます。行政機関として、地域で求められた施策や事業の企画立案、計画策定を行います。ニーズの調査を行い、形式的なものであったり机上の空論となってしまわないよう慎重に聞き取りを重ね、福祉サービスを考えていきます。そして⑤の普及啓発の観点で、地域での交流会を企画するなど理解の促進をすることも精神保健福祉士の仕事です。   そして専門職として、精神保健福祉士の質の向上のために⑥の研修や組織育成を考えることも重要です。所属組織にもよりますが、精神保健福祉士としての確かな知識と技術、そして実務経験が求められます。また、精神保健福祉分野のみならず社会全体の動きやニーズを捉える力も必要です。   ⑦の関係機関及び団体との連携・協力・連絡調整はどの精神保健福祉士の仕事においても切り離せない業務でしょう。医療機関や福祉機関のみならず、地域のボランティアなどあらゆる諸団体との連携が求められます。   ⑧行政機関の責務等が規定されている法令に基づく業務は、想像しにくいかもしれません。これは例えば、精神科病院にて人権侵害を伴う事件が発生した場合に、法律に基づく医療機関への指導強化が急務となります。元の指導のどこが悪いのか、どう解決していくのかを、法律だけでなく精神保健福祉士の歴史や課題、権利擁護に関する専門知識に照らし合わせて考えていく必要があります。現行法では事例がない場合も多く、現行法の不備を認識し改善していく姿勢が大切です。   そして最後に⑨の精神保健福祉サービスの充実や資源定着のために行う業務とは、日本という国の精神保健福祉サービスの充実に向けて、新しい事業が定着するように将来的な施策を考え展開していくことです。国がモデル事業化した「精神障害者○○推進事業」といった事業を運用したり、改善提案を行うなどが業務です。     行政分野の精神保健福祉士が持つべき指針   いかがでしたでしょうか。一般的に想像される精神保健福祉士の仕事は精神病患者にまつわる相談業務だと思いますが、行政分野においてはさらに他の関連施設へ技術指導を行ったり国のモデル事業の改善まで業務は多岐にわたります。   そんな行政分野の精神保健福祉士が、業務を実践していく上で持つべき指針を以下に列挙します。   ・患者本人の権利の擁護と自己決定を尊重する ・患者の強みを伸ばすような視点から相談を理解する ・個人、家族、集団、地域の個別化を重視し理解する ・患者本人とその家族のニーズを把握する ・必要なサービスが途切れることを防ぐ ・患者を含む住民の多様な相談内容に対応できるよう努める ・既存の制度運用に留まらず最善の支援を考える ・ソーシャルワークの視点から施策の創設及び改善を行う ・多職種、他機関と連携し支援ネットワークを構築する ・人、地域、社会システムの全体関連性を踏まえる ・行政機関のなかでソーシャルワークの視点を定着させる    

2020/07/21

精神保健福祉士の仕事

医療分野で働く精神保健福祉士の業務とは

  精神保健福祉士の職場で代表的なものは医療機関でしょう。精神保健福祉士が所属する医療機関は、精神科病院、診療所、総合病院が中心です。精神保健福祉士としてどのように働くかは、職場によって大きく異なります。   国家資格として精神保健福祉士が生まれる前は、精神科ソーシャルワーカーとして多くの方が医療機関にて精神障害者を支えてきました。そして精神保健福祉士が国家資格となった背景には、精神障害者が精神科病院に社会的長期入院をしてしまうケースが非常に多くなってしまったことと、精神障害者の社会復帰などに対する相談業務などの専門職が必要であるという声が大きくなったことがあります。   そのため、まず医療分野で働く精神保健福祉士の大きな目標として、長期入院者の社会復帰を促すことがあります。つまりそれは地域で支えて支援できるようにすることでもあります。   医療機関で働く医師や看護師はどうしても医療行為に重きを置く専門家であるため、精神保健福祉士が地域社会との接点を多く持ち、医療機関内へとフィードバックし、地域に開かれた医療を推し進めることが求められています。   また、近年精神科には統合失調症などの患者だけでなく、うつ病や認知症、メンタルヘルスの課題を抱えた患者が増えてきています。社会的な環境の変化も、医療分野で働く精神保健福祉士は対応していかなければなりません。   医療分野における各業務において、精神保健福祉士がどのような指針を持って業務に取り組んでいくのかを解説していきます。     医療機関での受診と受療に関する支援   ・相談者の思いや希望に寄り添う ・生活者視点から情報を収集する ・社会的視点から相談者を理解する   受診においては、相談者が患者本人でないことも多くあります。家族や関係者が相談者である場合、その思いや希望にまず寄り添うようにしましょう。その上で、患者本人の生活者視点から情報を聞き、整理していく必要があります。相談者と患者が違う場合に、両者の希望や主張を混ぜて考えてしまわないようにしましょう。     生活者の情報収集と課題整理   ・患者の良いところを伸ばせるよう相談者と協力して支援を考える ・多職種によるチーム医療において福祉職としての専門性を持つ   支援を求めている場合、どうしてもマイナス要素のことから支援方法を考えてしまいがちです。しかし、重要なのは患者の良いところを引き出して伸ばしていけるように、例えば患者の夢や希望はどのようなことなのか、それを目指すためにはどう支援していくべきなのか、といった視点から考えていくことが重要です。     入院における支援   ・人権に配慮する   入院はまず、相談者の意志があっても患者の希望とは異なる場合も多々あります。その場合、まず相談者の希望を叶えられるように動きながら患者の意思決定に配慮する必要があります。そして入院においては本人はもちろん、家族や関係者も少なからず不安やストレスを感じます。それを理解し、法律や制度について柔らかく充分な説明を行い、治療と療養環境を調整することが必要です。     退院計画の立案   この業務においてはここまで見て来た、相談者の希望に寄り添うこと・患者の良いところを伸ばせるように支援を考えること・福祉職としての専門性を発揮すること、などが求められます。   特に入院生活が長い患者の場合、退院は非常に不安の多いことであり、どうしても保守的な退院計画になってしまいがちです。しかし本来は患者本人の強みや希望を取り入れ、できる限りチャレンジングなプランでも実現していけるよう工夫をするのが精神保健福祉士の仕事です。時にはチーム医療に関わる専門職全員に、直接患者の希望を届ける場を設けたり、家族や支援者にもそれが伝わるよう工夫をすることが必要となるでしょう。     グループワークの実施   ・リハビリテーションにおいて、グループメンバーの相互作用を活用する   医療分野で働く精神保健福祉士は、業務の中でレクリエーション的なイベントやリハビリテーション目的の大人数プログラムを企画することも多くあると思います。 この場合、グループ全体を見ることと、グループ内外で対人関係を築けているかどうかの把握が必要です。グループワークはグループ全体がうまくプログラムを行えるかどうかと同時に、個別支援という側面も併せ持っています。患者の能力に応じて参加を勧めたり、能力が向上できるよう支援することが大切です。     救急・急性期医療における支援   ・入院中の生活の連続性を保障する ・地域の関連機関と対等な関係を築き、支援ネットワークを作る ・制度や組織を効果的に活用し相談者を支える   救急・急性期医療での支援が求められるのは、精神科救急病棟に勤務する精神保健福祉士などです。大きな指針としては他病棟での勤務と変わらず、相談者に寄り添うことと患者の希望を聞くことなどです。その上で、これまでの生活とこれからの生活を視野に入れ、入院中であっても生活の連続性が保障できるよう心掛ける必要があります。限られた入院期間内に、退院後も地域で安心して生活していけるよう関連機関との連携が不可欠です。