【座談会】年齢も経験も違うからこそ「誰かの知識」が「自分の学び」になる

「経験や年齢が違いすぎて不安」「クラスに馴染めるのか」など、再進学やキャリアチェンジを考える人の多くが不安を抱えています。今回は言語聴覚療法学科 昼間部2年生の4名に、異なる世代や背景を持つ仲間とどのように学び合っているかを語り合ってもらいました。

【座談会】年齢も経験も違うからこそ「誰かの知識」が「自分の学び」になるさんの写真
安井さん
40代
言語聴覚療法学科 昼間部 2年生
入学前:一般企業マーケティング・広報

一般企業にてマーケティング・広報職として従事。子どもの吃音をきっかけに言語聴覚士の道を志す。育児と両立しながら勉強に励んでいる。

山田さん
30代
言語聴覚療法学科 昼間部 2年生
入学前:介護福祉士

介護施設にて5年半勤務。現場での経験から失語症や嚥下障害への関心が高まり、言語聴覚士へのキャリアチェンジを決意。

残間さん
20代
言語聴覚療法学科 昼間部 2年生
入学前:大学生

大学在学中に脳幹出血を経験。リハビリを通じて言語聴覚士の仕事を知り、自らも支援する立場を目指すようになる。大学卒業後に日本福祉教育専門学校(以下、日福)に進学。

上新さん
20代
言語聴覚療法学科 昼間部 2年生
入学前:大学生

大学では心理学を専攻。心理職への関心から進路を模索する中で、理学療法士の父の紹介により言語聴覚士という職業と出会う。大学卒業後に日福に進学。

※インタビュー当時の情報です

身近な人の姿、自分の経験が
「支援したい」に変わった瞬間

ー言語聴覚士を目指そうと思ったきっかけを教えてください。

山田さん

前職では、介護施設で5年半ほど働いていました。日々利用者さんと接する中で、失語症や摂食嚥下障害のある方と関わる機会が多くありました。失語症の方とのコミュニケーションでは、口頭でのやり取りではうまく伝わらないのに、筆談だと伝わるのはなぜなのか、疑問に思ったことがきっかけのひとつです。

もうひとつ印象的だったのは、経管栄養だった利用者さんが、ゼリーから経口摂取を再開し、最終的には他の方と同じ食事を楽しめるようになった姿を見たことです。食事の時間になると食堂に残りたがり、ワゴンを指さして何かを訴えるような様子を見ていたので、その変化を目の当たりにしたときは強く心を動かされました。こうした経験を通して、「言葉や食べることの機能を支える仕事」に関心を持つようになりました。

安井さん

私は、自分の子どもの吃音に気づいたことが大きなきっかけです。当時は海外に住んでいたため、日本語で療育を受ける機会が限られており、帰国後も予約が数カ月先という状況でした。必要としている人はたくさんいるのに、それに応えられる人が足りないという現実を痛感しましたね。

「もし自分に知識と技術があれば、もっと早く子どもに向き合えたかもしれない」。そんな思いが積み重なり、「支援者になる」という選択肢が現実味を帯びてきました。今後を考えても、どんな場所でも我が子を支える手段を自分の中に持っておきたいと思ったことも大きいです。

残間さん

私は、大学3年生のときに脳幹出血で倒れ、手術と長期のリハビリを経験しました。手術直後は右半身麻痺で体が動かず、言葉もうまく話せず、何を思ってもそれをうまく表現できない日々でした。自分は疲れていないのに「疲れてるね」と表情だけで判断されたり、意図しない形で受け止められることがとてももどかしかったんです。

そのとき関わってくれたのが、理学療法士、作業療法士、そして言語聴覚士の方々でした。今、こうして日常生活を送れているのは、支えてくださったその方たちのおかげだと実感しています。あのときの自分の体験があるからこそ、「伝えることを支える人になりたい」という思いが自然と生まれました。

上新さん

大学では心理学を学び、もともとは保健室の先生を目指していました。でもその道は非常に狭き門で、就職が難しい現実もありました。心理職への関心はありましたが、自分の性格的に相手の感情に入り込みすぎてしまう傾向があり、このままその道に進んでいいのか悩んでいました。

そんなとき、父が理学療法士として勤務する職場にいる言語聴覚士の方の話を聞く機会がありました。心に寄り添う要素もありながら、身体やコミュニケーションといった具体的な機能面にもアプローチできる仕事だと知り、強く惹かれたのがきっかけです。

目指すゴールは同じだから、年齢を越えてつながれる

ー入学前に不安に感じる点はありましたか?

山田さん

パンフレットで年齢層の割合を見たときに、20代の学生が多いことを知って、「自分は浮いてしまうかも」と不安に思いました。職場では年上の方と接する機会が多かったため、入学して年下の方とどう関わればよいか少し不安でした。

安井さん

私も同じような気持ちでしたね。ほかの学校のオープンキャンパスに行ったとき、明らかに若い子が多くて、「ここに自分が入ったら浮くかも」と感じてしまって。それで、落ち着いた雰囲気のある学校を探していたんです。日福の見学では、年齢も経歴もさまざまな方がいて、「ここなら大丈夫かも」と思えました。

上新さん

私は逆に、社会経験が全くない状態で入学したので、実務経験のある年上の方々と一緒に学ぶことに不安がありました。とくに小児分野の課題では、子どもと接したことがないぶん、どう考えればいいのか分からず、授業についていけるか心配でした。

残間さん

わかります。私は大学卒業後すぐに日福に進学したので、まわりの同級生たちが一般企業に就職していく中で、もう2年学生を続けるという選択に迷いがありました。しかも年上の方が多いと聞いていたので、うまく馴染めるかどうか不安でしたね。

ー実際のクラスの雰囲気はいかがですか?

上新さん

私は学科で実施されている「入学前学習会」に参加したのですが、実際のクラスメイトと顔を合わせたり、グループワークで一緒に考えたりする中で、「こういう雰囲気なんだ」と安心したのを覚えています。年齢も経歴も本当にさまざまな方がいて、それぞれ目標を持っていることが伝わってきたので、「ここなら自分もやっていけそう」と思えました。

山田さん

入学してみると、年齢層、経歴ともに幅広く、最初は気後れしそうになりました。でも年齢や立場に関係なく、「クラスメイト」として対等に関われるのがとても心地よくて。若い方の考え方にも刺激を受けるし、業界や職種が違う人たちと意見を交わせることがとても勉強になります。

安井さん

本当に経歴や年代が幅広いですよね。支援の現場から来た方、子育て経験のある方など、多様な背景を持つ人が集まっています。各々で目的をしっかり持っていて、自分のペースで学んでいる印象です。同じ「資格取得」というゴールがあるので、年代関係なく自然体で関われる空気感があります。

経験も知識も違うから、
一人では得られない視点に出会える

ー世代や経験が違うからこその学びはありますか?

山田さん

グループワークやディスカッションの中でよく感じるのが、「視点の違いってすごく面白い」ということです。私は介護の経験が長いので、つい福祉的な観点で考えてしまうのですが、看護師の方は医療の面から、社会福祉士の資格を持っている方は制度や生活支援の面から考えるんですよね。課題に対してそれぞれ全然違うアプローチをしてくれて、自分一人では気づけない視点をもらえるのがありがたいです。

残間さん

違う視点を知れるというのは、まさにですね。「発達」をテーマに学生がプレゼンする授業があったんですが、そこで特にそれを感じました。保護者としての立場から話す人がいれば、終末期の医療やケアをどうするかを話し合う“人生会議”に関わった経験を話してくれる人もいて、それぞれの視点に重みがありました。年齢や経験の違いがそのまま授業の深みになっていると実感しました。

上新さん

視点の違いで言うと、経験したことのない領域でも色々と教えてもらえてありがたいです。私は子どもと接した経験がなかったので、小児の課題には最初苦手意識がありました。でも、保育士さんやお母さん世代の方が、自分の家庭でのエピソードを交えて話してくれることで、ようやく“具体的なイメージ”が持てるようになりました。教科書だけじゃ分からないことを、クラスの誰かが埋めてくれる感じがあります。

安井さん

分かります。私は子育ての経験こそあるものの、医療や福祉についてはこれまで全く知見がありませんでした。他の方の話を聞くたびに「なるほど、そういう見方もあるんだ」と思わされます。医療職や教育現場の経験がある方の発言は視点が鋭くて、「そこまで考えているのか」と驚かされることもあります。それぞれの経験が自然にクラスに還元されていて、誰かの話が誰かの学びになっている。そういう関係性があるのがすごくいいなと思います。

ー クラスメイトとのやり取りの中で、印象に残っている気づきはありますか?

上新さん

授業内でフィードバックをし合う場面があったんですが、看護師出身の方が「この筋肉が動いているのでいいですね」と、すごく細かいところまで見ていて驚きました。ただ「よかったよ」と言うのではなく、どこがどう良かったのかをきちんと伝える姿勢は、自分にはない視点でした。褒める言葉のバリエーションは案外持っていないものなので、そういう表現に触れるだけでも学びになります。

安井さん

クラスにはいろんな経験を持つ人がいるので、何か分からないことがあっても、誰かを通じて必ず答えにたどり着けるんです。例えば、保育園のことなら元保育士さん、医療的な用語なら看護職の人、というように。それぞれの専門性が自然にクラスの中に活きていて、知識の貸し借りというより、みんなで学びを支え合っている感じがあります。

これまでの経験が「線」となってつながる場所

ー入学を検討している方にメッセージをお願いします。

安井さん

年齢やキャリアのブランクに不安があって、ここに通うことが人生にどうつながるのか、最初は自信が持てませんでした。でも、これまでの仕事や子育てでの経験、そして、ここでの学びが少しずつ結びついてきて、「点」が「線」になるような感覚があります。今はまだ将来のことは決めきれていませんが、それでもこの時間が確かな意味を持つものになると感じています。

残間さん

新卒でそのまま入学することに迷いがなかったわけではありません。周囲が就職していく中で、「自分だけ遅れてしまうんじゃないか」と不安になることもありました。でも、病気を経験したことで、自分にとって何が大切かを考えるようになり、やりたいことに素直になることを選びました。年齢も背景も違う人たちと学び合える環境は、ここでしか得られないものだし、これまでの経験の意義みたいなものを見い出せたと思います。

上新さん

社会のことをまだ何も分からない状態で入学した自分でも、周りに支えられながら学べています。同年代の友人もいれば、自分にはない経験を持つ先輩方もいて、それぞれの悩みに共感しながら前に進める安心感があります。わからないことがあっても、一人で抱え込む必要はありません。目指す方向が一緒だからこそ、自然と助け合える関係ができる場所です。

山田さん

入学当初は、「勉強が苦手な自分にできるのか」と不安でいっぱいでした。でも、目の前の課題をひとつずつこなすうちに、自分でも驚くほど成長できていたんです。やるべきことが明確な分、「迷う暇がない」というのが正直なところかもしれません。不安があっても、環境がそれを押し流してくれる。興味があるのなら、思い切って飛び込んでみることをおすすめします。

ENTRY
福祉の専門家への第一歩を
踏み出そう

日本福祉教育専門学校では、福祉・医療の専門家を目指す皆様を全力でサポートします。まずは資料請求やオープンキャンパスで、学校の雰囲気を感じてみてください。