言語聴覚士、理学療法士、作業療法士の違い

みなさんはリハビリテーションの専門職である、「ST」「PT」「OT」とは何かご存じですか?
STとは言語聴覚士、PTとは理学療法士、OTとは作業療法士、のことを言います。今回は、この3つのリハビリテーションの専門職の違いについて紹介していきます。

リハビリテーション3資格について

言語聴覚士・理学療法士・作業療法士は、いずれも国家試験に合格しないと取得できない国家資格です。国家資格はたくさんありますが、その中で医療に関わる資格であり、さらにリハビリテーションを専門とする資格がこの3資格です。それぞれ略してST・PT・OTと呼ばれることもあります。

  • 言語聴覚士とは?

“Speech Therapist”、略してSTとも呼ばれる「言語聴覚士」とは、ことばによるコミュニケーションや嚥下(えんげ)に困難を抱える人を対象に、問題の程度、発生のメカニズムを評価しその結果に基づいて訓練、指導等を行います。言葉によるコミュニケーションの問題は脳卒中後の失語症、聴覚障害、ことばの発達の遅れ、声や発音の障害など多岐に渡ります。小児から高齢者まで幅広く現れるのが特徴です。言語聴覚士はこのような問題の本質や発現メカニズムを明らかにし、対処法を見出すために検査・評価を実施し、必要に応じて訓練、指導、助言、その他の援助を行います。

具体的な仕事内容は下記の通りです。
①言語や聴覚に障害を持った方々に対して検査、及び訓練を行う
②食べ物をうまく飲み込めないといった、摂食・嚥下障害に対しての訓練や指導を行う
③失語症や記憶障害、または認知症などの患者さんに対して、コミュニケーションの為の訓練を行う

  • 理学療法士とは?

“Physical Therapist”、略してPTとも呼ばれる「理学療法士」とは、身体に障害がある人等の身体運動機能の回復や維持・向上を図り自立した日常生活が送れるよう、医師の指示の下、運動の指導や物理療法を行う医療技術者です。
理学療法は、脳性マヒ、事故や病気による障害、脳卒中後遺症や老化による障害など、幼年期から老年期にわたるさまざまな障害を対象にしています。理学療法とは病気、けが、高齢、障害などによって運動機能が低下した状態にある人々に対し、運動機能の維持・改善を目的に運動、温熱、電気、水、光線などの物理的手段を用いて行われる治療法のことです。
理学療法士は、医師から依頼された理学療法の内容を点検し、注意する点や行ってはいけない動作を考えたうえで、患者の筋力などを検査する。その結果をもとに患者の障害の状況を評価し、他の診療部門からの情報も加えて理学療法の目標を立て、そのための具体的方法・手順などのプログラムを作成します。

詳しく説明してきましたが、理学療法士の主な仕事を簡潔にまとめると下記の通りです。
①痛みの緩和、麻痺の回復などの目的のために、機器などを用いて電気治療などを行う
②怪我や病気をされている方に対して、個々に合った治療プログラムの作成を行う
③身体機能の改善・回復の為の運動療法を行う
④社会復帰の為の自立支援のお手伝いを実施する

  • 作業療法士とは?

“Occupational Therapist”、略してOTとも呼ばれる「作業療法士」とは、体や精神に障害のある人がその心身機能を回復し、日常生活・社会生活に復帰できるように、食事、歯みがきなど日常生活の動作、家事、芸術活動、遊び、スポーツといった生活の中における作業や動作などを用いて訓練・指導・援助を行う医療技術者です。
作業療法士は、病院の場合はカルテや患者との面接などから、訪問介護の場合は患者から直接ヒアリングを行って、医学的情報や生活情報を集めます。そして、筋力や反射などの身体機能、認知機能や日常生活動作の能力について観察や検査を行い、患者さんの問題点を探ります。これらの結果をもとに、患者それぞれの訓練目標を決め、具体的な訓練プログラムを作り、作業療法を実施していきます。

リハビリテーションの対象となる方は、関節障害など身体の障害、アルコール依存症など精神の障害、脳性麻痺など発達の障害、高次脳機能障害、認知症など老年期の障害などを持っている方です。障害に応じて訓練目的と方法を考え、指導を行います。そのため、食事や入浴・着替えといった、日常生活で行う“応用動作”のリハビリテーションだけでなく、精神面でのリハビリも重要な仕事になります。

具体的な仕事内容は下記の通りです。
①リハビリを通して、日常生活における家事や生活動作の回復などを行う
②身体機能だけでなく、対象となる方の精神面でのケアを行う
③認知症の患者さんや、心に病をもった方々へのリハビリを行う

2年で言語聴覚士になれる!日本福祉教育専門学校

国家試験 合格者数全国 No.1

ことば・きこえ・飲み込みの障がいを、訓練や指導を通してサポートする言語聴覚士。
科学的根拠を基に患者様一人ひとりに寄り添いながら支援できる知識と技術スキルのすべてを学べます。

言語聴覚療法学科を詳しく見る ▶

仕事内容の違い

まず、仕事の内容としては、言語聴覚士は、言葉を使ったコミュニケーション全体の障害、及び嚥下障害などのリハビリテーションを行います。理学療法士は起きる・立つ・歩くといったような、基本的動作能力の回復をサポートします。作業療法士は、日常生活を営む上でのあらゆる作業を通じて、応用動作の維持や改善、精神的ケアを行います。これが大きな違いです。

資格名種類仕事内容など
言語聴覚士国家資格話すことや食べること、聞くことなどで、障害や悩みを抱えている人に対してケアを行います。発声の仕方を教えること、食べ物の飲み込み方を指導・訓練すること、補聴器の調整などが主な仕事内容です。
理学療法士国家資格歩く、食べる、座るなどの日常生活で基本となる身体機能のリハビリテーションを行います。病気やケガで障害を抱えている人に対して、運動療法や物理療法、歩行訓練や筋力訓練などを施します。
作業療法士国家資格理学療法で回復した患者さんを対象としており、社会復帰のための応用動作の回復を目的としています。理学療法士は身体機能のリハビリテーションが主ですが、作業療法士は心のリハビリテーションもあわせて行います。

働く場所・勤務先の違い

働く場所・勤務先には、大きな違いはありません。
理学療法士は医療機関・訪問リハビリテーション事業所・地域の保健センターなどです。作業療法士は、医療機関・メンタルクリニック・特別養護老人ホーム・発達障がい児(者)支援センターなどです。言語聴覚士は、医療機関・特別養護老人ホーム・デイサービスセンターなどです。3職種ともリハビリテーションを行うため、共通して医療や福祉の現場で働いていますが、作業療法士はメンタルクリニックでも働くことができるのが特徴的です。

給料面の違いについて

厚生労働省が調査した、令和2年賃金構造基本統計調査の結果です。

【リハビリテーション職の年収について】※厚生労働省 令和4年賃金構造基本統計調査より(有効求人倍率のみ令和2年調査)

労働時間年収年齢有効求人倍率
言語聴覚士161時間430.7万円34.7歳2.77
理学療法士161時間430.7万円34.7歳3.79
作業療法士161時間430.7万円34.7歳3.59

上記の結果は全国平均の結果ですが、平均年収については差がみられませんでした。賃金構造基本統計調査では、3職種は同じリハビリ職としてひとくくりにまとめられていることがこの結果の要因と考えられます。

給与については、3職種とも勤務先や地域によっては差が出てきます。勤務する病院や高齢者向け施設などによって、給与待遇はさまざまです。施設ごとに運営規模や経営状態、給与に対する方針も異なるため就職活動を行う際には良く調べる必要があります。また、介護老人福祉施設や介護老人保健施設などの福祉施設では、介護職員等特定処遇改善加算というものが支給される場合があります。これは、介護に関わる仕事の給与が低い現状を改善するための国からの加算です。この処遇改善加算は理学療法士、作業療法士、言語聴覚士にも配分されることがあります。

混同されがちな3つの資格ですが、年収はそれほど違いがないため、自分がやりたいことは何か、という視点をもち、各資格の仕事内容から判断するのがよいでしょう。

言語聴覚療法学科を詳しく見る ▶

国家試験合格率の違い

言語聴覚士、理学療法士、作業療法士の直近5年間の合格率推移を記載します。
言語聴覚士が他と比べ合格率は低い傾向にあり、リハビリ系国家試験の中では難易度は高い分類と言えますが、しっかり養成施設で学んだことが身についていれば、十分合格に手の届く試験となってます。

国家資格2020年2021年2022年2023年2024年2025年
言語聴覚士66.0%62.9%75.0%67.4%72.4%72.9%
理学療法士86.4%79.0%79.6%87.4%89.3%89.6%
作業療法士87.3%81.3%88.7%83.8%84.4%85.8%

言語聴覚士を目指せる学科

言語聴覚療法学科

合格者数全国1位。専門実践教育訓練給付金対象。

ENTRY
福祉の専門家への第一歩を
踏み出そう

日本福祉教育専門学校では、福祉・医療の専門家を目指す皆様を全力でサポートします。まずは資料請求やオープンキャンパスで、学校の雰囲気を感じてみてください。