2019年

2019/09/13

嚥下障害

癌の治療後の飲み込みづらさをあきらめない!~言語聴覚士の仕事~

  食道がんや脳腫瘍などの治療後には、 「食べる」や「コミュニケーションをとる」という機能に 障害を残すことがあります。   そんなときに頼りになる専門職が言語聴覚士です。     1、言語聴覚士とは?   ◆言語聴覚士とは?   生まれつき、あるいは、病気・事故・加齢によって 「食べる」「話す」「聞く」「読む」「書く」「理解する」という 機能が不自由な人に対して、その原因を分析して 生活の質を向上させるための訓練(リハビリテーション)を指導し、 アドバイスする国家資格を取得した専門職です。     ◆言語聴覚士はどこにいるの?   ・医療機関(大学病院や総合病院のリハビリテーション科など)   ・介護、福祉施設(老人福祉施設、障害者福祉施設、小児療育施設など)   ・学校(小学校のことばの教室、特別支援学校)   ・保健所 など     ◆相談料は?   医療機関の場合、診療報酬の自己負担あり(検査、リハビリ指導、日常生活などの助言)     2、癌に関して言語聴覚士に相談できること   癌に関して言語聴覚士に相談できる内容は、主に2種類があります。   ①摂食・嚥下に関すること(食べる、飲み込む)   ②コミュニケーションに関すること(話す、聞く、読む、書く、理解する)     ①摂食・嚥下障害を起こす可能性がある癌   舌がん、歯肉がん、口腔底がん、硬口蓋がん、頬粘膜がん、軟口蓋がん、扁桃がん 咽頭がん、喉頭がん、食道がん、肺がん、脳腫瘍 ※いずれも、病状進行や手術・放射線・抗がん剤の治療後に生じます。     ②おもな症状   ・のどに食べ物がつかえる   ・のどに食べ物が残っている感じがする   ・唾液の分泌が少ない   ・食べる時にむせる   ・痰が多い   ・のどに痛みがある   ・のどに麻痺があり飲み込みにくい     ③言語聴覚士による指導やアドバイス   癌の治療後に食べにくくなったり、飲みにくくなった場合、 「飲み込む方法」や「食事の時の姿勢」、「食事の食べ方」などを、 管理栄養士と連携しながら、食事がしやすくなるようにリハビリをおこないます。   また、誤嚥をすると肺炎を起こしやすくなるため、 飲み込むときに喉の筋力を強くするためのリハビリ方法を指導したりもします。    

2019/09/13

嚥下障害

高齢者の摂食・嚥下障害

  加齢とともに、体の動きや働きはゆっくりになっていきます。 それは体を動かすための筋力が衰え、協調する運動もできなくなってくるからです。   食べること、飲み込むことも同じです。   加齢とともに歯の数も少なくなるだけでなく、 食べるため、飲み込むために関わる口や喉の筋肉も弱くなり、 そして動きがうまく協調できなくなるのです。     高齢者の摂食・嚥下障害機能の特徴   ①歯が少なくなる   ②飲み込みの反射が遅くなる   ③むせの反射が出にくくなる   ④むせの勢いが弱くなる   ⑤のど仏の位置が下がり、飲み込む時にのど仏の上がる量が減る   ⑥唾液が少なくなる   ⑦食べることに集中できなくなる など     これらの特徴にともなって、加齢による摂食・嚥下障害が出現することがあります。   高齢者では肺炎の最大の発症原因は『誤嚥』で、 70歳以上が誤嚥に関与する肺炎が60%に達するといわれています。   病院内の口腔リハビリテーション科では、 加齢に伴う食べること、飲み込むことに対して 診断・評価をおこない、言語聴覚士によって 食べる動きを回復するための訓練や食べ方、 摂食嚥下障害の予防法について指導をおこないます。    

2019/09/11

嚥下障害

口腔がんと言語聴覚士によるリハビリ

  歌手の堀ちえみさんが『口腔がんのステージ4』を公表し、 ニュースでも大きく取り上げられました。 『口腔がん』とは、どんな病気なのでしょうか?     1、口腔がんとは   『口腔がん』には、おもに以下のような種類があります。   ・舌のがん(舌がん) ・舌と歯茎の間にできるがん(口腔底がん) ・歯茎のがん(歯肉がん) ・頬の内側の粘膜にできるがん(頬粘膜がん) ・上あごにできるがん(硬口蓋がん)   これらの中で最も頻度の多いのは舌がんですが、口腔がんすべてあわせても、 全がんの1~2%しかない希少がんです。     2、口腔がんの症状   一般的に初期のがんでは痛みや出血などはなく、硬いしこりが触れるのみが多いです。 なかなか治らない口内炎の場合は注意が必要です。   実際に自分の口の中を触ってみて、他の部分と明らかに硬く触れる部分がある場合は 悪性腫瘍の可能性がありますので、専門医の受診をおすすめします。   進行がんではしこりが外側に大きくなる傾向や、深部に入っていくものもあります。   とくに後者は進行しているものが多く、潰瘍を形成して 痛みや出血がともなうことがあります。   さらに増大すると、言葉がしゃべりにくくなったり、 食事が取りづらくなったり、口が開かなくなったり、 また、がんが頸部のリンパ節に転移し、 あごの下の首のリンパ節の腫脹をきたすことがあります。     3、病期診断   がんの進行度は、第Ⅰ期~第Ⅳ期に分けられます。   ・第Ⅰ期、第Ⅱ期:「早期がん」 ・第Ⅲ期、第Ⅳ期:「進行がん」   一般的にはがんの治癒率は個々の病変の大きさや広がり、 またがん細胞のもつ性質によって左右されます。   腫瘍がわりと小さく頸部のリンパ節転移のないものは通常良好ですが、 より大きい腫瘍や頸部リンパ節転移のあるものはそれだけ治癒率は悪くなります。   ※口腔がんの中でも最も多い舌がんの5年生存率 Ⅰ期:91%、Ⅱ期:80%、Ⅲ期:65%、Ⅳ期:45%     4、口腔がんの治療法   口腔がんの治療法は原則的には病期によって決定されます。 それに、がんの部位、組織型、年齢、既往歴、合併症、臓器の機能や 一般的な健康状態に基づいて、慎重に治療方法を選択します。   <口腔がんのおもな治療法>   ①手術療法 ・局所切除術 ・頸部郭清術 ・再建手術   ②放射線療法   ③化学療法     5、治療の副作用と対策   がんに対する積極的な治療で、苦痛や副作用を伴わない治療は ほとんどないといってよいくらいです。   そのなかでも栄養支援については重要なことと言えます。   *栄養支援について   口腔は、摂食・嚥下(食べる、飲み込む)や構音(言葉を発する)などの 機能を司る器官です。 口腔がんの治療により摂食・嚥下、構音に悪影響を与えることも少なくありません。   とくに、摂食・嚥下は生命を維持する上で不可欠であり、 これらの障害に対しては栄養支援が考慮されます。   栄養支援では多職種によるアプローチがおこなわれ、 おもには「嚥下リハビリチーム」・「口腔ケアチーム」・「栄養サポートチーム」によって 各種のリハビリが提案されます。   【多職種によるアプローチに関わるおもな職種】 ・頭頸部外科医 ・リハビリ医 ・歯科医 ・言語聴覚士 ・管理栄養士 ・看護師や認定看護師 ・薬剤師 など    

2019/09/11

嚥下障害

言語聴覚士による摂食嚥下リハビリ

  1、摂食・嚥下障害とは?   脳卒中や脳性麻痺、口腔、咽頭、喉頭などの疾患、 神経難病などの中枢神経系疾患などで、 「食べる」機能に障害が生じることを 摂食・嚥下障害といいます。   また、高齢者がよく食事中にむせてしまうことでもわかるように、 加齢による嚥下障害もあります。   摂食嚥下障害は、超高齢社会において重大な健康問題の一つになってきました。   高齢化が進むなか、食べたいと思うものを最期まで楽しく口から食べるという、 人間として最も基本的な生命維持機能だけあって、 食文化としての楽しみは、QOL(生活の質)にとても大きく関わってくるのです。     2、摂食機能療法とは?   摂食・嚥下リハビリテーションでは、 患者様が安全かつ楽しく生活ができるように、 栄養摂取の方法を確立することを目指します。   患者様に合わせた食事や栄養摂取のスタイルを確立することが、 嚥下リハビリの最大の目標です。     嚥下障害の評価は嚥下造影検査、ビデオ内視鏡検査、反復唾液嚥下テスト、 水飲みテスト、フードテストなどがあります。   このような検査結果をもとに、重症度を判定し、治療効果を予測しながら、 治療環境を考慮に入れてリハビリテーション治療が進められます。   嚥下機能に対する訓練は、おもに脳疾患、肺炎などの呼吸器疾患、 認知症、高齢者(とくに要介護)、神経難病などの中枢系疾患、 その他医師が必要と判断した場合におこなわれます。   適切な評価の後、言語聴覚士がリハビリスタッフと連携しながら訓練を進めていきます。    

2019/09/11

嚥下障害

言語聴覚士に対する社会ニーズ ~摂食・嚥下障害~

  1、言語聴覚士に対する社会ニーズ   言語聴覚士(ST)は、脳卒中やさまざまな疾患による 言語障害や聴覚障害によるコミュニケーション障害や、 小児を対象とした言語・構音の問題に対して、 治療・訓練をおこなう専門職です。   1999年に国家資格制度が始まって以来、 おもにコミュニケーションの問題を中心に訓練をおこなってきましたが、 発音と摂食・嚥下に関わる器官が共通することにより、 約20年ほど前から少しずつ摂食・嚥下のリハビリテーションに 関わってくるようになってきました。   日本言語聴覚士協会の調査では、現在では、 言語聴覚士の7割が何らかの形で 摂食・嚥下訓練に関わっています。   法的にも、医師または歯科医師の指示の下、 嚥下訓練をおこなうことができる専門職種であることは 明記されています。     2、病院における嚥下チームの中の言語聴覚士の役割   摂食・嚥下障害の方たちの中には、 高度な低栄養状態や脱水状態の患者様も多く、 嚥下訓練どころではない方も多くいらっしゃいますが、 すべてのリハビリには、筋肉や基礎的な体力をつけていくことが必要で、 そのために「食べる」という栄養の確保がとても重要です。   言語聴覚士は、リハビリを通じて 毎日患者様やそのご家族と関わるため話しかけやすいこともあり、 いろいろなことを相談されやすい職種でもあります。   そのため、病院内の嚥下チームの方針を 正しい情報でわかりやすく伝える役割も担っています。     3、摂食・嚥下に関わる職種として   言語聴覚士は摂食・嚥下障害にかかわる資格を持つ職種として、 目の前の患者様へのリハビリに関わることはもちろんのこと、 社会からのニーズが大きい領域だからこそ、 社会へ貢献することも重要です。   例えば、地域での勉強会や患者会などに積極的に参加して アドバイスやサポートをすることや、 その活動と通じて連携できる仲間を増やしていくことも 言語聴覚士として大切なことです。     また、リハビリのプロとして、患者様やご家族の精神面にも気を配り、 安心感や信頼感を持っていただける関係性を築くことも必要です。   嚥下障害の患者様は誤嚥で苦しい思いも経験されていることもあるため、 訓練を始めることが不安なこともあります。   患者様の不安な心理状態を理解した上で、「大丈夫」という言葉への信頼で 訓練がスタートできる関係性を得られるようにすることも重要です。     誰でも、身近なところで、 摂食・嚥下に関する相談やリハビリがうけられるようになるためにも、 在宅スタッフ(訪問医・訪問ナース・訪問リハビリスタッフなど)や 施設内スタッフに、正しいリハビリの知識やアプローチ方法を 身に付けていただくことも、連携のけん引役として期待されています。    

2019/09/10

脳梗塞

脳梗塞の後遺症として起こる言語障害とは? ~失語症と構音障害~

  脳梗塞によって脳の特定の部位に 破損が生じると、 言語機能に障害が出ることがあります。   脳梗塞の後遺症による言語障害の症状や、 言語聴覚士によるリハビリ方法などはそんな手法があるのでしょうか?   もしご家族や大切な人が脳梗塞になったとき、そして言語障害を発症したら、 どのようなリハビリ治療を受けることができるのか、ご紹介いたします。     1、脳梗塞の後遺症として起こる言語障害   脳梗塞の後遺症として起こる言語障害には、大きく分けて 「失語症」と「運動障害性構音障害」の2つのタイプがあります。     1.失語症   失語症とは、脳梗塞によって大脳の言語をつかさどる領域が損失を受けて、 ことばをうまく扱うことができなくなる症状です。   失語症の患者様は、「聞いて理解する」「話す」「読む」「書く」といった 言語にまつわる4機能のいずれか、またはすべてに障害を受けています。   その障害の程度は、脳梗塞の損傷の程度によって差があります。     ◇失語症のリハビリ◇   失語症の患者様は目や耳から入ってきた情報を理解するのは難しい状態です。   そのため、言語聴覚士は、聞いて理解するための練習を積み重ねて、 ことばを扱う感覚を取り戻させるようなリハビリを目的として訓練をおこないます。   言語聴覚士の指導のもと、聞いた言葉と目の前に広げられた絵を結びつけるリハビリを おこなったりと、頭の中で情報を一致させる練習を繰り返しおこないます。   言語聴覚士とのやりとりだけでなく、ご家族や周囲の方々とのコミュニケーションの中で、 患者様がうなずいたり、首を振ったりという反応もリハビリの一種になります。   ただし、失語症の回復には個人差が大きく、 リハビリに励んでも話す機能を取り戻すことができない患者様もいます。   そのため、言語を話すだけではなく、他の方法での意思疎通ができるように、 絵を取り入れたり、身振り手振りなどで総合的にコミュニケーションができる方法を リハビリで学んでいくこともあります。     2.運動障害性構音障害   運動障害性構音障害とは、 脳梗塞によって脳幹または脳幹につながる神経線維が損傷を受けて、その結果として、 唇や舌などに麻痺が出て、ことばをうまく発音できなくなる症状です。   運動障害性構音障害は、発声がうまくできないのは機能性の問題のため、 耳で聞いて理解する能力・目を読んで理解する能力に問題はありません。   ですので、利き手に麻痺が出ていない限りは、 運動障害性構音障害で言葉が発することができなくても、 筆談でコミュニケーションを取ることは可能です。     ◇構音障害のリハビリ◇   運動障害性構音障害の患者様は、機能性の問題のため、 口や舌を動かす運動や発声練習、ゆっくりと区切って話す方法の訓練をおこない、 発声機能の回復を目指したリハビリをおこないます。   言語聴覚士の指導のもと、リハビリで話しにくい障害の改善を試みると当時に、 残された機能で生活する方法を学んでいきます。   重度の患者様の場合には、五十音表の使用や発声をサポートする機器を使用することで 日常生活でのコミュニケーションを図ることを言語聴覚士が勧めることもあります。   言語聴覚士とのリハビリを終えて退院した後は、 ご家庭での日常生活でご家族や周囲の方々との会話が大きなリハビリになります。     2、言語障害の症状   言語障害の症状や種類、重症度は、 脳梗塞で損傷した脳の部位によって大きく異なります。   「失語症」と「運動障害性構音障害」の代表的は症状は、以下の通りです。     ・失語症   大脳の言語領域は、 「聞いて理解する」「話す」「読む」「書く」という4つの機能がありますが、 失語症で最も重い症状である「全失語」の患者様は、 この4つの機能のすべてに障害を受けているため、 ほとんど全ての言語を理解することも話すこともできません。   そのほかに、ぎこちない話し方になる「ブローカ失語」、 なめらかに話せるけれど言葉の取り違えが多く意味が伝わらない「ウェルニッケ失語」、 比較的なめらかに話せるけれど言葉の言い換えができないために 時々会話が困難になる「健忘失語」などがあります。     ・運動障害性構音障害   「話す」という機能は、唇、下、声帯、口蓋などの器官の 微妙なコントロールによって成立しています。   脳梗塞によって脳は損傷し、この一部またはすべての動作に支障をきたしてしまう 運動障害性構音障害では、話し方がぎこちなくなる、途切れがちになる、 声と呼吸が混じる、声が出しにくい、くぐもった声になり 聞く取りにくいなどの症状があらわれます。   脳梗塞の後遺症で言語障害が出た場合は、 言語聴覚士の指導のもとリハビリをおこなって機能回復を目指します。   文字を見せる、呼びかけるなどをおこなって言語機能の障害の程度を確認します。   どの能力を向上させる必要があるかを判明してから、 話すための訓練へとステップアップしていきます。   脳梗塞の患者様は、言語聴覚士とのリハビリでのコミュニケーションや、 ご家族との会話を増やし、できるだけ話してもらう機会を増やすこともリハビリになります。   また、患者様とのコミュニケーション方法に不安や悩みのあるご家族に寄り添い、 ともに支えていくことも言語聴覚士の仕事といえます。    

2019/09/10

脳梗塞

脳梗塞とその原因・症状とは

  1、「脳梗塞」とは   「脳梗塞」は、脳の血管が細くなったり、血管に血栓(血のかたまり)が詰まったりして、 脳に酸素や栄養が送られなくなるために、脳の細胞が障害を受ける病気です。   脳梗塞は詰まる血管の太さや詰まり方によって3タイプに分けられます。   個人の症状も、その程度や脳の障害を受けた場所や範囲によって異なってきます。     (1)ラクナ梗塞:脳の細い血管が詰まって起こる小梗塞   脳に入った太い血管は次第に細い血管へと枝分かれしていきますが、この細い血管が狭くなり、詰まるのがラクナ梗塞です。 日本人に最も多いタイプで、主に高血圧によって起こります。     (2)アテローム血栓性脳梗塞:脳の太い血管が詰まって起こる中梗塞   動脈硬化で狭くなった太い血管に血栓ができて、血管を詰まらせるタイプの脳梗塞です。 主に、高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病によって起こります。     (3)心原性脳梗塞症:脳の太い血管が詰まって起こる大梗塞   心臓にできた血栓が血流に乗って脳まで運ばれて、脳の太い血管を詰まらせるものです 主な原因で多いのは、不整脈の1つである心房細動です。   長嶋茂雄氏が発病した脳梗塞です。     2、脳梗塞で起こる症状とは   【失語症】   ・頭ではわかっているのに言葉が出なかったり、違う言葉を言ってしまう ・人が話している内容がわからない、質問の内容に沿う返答ができない ・言いたい言葉がなかなかでてこない ・言いたい言葉と違った言葉が出てしまう     【構音障害】   ・ろれつが回らない、スムーズに話せない ・発音が不明瞭で、周りの人が聴き取りにくい、または聞き返される ・活舌が悪く、うまくしゃべれない     【音声障害】   ・大きい声が出にくい ・声が長く続かず途切れがち ・声が高くなったり小さくなったりする ・声がかすれたり、細くなったりする     【注意障害】   ・長い時間集中できない ・人や物事に気づきにくい ・同時に複数の事に取り組めない     【半側空間無視】   ・片側の物がみつけられない ・歩行するときに片側(右または左)の人や物にぶつかる ・服が着られない ・食事の片側においてあるものしか気づかない(半分側しか食べない)     【記憶障害】   ・新しいことが思えられない ・最近の出来事を忘れてしまう ・過去の出来事や事実を忘れてしまう、もしくは誤って思い起こしてしまう     【遂行機能障害】   ・優先順位をつけられない ・計画を立てて物事を進められない ・物事を論理的に考えられない     【嚥下障害】   ・むせやすい食べ物を飲み込んだ時に、喉に食べ物が残ってしまう ・食事中や食後によくむせる ・食べることに疲れてしまって、残してしまいがち ・食後痰が増えた     言語聴覚士は、患者様個人の症状を正確に見極め、評価し、リハビリをおこないます。 患者様の言語や発話、思考力に対して、科学的にアプローチしていきます。    

2019/09/10

脳梗塞

家族ができる脳梗塞の後遺症、失語症・構音障害のリハビリ

  脳梗塞によって脳の特定の部位に破損が生じると、 言語機能に障害が出ることがあります。   脳梗塞の後遺症による言語障害の症状には大きく分けて 「失語症」と「運動障害性構音障害」の2つのタイプがあります。   もしご家族や大切な人が脳梗塞になったとき、そして言語障害を発症したら、 医療機関で言語聴覚士からリハビリ治療を受けることができますが、 ご家庭でもできる言語障害のリハビリをご紹介いたします。     1、脳梗塞の後遺症として起こる言語障害   脳梗塞の後遺症として起こる言語障害には、大きく分けて 「失語症」と「運動障害性構音障害」の2つのタイプがあります。     ・失語症   失語症とは、脳梗塞によって大脳の言語をつかさどる領域が損失を受けて、 ことばをうまく扱うことができなくなる症状です。   失語症の患者様は、「聞いて理解する」「話す」「読む」「書く」といった 言語にまつわる4機能のいずれか、またはすべてに障害を受けています。   その障害の程度は、脳梗塞の損傷の程度によって差があります。     ・運動障害性構音障害   運動障害性構音障害とは、脳梗塞によって 脳幹または脳幹につながる神経線維が損傷を受けて、その結果として、 唇や舌などに麻痺が出て、ことばをうまく発音できなくなる症状です。   運動障害性構音障害は、発声がうまくできないのは機能性の問題のため、 耳で聞いて理解する能力・目を読んで理解する能力に問題はありません。   ですので、利き手に麻痺が出ていない限りは、 運動障害性構音障害で言葉が発することができなくても、 筆談でコミュニケーションを取ることは可能です。     2、患者家族としての接し方ポイント   大切な家族が突然脳梗塞を発症して言語障害の後遺症が残ってしまったら…   ご家族は日常生活をする上で、どのように接していけばよいのでしょうか。   「失語症」と「運動障害性構音障害」のそれぞれの接し方をご紹介します。     ①「失語症」の場合   失語症の場合には、言葉の話せなくなった患者様(家族)に対して、 そのご家族が小さな子どもや赤ちゃんに言葉を教えるような態度接してしまいがちです。   でも失語症の患者様は赤ちゃんに戻ってしまったわけではなく、 言葉を上手に扱えなくなっただけです。   患者様の自尊心を傷つけることのないように、 ご家族が患者様の気持ちに優しく寄り添うことが大切です。     ②運動障害性構音障害の場合   運動障害性構音障害の場合には、 ご家族など周りの人からは普通に話しているように聴こえているのに、 患者様ご本人は、“ちゃんと話せていない”と感じていることが多いです。   こうしたケースでは、ご家族が普通に話せていることを伝えて、 患者様に自信を持たせてあげるように接してください。   どの場合でも、過度の励ましや、「どうしてちゃんと話せないの?」というような 叱責は絶対に禁物です。   患者様がうまく話せないことでストレスを感じ、話す努力をやめてしまったら、 言語障害はさらに悪化してしまいます。   患者様のできることやできないことをよく理解して、 行き過ぎない適切なサポートを心掛けることが大切です。     3、家族が自宅できるリハビリ   ①「失語症」の家族ができること     • あいさつ   「おはよう」「いただきます」という日常のあいさつは、 たとえ重度の失語症であっても、家族が発した言葉を真似ていうことができます。   とっさに出る言葉が、言語障害のリハビリには効果があり、 しかもコミュニケーションのきっかけにもなります。     • 日常の会話   周りがうるさくない環境、聞き取りやすく、お互いの顔や表情がわかるような目線で、 ゆっくりと理解しやすい言葉で話しかけましょう。   そのときには赤ちゃん言葉で話しかける必要はありません。 何を言おうとしているかを待つ姿勢が大切です。   表情やジェスチャーなどで察知して、「はい」や「いいえ」で回答できる 簡単な質問をご家族から投げかけるのもひとつです。     • 書字   名前、生年月日、住所、性別といった簡単な文字を書いてみましょう。   模写や文字をなぞることから始めて、書ける文字が増えてきたら 申込書などを患者様ご自身で記入できるようにするなどを目標にしてみましょう。   書きたいものも見ながら音読することで、言葉が言えるようになることもあります。     • 日記・手帳・カレンダー   その日のできごとや、今後の予定を書くことで、読み書きの訓練になります。   はじめは単語単位での日記でも構いませんし、 その日記から会話の話題も生まれやすくなります。     • ハガキ・メール   患者様ご自身で書き記すハガキや手紙が好ましいですが、それが難しい場合には、 スマホやパスコンでメールを書くことも十分なリハビリになります。   定型文を書き写す、またはご家族で一緒に文章内容を考えてあげるなども良いです。     • コミュニケーションカード・ノート   「書く・話す」といったことが困難な場合は、あらかじめ言葉をカードに書いておいて、 言いたいことをカードで伝えるという方法ができます。     • 教材   漢字ドリルやペン習字、また病院で言語聴覚士が作成した失語症用の訓練ドリルを 家庭でやってみるのもおすすめです。     • 地域交流   失語症の患者様はうまく話せないため、どうしても外出を避けてしまいがちですが、 周囲をコミュニケーションを多く取ることが非常に重要です。   無理に誰かと話すのではなく、近所の花や植物を眺めたり、買いものにでかけることから始めてみましょう。   地域のデイサービスや保健・福祉施設などで失語症の方のためのプログラムや交流会を おこなっているところもあるので参加してみることもよいでしょう。     ②「運動障害性失語症」の家族ができること   自宅でもできる機能向上のためのリハビリをしてみることがおすすめです。   病院で言語聴覚士をリハビリするだけでなく、 在宅でもご家族と一緒に楽しく前向きに取り組んでみましょう。     • 姿勢   姿勢が崩れてしまうことで正しい呼吸ができなくなることがあります。   椅子に深く腰掛けてもらい、足を床につけて背筋を伸ばして、あごを引くなど、 患者様が正しい姿勢を心掛けるように声かえをしましょう。     • 深呼吸   鼻から深く吸って、口から吐く深呼吸をしてみましょう。   息を吸うときにはお腹を前に出して、吐くときは引っ込めるように意識して深呼吸をしてみると効果的です。     • 肩や首の運動   脳梗塞の後には、筋肉が緊張状態にあることが多く見受けられます。   首や肩といった上半身の緊張が、発声や発音に影響するため、 首を左右に傾けたり肩を上げ下げして、緊張をほぐす運動をしてみましょう。     • 口の運動   1、口を大きく開け閉じします 2、「うーいーうーいー」の口の動きをします 3、口を閉じ、頬を膨らませる、すぼめるの運動を繰り返します 4、舌を前に出したり、ふっこめたりします 5、舌先を上唇、下唇を交互につけます 6、舌先を左右の口の端につけます 7、舌先で唇を右回り、左周りでぐるっとなめます   これらの運動を3回くらい繰り返してみましょう。     • 発声   「あー」と声を出しましょう。無理に大きな声を出し必要はありません。     • 発声練習   母音、50音、濁音、半濁音(ガ・ザ・ダ・バ・パ)、拗音(キャ・キュ・キョ)を ゆっくりはっきり発声してみましょう。   2音、3音とつなげる場合にも、どの音もはっきりと言えるように意識して、 長い単語を言うようにします。   次には短文、そして長文というようにステップアップしながら、 発声練習をおこなっていきましょう。    

2019/09/09

高次脳機能障害

方向音痴と道順障害について

  大型ショッピングモールに行ったら   今、あなたは初めて訪れたニューオープンの超大型ショッピングモールにいます。   初めての来店なので、わくわくしながらまずはフロアマップを入手し、 気になっていた店舗名を探しています。   大きなマップのなかから行きたいテナントの場所を見つけたのでいざ向かいます!   ・・・・ひとりで迷わずいけますか。。。   わたしの周りに   「方向音痴だから迷っちゃうので 大きな大きなショッピングモールや大型家電量販店にいきたくてもいけない・・・。」 「はぐれると電話でやりとりしても自分がどこにいるか分からないから怖い・・・。」   という友人がいます。   いえいえ。ご安心ください。   方向音痴は脳を鍛えてトレーニングを行なえば 方向音痴を克服できるのをご存知でしたでしょうか。     記憶をつかさどる海馬を鍛える!   記憶をつかさどる海馬では、日々蓄積される膨大な情報を 「重要な記憶=長期記憶」と、 「忘れてもいい記憶=短期記憶」に 振り分けます。   道に迷わずに歩くためには、 目的地までの目印を重要情報として脳の長期記憶に入れることが必要となります。   そのため、歩いた道を書き出してみて、 地図と見比べるというシンプルなトレーニングを行なうことで海馬を鍛えるといわれています。   意識するのは、歩いた道にあった興味があるものを目印にすること。   脳は好きなことや過去の大切な記憶を長期記憶に収納する、 という特性をもっているのでこれを利用して道順のマーキングをしていきます。   歩いた記憶を思い出しながらアウトプットすることも脳トレになるといわれています。     高次脳機能障害による道順障害とは   いままでお伝えした方向音痴は 自分で意識して海馬を鍛えることで克服ができるといわれています。   しかし、交通事故や脳卒中により脳損傷を負った場合はどうでしょうか。   脳は一度損傷を負うと回復することが難しいといわれており非常に繊細な部位です。   そのため ・家をでたら近所が見たこともない風景に思える ・駅から家までの道がわからなくて帰宅ができない ・毎日通うスーパーマーケットなのに入口と出口がわからない   という高次脳機能障害による「道順障害」という症状がでることがあります。   これは方向音痴とは異なり、高次脳機能障害が原因となります。   高次脳機能障害により、   目印を脳が認識できない視覚認知障害 目印を見落としてしまう注意障害 自宅周辺など見慣れた場所なのにどこなのかわからなくなる街並失認   などが複雑に絡まり生じているといわれています。     たとえば病院での場面を考える   道順障害をもっている患者様が自分のリハビリ時間を終えました。 リハビリ室から自分の病室にひとりで戻っていくことができるのでしょうか。   考えただけでも心配になりますね。   患者さまの状況をしっかり把握し、その方に合ったサポートで支えることが リハビリ職に求められています。   そのなかでも言語聴覚士は高次脳機能障害について一番の理解者となります。   知らなければ単なる物忘れとして捉えられてしまいそうですが、 言語聴覚士このような障害があることを理解し患者様のサポートをしていく職業なのです。    

2019/09/09

高次脳機能障害

若年性アルツハイマーのサインとは

  アルツハイマーとは   アルツハイマー型認知症は、 脳にアミロイドβやタウと呼ばれる特殊なたんぱく質が溜まり、 神経細胞が壊れて死に減っていくため、 認知機能に障害が起こると考えれています。 また徐々に脳全体も委縮していき身体の機能も失われていきます。   アルツハイマー型認知症ではごく定番ですが 「あれ?昨日の夕飯何食べたかな?」というような 最近の出来事を忘れてしまうという症状が見られます。   このような記憶障害は記憶を司っている海馬と呼ばれる部分に病変が起こり、 脳に記憶が出来なくなる状態が発生しているためです。 このような記憶障害が自分自身で認識する何年も前から、 実は脳のなかでは異変は発生しているのです。   アルツハイマー型認知症は進行性のある病気であるため 完治することは現代では難しいとされています。   そのため治療方法としては、早期発見時から投薬する事で 症状の進行を緩やかにするということが治療方法となります。   早期発見・早期治療開始が非常に重要な病気です。     高齢者アルツハイマー認知症との違い   若年性アルツハイマー認知症は40代~60代前半の活躍世代に発症する認知症を指します。   高齢者アルツハイマー認知症の場合は加齢とともに発症することが多いため、 物忘れをしたりするとすぐに周りの方たちが認知症を疑ってくれます。 そのため早期発見がし易いです。   一方、若年性アルツハイマーの場合は、ちょっとやそっとの物忘れ程度だと、 疲れやストレス、として自分自身で整理してしまい、 認知症の可能性をつぶしてしまうのです。   そのため若年性アルツハイマーは早期発見がされにくいといわれており、 世間としても認知度が低い病気といえます。   たとえば、仕事中に手順がわからなくなったり、 何を注意されているのかわからなくなったり、 大事なアポイントメントを忘れたり、 という症状があらわれているならば一度、 若年性アルツハイマーを疑ってみていただきたいです。     ▼若年性アルツハイマー認知症チェック項目   ・いままでできていた何でもないことができなくなった ・仕事上で失敗やミスが目立つようになった ・まわりと話をすることが減った ・休日に部屋に閉じこもることが増えた ・元気がないように見える ・わかりやすい、ごまかしや嘘をつくようになった ・会話が噛み合わない、適当に話を合わせている ・趣味や関心ごとに興味がなくなった ・もの忘れが目立つようになった     もしかして若年性アルツハイマーかも? と心配になったらこちらのサイトをご参考になっていただき 早めに医師(脳神経内科・精神科)への受診をおすすめします。 >>>全国若年性認知症支援センター