失語症

2022/09/09

失語症

脳梗塞と失語症

こんにちは。日本福祉教育専門学校です。 脳卒中は日本人の心因4位にランキングしていますが、介護が必要になる原因の2位にもランキングしています。 早期発見できて軽度で済めばもとの生活に戻れる可能性が高い一方で、重症化してしまうと重い後遺症が残ったり、最悪の場合は死に至るケースもあります。 今回はそのような脳梗塞による後遺症の中でも失語症についてご説明いたします。 脳卒中とは   脳卒中とは「脳にただちに(卒)に中(あた)る」という意味で、急に発症する脳の血管の病気の総称です。 ・「脳出血」 ・「脳梗塞」 ・「くも膜下出血」 が含まれます。 なかでも発症率がいちばん高いものは「脳梗塞」で、全体の60%を占めます。   脳梗塞について   脳梗塞のおもな原因は2つあります。 ・動脈硬化性:喫煙、高血圧、糖尿病、脂質代謝異常などの生活習慣病 ・心原性:不整脈など 脳梗塞は再発するケースもあり、また損傷部分によって後遺症が異なります。 なかでも「呂律はまわらない」や「うまく話せない」などの言語障害が残ることがあります。これが失語症です。失語症は、話すこと以外にも聞き取る能力・読む能力・書く能力さえも奪ってしまうリスクの高い障害です。 失語症になると   失語症には大きくわけて3つのタイプがあります。 言葉はなめらかに話せるけれど聞いたことが理解できない(感覚性失語) 言葉は理解できているけれどうまく話せない(運動性失語) 2つのタイプがどちらも障害を受けた(全失症)   (話すときに運動まひや感覚まひによって舌や口がうまく動かずに正しい音を作ることができない場合は失語症ではなく、「構音障害」という後遺症です。構音障害は不規則・不明瞭な話し方になる障害です。) 失語症というと話せないというイメージを持つかもしれませんが、それは症状の一部にすぎず、なかにはよくしゃべるけれど何を言っているのかわからないというケースもあります。 損傷を受けた脳の場所や大きさによって異なりますが、『聴く』『話す』『読む』『書く』といった言葉の働きすべてに何らかの影響が出ます。ただし、記憶障害ではありません。 <失語症のおもな症状> ・相手が何を言っているのかわからない。 ・自分が言おうとしても言葉が出てこない。 ・言葉を言い間違う。 ・うまく発音できない。 ・相手の言うことをマネして言えない。 ・文字や文が読めない。 ・何を書いてあるのか意味が分からない。 ・字を書こうとしても字が思い出せない。 ・数字を言い間違えたり書き間違えたりする。   このように、失語症はコミュニケーションにも大きな影響を与えるので、脳梗塞の後遺症として残った本人はとても苦痛でもどかしさを感じてしまいます。 見た目はわからなくても、言語に障害が起きることで初対面の人から偏見の目で見られてしまうこともあるかもしれません。 脳梗塞によって失語症となった場合は、言語聴覚士のいる医療機関で早期にリハビリすると回復度も変わってきます。 もちろんご本人の年齢やもともとある能力によって回復に差がある場合もありますが、まずは言語聴覚士に指導してもらえるように相談してみるといいでしょう。

2019/08/30

失語症

失声症と失語症の違い ~声が出なくて悩んでいる方へ~

  自分の声が突然、出なくなったら・・・ 昨日までは会話ができていたのに、声の出し方がわからない・・・   声が出ない症状は神経麻痺、ポリープ、腫瘍などの声帯の異常で起こります。 特に声帯ポリープや声帯結節、声帯炎などの明らかな病気はなく、 精神的な原因で起こる場合は心因性失声症と呼ばれています。 男女間での罹患率を比較すると、女性に多いと言われています。 思春期から30歳前後が発症しやすい年齢といわれていますが、小児でも発症します。   『失声症』は文字どおり、声が出なくなる症状です。 声は声帯が振動することによって発せられます。 この声帯を動かす神経が麻痺した時に、 声帯の振動が全くなくなり声が出なくなる場合があります。 これが失声症です。   失声症は、失語症とは全く異なった症状です。   失語症は精神的な問題やショックなどが原因になることはなく、 脳卒中や交通事故により脳に何らかの障害を負うことで 大脳の言語をつかさどっている部分の損傷によっておこるのです。   また、失語症は決して声が出なくなるのではなく、 ことばがうまく出て来なかったり、コミュニケーションのためにうまく使えない状態なので 言語聴覚士による言語訓練などのリハビリをすることで改善していきます。     心因性失声症とは   <心因性失声症の症状> 心理的ストレスによるダメージや、心理的な葛藤などがあると突然このような状態になります。 また、声が出てもかすれ声、しわがれたような声であるため、 周囲の人が聞き取りづらいこともあり、仕事や日常の会話に支障をきたすことがあります。 心理的な要因が大きいため、時に過呼吸を引き起こすことがあります。   <心因性失声症の原因> 心因性失声症は、心理的な要因により起こることがほとんどです。 女性に多く見られる病気であり、主な原因としては、 会社での立場や責任などで悩んでいる、人間関係が上手くいかない、 周囲との関係で欲求が満たされないときなどに突然起こることが多い病気です。   <心因性失声症の検査と診断> まずは検査で声帯や腔内を検査して器質的に問題ないかを確認します。 特に問題が無い場合は、カウンセリングで 失声症を引き起こしているストレスが何かを調べていきます。 検査には心理テストも含まれ、ストレスの深さを探ったり、 性格判断も行って患者の嗜好をチェックします。 声が出ないのが一時的なものなのか継続的なものなのかも観察して調べます。   <心因性失声症の治療方法> 治療方法は人によって違います。 心因性の病気のため治療方法にも個人差があります。 治療をしなくてもストレスの軽減などによって自然と治癒することもあります。 主な治療法としては、声帯に異常がなければ精神科や心療内科、音声専門外来*を受診します。   *音声専門外来とは あまり聞きなれない音声専門外来。 音声専門外来とは、声が枯れていたり、風邪ではないのに声がうまく出なかったり、 高い声が出ず歌がうまく歌えなくなったり、長い時間声を出し続けられなくなったり、 声について心配な方々が訪れる外来です。   カウンセリングや発声練習などを通じて様子を見ていき、 状況によっては精神安定剤を用いて治療することもあります。   心因性失声症は心理的な起因が大きいので、 カウンセリングによって気持ちを軽くすることが大切といわれています。 周囲のサポートや、 カウンセリングだけでも効果がでることもあります。 治療にかかる期間は個々で異なりますが、1週間~数ヶ月で自然に治ることがほとんどです。   お伝えしたように心因性失声症は、 しばらくすれば自然に治ってくることがほとんどです。 ふっとしたとき突然声が出始めることが多くあります。   しかしながら長期にわたって改善がみられない場合は、 うつ病などを併発することもありますので、精神安定剤を服薬、 さらには入院が必要になることもあります。 自己診断ではなくしっかりと専門医に診断してもらうことが大切です。         失声症になったら自分を見つめて労わってください   心因性失声症は自分の限界を見つめなおす機会です。 精神的ショックは避けられないこともありますが、 過度のストレスなどは、日ごろから自分自身の心身の状態に目を向けていることで、 避けられることもあります。   症状が出てしまっても、焦らず、ゆっくりと構え、それに加え、周りの人の支えがとても大切です。   日ごろから適度に周りの人とのコミュニケーションをとり、 心に余裕が持てるように過ごすよう心掛けていきましょう。     その他の失声症の種類   ・音声衰弱症 大部分が心因性のものとされていますが、症状は少し異なります。 はじめは普通に発声できるけれども、段々と声が弱くなっていってしまう症状。   ・けいれん性発声障害 声帯を動かす筋肉が過緊張状態になり、絞り出している声になっている症状。 心因以外の原因も考えられていますが、心因やストレスが誘因ともいわれています。     声の悩みの横には言語聴覚士がいます   失声症の悩みに寄り添い、カウンセリングや発声訓練を一緒にしていくのは言語聴覚士です。 言語聴覚士を目指すきっかけになったのが「自分の失声症の克服」というかたも少なくありません。   ぜひ言語聴覚士についてもっと多くのかたに知っていただきたいと思っています。    

2019/08/30

失語症

誤解されやすい病気「失語症」とは?

  1、「失語症」の特徴とは     脳卒中の発作のあとに、 「話すことができない」「ろれつがまわらない」などの 言語障害がおこることがあるのは、よく知られています。   脳卒中による言語障害の代表的なものに 「失語症」が挙げられます。   「失語症」という言葉を聞くと、話すことができない状態と思われがちですが、これは誤解です。   「失語症」には次のような特徴があります。   ・言葉が浮かばない(頭の中の引き出しから出せない、探せない) ・ことばが理解できない ・文章が理解できない、書けない ・声帯や口唇・舌の機能に問題がない   なお、失語症以外でも言語障害はありますが、それぞれ原因が違うので、 リハビリ方法も異なってきます。   ・ストレスや神経障害で声帯などがうまく動かずに声に異常が生じる「音声障害」 ・同じ言葉や最初の言葉を繰り返してしまう「吃音(きつおん)」 ・脳卒中などで口唇や舌が動かしにくくなる「運動障害性構音障害」   失語症は声帯や口唇など「声を出す機能そのものに障害はない」ということがポイントです。     2、いろいろなタイプの「失語症」   失語症にはいろいろなパターンがあります。   運動性失語(ブローカ失語) 左脳の比較的前の部分に障害が起きた場合には、 聞いていて言葉を理解することは比較的よくできるものの、 言い違いが多かったり、文の構造うまく組み立てられず 単語や短文でぎこちない話し方になる失語症。   感覚性失語(ウェルニッケ失語) 脳の比較的後ろの部分に障害が起きた場合には、 なめらかに話せるものの、言い間違いが多く意味の通らない言葉を話す失語症。   脳の損傷が広範囲に及んだ場合には、 「運動性失語」と「感覚性失語」が併発する場合もあります。   さらに、   健忘失語 聞いて理解することはできるけれど物の名前が出てこないために 回りくどい話し方になる失語症。   全失語 聞く・話す・読む・書くのすべての言語機能に 重大な障害が起きる失語症などもあります。 「全失語」では、右半身のマヒが伴うことが多く、 ことばのリハビリに時間が要するほかに、 様々なリハビリテーションが必要になります。   「失語症」は、一般的にリハビリ期間が長期にわたることが多いです。   発症後できるだけ早期に言語聴覚士が能力を評価し、 はい・いいえなどの意思手段を確立することで、 家族や周囲の人とのコミュニケーションを取りやすくすることができます。 そのため、体調の回復度合いを確認しながら、リハビリを始めることが重要です。   失語症のリハビリは、言語聴覚士(ST)が担当します。   言語聴覚士は、患者様に「標準失語症検査」という検査をおこない、 その結果をもとにリハビリ内容を決定します。    

2019/06/09

失語症

失語症と構音障害のちがいとは?

  脳梗塞や事故によって脳の特定の部位に破損が生じると、言語機能に障害が出ることがあります。     後遺症による言語障害の症状や、言語聴覚士によるリハビリ方法などはそんな手法があるのでしょうか? もしご家族や大切な人が脳梗塞や事故にあったとき、そして言語障害を発症したら…   言語障害で代表的な「失語症」と「構音障害」の2つの違いをご説明します。     「失語症」と「構音障害」のちがい   話すことが難しくなる2つの脳の後遺症。 2つの違いは、何の能力に課題が生じているかどうかです。 話すための筋力が低下する構音障害は、脳梗塞や事故によって運動機能に影響を受けた時にあらわれます。 一方で、言葉を理解できなかったり、自分の頭の中でまとめられなかったりという症状が出た場合には、高次脳機能に障害を負ったことも考えられます。 失語症か構音障害かを診断するためには、医師や言語聴覚士が患者様の話し方や理解力に関する項目をチェックします。   声の大きさや話すリズム、声を出すときの様子から身体機能判断をするのが構音障害、 「挨拶できるか」「とっさに言った言葉を復唱できるか」という理解度をチェックするのが失語症です。     ・失語症とは?   失語症とは、大脳の言語をつかさどる領域が損失を受けて、ことばをうまく扱うことができなくなる症状です。 失語症の患者様は、「聞いて理解する」「話す」「読む」「書く」といった言語にまつわる4機能のいずれか、またはすべてに障害を受けています。 その障害の程度は、脳の損傷の程度によって差があります。   ≪失語症の種類≫ ・ブローカー失語症(運動性失語) 脳の前頭葉側に障害が起きた場合に多く、会話や文章の意味は理解できるが、うまく話すことができない。話し方がぎこちない。   ・ウェルニッケ失語症 (感覚性失語) 脳の側頭葉に障害が起きた場合に多く、話し方はなめらかであるものの、単語の間違いなどが多く見られる。聞いてその内容を理解することも困難。   ・健忘失語 話す内容は理解できるものの、単語や物の名前が出てない場合があり、話し方が回りくどくなってしまう特徴がある。   ・全失語 失語症のなかでもっとも重症な症状で、「話す」「聞く」「読み書き」のすべてに重度の障害はみられる。     ・運動障害性構音障害とは?   運動障害性構音障害とは、脳幹または脳幹につながる神経線維が損傷を受けて、その結果として、唇や舌などに麻痺が出て、ことばをうまく発音できなくなる症状です。運動障害性構音障害は、発声がうまくできないのは機能性の問題のため、耳で聞いて理解する能力・目を読んで理解する能力に問題はありません。ですので、利き手に麻痺が出ていない限りは、運動障害性構音障害で言葉が発することができなくても、筆談でコミュニケーションを取ることは可能です。   ≪構音障害の種類≫ ・弛緩性構音障害 大脳や脳幹にダメージを受けた時に現れる後遺症。失語症とは違い、相手の話を理解したり、頭の中で伝えたい言葉をまとめたりすることはできますが、舌や唇をうまく動かせないため、声という形で相手に伝えることが困難になります。   ・失調性構音障害 発話に関わる筋力が低下することで、話す時のリズムが不規則になったり、「ますます」「ジャラジャラ」など繰り返す音が言えなかったりする症状があらわれます。声の大きさにバラつきが出たり、震えたりして聞き取りにくい発語になります。     失語症や構音障害など言語障害が出た場合は、言語聴覚士の指導のもとリハビリをおこない機能回復を目指します。 文字を見せる、呼びかけるなどをおこないって言語機能の障害の程度を確認します。 どの能力を向上させる必要があるかを判明してから、話すための訓練へとステップアップしていきます。 言語障害の患者様は、言語聴覚士とのリハビリでのコミュニケーションや、ご家族との会話を増やし、できるだけ話してもらう機会を増やすこともリハビリになります。 また、患者様とのコミュニケーション方法に不安や悩みのあるご家族に寄り添い、ともに支えていくことも言語聴覚士の仕事といえます。

2019/06/09

失語症

「失語症」とは? ~「失声症」・「構音障害」・「学習障害」との違い~

  『失語症』とは?   『失語症』とは、言語障害の1つで、脳の言語中枢に損傷を受けることによって、言語を操る能力に障害が残った状態です。   その名称から話すことができなくなる障害と誤解されがちですが、失語症になると、話すことだけでなく、聞くこと、読むことといった言葉に関するすべての機能に困難が生じます。   具体的な症状や特徴には、 ・言いたい言葉が浮かんでこない ・思ったことと違った言葉を口にしてしまう  ・ことばが理解できない ・文章が理解できない、書けない ・声帯、口唇、舌の機能に問題がない などがあります。     『失語症』と症状が似ている障害・疾病との違いとは?   先にも書いた通り、「失語症」になると言葉の引き出しと、意味の引き出しの繋がりが混乱してしまいます。 そのため、言いたい言葉が浮かばなくなったり、「テレビ」と言いたいのに「メガネ」と言ってしまったりします。   また、よく「言葉のわからない国に放り出された状態」ともたとえられます。 私たちが外国に行ったとき、現地の人と言葉が通じず、相手が何を話しているか言葉は聞こえていてもその内容が理解できないことがあったり、看板に書いてあることはわかるけれど、音読したり意味がわからなかったりします。 現地の相手に伝えたいことはあるけれどそれをスラスラと伝えることができなかったり。   そんな状態と失語症はよく似ています。   ①『失語症』と『運動障害性構音障害(構音障害)』との違いとは? 失語症と構音障害は、同じ言語障害で、「言葉が出にくい」という点がよく似ています。 ただし、失語症と構音障害ではダメージを受けている脳の部分が異なります。 失語症は話すための言語中枢にダメージがあるのに対して、構音障害は話すという行為のときの呼吸筋や口を動かす運動中枢を使う部分にダメージを受けています。 そのため、『構音障害』は、言葉を話すために必要な唇、舌、声帯などの発声・発語に関わる器官の麻痺などによってうまく話せない状態をいいます。 『失語症』の場合は、言語中枢にダメージを受けている状態のため、麻痺がなくて口を動かすことができても、脳の言語中枢からの指令がうまく届かないため言葉が出なくなったり、正しくない単語が口から出たりするという違いがあります。     ②『失語症』と『失声症』との違いとは? 一般的に話せなくなる症状としてよく間違えられている『失声症』は、おもにストレスや心的外傷などにより心因性の原因によって声を発することができなくなったりする状態をいいます。   “発声器官に問題はないが、話すことができなくなった”という点では失語症と共通していますが、『失語症』は脳の損傷であるため、『失声症』のように心理的なショックや精神的ストレスが原因でないという違いがあります。     ③『失語症』と『学習障害』との違いとは? 『失語症』とおなじく、読む・書く・話す・計算するといった能力に困難が生じる症状のひとつに『学習障害』があります。 『学習障害』は、知的発達に遅れはないものの、「聞く」・「話す」・「読む」・「書く」・「計算・推論する」という能力のいずれか、または複数に著しい困難がある発達障害のひとつです。   学習障害の原因はまだはっきりと解明されていませんが、 『学習障害』は、先天的な脳の機能障害があるのに対して、『失語症』は、脳の言語中枢に何らかのきっかけで損傷を受けた後遺症であり、症状もその脳への損傷を受けた後に現れる後天的なものであるところが学習障害とは違いがあります。  

2019/06/09

失語症

「失語症」とは? ~『失語症』になると、どんな症状になるの?~

  『失語症』になると、話すことだけでなく、聞く、読む、書く、計算することすべての能力に困難が生じます。 その症状や重さは、脳の損傷した場所と大きさによって違ってきます。   では、具体的にどのような症状があらわれるのでしょうか? 「話す」・「聞く」・「読む」・「書く」・「計算する」の5つに分けて説明します。   『失語症』になると、どんな症状があらわれるの?   1.「話す」   ①言いたい言葉が浮かんでこない   自分の思ったことが言葉としてスラスラと出にくくなります。 特に人名や地名などの固有名詞が出にくく、もどかしさを感じることは多いです。 また、「茶碗」と言いたいのに言葉が思い浮かばず、「ご飯を盛るやつ」と言うなど、回りくどい表現になることがあります。     ②思ったことと違うことを言ってしまう   「みかん」を「りんご」のように単語そのものを言い間違える場合と、 「トイレ」を「トレイ」というように違う音に言い間違える場合もあります。 言葉の言い間違いがひどい場合は、まったく意味不明な言葉が続くようになります。     ③文章で話すことが困難になる   「オトーサン…カイシャ…ヤスミ…」のように、単語でポツポツと話すようになったり、 「お父さんは会社へ休みでいます」というように、すらすら話せても正しい文章で言えなかったりすることもあります。     ④同じ言葉が言えたり言えなかったりする   前に一度言えた言葉でも、もう一度言おうとすると言えなかったりすることがあります。 その反対に、さっき言えなかった言葉が次には言えるようになっていたりすることもあります。     ⑤前に言った言葉が続いて出てくる   いったん言葉が出始めると、その同じ言葉ばかりを繰り返してしまうことがあります。 例えば、名前を聞かれて答えると、そのあとに住所や年齢を聞かれても、名前を繰り返して言ってしまうような状態になったりします。     ⑥発音がたどたどしくなる   唇や舌に麻痺がないのに、すんなりと正しい発音ができなくなり、たどたどしい話し方になります。     2.「聞く」:耳は聞こえているのに、聞いた言葉の意味が理解できない   ①大勢の人が集まっているところでは会話が聞き取りにくい   失語症の症状が軽い場合、日常生活で聞き誤ることはあまりないですが、 大勢の人が集まっているところで集中して人の話を聞き取ることが難しくなります。     ②回りくどい言い方、早口、複雑な文章の理解が困難になる   たとえば講演会などの複雑な内容の文章の理解は難しくなります。 さらに症状が重症になると、「冷蔵庫から麦茶と牛乳を取ってきて」といった文章の長さでも理解が困難で、「冷蔵庫から麦茶を取って」と伝えて、麦茶を取り出したところで、「牛乳も取って」と分けて伝えると理解しやすくなります。     ③身の回りにある品物の名前を言われても、意味がわからない   失語症の障害が重くなると、身の回りの品物の名前を言われても意味が理解できず、 きょとんとしたり、間違った理解をしてしまうことがあります。 ただし、判断力は低下していないので、言われた単語の意味がわからなくても、その状況から察して適切な行動をとることができたりします。 そのために周囲の人からは失語症の症状であることが気づかれなかったりもします。     3.「読む」:目は見えているのに、文字や文章の意味が理解できない   ①複雑な内容の文の場合は意味を読みとれない   失語症の症状が軽い人の場合は、簡単な読み物などは楽しむことができますが、複雑な内容になると文の意味を読み取ることが困難になります。     ②単語の意味が理解できない   失語症の症状が重くなると、文章だけでなく単語の意味そのものを理解することが困難になります。     ③かな文字よりも漢字が理解しやすい   失語症の患者は一般的に、かな文字に比べて漢字の方が理解しやすい傾向にあります。 かな文字は表音文字であり、発音を表しているだけなので、その文字を見ただけでは意味を理解できません。一方で漢字は表意文字のため、文字を見ただけで大まかな意味を読み取れることが多いので、かな文字よりも漢字のほうが理解しやすいです。     4.「書く」   ①難しい漢字が思い出せない、文法を間違える   失語症の症状が比較的軽い人の場合、文章を書くことはできますが、難しい漢字を思い出せなかったりします。また、濁点や拗音が抜けることがあります。また、助詞を誤るなどの文法上の間違いがあったりします。     ②自分の名前が書けない   失語症の症状が重くなると、自分の名前も書けなくなることがあります。 自力で自分の名前を書けないときには、漢字のへんやつくりの部分を書き示したりすると、あとから続けて書けたりします。また、見本を見せると書き写すことができる場合もあります。     5、「計算する」   ①数字を言い間違える・聞き間違える 失語症の人にとって数字は聞き間違えたり、言い間違えたりしやすい物の筆頭です。 たとえば電話番号、金額、日付、時間など数字の桁数が増えるものは、言い間違えたり、聞き間違えたりすることがよくあります。     ②計算が困難   日常生活でも九九を使うかけ算やわり算が難しく、たし算やひき算でも繰り上がりや繰り下がりがあると難しくなります。 このような失語症の方の評価や訓練、ご家族への助言などを言語聴覚士は支援します。