2020年

2020/11/24

精神疾患患者の支援

「精神障害者手帳」の取得と就職活動について

精神障害と診断され、「精神障害者手帳(精神障害者保健福祉)」を申請して交付されるとさまざまな支援が受けられることはご存知でしょうか?   精神障害者の自立と社会参加の促進のために、精神保健障害者をお持ちの方への支援が広がりつつあります。 精神障害と診断されても仕事をしている方もたくさんいらっしゃいますし、それらを支援する精神保健福祉士という専門職の方もいます。   今回は「精神障害者手帳」について説明するとともに、精神障害者の方の就職についても触れていきたいと思います。 1、「精神障者手帳」の対象となる精神疾患とは   「精神障害者手帳は」は、何らかの精神疾患によって、長期に渡り日常生活や社会生活に制約がある方を対象としています。 厚生労働省の推計では、日本国内で何らかの精神障害を抱えた方は約393万人とされ、そのうち精神障害者手帳を取得されている方は約42万人とされています。 対象となるのはすべての精神疾患です。   ①統合失調症 ②うつ病、双極性障害などの気分障害 ③てんかん ④薬物やアルコールによる依存症や急性中毒症 ⑤高次脳機能障害 ⑥発達障害(自閉症・学習障害・注意欠陥多動性障害など) ⑦その他の精神疾患(ストレス関連障害など)   ただし、知的障害をお持ちで、なおかつ精神障害のない方については、「療育手帳制度」があるので、精神障害者手帳の対象とはなりません。 知的障害と精神疾患を両方有している場合は、両方の手帳を受けることができます。 また、精神障害者手帳を受けるためには、精神疾患で初診から6ヶ月以上経過していることが必要になります。 精神障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)の等級は、1級から3級まであります。     2、「精神障害者手帳」を取得した場合のメリット(暮らしにおけるサービス)   「精神障害者手帳」を交付されると様々なサービスを受けられます。 全国一律で受けられるサービスや、地域や事業者により行われるサービスがあります。  ・公共料金等の割引  ・税金の控除や免除  ・生活福祉資金の貸付  ・電車、バス、タクシー等の運賃割引  ・携帯電話料金の割引  ・上下水道料金の割引  ・公共施設の入場料等の割引  ・公営住所の優先入居   3、「精神障害者手帳」を取得した場合のメリット(仕事におけるサービス)   暮らしのサービスのほかにも精神障害者手帳を持っていると、就職や就労などの仕事に関するサービスはどのようなことがあるでしょうか?    ①障害者職場適応訓練が受けられる 実際に職場を体験することができる実習制度です。原則は2週間以内で手当も支給されます。    ②障害者雇用枠で就労できる 精神障害者手帳を所持している方は、求人において「一般枠」だけでなく、「障害者雇用枠」のどちらにも応募することができます。     「障害者枠」では、障害であることをオープンにすることで職場の理解が得られ、周囲のサポートを受けやすくなるなど、働きやすさにも繋がります。   もちろん「一般枠」の求人も活用できますので、理想の働き方によって自分自身で選ぶことができます。   精神障害のある方は個々の障害の程度や症状は異なっており、環境の変化や新しいことへの順応が不得意であったり、少しの変化で心身のバランスを崩しやすくなったります。 主治医と相談しながら、お薬の量をしたり、障害と上手につき合っていく努力をしています。 でも時には不調のため仕事を休むこともあります。   実際に精神障害をお持ちで就労している方を対象としたアンケートでも、『周囲のサポートを受けながら仕事を続けることができている』という声は多く聞かれます。   傷害からくる体調の悪さなど、本人だけではどうしようもないことも、周囲のサポートや理解など整った環境が良い影響をもたらすことがあります。   このように、精神障害をお持ちの方が仕事をしたり、仕事を続けるためには、精神障害者手帳を申請して、サービスを受けることができます。   そして、就労支援には精神保健福祉士という国家資格を持つ専門職が関わります。 精神保健福祉士は精神障害分野のプロフェッショナルですので、精神障害者の方はもちろん、そのご家族の相談援助もおこないます。   精神障害者には社会的な支援体制の拡充とともに、精神障害のある方が積み上げてきた実績もあります。 精神障害手帳を取得されている方は、心身の調子が整わないときやつらい思いをするときもあるでしょう。そんなときには精神保健福祉士から就労に対する多くの情報や判断材料を得て、自分に向いている職場選びを掴むことができるのではないでしょうか。   自分の症状を良く知り、就労する企業を伝え、正しく理解されることも大切です。   時間がかかったとしても、自分にあった進め方で就職を目指していき、焦らず、頑張り過ぎずじっくりと進んでいくことがよいでしょう。

2020/11/17

患者への支援

精神保健福祉士が扱う社会資源について

  精神保健福祉士の仕事は、精神に障害を持った人が、日常生活をスムーズに行えるように相談に乗る仕事です。その中で、利用者に社会資源の活用を提案することは大切な業務のひとつです。では、社会資源とは何でしょうか?     社会資源とは   利用者が少しでもよい状態で自分らしく日常生活を送れるように活用できる、資源です。公的な資源には、公的機関や医療機関、福祉事業所などがあげられます。これらの資源をうまく活用できるように、必要としている人に橋渡しをするのが精神保健福祉士の仕事です。   また、公的でない資源もあります。利用者の家族や友人、ご近所の方々や地域のボランティアなど、法律や制度で定められていない資源です。これらもうまく活用することで、利用者の生活をサポートしていくことができます。特に家族は最も身近な存在ですから、病気について理解を深め生活を支援できるようにアドバイスすることで利用者は生活がしやすくなります。     社会資源の種類   社会資源をもう少し詳しく見てみましょう。種類別に列挙します。   ■相談の場 ・相談支援事業所 ・保健所 ・市町村障害福祉課 ・精神科の医療相談室 ・精神科緊急システム など   ■活動の場 ・自立訓練事業 ・生活介護事業 ・就労移行事業 ・就労継続事業(A型・B型) ・地域活動支援センター ・精神科デイケア など   ■生活の場 ・グループホーム ・ショートステイ ・ホームヘルプ ・訪問介護 ・介護保険施設 など   精神保健福祉士は、利用者に合った社会資源の橋渡しができるよう、これらの資源をよく知っておく必要があります。密に連絡を取り合い、担当者と関係性を築いていくことも重要でしょう。特に公的な窓口については、利用者は複数の場所に何度も行かなければならないとストレスを感じてしまいます。たらい回しにされているという感覚に陥ることもあるでしょう。適切な場所へ、目的をわかりやすく説明した上で案内する配慮が必要です。     社会資源の活用で注意すべきこと   1人の利用者に対して、関わる人間は大勢います。その場合、うまく連携が取れないこともあるでしょう。   例えば、利用者が関わっている人が、医師・精神保健福祉士・ヘルパー・相談支援専門員・ショートステイの職員・地域活動支援センターの職員、だとします。しかし、利用者を支える家族に精神的なストレスがかかっている場合、家族にも医師・心理士・精神保健福祉士の支えが必要かもしれません。これら全員がうまく連携を図れたら素晴らしいのですが、全員が同じ方向を向くことは難しく、時間がかかります。それぞれ全く別の仕事をしている専門職ですから、片方が「利用者のためにこうしてください」と言っても「こちらの方が利用者のためになります」と思う場合もあるでしょうし、施設の基準で「そんな無茶はできません」となる可能性もあります。   大切なことは、違うプロフェッショナルが集まっているので多種多様な考え方があると理解することと、絶対に正しい答えというものが必ず用意されているわけではないと理解することです。また、利用者1人1人が違う人間なので、ケースとしては酷似していても全く別の解決方法が良いというパターンもあります。毎回丁寧に親身になって対応を考えていくことが重要です。社会資源をうまく活用していくために、こういった心構えを持っておくと良いでしょう。     具体的な活用の仕方   社会資源を活用するにあたって、どんなことが必要なのか列挙していきます。   ・目標を明確にして共有する ・目標は、本人のニーズの実現であること ・精神保健福祉士だけでは達成できない目標であることを認識し、目標達成のために社会資源を活用する(他機関に連携をお願いする)ことを意識すること ・精神保健福祉士自身のために資源を活用するのではなく、利用者のニーズを実現するための活用であること ・社会資源の活用が決まったら、臨時的なつながりを目的意識化し定期的に連絡を取るよう決める ・職種間の援助体制を明確にする

2020/11/17

精神疾患

双極性障害(躁うつ病)について知ろう

  双極性障害という言葉を聞いたことがあるでしょうか。以前は躁うつ病とも呼ばれていました。精神保健福祉士が対応する利用者の中で、双極性障害を患っている人ももちろん多くいます。双極性障害について知っていきましょう。     双極性障害(躁うつ病)について   双極性障害は、躁状態と言われる気分が盛り上がりテンションの高い状態になったり、逆にうつ状態と言われる気分が落ち込みテンションが低い状態になったりを繰り返す病気です。 躁状態の度合いによって、激しい場合は双極Ⅰ型、軽い場合は双極Ⅱ型に分かれます。   この説明だけでは「躁状態の場合は良いのでは?」と思うかもしれませんね。しかし実際は、不自然なまでの気分の盛り上がりを指しています。双極Ⅰ型の場合は、生活に支障が出るほどと言ってもいいかもしれません。万能感に溢れて全財産をギャンブルにつぎ込んでしまったり、健康を害しても眠らずに動き続けたりするような状態です。   双極Ⅱ型の場合も程度は軽くなりますが、周りの人に「異様な明るさだな」と思われるような状態です。躁状態の本人は異常なことをしている・言っているつもりはないため、人間関係のトラブルになりやすいです。躁状態が軽いため、うつ状態の方にフォーカスしてしまい「うつ病」と診断してしまう場合もあります。「うつ病」と双極性障害は別の病気であり治療の仕方も異なりますので注意が必要です。   そして、うつ状態の時には憂鬱な気分が晴れず、睡眠も安定せず、あらゆることに活気がなくなります。食欲も低下し健康を害する可能性も高いです。1日中ベッドで横になってしまうという症状もあります。   双極性障害になるのに男女差はありません。また年齢も幅広く、20代から30代前後がボリュームゾーンではありますが子供から老人まで患者はいます。     うつ病と双極性障害の違い   うつ病と双極性障害は、似ているようで全く違う病気です。一般的に言われている「うつ病」は「単極性うつ病」とも言い、うつ状態の症状だけがあります。双極性障害はうつ状態だけでなく躁状態があり、そしてその2つを繰り返します。うつ状態だけに対処する治療と、躁状態とうつ状態のコントロールを加味する治療では方向性が異なりますので、違う病気という認識が必要です。実際に治療で使われる薬も、うつ病の場合は抗うつ薬が処方されることが多いですが、双極性障害では気分安定薬や抗精神病薬が使われる、といった違いがあります。   前述したように躁状態が病気であることは自分では気づきにくいため、多くの患者は「自分はうつ病かもしれない」と思って受診しますが、その16%が双極性障害であったというデータが出ています。また、稀に混合状態という、うつ状態と躁状態が混ざった状態が出現することもあり、自分では見分けにくい病気と言えるでしょう。   うつ病と双極性障害は、原因も違います。うつ病の原因はストレスですが、双極性障害の原因は遺伝的な体質により神経伝達物質の機能が変化することです。簡単に言うと、脳の病気です。不確定な要素が多くすべてが解明されているわけではないですが、心の病気ではなく脳の中で感情のコントロールに関わる部分が変化してしまうためだとわかってきました。     双極性障害の症状   簡単に、躁状態とうつ状態の症状を列挙していきます。   ■躁状態の症状 寝なくても平気 話続けてしまう 人の話が耳に入らない 頻尿・残尿感がある ギャンブルなどの浪費 怒りっぽくなる 注意散漫になる 落ち着きがない 急に偉くなったような気分 自信満々になる   ■うつ状態の症状 反応が遅い 食欲がない 体がだるい 疲れやすい 性欲がない 気分が落ち込む 寝てばかりいる やる気が起きない 楽しめない 決断力がなくなる 死にたくなる イライラする 思考力が落ちる 死にたくなる     双極性障害と向き合う   双極性障害は、放っておくとほとんどの場合再発する病気です。何度も再発を繰り返すと社会的信用や財産を失ってしまったり、人間関係がボロボロになってしまう危険性があります。障害と向き合い、早期に適切な治療をすることが求められる病気です。 再発を繰り返すと、発症がどんどん早くなり急速に躁鬱が交代されることになってしまいます。そして混合状態になってしまうと、うつ状態の「死にたい」という思考と躁状態の行動力や自信満々さが掛け合わさってしまい自傷行為や自殺へ繋がってしまう危険があります。   躁状態があることが双極性障害の特徴ではありますが、躁鬱の期間で言うとうつ期間の方が長いです。うつ状態では考え方が否定的になっていき、やる気がなくなり治療についても前向きになりにくい病気ですので、頑張りすぎず緩やかに治療を続けていく気持ちが大切です。   また、双極性障害やうつ病は、患者自身やその家族が病気を軽視してしまうことも多々あります。「頑張ればなんとかなる」「気のせいだ」というような思考が、病気を悪化させることに繋がります。しかるべき医療機関などで病気を正しく理解していくことが大切ですし、精神保健福祉士を含め患者と関わっていく周りの人間が注意深く導いていくことも必要です。   治療については、薬物治療と心理社会的治療の2つのアプローチができます。薬物治療については心を開ける医師に相談し適切な処置を仰ぎます。心理社会的治療については、患者自らが自分の心理をコントローㇽするアプローチや、自分の考え方を肯定的にする練習などです。その他家族や対人関係によって改善していく方法や、社会リズム療法と呼ばれるものもあります。  

2020/11/09

精神疾患

児童虐待とPTSD(心的外傷後ストレス障害)について

PTSD(心的外傷後ストレス障害)をご存じでしょうか?   強いショックを受けたことが原因となってさまざまな症状を引き起こす心の病気です。 児童虐待を受けた子どもも発症しやすいと言われており、PTSDを予防するには、 ストレス反応に対する正しい理解と対応が必要です。 今回は児童虐待によって心に傷を負った子どもたちと接するためのポイントについて 考えてみましょう。    1、児童虐待とは   厚生労働省では「児童虐待の定義」として、4種類に分類されています。   ①身体的虐待 殴る、蹴る、叩く、投げ落とす、激しく揺さぶる、やけどを負わせる 溺れさせる、首を絞める、縄などにより一室に拘束する など   ②性的虐待 子どもへの性的行為、性的行為を見せる、性器を触る又は触らせる ポルノグラフィの被写体にする など   ③ネグレクト 家に閉じ込める、食事を与えない、ひどく不潔にする、自動車の中に放置する 重い病気になっても病院に連れていかない など   ④心理的虐待 言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱い、 子どもの前で家族に暴力を振るう(DV)、きょうだいに虐待行為を行う など   2、児童虐待の現状   児童相談所の児童虐待の相談応対件数(平成26年度)は、児童虐待防止法施行前(平成11年度)の7.6倍(88,931件)に増加しています。 虐待死も年間で50人を超えており、児童虐待によって子どもが死亡した件数は、高い水準で推移しています。   児童相談所における児童虐待相談対応件数に内訳は以下の通りです。(平成26年度) ①身体的虐待 29.4% ②ネグレクト 25.2% ③性的虐待  1.7% ④心理的虐待 43.6%   虐待者別では実母が52.4%と最も多く、次いで実父34.5%となっています。   また、虐待を受けた子どもの年齢構成別では小学生が34.5%と最も多く、 小学校入学前の子どもの合計では43.5%と高い割合を占めています。   3、虐待を受けた子どもが発症しやすいPTSDとは?   PTSD(心的外傷ストレス障害)とは、先述の通り、強いショックや精神的なストレスが心の傷となってしまい、そのことが何度も思い出されるトラウマ状態が長く続いて、心身に不調が現れてしまう病気です。   虐待のほかにも、災害や事故、事件や犯罪被害などが原因になると言われています。   感受性の強い子どもたちは、大人よりもPTSDになりやすいと言われています。   その原因が虐待などの場合、複雑性PTSDとなってしまい、人間不信や協調性の欠如、 多重人格などになってしまうケースもあります。 また、回復までに時間がかかったり、すぐに発症せずに大人になってから発症する場合もあります。   4、心的外傷後のストレス反応とPTSD症状   虐待などショックな出来事の後には、一時的にあらゆるストレス反応が現れます。   ①ストレス反応  食欲 食欲不振、吐き気、嘔吐、消化不良 痛み 頭痛、腹痛、筋肉の痛み 睡眠 眠れない、夜中に目が覚める、悪夢を見る 排泄 便秘、下痢、おねしょ 衝動性 落ち着きがない、攻撃的になる、注意力が散漫になる、すぐに飽きてしまう 急に泣き出したり怒ったりする 執着・再現 こだわりが強くなる、体験した出来事を何度も話したり、その体験に関連した遊びに 友達を巻き込む 赤ちゃん返り ぐすったり泣いたりすることが多くなる、離れるのを怖がる 気持ちの低下・無気力 元気がない、気持ちが沈み込む、ボーっとして無気力になる   ②PTSDの主な症状 フラッシュバック 原因となった出来事を何かの拍子に思い出し、恐怖や苦痛、怒りや悲しみなど さまざまな感情が混じった記憶がよみがえりパニックを起こすこともある。 回避 つらい記憶を思い出すきっかけとなる場所や人を避ける。 過覚醒 常に精神的に不安定になり、集中力に欠けたり、極度の緊張状態になる。 よく眠れないことなども起こる。 感覚まひ つらい記憶に苦しむことを避ける防衛反応として、感情や感覚がマヒする。 人の心を許さず、人からも愛情を感じにくくなる。     5、児童虐待によるPTSDには専門的なケアを   このように児童虐待によって心に傷を負った子どもたちにはさまざまな症状が現れることがあります。 これらの症状が長引く場合には専門的なケアが必要となります。   虐待でつらい体験をした後には、生活に支障がでるほどの症状があらわれたり、それが悪化してしまうケースもあります。   このような場合には専門家への相談が必要です。医師や精神保健福祉士、社会福祉士など専門家に相談し、自分だけで抱え込まないことが大切です。   また、虐待が疑われる場合や異変に気付いたときには、児童相談所などの窓口に相談するなど、早期発見と早期対応が虐待から子どもを守ることに繋がるのです。

2020/11/04

精神疾患

うつ病になりやすい人とは?

残業が多くて仕事休めない。休日も返上してプレッシャーの中で働いている人。 同じ環境にいるのに、うつになる人とそうでない人がいます。     「うつ病はなぜ起こるのか?」 はっきりとした原因はまだよくわかっていませんが、 ここではうつ病になる原因やうつ病になりやすい人について考えてみましょう。   1、うつ病の発症   うつ病はストレスやからだの病気、変化などいろいろな要因が重なって発症すると考えられています。 そして、うつ病は1つの原因のみで発症するのではないと言われています。   【環境要因】 ①幼少児の厳しい体験 ②家族や親しい人の死亡 ③仕事や財産の喪失 ④家庭内不和 ⑤就職や退職、転勤、結婚や離婚 ⑥妊娠、育児、引っ越しなどの環境の変化   【身体的要因】 ①慢性的な疲労 ②脳血管障害 ③感染症、癌、甲状腺機能の異常 ④月経前や出産後、更年期などホルモンバランスの変化 ⑤降圧薬、経口避妊薬などの服用   2、過度なストレスがきっかけになる   うつ病は過度なストレスが引き金となり発症することもあると考えられています。 日常の中にはさまざまなストレスがありますが、 特に多いのは「人間関係」と「環境の変化」です。 それは悲しい出来事だけでなく、嬉しい出来事でも環境の変化からうつ病になることもあるのです。 たとえば、以下のような出来事です。   ①仕事に関すること  昇進、降格、失業、仕事でのミス、定年 ②健康に関すること  からだの病気、事故、月経 ③家族に関すること  妊娠、出産、子どもの就職や結婚、家庭内不和、離婚 ④お金に関すること  貧困、税金問題、相続問題 ⑤状況の変化  旅行、引っ越し、転勤 ⑥喪失体験  近親者との死別や離別、病気   3、うつ病になりやすいタイプ   うつ病になりやすいタイプとして、「まじめで責任感が強く、人あたりもよく、周りから評価も高い人」が多いと言われています。 このようなタイプの人は自分のキャパシティーを超えて頑張り過ぎてしまったり、ストレスをため込んでしまうので、こころのバランスを崩してしまいやすくなるのです。   うつ病になりやすい気質はおもに3つあります。   【循環気質】 ・躁状態と抑うつ状態を繰り返す双極性うつ病になりやすいタイプ ・社交的、善良、親切で親しみやすい反面、激しい一面も持っている。   【執着気質】 ・義務感は強く、仕事熱心、完璧主義、几帳面、正直などの特徴がある。 ・仕事の質は高いが量をこなせない。 ・一生懸命完成させるために興奮状態が続いたあとにガクッときて、抑うつ状態に。 ・二者択一で白か黒をはっきりさせたい。 ・優先順位を付けられないタイプ。   【メランコリー親和型気質】 ・常識を重んじ、常に他人に配慮を忘れず、円満な関係を保とうとし、 自己の性格だけでなく、他との関係も重んじタイプ ・他人の評価がとても気になり、何かが起きると悲観的になってしまう。 ・すべて自分の責任だと考えるタイプ     うつ病になった人の多くは自己洞察力が低いと言われています。   入院が必要な重度のうつ病患者こそが、「まだ大丈夫です!」と平気で言ったりもします。 自己洞察力が高い人であれば、「最近、忙しすぎて、調子が悪いな。」と気づき、ストレスも軽症のうちにコントロールしようとするので、うつも重篤化する前に対処できるのです。   自己洞察力を高めるには「アウトプット」が効果的です。 とくに「書くこと」で自分自身の内面を客観的に観察できるようになるので、習慣にするとよいでしょう。   4、うつ病予防に効果的なのは「運動」     先述の通り、「書くこと」は自分自身の内面を客観的に観察できるようになるので、習慣化することがおすすめですが、さらに効果的ともいえるのが「運動」です。   ジョギング、ウォーキング、エアロバイク、水泳、エアロビクスなどの有酸素運動は、うつ病を予防し、不安や落ち込んだ気分を改善してストレスホルモンを正常化することができるという研究結果が示されています。   うつで気力がない人は、普通のウォーキングや散歩など軽い運動でも効果が得られるので おすすめです。   もしも気持ちが落ち込んでしまったら、自分ひとりで抱え込まずに、周りの人に話してみるとスッキリすることもあると思います。   「自分はうつ病になったのかしら?」と不安になったら、心療内科や精神科クリニックなどの専門機関に相談に行ってみるのもいいでしょう。   人間は誰でも心に悩みを抱えたり、気分が落ち込んでしまうことがあります。 そんなときにはぜひ抱え込まずに話してみましょう。

2020/10/29

精神保健福祉士の仕事

精神保健福祉士(PSW)とカウンセラーに仕事の違いとは

精神保健福祉士(PSW)もカウンセラーも、人の心の問題に関わる仕事です。 実際にキャリチェンジを目指すときに、その違いについてわからなかったり、 迷ってしまったりしていませんか?   『どの資格を取ったらいいの?』 『精神保健福祉士とカウンセラーの違いがよくわからない』 『自分に目指している仕事内容だと、どちらがいいの?』 『実際に就職先があるのは?』   今回は精神保健福祉士(PSW)とカウンセラーとの違いについて それぞれどこか違うのかわかりやすく説明します。   1、カウンセラーと呼ばれる資格とは?   「カウンセラー」といっても、国家資格から民間の資格までさまざまあります。 これまで心理の専門職としての国家資格はありませんでしたが、 平成29年に「公認心理師法」が施行し、国内初の心理職の国家資格として 「公認心理師」が誕生しました。   「公認心理師」と似ている職業で、民間資格ではいくつかの資格があります。 一般的に“カウンセラー”として認知されているのが「臨床心理士」かもしれません。   この資格は指定の大学院を修了して受験することなど、 比較的カウンセラーの資格取得のなかでは高学歴とも言える資格です。 心理系の民間資格のなかでは最も高い信頼性として位置付けられてきた 資格と言えるかもしれません。   ただし、あくまで協会認定の資格のため、国家資格ではなく民間資格と いう位置づけになります。   そのほかに、「産業カウンセラー」という資格名をご存じの方もいらっしゃると思います。 この資格は協会の養成講座を修了した方に受験資格があり、 「臨床心理士」とおなじく民間資格になります。   さらに、「認定心理士」という資格もありますが、こちらも学会認定のため、 民間資格です。   このように、「カウンセラー」と呼ばれるにはいろいろな資格があり、 必要な学歴や取得条件にも違いがあるので、それぞれ確認してみるとよいでしょう。       2、国家資格である精神保健福祉士とは?   精神保健福祉士は、臨床心理士など民間資格とは異なり、 資格取得ルートでも違いがあります。 「精神保健福祉士」は国家試験を受験するためにさまざまな方法があり、 高卒の方や福祉系大学を卒業していない方でも、 養成施設に通って国家資格を得ることができます。 「臨床心理士」のように指定の大学院を卒業していないと受験資格が得られず、 さらに資格に取得後に5年ごとの資格更新審査の義務付けということもありません。 国家資格である「精神保健福祉士」は、国家資格ということもあり社会的な信用度もあり、民間資格であるカウンセラーよりも良い待遇で働けるケースが見られます。   3、「精神保健福祉士(PSW)」と「カウンセラー」の仕事内容の違い   精神保健福祉士とカウンセラー(ここでは臨床心理士)は、 精神疾患をお持ちの方から精神的情緒に課題を持つからと接していく という点は変わりません。 ただし、仕事内容には大きな違いがあります。   ①精神保健福祉士の仕事  社会復帰の実現をするために「生活レベル」でのアドバイスやサポートを おこなったり、 地域で利用できる福祉サービスの情報提供をおこないます。  精神科ソーシャルワーカーや精神科ケースワーカーとも言われ、相談援助が仕事です。   ②カウンセラー(臨床心理士)  心理的な側面が強く、カウンセリングを用いたり、個々の患者と 心の問題を解決していくことがおもな業務です。     このように、精神保健福祉士は日常の支援、 カウンセラー(臨床心理士)は臨床心理技法によって相談者の心の問題を 解決することを目的としています。 そのため、仕事内容は別のものとなります。   4、「精神保健福祉士(PSW)」と「カウンセラー」の働く場所の違い   精神保健福祉士とカウンセラー(臨床心理士)では活躍できる場所でも違いがあります。 それぞれのおもな職場について知っておくとよいでしょう。     ①精神保健福祉士の就職先 おもに一般病院、精神科病院、精神科クリニック、心療内科クリニック、障害者施設、 一般企業、公的機関 など     ②カウンセラー(臨床心理士) カウンセリングルーム、病院、NPO法人、一般企業 など     臨床心理士の資格を持ちつつ、さらに活躍の場を広げるために 国家資格である精神保健福祉士の国家資格を取得といったキャリアアップをする カウンセラーの方もいます。   精神保健福祉士はこの資格だけでも専門職として就職できるため、 加えて民間資格を取得しなくても正規雇用はされるケースが多いようです。 なかには公務員試験を受けて行政でソーシャルワーカーとして仕事をしている 精神保健福祉士もいます。   このように、精神保健福祉士とカウンセラーにはそれぞれの仕事内容や就職先に 違いがあることがわかります。 人の心に寄り添う専門職として、どのような関わり方で、 どのような職場で働きたいのかによって目指す資格を考えてみると 整理しやすくなります。   今日の少子高齢化やストレス社会によって精神保健福祉士やカウンセラーの需要は 益々高まっており、これまで以上に教育機関、司法施設、更生施設など 活躍の場が増えることが期待できます。 これからのキャリアアップ、キャリアチェンジの参考にしてください。

2020/10/27

精神疾患

うつ病と自殺について

新型コロナウイルス感染症の影響もあってか、有名人の自殺や自殺者による巻き込まれ死亡など、自殺に関連する痛ましいニュースが報道されています。 うつ病は誰でも発病する可能性があり、決して他人事ではありません。 また、うつ病で一番問題になることは自殺です。 今回は、「うつ病と自殺」について知り、大切な命を守ることを一緒に考えましょう。   1、うつ病の原因とはなにか うつ病の原因ははっきりとしたことはわかっていませんが、脳内伝達物質のバランスの乱れによっておこっていると言われています。 几帳面や生真面目で対人関係に配慮深い性格がうつ病になりやすいとされていますが、しかし、このような性格の方がすべてうつ病を発症するわけでもありません。 また、うつ病を発症した方が同じ性格をもっているわけでもありません。 性格傾向は重要な要素ではありますが、多くの要因の一つと考えておくとよいでしょう。 性格以外でも、環境の変化も要因となり得ます。コロナ禍で自殺のニュースが多く取り上げられているのも環境の変化が影響しているのかもしれません。リストラ、転職、就職、離婚、死別など状況の変化はストレスとなり、うつ病発症のリスクを高めると考えられます。 うつ病になると、どこに、誰かに、など何かに原因を求めがちです。その結果、本人の性格やご家族のせいにされたり、職場のせいにされたり、さらに人間関係がまずくなってしまうこともありますが、これらは治療的には避けたいところです。 うつ病という病気の原因を一つと考えるのではなく、身体面・心理面・社会的側面などが関与する中で発症したものと捉え、家族や友人、職場も治療の協力者として考えていくとよいでしょう。   2、うつ病ではどんな症状がでるのか うつ病は「心の病」であり、「身体の病」でもあるかもしれません。 実際にうつ病となると身体にもさまざまな症状が出てきます。 【自分で感じる症状】 憂鬱、気分は重い、気分が沈む、悲しい、イライラする、元気がない、眠れない、集中力がない、好きなこともやりたくなくなる、細かいことが気になる、大事なことを先送りする、物事を悪い方向へ考える、決断できない、自分を責める、死にたくなる 【周りから見てわかる症状】 表情が暗い、涙もろい、反応が遅い、落ち着きがない、飲酒量が増える 【身体に出る症状】 食欲がない、便秘がち、身体がだるい、疲れやすい、性欲がない、頭痛、動悸、胃の不 快感、めまい、喉が渇く   3、自殺の予兆 うつ病で一番問題になるのは自殺であり、命にかかわる病となります。 うつ病は軽度であっても「死んだ方が楽になる」と考えてしまう人がとても多く、自殺願望へと繋がっていきます。 日本でもここ数年は年間で自殺者が3万人を超えており、なかでも中高年の男性が多いため、男性の平均寿命を下げたとも言われています。 自殺者の約9割に精神障害がみられ、そのうち4割がうつ病ではないかといわれています。このようにうつ病による自殺の問題は社会的にも大きいのです。   自殺が起きる背景には、うつ病のほかにも、統合失調症、アルコール依存症、薬物乱用、パーソナリティ障害などの心の病が隠れています。 自殺という最後の行動に及ぶ前に精神科などの専門医療機関に受診していた方はごくわずかというのが現状です。 とりわけ、心の病のなかでも、うつ病が最も自殺との関連が強いのです。 では、実際に自殺にはどのように行動の変化が現れるのでしょうか。 潜在的に自殺の危険が高いと考えられている人は、何らか行動の変化が現れた場合、自殺の直前サインと考えられます。   【自殺の直前のサイン】  ●情緒が不安定になる。  ●深刻な絶望感、孤独感、自責感、未価値観に襲われる。  ●これまでの抑うつ的な態度と変わって、不自然なほどに明るく振る舞う。  ●性格が急に変わったように見える。  ●周囲から手を差し伸べられた救いの手を拒絶するような態度に出る。  ●投げやりな態度が目立つ。  ●身なりを構わなくなる。  ●これまでに関心のあったことに対して興味を失う。  ●職場や学校を休みがちになる。  ●交際が減り、ひきこもりがちになる。  ●激しい口論やけんかをする。  ●過度に危険な行動に及ぶ。  ●極端に食欲がなくなり、体重が減少する。  ●不眠がちになる。  ●さまざまな身体の不調を訴える。  ●家出、放浪、失踪をする。  ●多量の飲酒や薬物を乱用する。  ●大切にしていたものを整理したり、誰かにあげたりする。  ●死にとらわれる。  ●自殺をほのめかす、自殺についてはっきりと話す。  ●遺書を用意する。  ●自殺の計画を立てたり、手段を用意したりする。  ●自傷行為に及ぶ。   4、うつ病の治療とは このように自殺を予兆するサインがいくつか認められたら、自殺が実行に移される危険は高いと判断して、救いを求める叫びとして真剣に捉えることが大切であり、専門家による適切な治療を受けることが大切です。 うつ病の治療には効果的な薬や心理療法が開発されています。 うつ病になったことを認め、単に悩み事や怠けた状態でなく、心や身体を巻き込んだ深いレベルの病気が起こっているということを認識することも重要です。 うつ病は再発予防までを視野に入れて息の長い付き合いになることを理解することも必要といえるでしょう。   <生きづらさを感じている方々へ> 新型コロナウイルス感染症の影響もあって、今後の生活について不安に感じておられる方も多いのではないでしょうか。 どうかひとりで悩みを抱え込まず、まずはご家族やご友人、職場の同僚など、身近な人に相談してください。 もし、身近な人には相談しづらい、あるいは相談できる人が周りにいないというときは、 「こころの健康相談統一ダイヤル」や「自殺対策のSNS相談」などに、あなたの不安やつらい気持ちを伝えてください。あなたからの相談を待っています。 支えにつながるその一歩を、どうか踏み出してください。 厚生労働省 加藤勝信   ●こころの健康や精神科医療など精神保健福祉全般に関するご相談は、全国の精神保健福祉センターへ

2020/10/22

精神保健福祉士の仕事

精神保健福祉士って独立開業できるの?

  精神保健福祉士というと医療機関や福祉施設など働く場所は多岐に渡ります。では、独立開業することはできるのでしょうか?   結論から言うと、独立開業する人は少ないですが、可能です。   方法は3パターンあると考えられます。     1、NPO法人などの経営   精神保健福祉士としてその専門性を活かしたNPO法人・社会福祉法人を立ち上げ、地域の法人と関わり合いながら事業を作っていくのが最も考えられる方法でしょう。冒頭に挙げた医療機関や福祉施設といった箱を自ら作り、経営するイメージです。   精神保健福祉士の業務の特性は、患者の生活を支えることと各専門家と連携を取ること、退所後の社会復帰までのサポートなどがあげられます。これらは精神保健福祉士一人だけでは成り立たせることができませんので、スタッフと設備などを整える必要があります。   そのため精神保健福祉士の知識だけでなく、経営や経理についても知った上で計画を考えなければならないでしょう。道のりは長いですが、自分の理想とする精神保健福祉の形を実現できる、やりがいのある道だと言えます。     2、成年後見制度の後見人 成年後見制度というものをご存知でしょうか。認知症や知的障害などの理由で判断能力が衰えてしまった方の、財産を保護する制度です。その保護を行う人を成年後見人と言います。家庭裁判所が選任する場合、本人の親族のほか、弁護士や司法書士、税理士、行政書士、社会福祉士、社会保険労務士、そして精神保健福祉士などの専門職が対象となります。選ばれた場合、精神保健福祉士の資格を使って個人的に報酬を得ることが可能です。   しかし、後見人としての仕事は精神保健福祉士としての主な業務とは違うことに留意しなければなりません。財産の保護・管理や生活の見守りなどを行います。また、一般的な独立開業とは違って報酬が見込めないため、後見人の仕事のみで暮らすことは難しいでしょう。     3、別の資格と併用して独立開業する 精神保健福祉士の知識を活かしながら、別の資格を取得して独立開業する方法です。例えば社会福祉士であれば併せて取得している人も多い資格であり、独立型社会福祉士として独立することもできます。精神疾患のある人に限らずより広い範囲で相談業務・相談援助を行いたい方は社会福祉士の取得がおすすめできます。   その他には介護福祉士を取得し介護施設の開所を目指したり、心理カウンセラーやセラピストにまつわる勉強をして独立を目指すこともできます。  

2020/10/22

精神疾患

精神疾患の要因となる誹謗中傷

  今回は、年々増加する誹謗中傷の被害について見ていきましょう。   まず、誹謗中傷とは根拠のない悪口・陰口などを言うことで他者を傷つける行為を言います。近年ではインターネット・匿名掲示板・SNSでの被害が拡大しており、社会問題となっています。大きくは「いじめ」と捉えることができますが、肉体的な加害ではなく言葉の暴力を指しています。   精神保健福祉士に助けを求める方の中に、人に傷つけられたことによって精神疾患を負ってしまった方は多くいます。症状は多岐に渡りますが、うつ病やパニック障害、ストレス障害などが考えられます。また、複合的な理由で不登校やひきこもり、依存症などになり支援を求めていることもあります。今後、誹謗中傷の被害に遭った患者はより増えていくでしょう。   精神保健福祉士として教育機関で働き、いじめや不登校などの問題を解決する場合にはその要因として誹謗中傷は頭に入れておかなければなりません。また、業務では直接的に誹謗中傷の対処といった内容を行うことのない、生活支援サービスなどの職場だとしても、患者の心の病について深く理解をすることは非常に重要です。     誹謗中傷がなぜ大きな問題となるのか   なぜ誹謗中傷が大きな問題となっているのか、怖い部分を見ていきましょう。 1つは、スマホやSNSが生活に密接に関わっていることです。1日に何度も通知が入るなどして生活の中に不快な書き込みが入り込んでいくことで、精神面で追いやられてしまうのです。   2つめは、中傷内容を拡散されたり支持者がいたりすることで実数よりももっと多くの人に責められている・嫌われている気持ちになってしまう点もあります。   3つめは、誹謗中傷を受けても本人が心の傷に気付き難いことです。アプリなどの身近なツールで受けた中傷は「気にしなければいいこと」「誰にでもあること」などと思ってしまい、傷が大きくなるまで放っておいてしまう可能性が高いからです。これにより人に相談し難く思い抱え込んでしまうという悪循環が生まれています。     誹謗中傷要因でのうつ病治療   では、例として、誹謗中傷を要因としてうつ病を発症してしまった患者の場合、どういった治療の方法があるのか考えていきましょう。   まずは誹謗中傷が現在進行形で続いているのであればそれを即刻解決することです。どんな方法で誹謗中傷を受けているのかによって解決策は変わってきますし、それは患者が解決できることもあれば教育機関や警察に協力を仰がなければ解決できないこともあります。誹謗中傷が止められた場合でも、相手からの謝罪や慰謝料などを求めるのであればそこまで完了する必要があります。   そして、誹謗中傷で受けた心の傷は、誹謗中傷が終わっても残ります。実際にうつ病を発症した人は終わってからの方が多いのではないでしょうか。人と関わることに恐怖や不安感を抱いて行き辛さを覚えたり、十何年も経った後に精神疾患として現れる場合もあります。   うつ病になってしまった場合、大切なことは休養です。脳内のエネルギーが少なくなっている状態なので、消耗しないように休みます。休むことは、人によっては学校や会社を長期的に休んだりと大がかりになることもあるでしょう。その際には家族や社会のサポートが必要になります。誹謗中傷が原因である場合、怖い部分の3で挙げたように「そんなことで」と軽く見てしまう人も多いでしょう。本人のみならず家族が「会社を辞めるほどではない」と思ってしまっては休むことができません。家族から理解が得られず精神的に楽にならない環境であれば入院することも手段のひとつです。   そこから、薬物療法もしくは精神療法にて治療をしていく形になります。精神保健福祉士が関わるのは精神療法です。認知療法・認知行動療法といった方法では、誹謗中傷の受け止め方を患者の中で変えていくことを目指します。「自分が悪いわけではない」という思考を持つことが大切なのですが、誹謗中傷被害では特に影響を受けてしまう部分です。匿名もしくは知らない人からの理不尽な攻撃を受けた場合、因果関係がわかる攻撃よりも「自分が悪い」と思ってしまいがちだからです。この考えを払拭できるように導くのが認知療法・認知行動療法です。

2020/10/02

精神保健福祉士の仕事

ストレス社会で活躍できる精神保健福祉士とは

新型コロナウイルス感染症で緊急事態宣言の最中、テレビ画面で「精神保健福祉センター」という文字をご覧になった方も多いのではないでしょうか。 精神保健福祉センターでは心の問題や病気で困っているご本人やご家族、関係者の方からの相談を受けており、東京都内では3か所設置されています。   アルコール依存症や薬物依存症の問題、思春期・青年期等における精神医学的問題について専門の職員が相談に応じています。精神保健福祉士もまたその役割を担っている専門職です。   1、精神保健府保健福祉士とは   精神保健福祉士は、精神に障がいを持つ方を相談業務でサポートする専門職です。 社会福祉士、介護福祉士とともに国家資格であり、「福祉系の三大資格」や「三大福祉士」とも呼ばれています。 職場では、「医療ソーシャルワーカー」や「生活相談員」という肩書で働いていますが、その中でも精神保健福祉士の国家資格を持っている人だけが、「精神保健福祉士」と名乗ることができます。   2、精神保健福祉士の仕事とは   精神保健福祉士が活躍する場をさまざまありますが、おもには先に述べた通り、精神的に障がいを抱えた方や、そのご家族の相談に乗ることです。 相談に乗るということでイメージする職業としては心理カウンセラーを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。 心理カウンセラーは精神疾患を治すことを目的としてカウンセリングをおこないますが、精神保健福祉士は自立した生活を送れるように社会復帰を目的としていることに違いがあります。 精神保健福祉士の仕事は、「生活費に困っている」「職場に復帰したい」など地域での社会復帰に向けて生活面で困っていることに関してサポートをおこないます。 そのためさまざまな支援制度を理解し、その相談者の悩みに対して活用できる支援制度を紹介することも大切な仕事です。   3、精神保健福祉士と社会福祉士の違い   相談援助の資格を目指す方からよく質問をいただくのは、『精神保健福祉士と社会福祉士とはどのように違いがありますか?』や『自分がやりたい仕事の場合、どちらの資格を目指したらいいのでしょうか』という内容です。 どちらも相談援助業務がメインであり福祉の専門職ですが、その支援対象者の範囲異なっています。 精神保健福祉士は、精神疾患を持っている方をメインにサポートします。専門領域は精神障害に特化しており領域は狭く、専門性が高くなります。 社会福祉士は、高齢者・身体障がい者・児童・生活困窮者や幅広い人々の支援をおこないます。専門領域は広く、様々な分野で活躍できる資格です。   一方で、老人性のうつ病や貧困からくるうつ病など、生活に福祉制度のサポートを必要としている方はうつ病など心の病になりやすいため、対象領域が社会福祉士であっても、精神保健福祉士の力が必要なケースもあります。 相談者の抱える悩みはとても複雑なことも多いため、精神保健福祉士と社会福祉士の両方の国家資格を持っていると多方面からの支援をすることができるため、ダブルライセンスを目指す人も多いです。 4、精神保健福祉士の仕事のやりがい   精神保健福祉士の仕事でのやりがいはたくさんあると思いますが、一番はなんといっても、 『人の役に立てること』ではないでしょうか。 人の役に立てる仕事はほかにもたくさんありますが、社会のなかで精神疾患によって働けなくなったり、自信を失ってしまったりした方が、精神保健福祉士の支援によって心の健康や身体の健康を取り戻し、再び社会復帰していく姿を間近で見たときに、大きなやりがいと達成感を感じることができるでしょう。   アルコール依存症、薬物依存症、うつ病、統合失調症などの心の病気は、その病から自殺を選び自死するケースも少なくありません。精神科や心療内科などの医療機関で働く精神保健福祉士の中には、“また来週!”と相談援助を終えたのに、自殺してしまうことも時にはあるのです。このように医療機関でも重要な仕事を担っているのです。   逆に、医療機関では精神疾患が原因で休職している方向けに、復職を目指すリワークもやりがいある業務のひとつです。 リワークプログラムでは、精神保健福祉士だけでなく、医師・看護師・作業療法士などの医療系国家資格の専門家がチーム医療となってリハビリテーションをおこないます。   5、精神保健福祉士の就職先 このように、精神保健福祉士の仕事は『人の役に立つ』さまざまな場所に就職することができます。 精神科、心療内科、メンタルクリニックなどの医療機関のほかにも、冒頭に述べたように精神保健福祉センターといった行政機関、ハローワークなどの就労関係施設、スクールソーシャルワーカーとして教育現場、企業内サポートとして一般企業、認知症や老人性うつ病の専門家として介護施設などが挙げられます。   コロナ禍の中で経済や雇用に不安な気持ちの人も多いのではないでしょうか。 あなた自身のキャリアチェンジのための資格取得であったり、 社会に人に役立つ仕事への挑戦であったり、 この世の中だからこそさらに注目される国家資格と言えるのかもしれません。   >精神保健福祉士をもっと知りたい   >精神保健福祉士の国家資格を目指したい方はこちら