精神疾患の要因となる誹謗中傷

2020/10/22

精神疾患

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今回は、年々増加する誹謗中傷の被害について見ていきましょう。

 

まず、誹謗中傷とは根拠のない悪口・陰口などを言うことで他者を傷つける行為を言います。近年ではインターネット・匿名掲示板・SNSでの被害が拡大しており、社会問題となっています。大きくは「いじめ」と捉えることができますが、肉体的な加害ではなく言葉の暴力を指しています。

 

精神保健福祉士に助けを求める方の中に、人に傷つけられたことによって精神疾患を負ってしまった方は多くいます。症状は多岐に渡りますが、うつ病やパニック障害、ストレス障害などが考えられます。また、複合的な理由で不登校やひきこもり、依存症などになり支援を求めていることもあります。今後、誹謗中傷の被害に遭った患者はより増えていくでしょう。

 

精神保健福祉士として教育機関で働き、いじめや不登校などの問題を解決する場合にはその要因として誹謗中傷は頭に入れておかなければなりません。また、業務では直接的に誹謗中傷の対処といった内容を行うことのない、生活支援サービスなどの職場だとしても、患者の心の病について深く理解をすることは非常に重要です。

 

 

誹謗中傷がなぜ大きな問題となるのか

 

なぜ誹謗中傷が大きな問題となっているのか、怖い部分を見ていきましょう。

1つは、スマホやSNSが生活に密接に関わっていることです。1日に何度も通知が入るなどして生活の中に不快な書き込みが入り込んでいくことで、精神面で追いやられてしまうのです。
 

2つめは、中傷内容を拡散されたり支持者がいたりすることで実数よりももっと多くの人に責められている・嫌われている気持ちになってしまう点もあります。
 

3つめは、誹謗中傷を受けても本人が心の傷に気付き難いことです。アプリなどの身近なツールで受けた中傷は「気にしなければいいこと」「誰にでもあること」などと思ってしまい、傷が大きくなるまで放っておいてしまう可能性が高いからです。これにより人に相談し難く思い抱え込んでしまうという悪循環が生まれています。

 

 

誹謗中傷要因でのうつ病治療

 

では、例として、誹謗中傷を要因としてうつ病を発症してしまった患者の場合、どういった治療の方法があるのか考えていきましょう。
 

まずは誹謗中傷が現在進行形で続いているのであればそれを即刻解決することです。どんな方法で誹謗中傷を受けているのかによって解決策は変わってきますし、それは患者が解決できることもあれば教育機関や警察に協力を仰がなければ解決できないこともあります。誹謗中傷が止められた場合でも、相手からの謝罪や慰謝料などを求めるのであればそこまで完了する必要があります。
 

そして、誹謗中傷で受けた心の傷は、誹謗中傷が終わっても残ります。実際にうつ病を発症した人は終わってからの方が多いのではないでしょうか。人と関わることに恐怖や不安感を抱いて行き辛さを覚えたり、十何年も経った後に精神疾患として現れる場合もあります。

 

うつ病になってしまった場合、大切なことは休養です。脳内のエネルギーが少なくなっている状態なので、消耗しないように休みます。休むことは、人によっては学校や会社を長期的に休んだりと大がかりになることもあるでしょう。その際には家族や社会のサポートが必要になります。誹謗中傷が原因である場合、怖い部分の3で挙げたように「そんなことで」と軽く見てしまう人も多いでしょう。本人のみならず家族が「会社を辞めるほどではない」と思ってしまっては休むことができません。家族から理解が得られず精神的に楽にならない環境であれば入院することも手段のひとつです。

 

そこから、薬物療法もしくは精神療法にて治療をしていく形になります。精神保健福祉士が関わるのは精神療法です。認知療法・認知行動療法といった方法では、誹謗中傷の受け止め方を患者の中で変えていくことを目指します。「自分が悪いわけではない」という思考を持つことが大切なのですが、誹謗中傷被害では特に影響を受けてしまう部分です。匿名もしくは知らない人からの理不尽な攻撃を受けた場合、因果関係がわかる攻撃よりも「自分が悪い」と思ってしまいがちだからです。この考えを払拭できるように導くのが認知療法・認知行動療法です。

※こちらの記事は入学検討者向けに掲載しているため、簡易的な説明となっております。
転載・流用はご遠慮ください。

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