PTSD(心的外傷後ストレス障害)をご存じでしょうか?
強いショックを受けたことが原因となってさまざまな症状を引き起こす心の病気です。
児童虐待を受けた子どもも発症しやすいと言われており、PTSDを予防するには、
ストレス反応に対する正しい理解と対応が必要です。
今回は児童虐待によって心に傷を負った子どもたちと接するためのポイントについて
考えてみましょう。
1、児童虐待とは
厚生労働省では「児童虐待の定義」として、4種類に分類されています。
①身体的虐待
殴る、蹴る、叩く、投げ落とす、激しく揺さぶる、やけどを負わせる
溺れさせる、首を絞める、縄などにより一室に拘束する など
②性的虐待
子どもへの性的行為、性的行為を見せる、性器を触る又は触らせる
ポルノグラフィの被写体にする など
③ネグレクト
家に閉じ込める、食事を与えない、ひどく不潔にする、自動車の中に放置する
重い病気になっても病院に連れていかない など
④心理的虐待
言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱い、
子どもの前で家族に暴力を振るう(DV)、きょうだいに虐待行為を行う など
2、児童虐待の現状
児童相談所の児童虐待の相談応対件数(平成26年度)は、児童虐待防止法施行前(平成11年度)の7.6倍(88,931件)に増加しています。
虐待死も年間で50人を超えており、児童虐待によって子どもが死亡した件数は、高い水準で推移しています。
児童相談所における児童虐待相談対応件数に内訳は以下の通りです。(平成26年度)
①身体的虐待 29.4%
②ネグレクト 25.2%
③性的虐待 1.7%
④心理的虐待 43.6%
虐待者別では実母が52.4%と最も多く、次いで実父34.5%となっています。
また、虐待を受けた子どもの年齢構成別では小学生が34.5%と最も多く、
小学校入学前の子どもの合計では43.5%と高い割合を占めています。
3、虐待を受けた子どもが発症しやすいPTSDとは?
PTSD(心的外傷ストレス障害)とは、先述の通り、強いショックや精神的なストレスが心の傷となってしまい、そのことが何度も思い出されるトラウマ状態が長く続いて、心身に不調が現れてしまう病気です。
虐待のほかにも、災害や事故、事件や犯罪被害などが原因になると言われています。
感受性の強い子どもたちは、大人よりもPTSDになりやすいと言われています。
その原因が虐待などの場合、複雑性PTSDとなってしまい、人間不信や協調性の欠如、
多重人格などになってしまうケースもあります。
また、回復までに時間がかかったり、すぐに発症せずに大人になってから発症する場合もあります。
4、心的外傷後のストレス反応とPTSD症状
虐待などショックな出来事の後には、一時的にあらゆるストレス反応が現れます。
①ストレス反応
- 食欲
食欲不振、吐き気、嘔吐、消化不良
- 痛み
頭痛、腹痛、筋肉の痛み
- 睡眠
眠れない、夜中に目が覚める、悪夢を見る
- 排泄
便秘、下痢、おねしょ
- 衝動性
落ち着きがない、攻撃的になる、注意力が散漫になる、すぐに飽きてしまう
急に泣き出したり怒ったりする
- 執着・再現
こだわりが強くなる、体験した出来事を何度も話したり、その体験に関連した遊びに
友達を巻き込む
- 赤ちゃん返り
ぐすったり泣いたりすることが多くなる、離れるのを怖がる
- 気持ちの低下・無気力
元気がない、気持ちが沈み込む、ボーっとして無気力になる
②PTSDの主な症状
- フラッシュバック
原因となった出来事を何かの拍子に思い出し、恐怖や苦痛、怒りや悲しみなど
さまざまな感情が混じった記憶がよみがえりパニックを起こすこともある。
- 回避
つらい記憶を思い出すきっかけとなる場所や人を避ける。
- 過覚醒
常に精神的に不安定になり、集中力に欠けたり、極度の緊張状態になる。
よく眠れないことなども起こる。
- 感覚まひ
つらい記憶に苦しむことを避ける防衛反応として、感情や感覚がマヒする。
人の心を許さず、人からも愛情を感じにくくなる。
5、児童虐待によるPTSDには専門的なケアを
このように児童虐待によって心に傷を負った子どもたちにはさまざまな症状が現れることがあります。
これらの症状が長引く場合には専門的なケアが必要となります。
虐待でつらい体験をした後には、生活に支障がでるほどの症状があらわれたり、それが悪化してしまうケースもあります。
このような場合には専門家への相談が必要です。医師や精神保健福祉士、社会福祉士など専門家に相談し、自分だけで抱え込まないことが大切です。
また、虐待が疑われる場合や異変に気付いたときには、児童相談所などの窓口に相談するなど、早期発見と早期対応が虐待から子どもを守ることに繋がるのです。