2020年

2020/09/28

精神疾患

薬物依存症を知る―覚せい剤・大麻-

覚せい剤や大麻などの違法薬物が、社会問題として大きく取り上げられています。 違法薬物の使用自体が犯罪であり、人生を壊してしまうほどのパワーがあることはわかっているのに、使用してしまうのではなぜでしょうか?   1、薬物依存症とは? WHO(世界保健機関)が提唱した依存症の概念では、「精神に作用する化学物質の摂取やある種の快感、高揚感をともなう特定の行為をくり返し行った結果、それらの刺激を追い求める行動が優位になり、その刺激がないと不快な精神力、身体的症状を生じる精神的、身体的、行動的な状態のこと」とされています。 依存症は、「脳の病気」であり、「こころの病気」ともいえます。 「薬物」は覚せい剤や大麻などの違法な薬物や危険度ドラックだけでなく、医師から処方される薬や市販されている薬に依存してしまうケースもあります。 薬物を激しく求めるよう脳の中枢神経に作用し、脳の回路が快楽状態を続ける状態になってしまうので、本人の意思で薬物をやめることはほとんどできません。 回復には、時間をかけて自分と向き合い、場合によっては過去のトラウマを克服することで、依存症からの回復ができるということが実証されるなど、とても苦しい病気であるともいえるのではないでしょうか。 2、薬物とその効果 薬物依存症で問題となる薬物は多くありますが、ここではおもに3つに分けて説明します。 ①覚せい剤 覚せい剤で問題になるのは、依存の強さと精神状態の出現です。 覚せい剤を使用すると、精神を興奮させ、気分が高揚したりします。また、疲れがとれたり、集中力がつく感じがします。その効果は個人差にあって、最初から感じる人もいれば、はじめは不快だったのに数回使っていくうちに快感に変わり、やめられなくなる場合が多いのです。 精神状態は使用してすぐに出現して消えていくものや、数週間・数カ月と続き、時には数年続く後遺症となってしまうこともあります。 後遺症には幻覚妄想、不安感、激しい感情の移り変わりなどが起きるため、日常生活が困難になります。断薬しているときにさえフラッシュバックが起こり、強いストレスや不眠がきっかせとなり覚せい剤を使用しているときと同じ症状が出現してしまうこともあります。   ②大麻 大麻がタバコのように紙に巻いたり煙で吸ったり、パイプのようなものを使って煙を吸うなどの方法で使用されます。 大麻の作用は、浮遊感や幻覚などの感覚の変化です。不安感を取り除き、気持ちを落ち着かせるなどの抑制作用があるため、依存症になりやすい薬物です。 大麻の薬物依存症者の間では、他の薬物を比べて安全と思われていることもあるようですが、実際には幻覚や妄想などの後遺症がおきる薬物です。 日本では麻薬に指定されている薬物なので、大麻使用は厳重に処罰されます。 薬物を使うきっかけが大麻からはじまり、最初が仕事のパフォーマンスが上がったり、集中力も高まったりして、最高の道具として使っていたけれど、いつしか大麻がやめられなくなり、対人関係や経済的なトラブルを抱えて苦しくなり、ついには覚せい剤に手を出してしまうといった薬物依存へのきっかけになることも多いのです。   ③MDMA MDMAはエクスタシーとも呼ばれ、その作用は幻覚・興奮状態になることです。 錠剤のため簡単に服用できるため、とくに若者に使用されることが多いのも特徴です。 MDMAはその作用が切れるとひどい倦怠感や不安感に襲われたり、長期で使用し続けると錯乱状態に陥る場合もあります。 また、肝臓や心臓の機能不全が起こるなど体への影響も及ぼす薬物です。 この薬物も使用を止めているときもフラッシュバックが起き、使用している時のような幻覚に襲われる場合があります。 3、薬物依存の症状   薬物依存の症状には、精神面と社会面の2つの症状があります。 ①精神面 ◆本人 ・食事や睡眠を取らず、痩せていくこともある。 ・強烈な妄想を抱き、暴力的な言動をおこなう。 ・過剰摂取によって心身的ダメージが強く、命に関わることがある。 ◆周囲から見た変化 ・イライラしている。 ・気分がコロコロ変わる。 ・落ち着きがない。   ②社会面 精神や身体の影響を受け、家庭や仕事先など社会的な信用を失い、孤立してしまうこともある。 また違法薬物自体も違法であり犯罪のため逮捕されるが、ほかにも薬物を使用したことにより窃盗や傷害などの犯罪を犯し逮捕されることもある。 社会からどんどん遠ざかっていく感覚から自分を責め、自殺をはかってしまうケースもある。 4、依存症からの回復・治療について   このように、薬物依存症は命の危険にもかかわる「病気」です。 本人や家族に治療が必要であることを理解してもらい、中毒症状の治療と断薬を続けていくためのサポートが必要です。 薬物依存症の患者には、脱慣期とされる入院治療をおこなうことが多くあります。 そして退院して間もない時期は、薬物への再使用をする可能性が高い時期です。 そのため、退院後もしばらくは外来で通院を続ける方が良いとされます。 また、治療は通院だけでなく、規則正しい生活も大切となります。 自助グループやデイケアなどを活用して、日中も薬物に手をだしてしまわないようにスケジュールを組みことも大切です。ともに回復していく仲間と、信頼できる医師、精神保健福祉士、弁護士などの専門家と連携していくことも重要です。   ①薬物依存症治療をおこなっている病院やクリニックなど専門医療機関の受診 ②自助グループと呼ばれる依存症当事者ミーティングへの参加 ③精神保健福祉センターや保健所などがおこなっている薬物依存症回復支援プログラムへ参加 ④民間カウンセリングルームの利用 ⑤民間の依存症回復支援施設の利用   このように、薬物依存症は「病気」です。 ただし、回復しない病気ではありません。 回復への道のりは短くはありません。 薬物という依存対象を使わない日々のなかで浮き彫りになる自分自身の「生きづらさ」に向き合い、もしかすると自身の生き方そのものを変える必要が出てくるかもしれません。 本人はもちろん、周りにいる家族、友人、仕事関係者も多岐に渡って影響があるでしょう。 本人の体だけでなく、そのこころも社会的な部分も壊れていくのが薬物依存症です。 依存症は、薬物を止めていても、また再び使用すれば再発します。 回復していくによって、「薬物を止め続けていく」ことで、依存症になる前よりも、よりよい生活と人生を送っていただきたいと願います。

2020/09/23

精神疾患患者の支援

共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育

今回は、インクルーシブ教育について解説していきます。インクルーシブとは英語で、「包括的な」「包み込む」という意味です。障害のある子もない子も包み込んだ教育というイメージでいてください。   日本の教育現場では現在このインクルーシブ教育が提唱されているので、障害があっても特別な支援を行うことで障害のない子供と同様の教育を、なるべく同じ環境で与えることができるようになってきました。   そもそも、江戸時代ごろの日本では精神障害への理解が乏しい社会だったため、教育の対象とはみなされておらず教育を受けることすらできませんでした。そこからスタートして、明治時代には目の見えない人のための学校など、身体障害があっても教育が受けられるように整備されていきます。   そして平成の時代には、養護学校が義務化され重度の障害があったとしても教育の機会が与えられます。しかし、障害がない子供とは別の施設であるため、自宅から離れた学校に通わなければならなかったり、隔離や分離されているという非難は常にありました。   それが今では、インクルーシブ教育にまで発展しました。日本では2010年に文部科学省によって方向性が示されたので、実際に障害のある子どもがインクルーシブ教育を実感するようになったのはごく最近なのではないでしょうか。ひとりひとりの子供が丁寧に扱われ、全員が一緒に学ぶことを両立する教育がやっと始まりました。     インクルーシブ教育を実現する環境   では具体的に、どうやってインクルーシブ教育を実現していくのか。まずは学校の設備が必要です。   ・基礎的な環境(バリアフリーやスタッフなど)を整備する ・障害に合わせて特別支援学校、特別支援学級、通常学級などの場所を用意し、普通の学級と行き来できる体制を整える ・障害に合わせた専門性のある支援体制や教員 ・特別支援学級と通常学級の間での共同授業 ・個別の支援計画の作成   このベースがあって、さらに細かい工夫がされていきます。具体例を列挙していきます。   ・学校の持ち物置き場を、誰もがわかりやすく整理しやすいように変える ・教室に貼る掲示物を減らし、授業中に紙や布で掲示物を覆うなどして、視覚刺激に敏感になる障害があっても授業に集中できるようにする ・5分前に行動することや予鈴など、学校のルールを明確化し優先順位をつけて誰もが守れるようにする ・毎日朝礼にてスケジュールを口頭でも確認し、計画性を持って過ごせるようにする ・あらゆる情報をなるべく文字だけでなく絵や図を使って、感覚的に理解できるようにする ・授業の中で難易度を分けた質問を考え、能力に関わらず参加できるようにする ・難易度別のプリントを作り、能力に合わせて選ぶことでレベルに合わせた教育を行う   言葉にしてしまうと簡単な配慮ですが、なかなかすべてを意識できる教師は少ないでしょう。毎日のルーティンの中で、「これは説明しなくてもわかるだろう」「大体の生徒が先に進んでいるからいいだろう」といった抜けが出て来てしまうためです。   ですが本来、障害があると分類された子供のためだけではなく、教育というものは能力に関わらず全員が理解できるよう配慮されるべきです。明確化されたルールや理解しやすい絵などはどの生徒にとっても有りがたいことでしょう。これまでの考え方では「障害がある子に向けたルールや説明文を作ろう」としたものでしたが、全員平等にいられるために工夫された教育がインクルーシブ教育です。     それぞれの立場とメリット・デメリット   各立場によって、インクルーシブ教育を進めることによるメリットやデメリットは違います。それぞれを理解することで、全員平等な教育を目指すことができます。   ①障害がある子供 今まで受けられなかった教育が受けられ、自宅から通える地域の学校に通うことができるメリットがある。デメリットは、周りに配慮を強いることによる心理的負担といじめなどの被害。同じメリットデメリットを保護者も感じる。   ②障害がない子供 障害者と接することで共生社会の理念を理解することができ、また能力の有無に関わらず学べる環境が整う。しかし、授業の進行が遅れるなどのデメリットもある。同じメリットデメリットを保護者も感じる。   ③教員 多様な子供たちと関わり、社会貢献もできるメリットがある一方、配慮の線引きが難しいことと業務の増加が考えられる。

2020/09/23

精神保健福祉士の仕事

ノーマライゼーションという考え方

ノーマライゼーションという言葉をご存知でしょうか。簡単に言うと、障害の有無に関わらず平等に生活できる社会を作ろうという考え方です。障害者だけに限定されず、高齢者や社会的マイノリティなど対象は様々ですが、全員が生活や権利の保障されたノーマルな生活を作ろうという考え方をノーマライゼーションと言います。     ノーマライゼーションとは   ノーマライゼーションは、北欧諸国から始まった考え方です。今の日本の福祉において基本理念として定着しています。精神保健福祉士を目指す方にとっては馴染みのある言葉かもしれません。   しかし、一般的にはまだまだバリアフリーといった言葉の方が浸透しているのではないでしょうか。バリアフリーは「障害者にも対応可能である」ということを指し、もともとは建築用語でした。バリアフリーな施設や道具を使って、ノーマライゼーションを実現するのが理想です。例えばバリアフリーの代表として車いす利用者専用トイレがありますが、ノーマライゼーションとは全ての人にとって安全で平等という意味合いが強いので、すべてのトイレに車いすでも利用できる設備が備わっているようなイメージです。また施設の設備だけでなく文化や意識の面でも障害者と健常者の障壁をなくしていくことを指します。   似た用語としてもう一つ、ユニバーサルデザインがあります。これは言葉の通りデザインを指し、デザインのコンセプトを「すべての人が利用できるデザインにすること」を意味します。バリアフリーからもう一歩進んでノーマライゼーションの考え方に近いですが、思想などは含まれず建物や製品の設計に使われる言葉です。   ノーマライゼーションの概念は、スウェーデンのベンクト・ニィリエという人によって「社会の主流となっている規範や形態にできるだけ近い、日常生活の条件を知的障害者が得られるようにすること(1969年)」と文章で原理化されました。     ノーマライゼーションの8つの原理   先ほどご紹介したベンクト・ニィリエは、ノーマライゼーションについて8つの原理に整理しました。   【生活リズムやサイクルに関する原理】 ①1日のノーマルなリズム ②1週間のノーマルなリズム ③1年間のノーマルなリズム ④ライフサイクルにおけるノーマルな体験 【経済、環境、自己決定など成文化した原理】 ⑤ノーマルな要求と自己決定の尊重 ⑥異性との生活 ⑦一般市民と同じ経済水準 ⑧ノーマルな環境水準   この8つの原理が満たされることで、ノーマライゼーションの実現した社会が訪れます。それぞれ解説していきます。   ①1日のノーマルなリズム どんな障害があっても、朝に起きて身支度をし、学校や会社に行き、家に帰ってから夕飯を食べてお風呂に入ってベッドで眠るといったような、ごく普通の生活リズムのことです。 これが例えば、一日中ベッドで横になっていてそこでご飯を食べたり、保護者の都合でお昼ごはんが夕方になってしまったりすることがなく、健常者と同じように生活リズムを保っていくことを指しています。   ②1週間のノーマルなリズム 週単位でのリズムとは、一般的に平日は学校や仕事に励み、土日は休みを取ることなどです。賃金の発生する仕事という意味合いでなくても、家の手伝いをする日でもよいでしょう。休日には楽しく友人と遊びに行ったり、のんびり家で過ごしたりします。障害の有無に関わらずメリハリのあるリズムを作ることです。   ③1年のノーマルなリズム 日本においては四季がありますから、四季に合わせた食事をしたりイベントに参加したり、仕事でも繁忙期があったりなどの変化があるでしょう。社会人にとっては学生ほど長い休みでなくとも、夏休み・冬休みといった季節の感覚は持っているものです。   ④ライフスタイルにおけるノーマルな体験 健常者であればあたりまえに行われている、子供の頃に公園で遊んだり、思春期にはおしゃれや恋に興味を持ったり、大人になって責任を持ったりすることを、障害の有無に関わらず体験していくことです。年を取ればその分経験や知識が増え、思い出に浸ることもできる環境が、ライフスタイルのノーマルな体験です。   ⑤ノーマルな要求と自己決定の尊重 普通に生きていれば持つ、自由や希望を持ちたいといった要求を、誰もが主張できることです。誰もが主張でき、周囲もそれを認めて尊重できる社会を指します。 一定の年齢からは住みたいところに住む自由を求めたり、働きたい仕事についたり、好きな時に好きなところへ遊びに行ける権利を持つことです。   ⑥異性との生活 これは現代においては必ずしも異性愛者とは限らないので異性に限定されませんが、子供も大人も、異性との良い関係を築くことを指しています。異性と交際したり、恋をしたり、結婚や同居を意識できるような生活のことです。   ⑦一般市民と同じ経済水準 全員にお金を配るべきだ、というような意味ではありません。誰もが、平均的な経済水準を保証され、公的財産援助を受ける権利を持ち、その責任を全うすることです。社会で設置されている児童手当や老齢年金を受け取ることや、最低賃金基準法がしっかり守られた環境で働くことなどを指します。そしてその上で、自由にお金を使える環境で欲しいものを買えることも含まれます。   ⑧ノーマルな環境水準 住居をはじめとする生活環境を指します。ここまでの7原則が守られないような劣悪な環境は論外ですが、逆に大規模な施設で社会から隔離されて暮らすこともノーマルとは言えません。無人島のリゾートで暮らす姿をイメージしてみてください。普通の場所で普通の大きさの家に住み、地域の人と関わり合いながら暮らしていく環境を求めることです。     精神保健福祉士が気を付けたいこと   ノーマライゼーションは、身体障害者だけでなく精神障害者ももちろん目指していくべき理念です。精神保健福祉士が気を付けたいことは、身体障害に比べると精神障害は目に見えないため、上の8つの原則のどこかが成り立っていなくても気付けないことです。自ら望んでその環境や生活をしているのか、精神障害によってできなかったり不便を感じているのかがわかりにくいためです。   しかし、その悩みごとや困りごとを救いあげ、寄り添いながらサポートしていくのが精神保健福祉士の仕事です。家族や周囲の人間が、精神障害者にノーマルな状況を作れないとしたら、その課題を橋渡しして全員で解決していく必要があります。    

2020/09/01

精神保健福祉士の仕事

精神保健福祉士の仕事と就職先ガイド

コロナ禍のなかで、社会に不安を抱える人が増えてきています。 またその反面で精神保健福祉センターをはじめとして、人々のこころの健康の保持などを援助する機関やそれらを担う精神保健福祉士という専門職が注目されています。 今回は『精神保健福祉士』の役割、仕事内容、就職先についてご紹介します。 精神保健福祉士と目指す方に役立つ情報をご紹介します。 1、精神保健福祉士とは? 精神保健福祉士は精神的障害を持つ方が円滑な日常生活を送れるように支援をおこなう専門職です。平成9年(1997年)制定の「精神保健福祉法」に基づいて生まれた国家資格で、精神科ソーシャルワーカー(PSW)と呼ばれています。 日本では、社会福祉士、介護福祉士と併せて、福祉系三大国家資格(三大福祉士)と位置づけられています。 2、精神保健福祉士の役割 精神保健福祉士の役割は、精神障害を抱える方の生活問題や社会問題を解決するために援助をおこなうことです。具体的には、精神障害者の社会復帰や自立生活のサポートをおこなったり、相談を受けたりします。 そのため、精神保健福祉士は精神障害者の保健・福祉に、関する専門知識や技術が必要とされます、さらにそれだけでなく、冷静さ・包容力・柔軟性・忍耐力など自らの精神面の資質も必要となる専門職と言えます。 また、精神保健福祉士には倫理観について定められた文書があります。 【公益社団法人日本精神保健福祉士協会倫理綱領より】  ①精神保健福祉士の専門職としての価値を示す  ②専門職としての価値に基づき実践する  ③クライエントおよび社会から信頼を得る  ④精神保健福祉士としての価値、倫理原則、倫理基準を遵守する  ⑤他の専門職や全てのソーシャルワーカーと連携する  ⑥すべての人が個人として尊重され、共に生きる社会の実現をめざす 3、精神保健福祉士の仕事内容 先述の通り、精神保健福祉士は精神障害のある方やそのご家族の相談を受けてアドバイスをする仕事です。その相談内容は、社会復帰・生活訓練施設の紹介・就職相談などさまざまです。 就職先によって仕事内容が異なることがありますので、ここでは大きく分けて3つのカテゴリーでご紹介します。 【相談・助言】  ・医療費や生活費、減税措置などの公的支援制度の紹介  ・社会復帰に向けた障害者支援施設の紹介  ・家庭環境の改善や家族の理解を深めるための助言  ・医療機関からの退院後の住まいや就労についての提案 【日常生活訓練】  ・入院生活から退院に向けた日常生活の訓練(規則正しい生活や交通機関の利用など)  ・掃除、洗濯、買い物などの日常生活訓練  ・会話や生活マナーの訓練 【そのほかの支援】  ・休業、休学に関する手続きの援助  ・医療費確保の手続きの援助  ・家庭や学校、職場における受け入れ体制の確認  ・地域の家族会などへの参加や講習会開催など 4、精神保健福祉士の就職先 精神保健福祉士の就職先というと精神科病院など多くの方は医療機関をイメージされていると思います。もちろん多くの精神保健福祉士は医療施設で勤務していますは、ほかにもさまざまな場所で活躍しています。 【医療施設】  ・精神科病院、総合病院の精神科、精神科クリニック、医療機関併設のデイケアなど 【生活支援施設】  ・小規模作業所、グループホーム、ケアホーム、地域活動支援センターなど 【福祉行政機関】  ・精神保健福祉センター、保健所、福祉事務所、自治体など 【就労関連施設】  ・ハローワーク、障害者就労支援施設など 【司法施設】  ・保護観察所、少年院、刑務所など 【介護施設】  ・特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、有料老人ホーム、グループホーム   デイサービスなど 【その他】  一般企業、教育施設など  同じソーシャルワーカーの資格として、精神保健福祉士は社会福祉士と混同されることがありますが、社会福祉士との違いが支援対象者です。 社会福祉士の援助対象者は高齢者、障害者、児童など福祉全分野に対して、精神保健福祉士は精神障害者に特化して援助するという違いがあります。 仕事の幅を広げたいと両方の資格を持って働く人も多くいます。精神保健福祉士と社会福祉士の国家資格では共通科目があるので、併せて取りやすい資格です。 このように、精神保健福祉士は医療施設や障害者支援施設で精神障害者とそのご家族を対象に仕事をおこなうことが中心でしたが、近年ではその活躍の場が大きく広がってきています。 うつ病や心の病などで休職中に方は約50万人にも増えていると言われています。そのため、企業ではメンタルヘルス対策に力を入れています。休職中の社員の職場復帰支援、人事部門のメンタルヘルス対応について支援やアドバイスをおこなうなど企業でのニーズも高まっています。 また、最近では障害のある子どもたちの「放課後デイサービス」でも精神保健福祉士の活躍の場があります。発達の遅れが気になる児童が増えていることもあり、精神保健福祉士を求める現場の声が高まっています。さらに児童分野では、いじめや不登校の問題に対してスクールソーシャルワーカーとして精神保健福祉士がその役割を担うこともあります。 子どもから高齢者まで多くの方と関わり、その症状もさまざまで難しさもある仕事ですが、精神に障害を抱える方や心の問題を抱えた方の人生のサポートをする大きな役割を持つ職業です。コロナ禍で膨らむストレス社会に益々需要が高まる職業として求められる仕事を言えるでしょう。     >精神保健福祉士の仕事に興味のある方はこちらへ

2020/08/21

患者への支援

精神病患者が抱える人間関係の悩み

  今回は、精神病患者が抱える人間関係の悩みについて、よくある内容をまとめます。   精神病の原因となる悩みではなく、生活していく上で関わり合う人たちとの人間関係について指しています。一般の人が同じように悩むこともあれば、精神病を患っているがゆえに悩みの種となってしまうこともあります。精神保健福祉士を目指す方は、患者の悩みについていろんな事例を知ることで将来の相談業務に役立つのではないでしょうか。     Q1、友達が欲しいです   友達が欲しいという気持ちは自然なものです。ですが、精神疾患をわかってほしい、悩みを聞いてほしい、というこちらの要望が先に立ってしまうと友情関係は成り立ちません。お互いに相手を理解して同じ時間を過ごしていきたいと思う必要があります。何かしらの精神疾患がある場合、それを自分の中で受け止め、相手のことを考えて相手を見るという余裕は必要です。   まずは少しずつ共通点のある友達を探しましょう。これまでの友達や趣味が同じ友達、同じ疾患を経験している友達を作っても良いでしょう。そういった友達を作る場は市町村区で開催されていることも多いので、精神保健福祉士が探して提供することもできます。     Q2、近所の人が悪口を言ってきます   精神病患者と近隣トラブルはたまにあることです。もし心当たりがあれば素直に謝り、関係を修復することですが、全く心当たりがない場合は難しいです。大家さんや市町村区の方、民生委員などに相談するのも方法かと思います。ご近所さんが例えば精神病患者について偏見や誤解がある場合、第三者が介入した方が話がうまくいく可能性が高いです。   患者側の問題ではなく、そのご近所さんが少し厳しい人であったり変わった人であるということも考えられます。他のご近所の方に聞いてみて、どんな風に関わっているのか相談に乗ってもらうのも良いでしょう。     Q3、親になまけていると言われてつらいです   精神疾患の治療では「休む」ということも重要な治療方法です。しかし、ご家族にその理解が得られないケースは多いようです。例えば初期のうつ症状を治すためにストレスの原因である会社を一定期間休む、といった場合、家族の理解が得られないと「もっと頑張れ」「なんとか続けながら治療できないのか」などを言われることがあります。また統合失調症の回復期では「回復したのになぜまだ休むのか」「なまけ癖がつく前に働かせないと」という声もよく聞きます。   まずは家族に正しい知識をつけてもらうことです。患者本人が説得しても良いですが、そのエネルギーが出なかったり説得が難しい場合は精神保健福祉士の出番です。正しい知識を得てもらい、一番辛いのは患者本人であること、正しい治療を正しい形で行っているということを理解してもらいましょう。     両親が死んでしまった後が不安です   これは本人のみならず家族も不安に思い、精神保健福祉士へ相談してくることの多い内容です。   まずは具体的に何が心配なのかを考えることから始めます。精神的支柱である家族がいなくなる不安、住むところやお金のこと、通院や服薬のサポートが受けられないこと、食事や料理や買い物が一人ではできないこと、漠然とした寂しさ、など理由は様々です。   支えの中心である両親がいなくなることは大きな不安ではありますが、実際細分化してみるとそれぞれ事前に対策しておけば代替案が見つかります。生活のサポートを受けたり、身の回りのことは自分でできるよう練習したりなどです。精神的支柱に関しても、兄弟や友人に頼れる人を見つけて信頼関係を結んでいくのも準備のひとつです。   住まいや金銭的なことに関しては福祉制度やサービス、医療サービスを利用できるよう検討していきます。障害があっても自立して働くことも可能です。自分らしい生活を続けていけるためにゆっくり準備をしていきましょう。

2020/08/21

精神保健福祉士の仕事

精神保健福祉士に求められる家族支援

  精神保健福祉士に求められる業務のひとつに、家族支援というものがあります。   精神保健福祉士は精神病を患った患者だけでなく、その家族とも関わる仕事です。それぞれの患者にはそれぞれの家族とその形があるため、決まった家族支援のフォーマットというものはありません。   例えば、その名の通り家族を支援する業務があります。患者が父親でその子供に病気について理解させるよう支援をしたい。もしくは母親に自宅でのサポートの仕方を指導し金銭面で行政の支援を受けられるよう案内する、などです。   また、家族が原因で患者が精神疾患を患ってしまっている場合、原因を取り除くために家族支援を行う業務もあります。患者の父親が暴力を振るうために引きこもってしまった学生であったり、母親からのプレッシャーが原因でうつ状態になってしまった子供であったりします。   このように直接的に原因となっている場合でなくても、いじめが主な原因ではあるが家族にも相談できる人や理解してもらえる相手がいない、といったケースも考えられます。いじめや過去のトラウマなどは一枚岩で解決するものではないですが、家族が支えるのは解決へのまずできる一歩です。   もしくは、患者の家族があまりに責任を負いすぎてしまい、家族自身も精神的に不安定になってしまうケースもあります。家族としての役割を大きく捉えすぎてしまい、家族が支えれば乗り越えさせることができるはずだと信じていると陥りがちです。   このように家族支援は多岐に渡りますが、今回は「問題を抱える若者とその家族への支援」に絞って精神保健福祉士が留意することを記載していきます。     問題を抱える若者とその家族への支援   ①相談を受け、受診の必要があれば勧める これは当然のように感じることかもしれませんが、家族の認識によっては受診と服薬に抵抗がある方も多いです。病名がつくことを嫌い、なかなか受診に足が向かないという理由も多いです。服薬してコントロールができる病気であればそうするに越したことはないので、誤解のないよう説明をし受診を勧める必要があります。   ②家族に依存しすぎていないか確認する 家族との関係が薄いがゆえに起こる精神疾患もありますが、逆の場合もありえます。家族への依存が大きいと、家族という世界に閉じこもってしまって外に出るのが怖くなり、他者からの評価が得られずまた家族とだけしかコミュニケーションを取らない、という悪循環が生まれます。精神疾患の原因が家族とは関係がないように思えても、根底の部分で家族依存が関わっている場合も多くあります。   ③家庭内暴力への対処 家庭内暴力について、一番は警察に通報し避難をさせることです。危険性があると判断すれば、そのように指導しましょう。また暴力に暴力で対抗することは勧めません。まだ未遂であり予防の段階であれば、できるだけ相手を刺激せず、2人きりにならないよう第三者を介入させることや、距離を取って会話をするように心がける事などの予防原則を指導します。   ④家族の中で役割を見出す これは精神疾患の段階にもよりますが、全く何もしていない状況が続くよりも何かの仕事が生活の中にあった方がやりがいに結びつくケースもあります。小さい社会である家族の中で、働く意義や責任を見出せると社会復帰への足掛かりになるでしょう。家族と話し合い、例えば新聞受けから新聞を取ってくるでも、掃除や洗濯でも構いません。些細なことでも、失敗してもいいです。それが社会活動に繋がります。     具体的な家族支援の流れ   ①家族の誰か(一般には親など,本人もあり得る)からの相談を受ける(来談・訪問) 相談者が何を問題にしているのかと、家族の関係をつかむ。   ②問題を抱える本人(本人からの相談の場合は家族の誰か)の話を聞く(来談・訪問) ①と②の相談者の違いを明らかにする。問題はそれぞれの人物の認知であり、事実の追求は意味を持つとは限らない。   ③会議を開き、問題の明確化・支援の目標設定・有効な資源の検討・アセスメントの必要性の検討・環境調整の必要性の検討を行う 初回面接の担当者の記録をもとに印象を交えて報告してもらい,必ず複数の「眼」で検討する。また,目標は「最低限クリアする」実現可能な設定を心掛ける。   ④家族に対し、③の会議で検討した支援の方向性について説明する 同意が得られる場合、具体的にスケジュールを立て本人の行動を促すように協力する体制作りを進める。支援における家族の役割をアドバイスする。 同意が得られない場合、本人・家族と支援者の信頼関係ができていないので、まずは定期的に連絡を取り信頼関係の構築に努める。   ⑤家族との相談のプロセスで会議を開き、方向性とそれぞれの役割、関わりによる変容の確認を行う 本人と家族の関係を調整しながら支援を行う。支援されるのは表面的には「問題を抱える若者本人」だが、本質は「家族全体の関係性」であるから、本人の人的環境である家族は「支援者であると同時に被支援者でもある」という視点を失わないようにする。   ⑥目標となる行動や関係性の再構築に向かう変容や方向性が見えるまでケース検討と支援を繰り返す 関係性は動的なもので完璧な解決などないため、見守りフォローする体制を維持する。  

2020/08/07

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精神保健福祉士に興味のある方へ―就職先とは―

新型コロナウイルス感染症の予防によって、私たちの生活様式が新しいものになりました。 「コロナショック」と言われるなか、私たちの仕事観・会社感への影響も出ているでしょう。 契約社員や派遣社員、アルバイトの契約をはじめとして雇用状況が厳しくなり、今後失業者が急増する可能性があるとも言われています。 そして、雇用情勢が悪化すると、自殺者が増えてしまったり。こうした望まない社会的損失を私たちは考え、社会的な対策を防いでいかなくてはなりません。 このような社会の変化の中で、いま、注目されているのが『精神保健福祉士』という国家資格です。 コロナ禍を受けて、多く人がこれまでのよりも緊張感の高い生活を送っているなかで、“人々を支え、自分自身もやりがいを感じる仕事に就きたい“、このような転職を希望する社会人が就活をする大学4年生に注目されつつある国家資格です。 今回は、心の寄り添う医療系国家資格『精神保健福祉士』について、そのおもな就職先を説明します。 1、精神保健福祉士の仕事内容とは? 精神保健福祉士は、精神面に障害のある方を対象に生活面での支援を行うのは主な仕事です。Psychiatric Social Workerを略して、「PSW」と呼ばれており、精神障害者に特化して相相談援助や社会資源を提供する専門職であり、国家資格です。   具体的にどのような役割があるでしょうか。 障害のある方を密接に関わりのあることと言えば、医療費と生活費です。 ご自身はもちろんですが、そのご家族にとっても医療費は大きな負担です。そして、障害を抱えた方が世帯主だった場合には生活費の捻出も困難を強いられるでしょう。 厚生労働省が代表例としてあげている精神障害者は、統合失調症、てんかん、依存症、気分障害、高次脳機能障害などがあります。いずれも症状が悪化すると仕事を続けることが困難になりやすく、休養をとりながら治療をしていくケースが多いです。 障害者ご本人の医療費や生活費として活用できる公的支援制度を斡旋するのも、精神保健福祉士の仕事のひとつです。 もちろん、できる限り社会復帰を支援して、本来の自立した仕事ができるようにサポートしていくという重要な役割もあります。社会復帰に向けて、日常生活に必要な訓練や会話の練習など直接精神障害者の方と向き合うことも欠かせない仕事です。 さらに、再び社会に出て働くための支援や、就職を果たした後も仕事に定着できるまでのサポートなどもおこないます。 精神保健福祉士がこのように多岐に渡る仕事を担うことになった背景には、2006年に施行された「障害者自立支援法」と、2012年に施行された「障害者総合支援法」があります。 この2つの法律がきっかけで、それまで入院医療が中心だった精神障害者の方が、地域での生活へと変化していきました。 これまで病院で生活していた精神障害のある方が地域で生活するとなると、専門知識を有する支援者が必要となります。そこで、精神保健福祉士が、精神障害をお持ちの方と社会がつながりを持てるように導く役割をしていくことになったという背景があります。 2、精神保健福祉士と社会福祉士との違いは? 社会福祉士も、精神保健福祉士と同じく国家資格のひとつです。 心身に障害を抱えるさまざまな事情から通常の生活を送ることが困難な方を支援することがおもな仕事です。 社会福祉士が支援するのは、障害を抱えて社会参加や自宅での生活が難しい方だけではありません。突発的な災害や失業といった何らかの働けない事情を抱えて生活が困難になった方への支援も社会福祉士の仕事です。また、不登校や虐待など子育てに関する問題も対応することもあります。 社会福祉士は、社会の中で何らかの支援を必要としている方やその家族の相談を受けて、その方の状況に合った適切な紹介や申請をおこなって、自立した生活になるように支援をする専門職です。 精神保健福祉士との違いは、その対象者です。 精神保健福祉士が支援をするのは精神に障害を抱えた方で、対象となる人が限定されているという点が違います。それだけ専門性が高く、専門領域が特化していると言えるでしょう。 なかには、社会福祉士の国家資格を持ちながら、さらに精神保健福祉士の国家資格を取得する人もいます。社会福祉士の国家資格で全般の相談援助はできますが、さらに精神保健福祉士の国家資格を取得することで、精神面に障害を抱えている方に対しても特化した支援をおこなうことが可能となります。 3、精神保健福祉士の就職先 ①病院 精神保健福祉士としてまず挙げられる就職先が病院です。 精神科の専門病院、総合病院の精神科、心療内科クリニックなど、さまざまな形態の医療機関が挙げられます。いずれも地域を支える拠点です。 医師と連携して精神障害のある方の生活に関わる情報を把握し、社会復帰に向けて生活を支えていきます。 精神科病院では、集団精神療法や認知行動療法、グループワーク、リハビリ、デイケアといった業務をおこなっています。また、在宅生活に関わる相談では訪問業務をおこなうこともあります。  ②福祉施設 病院の次に挙げられるのは、福祉施設です。 おもな福祉施設として、就労継続支援事業所、地域活動支援センターなどの精神障害者福祉施設の現場です。これらの福祉施設では、利用である精神障害者の方に対して、就労に関するトレーニングや職場への定着、電話や対面による相談など、日常生活に関わるさまざまなサービスを提供していきます。 それ以外にも、地域への情報発信や精神障害者の方の居場所づくり、関係機関相互の連携の中心となることでネットワークを活用できるハブ機能を果たしたりもしています。 精神障害者の方やそのご家族がよりよい生活を過ごせるように支援します。 ③養護施設 福祉施設だけでなく、養護施設も精神保健福祉士の就職先です。 生活支援サービス分野のなかでも、グループホームやケアホーム、生活保護法で設置されている救護施設、児童福祉法で設置されている児童養護施設などがあります。 また、保護者がいなかったり、虐待などの環境上養護を必要とする児童に対して、相談援助や自立に向けての援助、衣食住への健康管理や作業訓練などのリハビリなど、地域で生活できるようになるための指導をおこないます。 ④行政機関 精神保健福祉士は医療機関だけでなく、行政機関でも活躍することはできます。 行政機関としておもには、市役所区役所、保健所、精神保健福祉センター、福祉事務所などがあります。コロナ禍でテレビ画面でもよく精神保健福祉士センターの電話番号が案内されていますが、これらで心の問題について専門的な相談と援助などの相談業務をおこなっている専門職が、まさに精神保健福祉士です。 また、精神障害者への偏見をなくすための地域住民への啓蒙活動やボランティア活動、患者会や家族会を発足する仕事などもしています。  ⑤司法施設 2003年に「心身喪失等の状態で重大な他害行為を行った精神障がい者の医療及び観察に関する法律」が制定されました。この法律は、精神障害が原因で善悪の判断がつけられずに重大は犯罪を犯してしまった人を対象とする法律です。 精神保健福祉士は、法律に基づく指定された医療機関で医療チームの一員としてや、保護観察所などの施設で精神保健参与員や社会復帰調整官としての役割を果たしています。 ⑥企業・教育機関 企業では、ソーシャルワーカーとして職場でのストレスやうつ病のケアや、理解を深めるためのプログラムやシステムを作る仕事をしています。 教育機関では、小学校や中学校ではスクールソーシャルワーカーとして子どものケアや、いじめ、不登校などの学校で起きるさまざまな問題の解決ができるようにすることも担っています。 精神保健福祉士の活躍の場として今後さらに期待ができる就職先と言えるでしょう。   このように精神保健福祉士の活躍の場は多岐に渡っています。 そして、少子化や高齢化が進んだり、ストレス社会、さらにはコロナ禍による社会不安など、精神保健福祉士が必要とされる場面は広がっていくでしょう。 精神保健福祉士に興味をお持ちの方は、どのような形で貢献し、人々と関わっていきたいかとしっかりと定めるとよいでしょう。 ご自身の一生できる職業として、精神保健福祉士の国家資格取得にチェレンジすることも素敵なキャリアプランです。  >精神保健福祉士のことをもっと知りたい こちら

2020/07/21

精神保健福祉士の仕事

行政分野で働く精神保健福祉士について

  精神保健福祉士の活躍できる場所は、行政分野にもあります。都道府県庁の障害福祉担当課、精神保健福祉センター、保健所、都道府県立の医療機関、児童相談所などが行政分野にあたります。   業務内容は所属機関によって様々ですが、精神保健福祉に関する知識・技術が必要とされる部署に配属されることが多いです。これは当然のように感じるかもしれませんが、近年特に重視されている動向です。厚生労働省が「精神保健医療福祉の改革ビジョン」を定め、地域生活支援の強化などを推し進めていることが背景となり、都道府県、市町村にて精神保健福祉士の活躍が期待されています。   行政で働く精神保健福祉士の大きな役割は、日本国民全体の精神保健福祉の向上です。直接の支援だけでなく、間接的に市民と協働することや、支援制度や施策を立案することも業務としてあります。     行政分野で働く精神保健福祉士の業務とは   行政分野で働く精神保健福祉士の実際の業務を、大きく分けて9つ紹介します。   ①精神保健福祉相談 ②サービス利用に関する支援 ③技術支援・助言・指導 ④調査研究・企画立案・計画策定 ⑤普及啓発 ⑥研修・組織育成 ⑦関係機関及び団体との連携・協力・連絡調整 ⑧行政機関の責務等が規定されている法令に基づく業務 ⑨精神保健福祉サービスの充実や資源定着のために行う業務   ①の精神保健福祉相談が、最も想像しやすいかもしれません。精神保健福祉の課題を抱える人に対して、問題を理解、整理し、解決へ導くことです。その解決策の中で②のサービス利用に関する支援が含まれることが多いでしょう。患者や相談者の希望を踏まえた上で、適切な社会資源を紹介するのが精神保健福祉士の仕事です。また、紹介だけでなく、利用支援と調整も行います。   ③の技術支援・助言・指導とは、精神保健福祉士の視点から、地域の支援体制の基盤強化を目指し、関係機関の位置づけや機能に応じた技術的な協力や支援及び助言や指導を行うことです。簡単に言うと②と逆で、関係機関から精神病患者の相談を受けることが主でしょう。   ④の調査研究・企画立案・計画策定においては現場で精神病患者を直接支える業務とは少し変わってきます。行政機関として、地域で求められた施策や事業の企画立案、計画策定を行います。ニーズの調査を行い、形式的なものであったり机上の空論となってしまわないよう慎重に聞き取りを重ね、福祉サービスを考えていきます。そして⑤の普及啓発の観点で、地域での交流会を企画するなど理解の促進をすることも精神保健福祉士の仕事です。   そして専門職として、精神保健福祉士の質の向上のために⑥の研修や組織育成を考えることも重要です。所属組織にもよりますが、精神保健福祉士としての確かな知識と技術、そして実務経験が求められます。また、精神保健福祉分野のみならず社会全体の動きやニーズを捉える力も必要です。   ⑦の関係機関及び団体との連携・協力・連絡調整はどの精神保健福祉士の仕事においても切り離せない業務でしょう。医療機関や福祉機関のみならず、地域のボランティアなどあらゆる諸団体との連携が求められます。   ⑧行政機関の責務等が規定されている法令に基づく業務は、想像しにくいかもしれません。これは例えば、精神科病院にて人権侵害を伴う事件が発生した場合に、法律に基づく医療機関への指導強化が急務となります。元の指導のどこが悪いのか、どう解決していくのかを、法律だけでなく精神保健福祉士の歴史や課題、権利擁護に関する専門知識に照らし合わせて考えていく必要があります。現行法では事例がない場合も多く、現行法の不備を認識し改善していく姿勢が大切です。   そして最後に⑨の精神保健福祉サービスの充実や資源定着のために行う業務とは、日本という国の精神保健福祉サービスの充実に向けて、新しい事業が定着するように将来的な施策を考え展開していくことです。国がモデル事業化した「精神障害者○○推進事業」といった事業を運用したり、改善提案を行うなどが業務です。     行政分野の精神保健福祉士が持つべき指針   いかがでしたでしょうか。一般的に想像される精神保健福祉士の仕事は精神病患者にまつわる相談業務だと思いますが、行政分野においてはさらに他の関連施設へ技術指導を行ったり国のモデル事業の改善まで業務は多岐にわたります。   そんな行政分野の精神保健福祉士が、業務を実践していく上で持つべき指針を以下に列挙します。   ・患者本人の権利の擁護と自己決定を尊重する ・患者の強みを伸ばすような視点から相談を理解する ・個人、家族、集団、地域の個別化を重視し理解する ・患者本人とその家族のニーズを把握する ・必要なサービスが途切れることを防ぐ ・患者を含む住民の多様な相談内容に対応できるよう努める ・既存の制度運用に留まらず最善の支援を考える ・ソーシャルワークの視点から施策の創設及び改善を行う ・多職種、他機関と連携し支援ネットワークを構築する ・人、地域、社会システムの全体関連性を踏まえる ・行政機関のなかでソーシャルワークの視点を定着させる    

2020/07/21

精神保健福祉士の仕事

医療分野で働く精神保健福祉士の業務とは

  精神保健福祉士の職場で代表的なものは医療機関でしょう。精神保健福祉士が所属する医療機関は、精神科病院、診療所、総合病院が中心です。精神保健福祉士としてどのように働くかは、職場によって大きく異なります。   国家資格として精神保健福祉士が生まれる前は、精神科ソーシャルワーカーとして多くの方が医療機関にて精神障害者を支えてきました。そして精神保健福祉士が国家資格となった背景には、精神障害者が精神科病院に社会的長期入院をしてしまうケースが非常に多くなってしまったことと、精神障害者の社会復帰などに対する相談業務などの専門職が必要であるという声が大きくなったことがあります。   そのため、まず医療分野で働く精神保健福祉士の大きな目標として、長期入院者の社会復帰を促すことがあります。つまりそれは地域で支えて支援できるようにすることでもあります。   医療機関で働く医師や看護師はどうしても医療行為に重きを置く専門家であるため、精神保健福祉士が地域社会との接点を多く持ち、医療機関内へとフィードバックし、地域に開かれた医療を推し進めることが求められています。   また、近年精神科には統合失調症などの患者だけでなく、うつ病や認知症、メンタルヘルスの課題を抱えた患者が増えてきています。社会的な環境の変化も、医療分野で働く精神保健福祉士は対応していかなければなりません。   医療分野における各業務において、精神保健福祉士がどのような指針を持って業務に取り組んでいくのかを解説していきます。     医療機関での受診と受療に関する支援   ・相談者の思いや希望に寄り添う ・生活者視点から情報を収集する ・社会的視点から相談者を理解する   受診においては、相談者が患者本人でないことも多くあります。家族や関係者が相談者である場合、その思いや希望にまず寄り添うようにしましょう。その上で、患者本人の生活者視点から情報を聞き、整理していく必要があります。相談者と患者が違う場合に、両者の希望や主張を混ぜて考えてしまわないようにしましょう。     生活者の情報収集と課題整理   ・患者の良いところを伸ばせるよう相談者と協力して支援を考える ・多職種によるチーム医療において福祉職としての専門性を持つ   支援を求めている場合、どうしてもマイナス要素のことから支援方法を考えてしまいがちです。しかし、重要なのは患者の良いところを引き出して伸ばしていけるように、例えば患者の夢や希望はどのようなことなのか、それを目指すためにはどう支援していくべきなのか、といった視点から考えていくことが重要です。     入院における支援   ・人権に配慮する   入院はまず、相談者の意志があっても患者の希望とは異なる場合も多々あります。その場合、まず相談者の希望を叶えられるように動きながら患者の意思決定に配慮する必要があります。そして入院においては本人はもちろん、家族や関係者も少なからず不安やストレスを感じます。それを理解し、法律や制度について柔らかく充分な説明を行い、治療と療養環境を調整することが必要です。     退院計画の立案   この業務においてはここまで見て来た、相談者の希望に寄り添うこと・患者の良いところを伸ばせるように支援を考えること・福祉職としての専門性を発揮すること、などが求められます。   特に入院生活が長い患者の場合、退院は非常に不安の多いことであり、どうしても保守的な退院計画になってしまいがちです。しかし本来は患者本人の強みや希望を取り入れ、できる限りチャレンジングなプランでも実現していけるよう工夫をするのが精神保健福祉士の仕事です。時にはチーム医療に関わる専門職全員に、直接患者の希望を届ける場を設けたり、家族や支援者にもそれが伝わるよう工夫をすることが必要となるでしょう。     グループワークの実施   ・リハビリテーションにおいて、グループメンバーの相互作用を活用する   医療分野で働く精神保健福祉士は、業務の中でレクリエーション的なイベントやリハビリテーション目的の大人数プログラムを企画することも多くあると思います。 この場合、グループ全体を見ることと、グループ内外で対人関係を築けているかどうかの把握が必要です。グループワークはグループ全体がうまくプログラムを行えるかどうかと同時に、個別支援という側面も併せ持っています。患者の能力に応じて参加を勧めたり、能力が向上できるよう支援することが大切です。     救急・急性期医療における支援   ・入院中の生活の連続性を保障する ・地域の関連機関と対等な関係を築き、支援ネットワークを作る ・制度や組織を効果的に活用し相談者を支える   救急・急性期医療での支援が求められるのは、精神科救急病棟に勤務する精神保健福祉士などです。大きな指針としては他病棟での勤務と変わらず、相談者に寄り添うことと患者の希望を聞くことなどです。その上で、これまでの生活とこれからの生活を視野に入れ、入院中であっても生活の連続性が保障できるよう心掛ける必要があります。限られた入院期間内に、退院後も地域で安心して生活していけるよう関連機関との連携が不可欠です。

2020/06/18

精神保健福祉士になるには

精神保健福祉士のテレワークについて

  新型コロナウイルスの影響で、世の中が大きく変わりましたね。社会人にとって身近な影響は『テレワーク』ではないでしょうか。   元々テレワーク環境が整っている職種はもちろんのこと、緊急事態宣言下においては様々な仕事で、できる限りテレワークができるよう推し進められました。   半永久的に基本テレワークを認める方針の会社も出て来ています。今後は、就職・転職の検討材料のひとつとして「テレワークが可能かどうか」は重要視されていくでしょう。   そんな中、精神保健福祉士の仕事はテレワークが可能なのか・可能であればどのように行っているのかを、ご紹介していきます。     1、産業別では医療・福祉のテレワーク率は低い   在宅勤務はどこまで進むか|みずほ総合研究所   みずほ総合研究所のサイトで公開されているデータによると、テレワーク可否の調査において医療・福祉は割合が低いという結果が出ています。製造業、娯楽・生活関連サービス業、運輸・郵便業などと同程度にテレワーク率は低いようです。   福祉業界はどうしても対面の業務が多いため、テレワークが不可能な業務が多くあります。また、個人情報保護の観点から自宅に持ち帰ることのできない仕事が多いことも理由の一つでしょう。     2、テレワークに移行できる業務のみ対応   テレワーク率の低い福祉業界ですが、緊急事態宣言下ではテレワーク対応をした精神保健福祉士も多くいます。勤務している場所によりますので、あくまで傾向としてですが、病院や施設では業務の一部をテレワークにし出勤人数を減らすという対策を取っていたようです。   例えば当番制で事業所に出勤する人と、自宅で事務作業や電話対応を行う人とに分ける。事業所内での会議や多職種との会議はすべて自宅でTV会議とする、などです。訪問診療の場合も電話相談をこまめに行うことで、最低限の患者のケアを行うことができます。   前からテレワークへ移行していた事業所も少なからずあります。スマートフォンやタブレットを貸与し、利用者についての情報共有や診療計画書の立案業務などに活用し、業務効率化を図っているそうです。医療・福祉業界でのテレワーク導入プロセスや手引きについては産業労働局よりハンドブックが出ています。   テレワーク業界別ハンドブック「TELEWORK活用ヒント」(医療・福祉)   カウンセリングや傾聴は在宅の環境でできる場合も多いため、他の福祉業の中ではテレワークが不可能ではない職種にあたるのではないでしょうか。   そのため、求人サイトでは「在宅ワーク可能」と記載している募集も増えています。オンライン相談所のような業態事態をとり、完全テレワークを目指す福祉ビジネスも出てきました。     3、自己研鑽の勉強や仕事の見直しなど   普段の職場で行っている仕事をそのまま自宅で行うことは難しくても、自己研鑽のための勉強や仕事の見直しを行うことはできます。自宅待機という形でそういった内容を推奨した職場も多いようです。   精神保健福祉士は資格を取得して終わりではなく、常に勉強することが必要な仕事です。自宅でセミナー動画を見る、書籍を読んだりするなどの時間を取ることも有用です。また、社会福祉士や介護福祉士など他の専門職の勉強をすることも精神保健福祉士としての知見を広げることに繋がります。     4、精神保健福祉士のテレワーク実施の課題   精神保健福祉士もテレワークが可能であれば、多様な働き方のひとつとして選択したいという方も多いのではないでしょうか。 精神保健福祉士がテレワークを実施する上で課題となるのが、以下の点です。   ・精神保健福祉士として専門性の発揮される仕事がしにくい ⇒電話カウンセリングや事務仕事のみでは、これまで通り精神保健福祉士として患者と向き合うことは難しいでしょう。あくまでテレワークでの業務は補助的な役割にとどめ、うまく組み合わせて使っていく形が望ましいでしょう。   ・高齢者患者にスマートフォンやタブレットが普及していない ⇒電話やオンライン対応をしようとしても、患者側の環境が整っていないことが予想されます。高齢者分野においてはそれがとくに見られます。実際に顔と顔を合わせてこそ悩みが引き出せる・心を軽くできるという面でも世代間のギャップがありそうです。電話やオンライン対応は、それに慣れた世代であれば有用でしょう。   ・個人情報保護や守秘義務を伴う仕事 ⇒精神保健福祉士の業務における患者の個人情報保護については、厚生労働省にてガイドラインが出されています。原則、患者のカルテなど個人情報に関わるものを自宅に持ち出すことはできないため、自宅でできる業務に制限が出ます。これは当然厳守されるべきことなので個人情報を含めない事務仕事としっかり切り分けることが求められます。   ・職場内コミュニケーション不足による生産性の減少 ⇒生産性の減少は精神保健福祉士に限らずあらゆる業界で懸念されていることですが、社外で自由な場所・時間に働く場合、労働時間や労働内容が職場内で把握しにくく、生産性が下がるということが考えられます。     このように、精神保健福祉士の仕事をテレワークで行うにはいくつかの課題があり、すべての職場で自由にテレワークが選択できるようになるのは難しいでしょう。   しかし、テレワークは多くのメリットがあります。就業場所に捉われず、働く時間を都合に応じて決められ、通勤時間の短縮にもなります。仕事と生活の両立を考えるワークライフバランスの実施にも繋がります。   また、フルタイムで働くことが難しい人や自宅での作業しかできない人などを雇用することで、人手不足の解消や長時間労働の解決にもなります。精神保健福祉士の現場でも新しい働き方が選択できるように変化していくことが今後求められていくでしょう。