双極性障害という言葉を聞いたことがあるでしょうか。以前は躁うつ病とも呼ばれていました。精神保健福祉士が対応する利用者の中で、双極性障害を患っている人ももちろん多くいます。双極性障害について知っていきましょう。
双極性障害(躁うつ病)について
双極性障害は、躁状態と言われる気分が盛り上がりテンションの高い状態になったり、逆にうつ状態と言われる気分が落ち込みテンションが低い状態になったりを繰り返す病気です。
躁状態の度合いによって、激しい場合は双極Ⅰ型、軽い場合は双極Ⅱ型に分かれます。
この説明だけでは「躁状態の場合は良いのでは?」と思うかもしれませんね。しかし実際は、不自然なまでの気分の盛り上がりを指しています。双極Ⅰ型の場合は、生活に支障が出るほどと言ってもいいかもしれません。万能感に溢れて全財産をギャンブルにつぎ込んでしまったり、健康を害しても眠らずに動き続けたりするような状態です。
双極Ⅱ型の場合も程度は軽くなりますが、周りの人に「異様な明るさだな」と思われるような状態です。躁状態の本人は異常なことをしている・言っているつもりはないため、人間関係のトラブルになりやすいです。躁状態が軽いため、うつ状態の方にフォーカスしてしまい「うつ病」と診断してしまう場合もあります。「うつ病」と双極性障害は別の病気であり治療の仕方も異なりますので注意が必要です。
そして、うつ状態の時には憂鬱な気分が晴れず、睡眠も安定せず、あらゆることに活気がなくなります。食欲も低下し健康を害する可能性も高いです。1日中ベッドで横になってしまうという症状もあります。
双極性障害になるのに男女差はありません。また年齢も幅広く、20代から30代前後がボリュームゾーンではありますが子供から老人まで患者はいます。
うつ病と双極性障害の違い
うつ病と双極性障害は、似ているようで全く違う病気です。一般的に言われている「うつ病」は「単極性うつ病」とも言い、うつ状態の症状だけがあります。双極性障害はうつ状態だけでなく躁状態があり、そしてその2つを繰り返します。うつ状態だけに対処する治療と、躁状態とうつ状態のコントロールを加味する治療では方向性が異なりますので、違う病気という認識が必要です。実際に治療で使われる薬も、うつ病の場合は抗うつ薬が処方されることが多いですが、双極性障害では気分安定薬や抗精神病薬が使われる、といった違いがあります。
前述したように躁状態が病気であることは自分では気づきにくいため、多くの患者は「自分はうつ病かもしれない」と思って受診しますが、その16%が双極性障害であったというデータが出ています。また、稀に混合状態という、うつ状態と躁状態が混ざった状態が出現することもあり、自分では見分けにくい病気と言えるでしょう。
うつ病と双極性障害は、原因も違います。うつ病の原因はストレスですが、双極性障害の原因は遺伝的な体質により神経伝達物質の機能が変化することです。簡単に言うと、脳の病気です。不確定な要素が多くすべてが解明されているわけではないですが、心の病気ではなく脳の中で感情のコントロールに関わる部分が変化してしまうためだとわかってきました。
双極性障害の症状
簡単に、躁状態とうつ状態の症状を列挙していきます。
■躁状態の症状
寝なくても平気
話続けてしまう
人の話が耳に入らない
頻尿・残尿感がある
ギャンブルなどの浪費
怒りっぽくなる
注意散漫になる
落ち着きがない
急に偉くなったような気分
自信満々になる
■うつ状態の症状
反応が遅い
食欲がない
体がだるい
疲れやすい
性欲がない
気分が落ち込む
寝てばかりいる
やる気が起きない
楽しめない
決断力がなくなる
死にたくなる
イライラする
思考力が落ちる
死にたくなる
双極性障害と向き合う
双極性障害は、放っておくとほとんどの場合再発する病気です。何度も再発を繰り返すと社会的信用や財産を失ってしまったり、人間関係がボロボロになってしまう危険性があります。障害と向き合い、早期に適切な治療をすることが求められる病気です。
再発を繰り返すと、発症がどんどん早くなり急速に躁鬱が交代されることになってしまいます。そして混合状態になってしまうと、うつ状態の「死にたい」という思考と躁状態の行動力や自信満々さが掛け合わさってしまい自傷行為や自殺へ繋がってしまう危険があります。
躁状態があることが双極性障害の特徴ではありますが、躁鬱の期間で言うとうつ期間の方が長いです。うつ状態では考え方が否定的になっていき、やる気がなくなり治療についても前向きになりにくい病気ですので、頑張りすぎず緩やかに治療を続けていく気持ちが大切です。
また、双極性障害やうつ病は、患者自身やその家族が病気を軽視してしまうことも多々あります。「頑張ればなんとかなる」「気のせいだ」というような思考が、病気を悪化させることに繋がります。しかるべき医療機関などで病気を正しく理解していくことが大切ですし、精神保健福祉士を含め患者と関わっていく周りの人間が注意深く導いていくことも必要です。
治療については、薬物治療と心理社会的治療の2つのアプローチができます。薬物治療については心を開ける医師に相談し適切な処置を仰ぎます。心理社会的治療については、患者自らが自分の心理をコントローㇽするアプローチや、自分の考え方を肯定的にする練習などです。その他家族や対人関係によって改善していく方法や、社会リズム療法と呼ばれるものもあります。