精神疾患

2020/03/12

精神疾患

代表的な精神疾患「うつ病」について

  精神保健福祉士の扱う病気の中で、代表的なもののひとつに「うつ病」があります。うつという言葉はよく聞きますよね。   一言で説明するのは難しい病気で、身近でありながら原因や対処がわかりにくい病気です。気持ちや気力で解決できる問題ではなく、治療が必要なこころの病気です。     1、うつ病とその症状について   うつ病はまず、「憂鬱で気分が晴れないな」「何事にもやる気が起きないぞ」といった症状からはじまり、これが1日中や一定期間以上続きます。20年前には40万人程だった患者数ですが、10年前には100万人を突破し、急速に増加傾向にあります。社会的・経済的な影響で増えていると考えられています。   人間は時に憂鬱な気分になることはありますが、自然治癒力によって回復するものです。時間が経過しても改善しない、もしくは悪化してしまい、生活への支障が大きくなることで「病気」としてとらえられることになります。   うつ病が進むと気分が憂鬱なだけでなく、眠れなくなる・食欲がなくなる・体重が減る・体がだるい・疲れやすい、などの症状が出ます。それが進むと、自分を責めたり、生きる価値がないという考えに至り、自殺へと進んでしまうこともあるため注意が必要です。     2、うつ病の種類   うつ病はさまざまな分類の仕方があり、それによっていくつかの種類に分けられます。獲得長とともに列挙します。   ①うつ状態だけの症状「単極性うつ病」 ②うつ状態と躁状態の両方の症状「双極性うつ病」 ③重症度によって「軽症」「中等症」「重症」 ④初発の場合「単一性うつ病」 ⑤再発の場合「反復性うつ病」 ⑥役割に対する過剰適応による症状「メランコリー型うつ病」 ⑦良いことに対しては気分が良くなる「非定型うつ病」 ⑧特定の季節に発症する「季節型うつ病」 ⑨産後4週以内に発症する「産後うつ病」   このほか、「新型うつ病」や「現代型うつ病」などといった呼び方もされますが、専門家の用いる診断には存在しない呼び方です。     3、うつ病の4つの原因   上で見たように、うつ病にはさまざまな種類があります。そして、それぞれが複合的に絡み合った要因によって引き起こされているため、うつ病の原因を1つに特定することは困難です。   例えば、トラウマのような出来事がうつ状態を引き起こしたとしても、それ以前にいくつかのことが重なっていることも多くあります。   原因が特定できないという前提の上で、傾向を4つに分類してみましょう。   ①環境要因 前述したトラウマが引き起こすうつ病などが環境要因です。家族や親しい人の死や、仕事や財産を失うこと、人間関係の強いトラブルなどが要因です。仕事の降格なども含めると本当にさまざまな出来事が要因となる可能性があります。   ②性格傾向 完璧主義であったり几帳面・凝り性・他人の目を気にしすぎてしまうなど、性格によるうつ病のことです。これらの性格によって脳内のエネルギーが消費され、物事がいい方向に進んでいる間はそのエネルギーは消費した分きちんと回復されますが、成果が出せなかったりうまくいかないことが増えるとエネルギーが減ったままになりうつ状態が発生します。   ③遺伝的要因 遺伝的に、神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンの機能が低下していたり伝達がうまくいかなくなってしまい、うつ病の状態が起きます。   ④慢性的な身体疾患 こちらも同様に、脳の中の神経細胞にトラブルが生じている場合です。身体疾患によってそれが引き起こされることがあります。     4、うつ病の3つの治療   うつ病の治療には3つの大きな柱があります。「休養」「薬物療法」「精神療法」です。こころの病気は特別な治療が必要だと思うかもしれませんが、実は身体疾患と基本的に同じです。   ①休養 休養は一見して治療法ではないように思うかもしれませんが、うつ病の方にとってとても重要です。うつ状態とは脳内のエネルギーが少なくなっていて、時間によって回復する量よりも生活によって消耗する量の方が多くなってしまっている状態です。そのため、消耗量を減らすために休養し、ゆっくりと回復を待つことが治療になります。   休養は、家族や社会の理解が最も必要な治療です。仕事であれば残業を減らすレベルから、しばらく休む、辞めるなどといった選択も必要でしょう。自宅でゆっくりと過ごす選択をしても、家族とのトラブルが原因であれば心が休まらない場合もあります。そういった時には入院を検討するなど、状況に応じて休養の仕方を考えることが大切です。   ②薬物療法 主に「抗うつ薬」による治療です。もともと脳内にある物質であるセロトニンやノルアドレナリンが有効に機能するよう、サポートする薬です。他にも、不安症状の強い方には抗不安薬を、眠れない状態が続いている方には睡眠導入剤など、さまざまな薬を併用して治療します。   薬物療法で注意しなければいけないことは、まず即効性のある薬ではないため、効果が現れるまで時間がかかることを理解することです。自己判断で服薬をやめてしまう方がいますが、主治医の判断に従うべきでしょう。   また、副作用についても注意が必要です。眠くなる、胃腸が弱くなるなど、人によっては辛く感じることもあります。   ③精神療法 精神保健福祉士の領域が、精神療法です。うつ病を引き起こした原因を取り除くためには、休養と薬物療法だけでは解決していきません。精神療法を通して、環境要因や性格傾向など変えていける部分を検討していきます。また、再発予防も重要です。   具体的には「認知行動療法」「森田療法」「内観療法」などさまざまな治療法が提案されています。例えば認知行動療法であれば、ひとつの出来事に対して本人の気持ちや行動を振り返ってみて、極端な考え方がみられないか、他の解釈や見解をしてみて心が軽くなるのではないか、などを考え、心の安定を探っていく精神療法です。   いずれの療法であっても、心の中にある生きる力を強化することが目的です。要因となった出来事に対処するだけでなく、再発予防として、考え方や性格といった根深い問題に向き合う必要があるでしょう。  

2020/03/04

精神疾患

代表的な精神疾患「統合失調症」について

  精神保健福祉士は、代表的な精神疾患についてよく理解し学ぶ必要があります。 代表的な精神疾患のうちのひとつである、「統合失調症」について見ていきましょう。     1、統合失調症とは?   統合失調症という名前は聞いたことがあるのではないでしょうか?精神疾患の中では代表的なもので、現代では100~120人に1人がかかるといわれているため、決して特殊な病気ではありません。   症状は、頭の中で考えていることがまとまらなくなる状態が続きます。考えだけでなく、気持ちや心に関してもそうです。   原因ははっきりとわかっておらず、ストレスだったり、精神伝達物質のバランスによるものだったり、さまざまです。   思春期から40歳ごろまでにかかりやすいと言われており、他の精神疾患よりも比較的若い人がかかりやすいことも特徴です。     2、統合失調症の3つの症状   統合失調症は大きく3つの症状があります。   ①陽性症状 強い妄想にとりつかれ、幻覚を見たり聞いたりします。考えも混乱し、一貫性がなくなるため、何を話しているのかわからなくなることがあります。   ②陰性症状 感情が平坦になっていきます。喜怒哀楽が乏しくなり、他人の感情に共感することも少なくなります。意欲がなくなりコミュニケーションをとらなくなります。   ③認知障害 記憶力・集中力・判断力が低下します。生活する上で計画を立てることができなくなり、作業能率が極端に落ちます。     3、統合失調症の4つの経過   統合失調症の経過は、前兆期・急性期・消耗期・回復期に分けられます。   ①前兆期 眠れない、音に敏感になる、気持ちが焦る、気分が変わりやすくなる、などの症状が出ます。過労や睡眠不足を引き起こす可能性があります。   ②急性期 不安になりやすく、眠れず、被害的な幻聴や妄想などの陽性症状が増えます。睡眠や休息はもちろん、安心感を得ることが大切です。   ③消耗期 眠気やだるさを感じ、意欲がなくなりやる気や自信がなくなるといった陰性症状の出る時期です。数ヶ月単位で休息を取り、規則正しい睡眠を取ることと無理をせず暮らすことが必要です。   ④回復期 徐々に気持ちにゆとりが生まれ、周囲への関心が戻ってきます。体力作りも行っていきましょう。楽しみながらリハビリテーションすることが大事です。     4、統合失調症の治療と精神保健福祉士の関わり   統合失調症は、各症状・各経過に合わせ、薬物療法と精神的リハビリテーションを組み合わせて治療していきます。   薬物療法は、「抗精神病薬」を中心として行います。この薬は、従来型の定型抗精神病薬と新しくできた非定型抗精神病薬の2種類があります。従来型は陽性症状へアプローチでき、脳内の神経伝達物質のバランスを整える効果があります。新規薬では陽性症状に加えて陰性症状・認知障害への効果も期待できます。不安感を取り除きたい・睡眠を助けて欲しいなど、症状や必要に応じて使われています。   薬物療法に関しては、薬の処方はもちろん、副作用に関する相談や服薬をいつまで続けるかなど、継続的に主治医と相談しながら進めていく必要があります。効果が現れるまでには時間がかかったり、一度治っても服薬をやめることで再発率が高まってしまったりするため、自己判断で服薬を取りやめるのは危険です。   そして薬物療法と平行して行っていくのが精神科リハビリテーションです。精神保健福祉士が主に関わる部分がこの領域ですね。   統合失調症になることで生まれる「生きづらさ」を改善し、生活をスムーズにするために行います。デイケアや作業療法、生活技能訓練、心理教育などのプログラムを実施していきます。   プログラムの実施は、病院の場合であれば病棟やデイケア、作業療法センターなどで行います。精神保健福祉士と医師だけでなく、看護師、作業療法士、心理士、薬剤師など、多職種スタッフが協力し合いながらリハビリテーションを進めます。     5、再発しやすい統合失調症   統合失調症は、長期にわたって治療を続ける必要のある病気です。しっかりと完治する前に治療をやめてしまうと、再発を繰り返し、薬が効きにくくなったり回復に時間がかかるようになってしまいます。   長期的にみて自立した生活を送るためには、精神保健福祉士や医師が将来を見据えたサポートを行うことが大切です。また、本人だけでなく家族や地域の理解も必要でしょう。   統合失調症を支えるサポート制度がいくつか用意されているので、うまく利用しながら治療や再発防止に努めましょう。     ①自立支援医療制度 通院でかかる医療費の自己負担分を原則として1割に軽減できる制度です。   ②精神障碍者保健福祉手帳 自立と社会参加を促進する制度です。手帳を持つことで割引や税金控除など、さまざまなサービスを受けられます。   ③障害年金 加入している保険から生活費を補うお金が支払われる制度です。   ④生活保護と受給資格 働けなくなった人を対象に国や地方自治体が生活を支援してくれる制度です。   ⑤さまざまな就労支援 ハローワークや職業センターなどで、求職情報の提供や支援を行っています。   ⑥各種相談窓口 かかりつけの医療機関以外でも、窓口や電話で相談することができます。