代表的な精神疾患「統合失調症」について

2020/03/04

精神疾患

vol1
 

精神保健福祉士は、代表的な精神疾患についてよく理解し学ぶ必要があります。

代表的な精神疾患のうちのひとつである、「統合失調症」について見ていきましょう。
 

 
1、統合失調症とは?

 
統合失調症という名前は聞いたことがあるのではないでしょうか?精神疾患の中では代表的なもので、現代では100~120人に1人がかかるといわれているため、決して特殊な病気ではありません。
 
症状は、頭の中で考えていることがまとまらなくなる状態が続きます。考えだけでなく、気持ちや心に関してもそうです。
 
原因ははっきりとわかっておらず、ストレスだったり、精神伝達物質のバランスによるものだったり、さまざまです。
 
思春期から40歳ごろまでにかかりやすいと言われており、他の精神疾患よりも比較的若い人がかかりやすいことも特徴です。
 
 
2、統合失調症の3つの症状

 
統合失調症は大きく3つの症状があります。
 
①陽性症状
強い妄想にとりつかれ、幻覚を見たり聞いたりします。考えも混乱し、一貫性がなくなるため、何を話しているのかわからなくなることがあります。
 
②陰性症状
感情が平坦になっていきます。喜怒哀楽が乏しくなり、他人の感情に共感することも少なくなります。意欲がなくなりコミュニケーションをとらなくなります。
 
③認知障害
記憶力・集中力・判断力が低下します。生活する上で計画を立てることができなくなり、作業能率が極端に落ちます。
 
 
3、統合失調症の4つの経過

 
統合失調症の経過は、前兆期・急性期・消耗期・回復期に分けられます。
 
①前兆期
眠れない、音に敏感になる、気持ちが焦る、気分が変わりやすくなる、などの症状が出ます。過労や睡眠不足を引き起こす可能性があります。
 
②急性期
不安になりやすく、眠れず、被害的な幻聴や妄想などの陽性症状が増えます。睡眠や休息はもちろん、安心感を得ることが大切です。
 
③消耗期
眠気やだるさを感じ、意欲がなくなりやる気や自信がなくなるといった陰性症状の出る時期です。数ヶ月単位で休息を取り、規則正しい睡眠を取ることと無理をせず暮らすことが必要です。
 
④回復期
徐々に気持ちにゆとりが生まれ、周囲への関心が戻ってきます。体力作りも行っていきましょう。楽しみながらリハビリテーションすることが大事です。
 
 
4、統合失調症の治療と精神保健福祉士の関わり

 
統合失調症は、各症状・各経過に合わせ、薬物療法と精神的リハビリテーションを組み合わせて治療していきます。

 

薬物療法は、「抗精神病薬」を中心として行います。この薬は、従来型の定型抗精神病薬と新しくできた非定型抗精神病薬の2種類があります。従来型は陽性症状へアプローチでき、脳内の神経伝達物質のバランスを整える効果があります。新規薬では陽性症状に加えて陰性症状・認知障害への効果も期待できます。不安感を取り除きたい・睡眠を助けて欲しいなど、症状や必要に応じて使われています。

 

薬物療法に関しては、薬の処方はもちろん、副作用に関する相談や服薬をいつまで続けるかなど、継続的に主治医と相談しながら進めていく必要があります。効果が現れるまでには時間がかかったり、一度治っても服薬をやめることで再発率が高まってしまったりするため、自己判断で服薬を取りやめるのは危険です。

 

そして薬物療法と平行して行っていくのが精神科リハビリテーションです。精神保健福祉士が主に関わる部分がこの領域ですね。
 
統合失調症になることで生まれる「生きづらさ」を改善し、生活をスムーズにするために行います。デイケアや作業療法、生活技能訓練、心理教育などのプログラムを実施していきます。
 
プログラムの実施は、病院の場合であれば病棟やデイケア、作業療法センターなどで行います。精神保健福祉士と医師だけでなく、看護師、作業療法士、心理士、薬剤師など、多職種スタッフが協力し合いながらリハビリテーションを進めます。
 
 
5、再発しやすい統合失調症

 
統合失調症は、長期にわたって治療を続ける必要のある病気です。しっかりと完治する前に治療をやめてしまうと、再発を繰り返し、薬が効きにくくなったり回復に時間がかかるようになってしまいます。

 

長期的にみて自立した生活を送るためには、精神保健福祉士や医師が将来を見据えたサポートを行うことが大切です。また、本人だけでなく家族や地域の理解も必要でしょう。
 
統合失調症を支えるサポート制度がいくつか用意されているので、うまく利用しながら治療や再発防止に努めましょう。

 
 
①自立支援医療制度
通院でかかる医療費の自己負担分を原則として1割に軽減できる制度です。
 
②精神障碍者保健福祉手帳
自立と社会参加を促進する制度です。手帳を持つことで割引や税金控除など、さまざまなサービスを受けられます。
 
③障害年金
加入している保険から生活費を補うお金が支払われる制度です。
 
④生活保護と受給資格
働けなくなった人を対象に国や地方自治体が生活を支援してくれる制度です。
 
⑤さまざまな就労支援
ハローワークや職業センターなどで、求職情報の提供や支援を行っています。
 
⑥各種相談窓口
かかりつけの医療機関以外でも、窓口や電話で相談することができます。

※こちらの記事は入学検討者向けに掲載しているため、簡易的な説明となっております。
転載・流用はご遠慮ください。

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