精神障害者の就労支援について
精神保健福祉士は、精神障害者が心身ともに回復することを支援するだけでなく、患者の社会復帰まで見据えたサポートが求められています。
今の日本では、障害者が職業を通じ、誇りを持って自立した生活を送ることができるよう、障害者雇用対策を進めています。障害者雇用促進法という法律があり、企業に対して、雇用する労働者の2.2%に相当する障害者を雇用することを義務づけています。障害者とは精神障害だけでなく発達障害や視覚障害、難病患者など多岐にわたります。
今回は、精神障害者の就労支援についてみていきましょう。
1、精神障害者に対する雇用支援施策
厚生労働省が就労に向けた支援策を提示しています。精神障害者を対象とした支援施策について列挙していきます。
①障害者雇用率制度における精神障害者の特例
精神障害者保健福祉手帳保持者を各企業の雇用率に算定
②精神障害者雇用トータルサポーターの配置
ハローワークに「精神障害者雇用トータルサポーター」を配置し、精神障害者等の求職者に対してはカウンセリング等、事業主に対しては課題解決のための相談援助等の専門的な知見に基づく支援を実施。
③精神障害者に対する総合的雇用支援
地域障害者職業センターにおいて、主治医等との連携の下、新規雇入れ、職場復帰、雇用継続に関わる様々な支援ニーズに対して、総合的な支援を実施。
④医療機関に対する就労支援プログラムのノウハウ普及・導入支援事業
就労支援に関わるノウハウを有している精神科医療機関等が、他の医療機関等に対し、新たに就労支援を開始するためのノウハウについて普及・導入支援を行う事業を実施。
⑤精神障害者に対する雇用管理の好事例の普及
精神障害者雇用企業の担当者等から、事業主等に対し雇用ノウハウに関する説明会を開催し、精神障害者の雇用の促進を図る。
⑥医療機関とハローワークの連携による就労支援モデル事業
就労支援プログラムを実施する医療機関とハローワークが連携した就労支援を実施するとともに、当該医療機関との信頼関係を構築する。
また、これらは精神障害者向けの施策ですが、もっと広くを対象とした支援施策で精神障害者も利用できるものは他にもあります。
①ハローワークにおける職業相談・職業紹介
個々の障害者に応じた、きめ細かな職業相談を実施するとともに、福祉・教育等関係機関と連携した「チーム支援」による就職の準備段階から職場定着までの一貫した支援を実施。
②特定求職者雇用開発助成金
ハローワーク等の紹介により継続して雇用する労働者として雇い入れる事業主に対して助成。
③障害者試行雇用(トライアル雇用)事業
ハローワーク等の紹介により、障害者を事業主が試行雇用の形で受け入れることにより、障害者雇用についての理解を促し、試行雇用終了後の常用雇用への移行を進める。また、精神障害者等については、雇入れ当初は週20時間未満の就業から開始する短時間トライアル雇用を実施。
④障害者雇用安定奨励金
障害者を雇い入れて職場支援員を配置する事業主や、仕事の進め方やコミュニケーションなど職場で生じる様々な課題や職場の状況に応じて、直接的・専門的なジョブコーチ支援を提供する事業主に対して助成。
⑤障害者職場復帰支援助成金
事故や難病の発症等による中途障害等により長期休職を余儀なくされた労働者に対して、職場復帰のために必要な職場適応の措置を実施した事業主に対して助成。
⑥障害者就業・生活支援センター事業
雇用、保健、福祉、教育等の地域の関係機関の連携の拠点となり、障害者の身近な地域において、就業面及び生活面にわたる一体的な支援を実施。
⑦医療機関等との連携による就労支援セミナー等
利用者及び職員向けに就職活動に関する知識等についてセミナーを実施することにより、就職に向けた取組・支援を的確に行えるよう援助。
2、就労移行支援と就労継続支援
上記であげたのは、厚労省が設定している国の支援内容です。それだけでなく、民間でも精神障害者に対しての就労支援サービスがたくさんあります。
それらは、「就労移行支援」と「就労継続支援」の2種類に分けられます。
就労移行支援とは、一般企業への就職を目指す方に向けて、必要な知識やスキルを向上させるためにサポートを行う支援サービスです。2016年段階では就労移行支援事業所は全国に3,323ヶ所あり、利用者は約3万人と、就労移行支援事業所を利用して一般企業へ就職する人は年々増えています。
就労継続支援とは、一般企業での就職が困難な方に向けたサービスです。働く場所を提供しています。就労継続支援には、就労継続支援A型とB型の2つの枠組みがあります。A型は雇用契約があり、月収が高いです。B型は雇用契約なしで、平均月収はA型の半分以下になります。
3、就労移行支援利用までの流れ
就労移行支援を利用できる期間は原則2年間です。この2年間をフルで使う方もいれば、半年ほどでリハビリから就職まで行う方もいます。働くことに対するハードルは人それぞれなので、無理なく働くことができるよう各個人に合ったサポートが行われています。
利用する場合、まず初めにクリニックを受診します。移行支援の事業所で医師の意見書や診断書が求められるためです。その後、事業所を調べ、それぞれのサービスを比べながら通いたい事業所を決めていきます。
事業所では説明会や相談会、イベントなどを行っている場合がほとんどですので、そこでどんなプログラムや支援事業が行われているか体感できます。
その後、障害福祉サービス受給者証を申請します。これには利用予定の事業所名が必要ですので、必ず決めてから申請します。
また、利用計画も立てて記載する必要があります。支援員と面談をし、生活リズムや働き始めたい時期、自分自身の課題について考え、確認します。
障害福祉サービス受給者証を受け取った後は、利用契約を行い、利用を開始できます。