共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育

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今回は、インクルーシブ教育について解説していきます。インクルーシブとは英語で、「包括的な」「包み込む」という意味です。障害のある子もない子も包み込んだ教育というイメージでいてください。

 

日本の教育現場では現在このインクルーシブ教育が提唱されているので、障害があっても特別な支援を行うことで障害のない子供と同様の教育を、なるべく同じ環境で与えることができるようになってきました。

 

そもそも、江戸時代ごろの日本では精神障害への理解が乏しい社会だったため、教育の対象とはみなされておらず教育を受けることすらできませんでした。そこからスタートして、明治時代には目の見えない人のための学校など、身体障害があっても教育が受けられるように整備されていきます。

 

そして平成の時代には、養護学校が義務化され重度の障害があったとしても教育の機会が与えられます。しかし、障害がない子供とは別の施設であるため、自宅から離れた学校に通わなければならなかったり、隔離や分離されているという非難は常にありました。

 

それが今では、インクルーシブ教育にまで発展しました。日本では2010年に文部科学省によって方向性が示されたので、実際に障害のある子どもがインクルーシブ教育を実感するようになったのはごく最近なのではないでしょうか。ひとりひとりの子供が丁寧に扱われ、全員が一緒に学ぶことを両立する教育がやっと始まりました。

 

 

インクルーシブ教育を実現する環境

 

では具体的に、どうやってインクルーシブ教育を実現していくのか。まずは学校の設備が必要です。

 

・基礎的な環境(バリアフリーやスタッフなど)を整備する

・障害に合わせて特別支援学校、特別支援学級、通常学級などの場所を用意し、普通の学級と行き来できる体制を整える

・障害に合わせた専門性のある支援体制や教員

・特別支援学級と通常学級の間での共同授業

・個別の支援計画の作成

 

このベースがあって、さらに細かい工夫がされていきます。具体例を列挙していきます。

 

・学校の持ち物置き場を、誰もがわかりやすく整理しやすいように変える

・教室に貼る掲示物を減らし、授業中に紙や布で掲示物を覆うなどして、視覚刺激に敏感になる障害があっても授業に集中できるようにする

・5分前に行動することや予鈴など、学校のルールを明確化し優先順位をつけて誰もが守れるようにする

・毎日朝礼にてスケジュールを口頭でも確認し、計画性を持って過ごせるようにする

・あらゆる情報をなるべく文字だけでなく絵や図を使って、感覚的に理解できるようにする

・授業の中で難易度を分けた質問を考え、能力に関わらず参加できるようにする

・難易度別のプリントを作り、能力に合わせて選ぶことでレベルに合わせた教育を行う

 

言葉にしてしまうと簡単な配慮ですが、なかなかすべてを意識できる教師は少ないでしょう。毎日のルーティンの中で、「これは説明しなくてもわかるだろう」「大体の生徒が先に進んでいるからいいだろう」といった抜けが出て来てしまうためです。

 

ですが本来、障害があると分類された子供のためだけではなく、教育というものは能力に関わらず全員が理解できるよう配慮されるべきです。明確化されたルールや理解しやすい絵などはどの生徒にとっても有りがたいことでしょう。これまでの考え方では「障害がある子に向けたルールや説明文を作ろう」としたものでしたが、全員平等にいられるために工夫された教育がインクルーシブ教育です。

 

 

それぞれの立場とメリット・デメリット

 

各立場によって、インクルーシブ教育を進めることによるメリットやデメリットは違います。それぞれを理解することで、全員平等な教育を目指すことができます。

 

  • ①障害がある子供

今まで受けられなかった教育が受けられ、自宅から通える地域の学校に通うことができるメリットがある。デメリットは、周りに配慮を強いることによる心理的負担といじめなどの被害。同じメリットデメリットを保護者も感じる。

 

  • ②障害がない子供

障害者と接することで共生社会の理念を理解することができ、また能力の有無に関わらず学べる環境が整う。しかし、授業の進行が遅れるなどのデメリットもある。同じメリットデメリットを保護者も感じる。

 

  • ③教員

多様な子供たちと関わり、社会貢献もできるメリットがある一方、配慮の線引きが難しいことと業務の増加が考えられる。

※こちらの記事は入学検討者向けに掲載しているため、簡易的な説明となっております。
転載・流用はご遠慮ください。

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