精神保健福祉士が扱う領域では、発達障害の患者も多くいます。発達障害は、広汎性発達障害(自閉症など)、学習障害、注意欠陥多動性障害など、脳機能の発達に関係する障害です。
今回は代表的な発達障害とその特性、また精神保健福祉士との関わりについてご説明します。
3つの発達障害
まず、発達障害は大きく分けて3つの種類があります。
①広汎性発達障害
自閉症やアスペルガー症候群がこれにあたります。
自閉症は、言葉の発達の遅れ・コミュニケーションの障害・対人関係や社会性の障害があります。パターン化した行動やこだわりが強いことも特性の一つです。知的な遅れを伴うこともあります。よく知っている場所では集中して何かに取り組むことができます。
対して、アスペルガー症候群は言葉の発達の遅れはなく、知的な遅れも伴いません。そのため自閉症よりも発覚しにくいという特性があります。ですが、自閉症と同じく、コミュニケーションの障害・対人関係や社会性の障害・パターン化した行動や興味関心のかたよりがあります。また、言語発達に比べて不器用である点も特性のひとつです。成長とともに不器用さが際立ち、アスペルガー症候群とはっきりする場合があります。
②注意欠陥多動性障害(AD/HD)
集中できない・じっとしていられない・考えるよりも先に動いてしまう、といった特性があります。知的な遅れを伴うこともあります。学校で机にじっと座っていられなかったり、忘れ物を何度もしてしまうといった子供は、周囲の人に呆れられてしまうことなどがありますが、原因は障害にある可能性があります。近年患者が増えていますが、まだまだ世間の理解が進んでいない疾患です。
③学習障害(LD)
知的発達に比べて、「読む」「書く」「計算する」などの特定の能力に著しい困難を示す状態をいいます。読みながら話す、聞きながら書くなど動作を組み合わせるシーンで、苦手なことがあると途端にできなくなってしまいます。読むことに必死になり話しかけられても返事ができなかったり、書くことに集中しすぎて聞くことができなくなったりします。
その他:
- トゥレット症候群
聞きなれない言葉かもしれません。トゥレット症候群とは、突然に起こる素早い運動の繰り返しや発音です。運動や音はチックと呼ばれます。首を振ったり、口を開けたり曲げたりする動きを繰り返してしまうことを運動チック、アやオなどの発音を繰り返したり風邪などではないのにエヘンエヘンと咳払いを続けてしまうことを音声チックと呼びます。
10人に1人の子供が動きや声を繰り返してしまうことがあると言われており、1年以上そういった動きや声が続く子供は100人に1人いると言われています。1年以上の場合にトゥレット症候群と診断されます。
- 吃音症
言語聴覚士の領域である吃音の問題も、発達障害の一つです。一般的に「どもる」と言われる話し方の障害です。幼児期に出るものと考えている方も多いですが、青年期から目立つようになる人や、成人してから電話の場合のみどもってしまい悩む人もいます。
精神保健福祉士の扱う精神疾患では、同じ病名だとしてもその原因や背景は人それぞれ違います。例えば過重労働やリストラによってうつ病になってしまった男性と、いじめにより不登校になりうつ病と診断された男児では、支援方法や解決策は全く違ったものになります。
発達障害と精神保健福祉士の関わり
発達障害の当事者の方とその家族の方に対し、日常生活のサポートや自立支援を行う場所があります。以下の施設に勤務している精神保健福祉士は、発達障害の患者と関わることになります。
・障がい者デイサービス
施設で行われる行事を企画し、障がい者の生きがいを支援します。地域と患者を密接に結びつけ、自立支援にもつなげる職場です。生活支援員や生活相談員などと呼ばれます。
・放課後等児童デイサービス
小中高校の障がい者児童を預かり、リハビリを行う施設です。障がい者デイサービスと同じく行事を企画・開催したり、創作活動などを支援します。児童相談員と呼ばれます。
・地域活動支援センター
障がい者とその家族のために必要な情報を提供したり、食事やレクリエーション、入浴サービスなどを提供します。
・福祉ホーム
自宅で生活することが難しい障がい者のために低額な料金で住居を提供している場所です。日常生活に必要な支援を行い、自宅へ復帰できるようサポートも行います。
・障がい者授産施設
「授産活動」という言葉をご存知でしょうか。一般的な企業に就職して働くのが困難な障がい者が、施設内の仕事をすることを授産活動と言います。それによって働く意欲や技術を伸ばしていく仕事です。職業指導員や就労支援員と呼ばれます。
・保健所
保健医療についての計画を立案したり、心の問題に関する世間の理解を深めるための活動を行います。他の施設が社会福祉士や介護福祉士も対象となっているのに対し、保健所は精神保健福祉士が担当する場所です。精神保健福祉相談員と呼ばれます。
精神保健福祉士として働く中で、発達障害の患者と関わる場所は上記のように多くあります。
しかし、精神保健福祉士がより多く関わる統合失調症やうつ病に比べると発達障害はまだまだ新しい分野です。世間の理解が得られなかったり、前例が少なく対応に迷うケースも出てくるでしょう。
常に新しい情報を入れて学び続け、ひとりひとりの患者と真摯に向き合うことが神保健福祉士に求められています。