精神保健福祉士に求められる業務のひとつに、家族支援というものがあります。
精神保健福祉士は精神病を患った患者だけでなく、その家族とも関わる仕事です。それぞれの患者にはそれぞれの家族とその形があるため、決まった家族支援のフォーマットというものはありません。
例えば、その名の通り家族を支援する業務があります。患者が父親でその子供に病気について理解させるよう支援をしたい。もしくは母親に自宅でのサポートの仕方を指導し金銭面で行政の支援を受けられるよう案内する、などです。
また、家族が原因で患者が精神疾患を患ってしまっている場合、原因を取り除くために家族支援を行う業務もあります。患者の父親が暴力を振るうために引きこもってしまった学生であったり、母親からのプレッシャーが原因でうつ状態になってしまった子供であったりします。
このように直接的に原因となっている場合でなくても、いじめが主な原因ではあるが家族にも相談できる人や理解してもらえる相手がいない、といったケースも考えられます。いじめや過去のトラウマなどは一枚岩で解決するものではないですが、家族が支えるのは解決へのまずできる一歩です。
もしくは、患者の家族があまりに責任を負いすぎてしまい、家族自身も精神的に不安定になってしまうケースもあります。家族としての役割を大きく捉えすぎてしまい、家族が支えれば乗り越えさせることができるはずだと信じていると陥りがちです。
このように家族支援は多岐に渡りますが、今回は「問題を抱える若者とその家族への支援」に絞って精神保健福祉士が留意することを記載していきます。
問題を抱える若者とその家族への支援
①相談を受け、受診の必要があれば勧める
これは当然のように感じることかもしれませんが、家族の認識によっては受診と服薬に抵抗がある方も多いです。病名がつくことを嫌い、なかなか受診に足が向かないという理由も多いです。服薬してコントロールができる病気であればそうするに越したことはないので、誤解のないよう説明をし受診を勧める必要があります。
②家族に依存しすぎていないか確認する
家族との関係が薄いがゆえに起こる精神疾患もありますが、逆の場合もありえます。家族への依存が大きいと、家族という世界に閉じこもってしまって外に出るのが怖くなり、他者からの評価が得られずまた家族とだけしかコミュニケーションを取らない、という悪循環が生まれます。精神疾患の原因が家族とは関係がないように思えても、根底の部分で家族依存が関わっている場合も多くあります。
③家庭内暴力への対処
家庭内暴力について、一番は警察に通報し避難をさせることです。危険性があると判断すれば、そのように指導しましょう。また暴力に暴力で対抗することは勧めません。まだ未遂であり予防の段階であれば、できるだけ相手を刺激せず、2人きりにならないよう第三者を介入させることや、距離を取って会話をするように心がける事などの予防原則を指導します。
④家族の中で役割を見出す
これは精神疾患の段階にもよりますが、全く何もしていない状況が続くよりも何かの仕事が生活の中にあった方がやりがいに結びつくケースもあります。小さい社会である家族の中で、働く意義や責任を見出せると社会復帰への足掛かりになるでしょう。家族と話し合い、例えば新聞受けから新聞を取ってくるでも、掃除や洗濯でも構いません。些細なことでも、失敗してもいいです。それが社会活動に繋がります。
具体的な家族支援の流れ
①家族の誰か(一般には親など,本人もあり得る)からの相談を受ける(来談・訪問)
相談者が何を問題にしているのかと、家族の関係をつかむ。
②問題を抱える本人(本人からの相談の場合は家族の誰か)の話を聞く(来談・訪問)
①と②の相談者の違いを明らかにする。問題はそれぞれの人物の認知であり、事実の追求は意味を持つとは限らない。
③会議を開き、問題の明確化・支援の目標設定・有効な資源の検討・アセスメントの必要性の検討・環境調整の必要性の検討を行う
初回面接の担当者の記録をもとに印象を交えて報告してもらい,必ず複数の「眼」で検討する。また,目標は「最低限クリアする」実現可能な設定を心掛ける。
④家族に対し、③の会議で検討した支援の方向性について説明する
同意が得られる場合、具体的にスケジュールを立て本人の行動を促すように協力する体制作りを進める。支援における家族の役割をアドバイスする。
同意が得られない場合、本人・家族と支援者の信頼関係ができていないので、まずは定期的に連絡を取り信頼関係の構築に努める。
⑤家族との相談のプロセスで会議を開き、方向性とそれぞれの役割、関わりによる変容の確認を行う
本人と家族の関係を調整しながら支援を行う。支援されるのは表面的には「問題を抱える若者本人」だが、本質は「家族全体の関係性」であるから、本人の人的環境である家族は「支援者であると同時に被支援者でもある」という視点を失わないようにする。
⑥目標となる行動や関係性の再構築に向かう変容や方向性が見えるまでケース検討と支援を繰り返す
関係性は動的なもので完璧な解決などないため、見守りフォローする体制を維持する。