コロナ禍のなかで、社会に不安を抱える人が増えてきています。
またその反面で精神保健福祉センターをはじめとして、人々のこころの健康の保持などを援助する機関やそれらを担う精神保健福祉士という専門職が注目されています。
今回は『精神保健福祉士』の役割、仕事内容、就職先についてご紹介します。
精神保健福祉士と目指す方に役立つ情報をご紹介します。
1、精神保健福祉士とは?
精神保健福祉士は精神的障害を持つ方が円滑な日常生活を送れるように支援をおこなう専門職です。平成9年(1997年)制定の「精神保健福祉法」に基づいて生まれた国家資格で、精神科ソーシャルワーカー(PSW)と呼ばれています。
日本では、社会福祉士、介護福祉士と併せて、福祉系三大国家資格(三大福祉士)と位置づけられています。
2、精神保健福祉士の役割
精神保健福祉士の役割は、精神障害を抱える方の生活問題や社会問題を解決するために援助をおこなうことです。具体的には、精神障害者の社会復帰や自立生活のサポートをおこなったり、相談を受けたりします。
そのため、精神保健福祉士は精神障害者の保健・福祉に、関する専門知識や技術が必要とされます、さらにそれだけでなく、冷静さ・包容力・柔軟性・忍耐力など自らの精神面の資質も必要となる専門職と言えます。
また、精神保健福祉士には倫理観について定められた文書があります。
【公益社団法人日本精神保健福祉士協会倫理綱領より】
①精神保健福祉士の専門職としての価値を示す
②専門職としての価値に基づき実践する
③クライエントおよび社会から信頼を得る
④精神保健福祉士としての価値、倫理原則、倫理基準を遵守する
⑤他の専門職や全てのソーシャルワーカーと連携する
⑥すべての人が個人として尊重され、共に生きる社会の実現をめざす
3、精神保健福祉士の仕事内容
先述の通り、精神保健福祉士は精神障害のある方やそのご家族の相談を受けてアドバイスをする仕事です。その相談内容は、社会復帰・生活訓練施設の紹介・就職相談などさまざまです。
就職先によって仕事内容が異なることがありますので、ここでは大きく分けて3つのカテゴリーでご紹介します。
【相談・助言】
・医療費や生活費、減税措置などの公的支援制度の紹介
・社会復帰に向けた障害者支援施設の紹介
・家庭環境の改善や家族の理解を深めるための助言
・医療機関からの退院後の住まいや就労についての提案
【日常生活訓練】
・入院生活から退院に向けた日常生活の訓練(規則正しい生活や交通機関の利用など)
・掃除、洗濯、買い物などの日常生活訓練
・会話や生活マナーの訓練
【そのほかの支援】
・休業、休学に関する手続きの援助
・医療費確保の手続きの援助
・家庭や学校、職場における受け入れ体制の確認
・地域の家族会などへの参加や講習会開催など
4、精神保健福祉士の就職先
精神保健福祉士の就職先というと精神科病院など多くの方は医療機関をイメージされていると思います。もちろん多くの精神保健福祉士は医療施設で勤務していますは、ほかにもさまざまな場所で活躍しています。
【医療施設】
・精神科病院、総合病院の精神科、精神科クリニック、医療機関併設のデイケアなど
【生活支援施設】
・小規模作業所、グループホーム、ケアホーム、地域活動支援センターなど
【福祉行政機関】
・精神保健福祉センター、保健所、福祉事務所、自治体など
【就労関連施設】
・ハローワーク、障害者就労支援施設など
【司法施設】
・保護観察所、少年院、刑務所など
【介護施設】
・特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、有料老人ホーム、グループホーム
デイサービスなど
【その他】
一般企業、教育施設など
同じソーシャルワーカーの資格として、精神保健福祉士は社会福祉士と混同されることがありますが、社会福祉士との違いが支援対象者です。
社会福祉士の援助対象者は高齢者、障害者、児童など福祉全分野に対して、精神保健福祉士は精神障害者に特化して援助するという違いがあります。
仕事の幅を広げたいと両方の資格を持って働く人も多くいます。精神保健福祉士と社会福祉士の国家資格では共通科目があるので、併せて取りやすい資格です。
このように、精神保健福祉士は医療施設や障害者支援施設で精神障害者とそのご家族を対象に仕事をおこなうことが中心でしたが、近年ではその活躍の場が大きく広がってきています。
うつ病や心の病などで休職中に方は約50万人にも増えていると言われています。そのため、企業ではメンタルヘルス対策に力を入れています。休職中の社員の職場復帰支援、人事部門のメンタルヘルス対応について支援やアドバイスをおこなうなど企業でのニーズも高まっています。
また、最近では障害のある子どもたちの「放課後デイサービス」でも精神保健福祉士の活躍の場があります。発達の遅れが気になる児童が増えていることもあり、精神保健福祉士を求める現場の声が高まっています。さらに児童分野では、いじめや不登校の問題に対してスクールソーシャルワーカーとして精神保健福祉士がその役割を担うこともあります。
子どもから高齢者まで多くの方と関わり、その症状もさまざまで難しさもある仕事ですが、精神に障害を抱える方や心の問題を抱えた方の人生のサポートをする大きな役割を持つ職業です。コロナ禍で膨らむストレス社会に益々需要が高まる職業として求められる仕事を言えるでしょう。