「失語症」とは? ~『失語症』になると、どんな症状になるの?~

2019/06/09

失語症

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『失語症』になると、話すことだけでなく、聞く、読む、書く、計算することすべての能力に困難が生じます。

その症状や重さは、脳の損傷した場所と大きさによって違ってきます。

 

では、具体的にどのような症状があらわれるのでしょうか?

「話す」・「聞く」・「読む」・「書く」・「計算する」の5つに分けて説明します。

 

『失語症』になると、どんな症状があらわれるの?

 

1.「話す」

 

言いたい言葉が浮かんでこない

 

自分の思ったことが言葉としてスラスラと出にくくなります。

特に人名や地名などの固有名詞が出にくく、もどかしさを感じることは多いです。

また、「茶碗」と言いたいのに言葉が思い浮かばず、「ご飯を盛るやつ」と言うなど、回りくどい表現になることがあります。

 

 

思ったことと違うことを言ってしまう

 

「みかん」を「りんご」のように単語そのものを言い間違える場合と、

「トイレ」を「トレイ」というように違う音に言い間違える場合もあります。

言葉の言い間違いがひどい場合は、まったく意味不明な言葉が続くようになります。

 

 

文章で話すことが困難になる

 

「オトーサン…カイシャ…ヤスミ…」のように、単語でポツポツと話すようになったり、

「お父さんは会社へ休みでいます」というように、すらすら話せても正しい文章で言えなかったりすることもあります。

 

 

同じ言葉が言えたり言えなかったりする

 

前に一度言えた言葉でも、もう一度言おうとすると言えなかったりすることがあります。

その反対に、さっき言えなかった言葉が次には言えるようになっていたりすることもあります。

 

 

前に言った言葉が続いて出てくる

 

いったん言葉が出始めると、その同じ言葉ばかりを繰り返してしまうことがあります。

例えば、名前を聞かれて答えると、そのあとに住所や年齢を聞かれても、名前を繰り返して言ってしまうような状態になったりします。

 

 

発音がたどたどしくなる

 

唇や舌に麻痺がないのに、すんなりと正しい発音ができなくなり、たどたどしい話し方になります。

 

 

2.「聞く」:耳は聞こえているのに、聞いた言葉の意味が理解できない

 

大勢の人が集まっているところでは会話が聞き取りにくい

 

失語症の症状が軽い場合、日常生活で聞き誤ることはあまりないですが、

大勢の人が集まっているところで集中して人の話を聞き取ることが難しくなります。

 

 

回りくどい言い方、早口、複雑な文章の理解が困難になる

 

たとえば講演会などの複雑な内容の文章の理解は難しくなります。

さらに症状が重症になると、「冷蔵庫から麦茶と牛乳を取ってきて」といった文章の長さでも理解が困難で、「冷蔵庫から麦茶を取って」と伝えて、麦茶を取り出したところで、「牛乳も取って」と分けて伝えると理解しやすくなります。

 

 

身の回りにある品物の名前を言われても、意味がわからない

 

失語症の障害が重くなると、身の回りの品物の名前を言われても意味が理解できず、

きょとんとしたり、間違った理解をしてしまうことがあります。

ただし、判断力は低下していないので、言われた単語の意味がわからなくても、その状況から察して適切な行動をとることができたりします。

そのために周囲の人からは失語症の症状であることが気づかれなかったりもします。

 

 

3.「読む」:目は見えているのに、文字や文章の意味が理解できない

 

複雑な内容の文の場合は意味を読みとれない

 

失語症の症状が軽い人の場合は、簡単な読み物などは楽しむことができますが、複雑な内容になると文の意味を読み取ることが困難になります。

 

 

単語の意味が理解できない

 

失語症の症状が重くなると、文章だけでなく単語の意味そのものを理解することが困難になります。

 

 

かな文字よりも漢字が理解しやすい

 

失語症の患者は一般的に、かな文字に比べて漢字の方が理解しやすい傾向にあります。

かな文字は表音文字であり、発音を表しているだけなので、その文字を見ただけでは意味を理解できません。一方で漢字は表意文字のため、文字を見ただけで大まかな意味を読み取れることが多いので、かな文字よりも漢字のほうが理解しやすいです。

 

 

4.「書く」

 

難しい漢字が思い出せない、文法を間違える

 

失語症の症状が比較的軽い人の場合、文章を書くことはできますが、難しい漢字を思い出せなかったりします。また、濁点や拗音が抜けることがあります。また、助詞を誤るなどの文法上の間違いがあったりします。

 

 

自分の名前が書けない

 

失語症の症状が重くなると、自分の名前も書けなくなることがあります。

自力で自分の名前を書けないときには、漢字のへんやつくりの部分を書き示したりすると、あとから続けて書けたりします。また、見本を見せると書き写すことができる場合もあります。

 

 

5、「計算する」

 

数字を言い間違える・聞き間違える

失語症の人にとって数字は聞き間違えたり、言い間違えたりしやすい物の筆頭です。

たとえば電話番号、金額、日付、時間など数字の桁数が増えるものは、言い間違えたり、聞き間違えたりすることがよくあります。

 

 

計算が困難

 

日常生活でも九九を使うかけ算やわり算が難しく、たし算やひき算でも繰り上がりや繰り下がりがあると難しくなります。

このような失語症の方の評価や訓練、ご家族への助言などを言語聴覚士は支援します。

 

※こちらの記事は入学検討者向けに掲載しているため、簡易的な説明となっております。
転載・流用はご遠慮ください。

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