精神保健福祉士と臨床心理士では、資格や仕事内容などに違いがあります。ここでは、その違いについて詳しく説明していきます。
精神保健福祉士と臨床心理士で大きく異なるのが資格です。精神保健福祉士は国家資格ですが、臨床心理士は公益財団法人「日本臨床心理士資格認定協会」が認定している民間資格になります。国家資格は法律で定められた資格ですので、団体や企業が認定する民間資格と比べて社会的な信頼性や信用性が高いと言われています。
心理系の民間資格はいくつかありますが、臨床心理士はそのなかで最も信頼性の高い資格として位置付けられています。ただし、2018年から、心理系国家資格として「公認心理師」ができました。業務内容は臨床心理士と共通部分が大きいです。
また、資格を取得するためのルートも違います。精神保健福祉士の受験資格を得るには様々な方法があり、高卒者や福祉系の大学を卒業していない人でも、養成施設に通って受験資格を得ることができます。
一方の臨床心理士は、基本的には指定の大学院を卒業していないと受験資格が得られません。さらに、臨床心理士は資格の取得後に5年ごとの資格更新審査が義務付けられています。
精神保健福祉士の仕事内容は、対象者の相談に乗り、精神疾患患者の退院や就労、地域生活、日常生活の質の向上を目指す支援を行うことが中心です。必要な行政手続きを紹介したり、適した施設への橋渡しをすることもあります。
対して臨床心理士の仕事内容は、臨床心理技法によって相談者の心の問題を解決することが中心となります。一般的に「カウンセラー」と認知されているのはこの臨床心理士でしょう。精神保健福祉士は心の問題そのものを解決することが目的ではなく、それによって引き起こされる困難やそれによる日常生活の不具合を改善するための仕事を行う、という違いがあります。
精神保健福祉士と臨床心理士では、対象となる人に大きな違いはありません。精神病患者から一般の人まで、精神的な課題を持つひとそのすべてが対象です。
精神保健福祉士と臨床心理士はどちらも、主に医療や福祉の現場で活躍しています。傾向としては精神保健福祉士は一般病院・精神科病院・精神科クリニック・障害者施設の就職先が多いです。臨床心理士も同様に病院をはじめとする医療分野が多いですが、次いで教育分野の需要が高いです。スクールカウンセラーという名前で児童・生徒へのカウンセリングを行います。
そして近年、精神保健福祉士や臨床心理士の活躍場所として広がっているのが、労働や産業分野です。ストレス対策の必要性が叫ばれている昨今、企業に心の専門家を配置する動きが活発化しています。今後も、対象者の心に寄り添える人材の需要が高まっていくことは間違いないでしょう。