昨今、活躍の場が多方面に広がっている精神保健福祉士。その背景には日本社会において心の問題を抱える人が増えていることや、生活支援サービス分野の拡大があります。ここでは、そんな精神保健福祉士の需要や将来性について、詳しく説明します。
精神保健福祉士が対応する精神障害者は、これまで病院で入院していることの多い病気でした。しかし、最近では精神障害を持っていても普通の暮らしができるように、福祉や医療、地域が協力して包括的な支援体制を築いていっています。
そのため、精神福祉士の需要も病院以外に広がっていっています。障害者を支援する組織自体も増えていますし、行政や司法についても国として力を入れていますから、求人が増える事はあっても縮小することはあまり考えられないでしょう。
また、様々な場面でメンタルサポートに注目が集まっていることも需要の高まりを示しています。例えば、学校や企業などでも精神保健福祉士が求められているのです。
こうした背景には、学校がいじめ問題に取り組んだり、企業がうつ病対策や労働環境の改善に取り組んだりしていることが要因として考えられます。メンタルヘルスが広く世間に認知され、心の病の予防に注目が集まっている今、精神保健福祉士の需要はさらに高まっていくことが予想されます。
そして、同じく心の問題をサポートする「公認心理士」という国家資格ができました。これは2017年にできた新しい資格です。このように心理系の国家資格が増えたことも、心のサポートに需要が高まっている証拠と言えるでしょう。
日本全国の精神保健福祉士の数は、平成31年度時点で89,121人にのぼります。年間3000人以上が増えていますが、高まる需要に対しては数が少ない現状です。同じ福祉職である介護福祉士は1,694,630人、同じ相談職である社会福祉士は245,181人いるのに対して精神保健福祉士はまだまだ少ないです。
【出典】「登録者の資格種類別-年度別の推移」((公財)社会福祉振興・試験センター)
これから高齢化社会がさらに進むことを考えると、認知症などの精神疾患を抱える患者も増え、求人は増加するでしょう。悲しいことですが現在では高齢化問題が解決する見通しは立っていませんので、精神保健福祉士の将来性は高いと言えるでしょう。一度国家資格を得ていれば資格が失われることはないため、安定して働き続けることができる仕事です。
現在、行政が推進している「ニッポン一億総活躍プラン」のなかに、精神障害者の雇用促進が盛り込まれています。これを受けて、すべての職業能力開発校への精神保健福祉士の配置が進められています。
また、災害現場における被災者のメンタルフォローについても、精神保健福祉士の活躍が期待されています。従来は医師や看護師など急性期専門の医療従事者のみで構成されるDMAT(災害派遣医療チーム)が派遣されていましたが、2014年からは精神保健福祉士も参加したDPAT(災害派遣精神医療チーム)の研修が本格化。実際に派遣も行われています。
このように、様々な面で精神保健福祉士の活躍が大きく期待されているのです。