言語聴覚士は、言葉によるコミュニケーションに問題がある方に専門的サービスを提供し、自分らしい生活を構築できるよう支援する専門職です。ここでは、話すことの楽しさや嬉しさを一緒に分かち合うことができる魅力がある仕事の言語聴覚士になるための方法について紹介していきます。
言語聴覚士になるには、「言語聴覚士国家試験」に合格し、国家資格を取得する必要があります。そして言語聴覚士の国家試験を受験するには、その受験資格を満たさなければなりません。
言語聴覚士の国家試験の受験資格を得るためには、文部科学大臣が指定する学校、あるいは都道府県知事が指定した養成所を卒業する必要があります。国家試験の受験資格取得のルートはいくつかありますが、養成校に入るためには高校を卒業していることが最低限の条件となります。
言語聴覚士の養成施設は、ご自身の学歴によって選び方が異なります。
高校卒業者の場合は、文部科学大臣が指定する学校(3~4年制の大学・短大)または都道府県知事が指定する言語聴覚士養成所(3~4年制の専修・専門学校)を卒業することで受験資格が得られます。
【4年制大学】
総合大学・医療福祉大学・保健科学大学などの医療保健学部や人間科学部に、「言語聴覚学科」や「言語聴覚学専攻」が設置されています。そのため、言語聴覚療法と密接な関係をもつ医学や心理学などを専門にする学部・学科と連携が深い場合も多く、言語聴覚療法を多面的に深く学ぶことができます。
また、言語聴覚士になるために必要な専門知識に加え、広く一般教養を身につけることができるのも4年制大学の特徴です。4年間の大学生活で存分に学び、遊び、人と交流し、さまざま人生経験を積んでおくことも、将来言語聴覚士として働く際患者さんとコミュニケーションをとる時に役立つでしょう。
【3年制短大】
4年制大学と同じく、言語聴覚療法の専門知識にとどまらず、一般教養まで幅広く学べることが短大の特徴です。大学より1年間学ぶ期間が短くなるため、「基礎知識&技術を身につけたら、なるべく早く現場に出たい」という人におすすめの進路先です。さまざまな学科がある学校なら、自分とは違った分野を勉強している人、興味や趣味をもった人にも出会えるでしょう。周囲から受けた刺激や人との交流で培ったコミュニケーション力も、言語聴覚士として働く際に役に立つ武器になります。
【専門学校(4年制・3年制)】
言語聴覚士の国家資格を取得し、現場に出ることを最大の目的とした、実践的なカリキュラムが組まれていることが専門学校の特徴です。大学や短大以上に、病院などでの「臨床実習」や「国家試験対策」に力を入れている学校も多いのが特徴です。
一般の4年制大学卒業者の場合は、専修・専門学校(2年制)または指定された大学・大学院の専攻科を卒業することで受験資格が得られます。
言語聴覚士の養成にかかわる一定基準の科目を習得している場合は、指定校で1年間知識と技能を習得することで国家試験を受けることができます。また、外国の大学などで言語聴覚に関する学業を修めた場合は、厚生労働大臣に書類を提出し、認定を受ければ受験資格を得ることができます。
言語聴覚士になるための養成校のカリキュラムは、大きく分けて「基礎分野」、「専門基礎分野」、「専門分野」の3分野で構成されています。基礎分野は、人文科学、社会科学といった一般教養科目が中心です。専門基礎分野では、基礎医学、臨床医学、臨床歯科学など、言語聴覚障害学の基礎となる内容を学びます。
専門分野は、言語聴覚士として働くうえで対象となる障害や疾患について詳しく学ぶ学科です。講義と演習をとおして、失語障害や高次機能障害、言語発達障害、聴覚障害、摂食・嚥下障害などの原因や症状、治療法を学び、リハビリテーション技術などを身につけていきます。
言語聴覚士法によると、言語聴覚士国家試験受験に必要な教育課程における単位数は、12単位の臨床実習を含む合計93単位となっています。これは4年課程、3年課程、2年課程ともに同じ単位数になります。そのため、国家試験受験に必要な教育課程の内容や臨床実習の内容に差はなく、異なるのは修業する年数です。したがって、修業年限が短いほど履修スケジュールがタイトになると考えられます。
ただし、2年課程は大学卒業者を対象としているため、卒業した大学等で履修された科目(外国語や保健体育など)が、免除される場合があります。
言語聴覚士の国家試験は毎年2月の中旬に、マークシート方式の筆記試験で行われます。試験科目は、基礎医学、臨床医学、臨床歯科医学、音声・言語・聴覚医学、心理学、音声・言語学、社会福祉・教育、言語聴覚障害学総論、失語・高次脳機能障害学、言語発達障害学、発生発語・嚥下障害及び聴覚障害学などの基礎科目100問・専門科目100問の計200問が出題されます。
例年の合格基準は120点以上となっています。
2024年2月17日に行われた第26回言語聴覚士国家試験の合格率は、72.4%でした。同じリハビリテーション職である理学療法士や作業療法士の合格率は、例年80-90%前後ですのでリハビリ系国家試験の中では難易度は高いと言えますが、しっかり養成施設で学んだことが身についていれば、十分合格に手の届く試験です。
※出典:厚生労働省
言語聴覚士の資格について、働きながら勉強ができる「通信教育」での取得を望まれる方がいらっしゃいますが、「通信教育」では言語聴覚士の資格をとることはできません。前述したように文部科学大臣が指定する学校、あるいは都道府県知事が指定した養成所に通学し、卒業して初めて言語聴覚士の受験資格を得ることができます。
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