2021/06/02

精神疾患

双極性障害とうつ病の違い

世界的には100人に1人にかかるといわれている双極性障害とはいったいどのような病気なのでしょうか。 ここでは、「双極性障害について」や「うつ病との違い」についてわかりやすく説明します。 1、双極性障害とは   双極性障害は、躁状態または軽躁状態とうつ状態とを反復する精神疾患で、気分障害のひとつです。「躁うつ障害」と呼称される場合もあります。 躁状態による問題行動や、うつ状態によって社会生活の障害を引き起こすこともあるため、自殺率の高い病気として知られています。 発症年齢は双極Ⅰ型障害が平均18歳、双極Ⅱ型障害は20代半ばとされています。   2、双極性障害の原因   双極性障害の原因は明らかになっていません。 一方で、うつ病と比較して遺伝的な要素の影響が大きいと言われています。 遺伝的背景に加えて、性格・過労・心理的葛藤・身体疾病・社会的要因などのストレスが加わって発症するとも言われています。   3、双極性障害のおもな症状   双極性障害では、躁状態とうつ状態の症状が反復します。   ①躁状態の症状  ・気分が高まって元気になった気がする  ・あまり眠らなくても元気  ・急に偉くなったような気になる  ・なんでもできる気になる  ・怒りっぽくなる  ・すぐに気が散る  ・じっとしていられない  ・浪費             など   ②うつ状態の症状  ・気分が落ち込む  ・寝てばかりいる  ・やる気が起きない  ・楽しめない  ・疲れやすい  ・なんにも手につかない  ・決断力がなくなる  ・死にたくなる  ・食欲がなくなる        など      4、双極性障害とうつ病の違い   双極性障害は、一般的には「躁うつ病」という名前で知られています。 その名前から「うつ病」と似ているように思われますが、両者はまったく違う病気です。 うつ病は単極性うつ病とも呼ばれ、気分の落ち込み、やる気の喪失、不眠などのうつ症状だけがみられますが、双極性障害はうつ状態と躁状態(軽躁状態)を繰り返す病気です。 2つの病気は似ているようですが、治療薬も異なります。 多くの双極性障害の患者様はうつ状態で受診しますが、その後、躁状態を発症してはじめて双極性障害と診断されるケースがあります。 5、双極性障害の治療   双極性障害は再発率が90%と高く、慢性の経過をたどることが多い病気です。 医師は全体の経過を把握して、その時点の病相にとらわれず治療計画を立てることや、その患者様の病気について理解することが必要です。 薬物療法としては、気分安定薬の使用が中心となります。抑うつ状態が重篤である場合には、抗うつ薬が使用される場合があります。 先述の通り、再発率が高いため、気分安定薬の使用による維持療法が重要です。   双極性障害の治療でもっとも重要なことは再発を予防することです。 以前の発症時にどんなことがストレスの原因になったのか、家族や周囲の人にも相談したり振り返ったりしましょう。 もし再発の初期徴候があらわれたと思ったら、早めに主治医に相談することが大切です。

2021/05/28

精神疾患

深田恭子さんも公表した「適応障害」とは?

こんにちは。日本福祉教育専門学校です。   みなさん、「適応障害」をご存じですか? 名称をよく聞くようになりましたが、昨今、女優の深田恭子さんも所属事務所から「適応障害」で休業することが発表されました。 今回は、「適応障害」についてご紹介します。   1、「適応障害」とは?   適応障害は、精神疾患の定義や症状で参照されるアメリカ精神医学会DMS-5では、心的外傷後ストレス障害(PTSD)や急性ストレス障害などと同じグループに類別されています。 つまり、適応障害とは何らかのストレスを原因とする精神疾患であることはわかります。   自分に降りかかった出来事や現在置かれている状況から強いストレスを受けて、そのせいで気持ちの落ち込みや焦燥感や不眠などのさまざまな症状が現れる精神疾患です。   原因となっているストレスが解消されると症状が治まることも多い一方で、5年後に40%以上の人がうつ病などの診断名に変更されている事実もあり、適応障害は重篤な病気の前段階の可能性もあると言えます。   2、「適応障害」の診断基準   アメリカ精神医学会DSM-5における適応障害の診断基準で見ると以下のようになります。   ①ストレスの原因が明確である。 ②ストレスの原因となることが起きて3ヵ月以内に症状が出現している。 ③ストレスの原因となることに不相応なレベルの症状や苦痛がある。 ④社会的、職業的など生活面で重大な機能障害がある。   このようにストレスが原因であることが明確であり、他の精神疾患では説明がつかない、 またストレスの原因がなくなった場合には、その症状は6ヶ月以上続かないとされています。     3、「適応障害」の症状   適応障害の症状は人によって現れ方は異なりますが、心・体・行動の変化として、 以下のような症状が見られます。   ①心に現れる症状  ・焦燥感  ・不安感  ・憂鬱さ  ・怒り  ・判断力や思考力の低下 など   ②体に現れる症状 ・眠れない ・手が震える ・汗をかく ・ドキドキする ・頭痛 ・めまい ・食欲不振 など   ③行動に現れる症状  ・人と会うのを避ける  ・電話に出られない  ・遅刻や無断欠席が増える  ・暴飲暴食  ・食事が摂れない  ・喧嘩 など   4、うつ病との違い   うつ病との違いはストレスの原因から離れると症状が改善することです。 適応障害の場合には、ストレスの原因から離れると普段通りの生活を送ることができる人が多くいます。 たとえば、仕事でストレスがありそれが原因となっている場合には、仕事にいこうとすると症状が現れ、家族や友人とでかけたり遊びにいくときには症状がなくなったりします。 これが適応障害の症状であり、心の甘えなどによるものではありません。 それに対してうつ病は、環境が変わっても気分は晴れず、持続的に憂鬱な気分が続き、何も楽しめなくなります。これが適応障害とうつ病の違いです。   5、適応障害になりやすい4つケース   ここでは職場(仕事)がストレスの原因となっていることを想定して、4つのケースを述べます。   ①一生懸命働いているけれど、仕事の量が多く、休めない。 ②自分のペースで仕事ができない。 ③仕事の内容が、自分の性格や能力に合っていない。 ④職場の人間関係がよくない。   具体的には、「勤務時間が超過している」、「勤務中だけでなく休日や常に仕事のことばかり考えている」、「自分の持つ知識や技術が活かせずやりがいを感じられかったりする」、「困ったことを相談できない」などの環境にあると適応障害になりやすいのです。 6、適応障害の治療方法   先述の通り、適応障害は仕事や日常生活上の悩みによる強いストレスが原因ですので、まずそのストレスの原因となることから離れると症状は次第に改善に向かうことが多いです。   適応障害と診断された場合には、下記のような治療法が考えられます。 治療には個人差がありますので、精神科や心療内科を受診して、自分にあった治療法をアドバイスしてもらうことをおすすめします。   ①原因となっているストレッサーの除去 ・仕事が原因であれば、就業環境を変えたり、業務量を調整、もしくは転職や休業する。 ・人間関係が原因であれば、その人と距離を置く。   ②ストレッサーへの適応力を高める ・ストレス解消法を見つける ・認知行動療法   ③十分な睡眠と休養   ④服薬(薬物療法)   「適応障害」について理解を深めていただく一助になったでしょうか。   現代はストレス社会であり、さらに新型コロナの流行で社会生活が大きく変化し、心が疲れてしまうことも増えてしまっているのかもしれません。 心の健康も早めに対処することで予防につながります。 気持ちが落ち込んだり、イライラする気持ちが募る、よく眠れない、食欲がない、今まで楽しかったことが楽しく感じられないなど、心の疲れを感じたら一人で悩ます、ストレスを抱え込まず、早めに周りの人に相談したり、医療機関を受診することが有効です。 また、適切な休暇を取ったり、気分転換を心がけてリスレッシュ、自分の心と身体を大事にしましょう。 深田恭子さんもまたしっかり休業されて、心を休め、笑顔でご活躍されることを楽しみにしたいと思います。   >心に寄り添う仕事「精神保健福祉士」について こちら

2021/05/21

精神疾患

田村淳さんも公表した「HSP」とは?

こんにちは!日本福祉教育専門学校です。 みなさん、「HSP」をご存じですか? お笑いタレントだけでなく、作家や経営者などさまざま分野で才能を発揮しており、2021年3月には慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科修士課程を修了したロンドンブーツ1号2号の田村淳さんも、昨年、SNSでご自身が「HSP」であることを公表しました。 今回は、5人に1人はいると言われているHSPについてご紹介します。 1、HSPとは? HSPは、英語ではHighiy Sensitive Person(ハイリ―・センシティブ・パーソン)といい、「ひといちばん繊細な人」という意味です。この頭文字を取って「HSP(エイチエスピー)」と言います。 これは1990年代のはじめに繊細な人について研究していたエレイン・アーロン博士によって付けられた「人の気質」を表す名称です。 アーロン博士によると、先述の通り、5人に1人、人口の20%がHSPだと言います。 「繊細さ」は生きるものすべてが生存本能「生き残るための戦略のひとつ」であると考えられています。 2、HSPの特徴 HSPの方は、周囲の状況にとても敏感です。この気質を持つ方は職場や家庭などの中で気疲れしやすく、生きづらく感じている方も多いのです。 アーロン博士によると、HSPには「DOES(ダス)」と名付けた4つの特性があるそうです。 【 Depth of processing 】 考え方が複雑で、深く考えてから行動する ①一を聞いて、十のことを想像して、考えられる。 ②調べ物をはじめると深く掘り下げ、その知識の広さを周囲に驚かれる。 ③お世辞をすぐに見抜いてしまう。 ④物事を始めるまでにあれこれ考え、時間がかかる。 ⑤その場限りの快楽よりも、生き方や哲学的なものごとに興味があり、浅い人間や話しが嫌い。 【 Overstimulation 】 刺激に敏感で疲れやすい ①人混みや大きな音が苦手 ②友達との時間が楽しいものの、気疲れしやすく帰宅すると、どっと疲れる。 ③映画や音楽、本などの芸術作品にとても感動して、泣きやすい。 ④人の些細な言葉に傷つき、いつまでも忘れられない。 ⑤繊細なことに過剰なほどの驚いてしまう。 【 Empathy and emotional responsiveness 】 人の気持ちに振り回されやすく、共感しやすい ①人が怒られていると自分のことのように感じて、傷ついたり、お腹が痛くなったりする。 ②悲しい映画や本などの登場人物に感情移入し、号泣したりする。 ③人のちょっとした仕草、目線、声音などに敏感で、機嫌や思っていることがわかる。 ④幼児や動物の気持ちも察することができる。 【 Sensitivity to subtleties 】 あらゆる感覚がするどい ①電化製品の機械音や時計の針の音が気になってしまう。 ②強い光や日光のまぶしさなどが苦手 ③近くにいる人の口臭やたばこの臭いで気分が悪くなってしまう。 ④カフェインや添加物に敏感に反応してしまう。 ⑤肌着のタグやチクチクする素材が気になってしまう。 ⑥第六感がはたらき、よく当たる。 このほかにも、絶対に一人の時間は必要な人や、子どもの頃に親や先生に「繊細」「人見知り」と言われる人もHSPの可能性が高いでしょう。 でも、この4つのうちに1つでも当てはまらない人はHSPではないと定義されています。   3、HSPのセルフチェック HSPは病気ではなく、生まれ持った「気質」です。 その人が生まれながらに持っている感受性や気分の傾向などを指す心の特徴で、環境などに影響される性格と違って後天的に変えることはできません。 また、発達障害、うつ病、アスペルガー症候群とも違います。でもどこか似たような特徴が現れるため、誤解されやすいのです。 うつ病によく見られる「眠れない」「疲れやすい」「気分が落ち込む」「自信が持てない」などの特徴はHSPにも見られますが、うつ病と違うのは「自殺願望」があるかということです。 また、うつ病は、以前は違ったのに物事の感じ方が変わって、落ち込むやすくなったりしますが、HSPは生まれつきの気質のため、“以前”が存在しないのも、うつ病との違いと言えるでしょう。 HSPについては、「日本版HSP尺度(HSPS-J19)を参考に、セルフチェックをしてみましょう。 何個以上だとHSPという線引きではなく、項目に当てはまるのがHSPという目安のチェックリストです。 《HSP目安チェックリスト》  ●大きな音や雑然とした光景のような強い刺激が不快で、煩わしいと感じる。  ●忙しい日々が続くと、暗い部屋やベッドなどのプライバシーが得られる場所に逃げ込みたくなる。  ●他人の気分に左右される。  ●短時間でしなければならないことが多いと、気が動転してしまう。  ●生活や環境に変化があると混乱する。  ●子どものころ、親や教師から「内気だ」や「敏感だ」と、見られていた。  ●美術や音楽、芸術に深く感動する。  ●繊細な香りや味、音や音楽が好き。  ●一度にたくさんのことを頼まれるとイライラする。  ●ビクッとしやすい。 HSPは気質であり病気ではありませんが、うつ病になりやすい傾向があります。 「自己肯定感が低い」「他人に共感しやすい」「疲れやすい」などHSPの方がうつ病になりやすい傾向があります。 うつ病は早期発見が早期回復に繋がりますので、鬱っぽい症状が続いたときには、精神科や心療内科に相談することが大切です。 4、HSPの生きづらさ対処法 HSPの人たりが生きづらさを感じる理由には五感が鋭いという面もありますが、なにより社会で多数派の方に合わさざるを得ないことがあります。 HSPの生きづらさの対処法について5つご紹介します。  1、HSPの特性を自分でも正しく理解する。  2、HSPの人が自分を知ることはもちろん、HSPでない人にわかってもらうことも大切。(わかりやすく具体的に伝えてみること)  3、情報量をコントロールする。  4、環境を選び、心地よさを大切にする。  5、HSPだからこそできる得意分野を持つ。 HSPについて理解を深めていただく一助となったでしょうか。 HSPの研究の研究が進んでいないときには、心配症との違いが解明できておらず、周囲から「気にし過ぎじゃない?」・「よくそんなことまで気がつくね!」・「心配し過ぎじゃない?」と言われることもしばしばあったでしょう。 HSPという言葉が浸透するまでは、「心配性」・「内気」・「引っ込み思案」という言葉で代用されてきました。 社会にはさまざまな人がいて、多様性が溢れています。 HSPを公表した田村淳さんもインタビューで『潔癖症ではなくHSPだとわかってスッキリした。 公表するかどうかはもちろん自由だけど、僕の場合は周りに伝えてよかった。』とお話しされていました。 HSPの人も、そうでない人も、他者を認めて、謙虚な気持ちで思いやりを持って日常生活を過ごすことができる素敵な社会にしていきたいですね。 >心に寄り添う仕事「精神保健福祉士」について こちら

2021/05/14

精神疾患

東日本大震災後も多くみられた「PTSD」とは?

PTSD(心的外傷後ストレス障害)をご存知でしょうか? 今回はこのPTSDについてや、その原因、主な症状、診断、治療、受けられる支援について説明します。 1、PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは?   災害や事故、事件など非日常的なことに遭遇すると、人の心は強い衝撃を受けます。 阪神淡路大震災や東日本大震災の後には、PTSDという言葉を耳にしたり、あるいはご自身や周囲の方でPTSDと言われた方もいらっしゃるかもしれません。   私たち個人の力ではどうにもならないような圧倒されるほどの衝撃的な出来事を経験した場合、それが大きな心の傷(トラウマ)となり、さまざまな症状が現れる疾患です。 きっかけとなる出来事から時間が経っても、強い恐怖心や不安を感じたりフラッシュバックに苦しんだりと日常生活に支障が出ることもあります。   世界保健機構(WHO)の世界精神保健調査によると、日本に住む人の中で一生のうちにPTSDになる人は1.1~1.6%といわれています。患者の年齢層は幅広く男性よりも女性に多く現れます。またPTSDになる人の多くに、うつ病や不安障害などの精神疾患があると言われています。   2、2つに分類されるPTSD   (1)単純性PTSD 阪神淡路大震災、東日本大震災、北海道の災害などのように大きな事故のあとに心の傷として起こることが多い。   (2)複雑性PTSD 反復する虐待や暴力などが一定期間繰り返し経験されることで、心に深い傷(トラウマ)を残すことで起こることが多い。   3、PTSDの原因   PTSDは災害や犯罪被害、事故などの生命をおびやかされるようなトラウマ体験の目撃や体験が原因で起こります。 強いショックによって脳の一部が委縮したり脳の血流が低下したりすることで、さまざまな精神的・身体的な症状が引き起こされ、その状態が回復しないまま長く続くのです。 トラウマ体験をしてもすべての人がPTSDを発症するわけではありません。 PTSDを発症するかどうかは、受けたストレスの強さや種類、社会的サポートの有無や日常生活におけるストレスの有無に左右されると言われています。   4、PTSDのおもな症状   PTSDにはおもに4つの症状があり、それが1ヵ月以上続きます。   ①再体験:トラウマになった出来事をくり返し思い出してしまう つらい記憶を無意識に何度も思い出してしまう状態が続きます。激しい症状は「フラッシュバック」と呼ばれ、頭の中で状況が再現されて、あたかも目の前で起こっているかのような感覚に陥ります。   ②回避:トラウマに関する事柄を避ける 犯罪被害に遭った現場に近づけなくなる、つらい出来事に関する話をしたがらないなどの症状がみられます。行動や人との交流が制限されると、社会生活にも支障が出ることもあります。さらには体験そのものの記憶が抜け落ちる人もいます。   ③否定的感情と認知:否定的な考えやネガティブな感情が浮かぶ 「私が悪いんだ」「信用できる人がいない」など自分や他人に対して否定的な考えが持続して浮かぶ症状です。恐怖、怒り、罪悪感などの感情が続くため、周囲への興味が失せてしまい、自分だけ孤立しているような感覚を持つこともあります。   ④覚醒亢進:神経が過敏になり、常に精神が緊張した状態になる 人の動きや些細な物音に過敏になり、警戒心が強くなるなどの特徴があります。 いつもイライラ・ピリピリして、集中しにくくなったり心身ともに疲れやすくなったりします。不眠や動悸、めまいなど身体面の症状があらわれることがあります。   5、PTSDのおもな治療法   PTSDと診断されたら医療機関やカウンセリング施設で専門家から適切な治療を受けましょう。 ①環境調整 日常の安全を確保します。トラウマにさらされる曝露しそうになる症状が持続している場合や、安全が保障できない場所にいる場合には、社会資源を活用して安心できる場所を確保するようにします。   ②薬物療法 SSRIなどの抗うつ薬を中心とした薬物療法は、PTSDの症状に効果があるとわかってい ます。   ③心理療法 日常生活におけるリラクゼーションや、生活上のストレスに対する対処法を身に付けま す。認知行動療法のひとつである持続エクスポージャー療法(PE療法)は、自然に回復 しないPTSDの症状に対して高い効果があります。この療法は、PTSD患者の70~80% が回復する効果の高い治療法です。   このように、PTSDは災害や事件・事故などの衝撃的な体験のトラウマによって起こる精神疾患で、発症するとフラッシュバックや強い緊張・不安などの症状で日常生活に支障をきたすほか、うつ病や不安障害、アルコール依存症などの疾患と併存することも少なくありません。ひとりで抱え込まず、精神科や心療内科を受診しましょう。

2021/01/29

精神疾患

「冬季うつ」~冬に気持ちが落ち込む季節性うつ病~

寒くなってくると、なんだか憂鬱な気分になったり、気持ちの落ち込み、過食や過眠傾向になったりする場合があります。   ここでは、「冬季うつ」の特徴的な症状とその対処方についてお伝えします。   1、「冬季うつ」の特徴的な症状とは   うつ病の中でも、秋から冬にかけて毎年症状があらわれるのが「冬季うつ」です。 季節性のうつ病であることから、DSM-4では「季節性感情障害(SAD)」ともいわれていました。(現在はDSM-5により改定) 冬季うつ病は、毎年、日照時間が短くなる10月から11月にかけて症状があらわれはじめ、日差しが長くなる3月頃になると回復するというサイクルをくり返す特徴があります。 その症状から「ウインターブルー」という別名もあります。   【冬季うつのおもな症状】  ①気分が落ち込むことが多い  ②以前ならこなせた仕事をうまく処理できない  ③ぐったりとして疲れやすく、体を動かすのが億劫になる  ④今まで楽しんできたことが楽しめない  ⑤考えたり、集中する力が明らかに落ちている  ⑥ふだんより睡眠時間が長くなったり、朝起きられなくなる  ⑦食欲が減退したり、逆に過食になったり、炭水化物を中心に食べ過ぎてしまう   2、太陽光や光の影響を受けやすい   冬季うつは冬季の日照時間と関連しており、日照時間が短縮するにつれて、冬季うつの発症や悪化も関連があると言われています。 日中に太陽光を浴びるとセロトニンという物質が作られます。 このセロトニンは、脳から分泌される睡眠ホルモンであるメラトニンの原材料であり、セロトニンが減少してしまうとメラトニンが生成されなくなるため、季節のリズム、睡眠、覚醒リズム、ホルモン分泌などの体内時計の乱れに繋がるのです。 秋から冬にかけては日照時間が減るため、光刺激を受けることが少なくなり、このように人体の概日リズムを崩すことに影響を及ぼしてしまうのです。   3、「冬季うつ」を緩和するための対処法   ①栄養バランスのよい食事をする セロトニン生成に必要なタンパク質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素を十分に摂取しましょう。肉、魚、大豆などのタンパク質にはセロトニンの生成に必要な必須アミノ酸が含まれているので、過不足なく摂取しましょう。   ②散歩やウォーキングをする 日中、とくに午前中の外出は概日リズムを整えるために役立つので、散歩やウォーキングなどの軽い運動も効果があります。 日光のもとで運動することで、爽快感や活動的な気分も得られるので、生活スタイル改善にもおすすめです。 ③自宅や仕事場を明るくする 朝起きたらカーテンを開けて日光を浴びるなど、昼夜逆転を避けた規則正しい生活が大切です。自然の光により多く当たることがおすすめです。 冬は日が短くなるので、自宅や職場の証明は明るいものにすると効果的です。 冬季うつの治療でも「高照度光療法」という太陽光やそれと同等の光を浴びることで体内時計を調節して生体リズムを整える治療法があります。   今年はさらに新型コロナの自粛生活やリモートワークやテレワークなどの影響で自宅で過ごさざるを得ない状況が続いているため、従来よりも発症する方が増える可能性があります。症状が重いと日常生活に支障をきたす深刻な場合もありますので、「冬季うつ」を感じたら、対処法を実践したみたり、一人で抱え込まず、周りの誰かに話してみたり、専門家に相談してみましょう。   冬の朝こそ、早めにカーテンを開けて日光を取り入れ、新型コロナ感染対策も兼ねて換気しながら、朝日をいっぱい浴びる習慣はいかがでしょうか?  

2020/11/24

精神疾患患者の支援

「精神障害者手帳」の取得と就職活動について

精神障害と診断され、「精神障害者手帳(精神障害者保健福祉)」を申請して交付されるとさまざまな支援が受けられることはご存知でしょうか?   精神障害者の自立と社会参加の促進のために、精神保健障害者をお持ちの方への支援が広がりつつあります。 精神障害と診断されても仕事をしている方もたくさんいらっしゃいますし、それらを支援する精神保健福祉士という専門職の方もいます。   今回は「精神障害者手帳」について説明するとともに、精神障害者の方の就職についても触れていきたいと思います。 1、「精神障者手帳」の対象となる精神疾患とは   「精神障害者手帳は」は、何らかの精神疾患によって、長期に渡り日常生活や社会生活に制約がある方を対象としています。 厚生労働省の推計では、日本国内で何らかの精神障害を抱えた方は約393万人とされ、そのうち精神障害者手帳を取得されている方は約42万人とされています。 対象となるのはすべての精神疾患です。   ①統合失調症 ②うつ病、双極性障害などの気分障害 ③てんかん ④薬物やアルコールによる依存症や急性中毒症 ⑤高次脳機能障害 ⑥発達障害(自閉症・学習障害・注意欠陥多動性障害など) ⑦その他の精神疾患(ストレス関連障害など)   ただし、知的障害をお持ちで、なおかつ精神障害のない方については、「療育手帳制度」があるので、精神障害者手帳の対象とはなりません。 知的障害と精神疾患を両方有している場合は、両方の手帳を受けることができます。 また、精神障害者手帳を受けるためには、精神疾患で初診から6ヶ月以上経過していることが必要になります。 精神障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)の等級は、1級から3級まであります。     2、「精神障害者手帳」を取得した場合のメリット(暮らしにおけるサービス)   「精神障害者手帳」を交付されると様々なサービスを受けられます。 全国一律で受けられるサービスや、地域や事業者により行われるサービスがあります。  ・公共料金等の割引  ・税金の控除や免除  ・生活福祉資金の貸付  ・電車、バス、タクシー等の運賃割引  ・携帯電話料金の割引  ・上下水道料金の割引  ・公共施設の入場料等の割引  ・公営住所の優先入居   3、「精神障害者手帳」を取得した場合のメリット(仕事におけるサービス)   暮らしのサービスのほかにも精神障害者手帳を持っていると、就職や就労などの仕事に関するサービスはどのようなことがあるでしょうか?    ①障害者職場適応訓練が受けられる 実際に職場を体験することができる実習制度です。原則は2週間以内で手当も支給されます。    ②障害者雇用枠で就労できる 精神障害者手帳を所持している方は、求人において「一般枠」だけでなく、「障害者雇用枠」のどちらにも応募することができます。     「障害者枠」では、障害であることをオープンにすることで職場の理解が得られ、周囲のサポートを受けやすくなるなど、働きやすさにも繋がります。   もちろん「一般枠」の求人も活用できますので、理想の働き方によって自分自身で選ぶことができます。   精神障害のある方は個々の障害の程度や症状は異なっており、環境の変化や新しいことへの順応が不得意であったり、少しの変化で心身のバランスを崩しやすくなったります。 主治医と相談しながら、お薬の量をしたり、障害と上手につき合っていく努力をしています。 でも時には不調のため仕事を休むこともあります。   実際に精神障害をお持ちで就労している方を対象としたアンケートでも、『周囲のサポートを受けながら仕事を続けることができている』という声は多く聞かれます。   傷害からくる体調の悪さなど、本人だけではどうしようもないことも、周囲のサポートや理解など整った環境が良い影響をもたらすことがあります。   このように、精神障害をお持ちの方が仕事をしたり、仕事を続けるためには、精神障害者手帳を申請して、サービスを受けることができます。   そして、就労支援には精神保健福祉士という国家資格を持つ専門職が関わります。 精神保健福祉士は精神障害分野のプロフェッショナルですので、精神障害者の方はもちろん、そのご家族の相談援助もおこないます。   精神障害者には社会的な支援体制の拡充とともに、精神障害のある方が積み上げてきた実績もあります。 精神障害手帳を取得されている方は、心身の調子が整わないときやつらい思いをするときもあるでしょう。そんなときには精神保健福祉士から就労に対する多くの情報や判断材料を得て、自分に向いている職場選びを掴むことができるのではないでしょうか。   自分の症状を良く知り、就労する企業を伝え、正しく理解されることも大切です。   時間がかかったとしても、自分にあった進め方で就職を目指していき、焦らず、頑張り過ぎずじっくりと進んでいくことがよいでしょう。

2020/11/17

患者への支援

精神保健福祉士が扱う社会資源について

  精神保健福祉士の仕事は、精神に障害を持った人が、日常生活をスムーズに行えるように相談に乗る仕事です。その中で、利用者に社会資源の活用を提案することは大切な業務のひとつです。では、社会資源とは何でしょうか?     社会資源とは   利用者が少しでもよい状態で自分らしく日常生活を送れるように活用できる、資源です。公的な資源には、公的機関や医療機関、福祉事業所などがあげられます。これらの資源をうまく活用できるように、必要としている人に橋渡しをするのが精神保健福祉士の仕事です。   また、公的でない資源もあります。利用者の家族や友人、ご近所の方々や地域のボランティアなど、法律や制度で定められていない資源です。これらもうまく活用することで、利用者の生活をサポートしていくことができます。特に家族は最も身近な存在ですから、病気について理解を深め生活を支援できるようにアドバイスすることで利用者は生活がしやすくなります。     社会資源の種類   社会資源をもう少し詳しく見てみましょう。種類別に列挙します。   ■相談の場 ・相談支援事業所 ・保健所 ・市町村障害福祉課 ・精神科の医療相談室 ・精神科緊急システム など   ■活動の場 ・自立訓練事業 ・生活介護事業 ・就労移行事業 ・就労継続事業(A型・B型) ・地域活動支援センター ・精神科デイケア など   ■生活の場 ・グループホーム ・ショートステイ ・ホームヘルプ ・訪問介護 ・介護保険施設 など   精神保健福祉士は、利用者に合った社会資源の橋渡しができるよう、これらの資源をよく知っておく必要があります。密に連絡を取り合い、担当者と関係性を築いていくことも重要でしょう。特に公的な窓口については、利用者は複数の場所に何度も行かなければならないとストレスを感じてしまいます。たらい回しにされているという感覚に陥ることもあるでしょう。適切な場所へ、目的をわかりやすく説明した上で案内する配慮が必要です。     社会資源の活用で注意すべきこと   1人の利用者に対して、関わる人間は大勢います。その場合、うまく連携が取れないこともあるでしょう。   例えば、利用者が関わっている人が、医師・精神保健福祉士・ヘルパー・相談支援専門員・ショートステイの職員・地域活動支援センターの職員、だとします。しかし、利用者を支える家族に精神的なストレスがかかっている場合、家族にも医師・心理士・精神保健福祉士の支えが必要かもしれません。これら全員がうまく連携を図れたら素晴らしいのですが、全員が同じ方向を向くことは難しく、時間がかかります。それぞれ全く別の仕事をしている専門職ですから、片方が「利用者のためにこうしてください」と言っても「こちらの方が利用者のためになります」と思う場合もあるでしょうし、施設の基準で「そんな無茶はできません」となる可能性もあります。   大切なことは、違うプロフェッショナルが集まっているので多種多様な考え方があると理解することと、絶対に正しい答えというものが必ず用意されているわけではないと理解することです。また、利用者1人1人が違う人間なので、ケースとしては酷似していても全く別の解決方法が良いというパターンもあります。毎回丁寧に親身になって対応を考えていくことが重要です。社会資源をうまく活用していくために、こういった心構えを持っておくと良いでしょう。     具体的な活用の仕方   社会資源を活用するにあたって、どんなことが必要なのか列挙していきます。   ・目標を明確にして共有する ・目標は、本人のニーズの実現であること ・精神保健福祉士だけでは達成できない目標であることを認識し、目標達成のために社会資源を活用する(他機関に連携をお願いする)ことを意識すること ・精神保健福祉士自身のために資源を活用するのではなく、利用者のニーズを実現するための活用であること ・社会資源の活用が決まったら、臨時的なつながりを目的意識化し定期的に連絡を取るよう決める ・職種間の援助体制を明確にする

2020/11/17

精神疾患

双極性障害(躁うつ病)について知ろう

  双極性障害という言葉を聞いたことがあるでしょうか。以前は躁うつ病とも呼ばれていました。精神保健福祉士が対応する利用者の中で、双極性障害を患っている人ももちろん多くいます。双極性障害について知っていきましょう。     双極性障害(躁うつ病)について   双極性障害は、躁状態と言われる気分が盛り上がりテンションの高い状態になったり、逆にうつ状態と言われる気分が落ち込みテンションが低い状態になったりを繰り返す病気です。 躁状態の度合いによって、激しい場合は双極Ⅰ型、軽い場合は双極Ⅱ型に分かれます。   この説明だけでは「躁状態の場合は良いのでは?」と思うかもしれませんね。しかし実際は、不自然なまでの気分の盛り上がりを指しています。双極Ⅰ型の場合は、生活に支障が出るほどと言ってもいいかもしれません。万能感に溢れて全財産をギャンブルにつぎ込んでしまったり、健康を害しても眠らずに動き続けたりするような状態です。   双極Ⅱ型の場合も程度は軽くなりますが、周りの人に「異様な明るさだな」と思われるような状態です。躁状態の本人は異常なことをしている・言っているつもりはないため、人間関係のトラブルになりやすいです。躁状態が軽いため、うつ状態の方にフォーカスしてしまい「うつ病」と診断してしまう場合もあります。「うつ病」と双極性障害は別の病気であり治療の仕方も異なりますので注意が必要です。   そして、うつ状態の時には憂鬱な気分が晴れず、睡眠も安定せず、あらゆることに活気がなくなります。食欲も低下し健康を害する可能性も高いです。1日中ベッドで横になってしまうという症状もあります。   双極性障害になるのに男女差はありません。また年齢も幅広く、20代から30代前後がボリュームゾーンではありますが子供から老人まで患者はいます。     うつ病と双極性障害の違い   うつ病と双極性障害は、似ているようで全く違う病気です。一般的に言われている「うつ病」は「単極性うつ病」とも言い、うつ状態の症状だけがあります。双極性障害はうつ状態だけでなく躁状態があり、そしてその2つを繰り返します。うつ状態だけに対処する治療と、躁状態とうつ状態のコントロールを加味する治療では方向性が異なりますので、違う病気という認識が必要です。実際に治療で使われる薬も、うつ病の場合は抗うつ薬が処方されることが多いですが、双極性障害では気分安定薬や抗精神病薬が使われる、といった違いがあります。   前述したように躁状態が病気であることは自分では気づきにくいため、多くの患者は「自分はうつ病かもしれない」と思って受診しますが、その16%が双極性障害であったというデータが出ています。また、稀に混合状態という、うつ状態と躁状態が混ざった状態が出現することもあり、自分では見分けにくい病気と言えるでしょう。   うつ病と双極性障害は、原因も違います。うつ病の原因はストレスですが、双極性障害の原因は遺伝的な体質により神経伝達物質の機能が変化することです。簡単に言うと、脳の病気です。不確定な要素が多くすべてが解明されているわけではないですが、心の病気ではなく脳の中で感情のコントロールに関わる部分が変化してしまうためだとわかってきました。     双極性障害の症状   簡単に、躁状態とうつ状態の症状を列挙していきます。   ■躁状態の症状 寝なくても平気 話続けてしまう 人の話が耳に入らない 頻尿・残尿感がある ギャンブルなどの浪費 怒りっぽくなる 注意散漫になる 落ち着きがない 急に偉くなったような気分 自信満々になる   ■うつ状態の症状 反応が遅い 食欲がない 体がだるい 疲れやすい 性欲がない 気分が落ち込む 寝てばかりいる やる気が起きない 楽しめない 決断力がなくなる 死にたくなる イライラする 思考力が落ちる 死にたくなる     双極性障害と向き合う   双極性障害は、放っておくとほとんどの場合再発する病気です。何度も再発を繰り返すと社会的信用や財産を失ってしまったり、人間関係がボロボロになってしまう危険性があります。障害と向き合い、早期に適切な治療をすることが求められる病気です。 再発を繰り返すと、発症がどんどん早くなり急速に躁鬱が交代されることになってしまいます。そして混合状態になってしまうと、うつ状態の「死にたい」という思考と躁状態の行動力や自信満々さが掛け合わさってしまい自傷行為や自殺へ繋がってしまう危険があります。   躁状態があることが双極性障害の特徴ではありますが、躁鬱の期間で言うとうつ期間の方が長いです。うつ状態では考え方が否定的になっていき、やる気がなくなり治療についても前向きになりにくい病気ですので、頑張りすぎず緩やかに治療を続けていく気持ちが大切です。   また、双極性障害やうつ病は、患者自身やその家族が病気を軽視してしまうことも多々あります。「頑張ればなんとかなる」「気のせいだ」というような思考が、病気を悪化させることに繋がります。しかるべき医療機関などで病気を正しく理解していくことが大切ですし、精神保健福祉士を含め患者と関わっていく周りの人間が注意深く導いていくことも必要です。   治療については、薬物治療と心理社会的治療の2つのアプローチができます。薬物治療については心を開ける医師に相談し適切な処置を仰ぎます。心理社会的治療については、患者自らが自分の心理をコントローㇽするアプローチや、自分の考え方を肯定的にする練習などです。その他家族や対人関係によって改善していく方法や、社会リズム療法と呼ばれるものもあります。  

2020/11/09

精神疾患

児童虐待とPTSD(心的外傷後ストレス障害)について

PTSD(心的外傷後ストレス障害)をご存じでしょうか?   強いショックを受けたことが原因となってさまざまな症状を引き起こす心の病気です。 児童虐待を受けた子どもも発症しやすいと言われており、PTSDを予防するには、 ストレス反応に対する正しい理解と対応が必要です。 今回は児童虐待によって心に傷を負った子どもたちと接するためのポイントについて 考えてみましょう。    1、児童虐待とは   厚生労働省では「児童虐待の定義」として、4種類に分類されています。   ①身体的虐待 殴る、蹴る、叩く、投げ落とす、激しく揺さぶる、やけどを負わせる 溺れさせる、首を絞める、縄などにより一室に拘束する など   ②性的虐待 子どもへの性的行為、性的行為を見せる、性器を触る又は触らせる ポルノグラフィの被写体にする など   ③ネグレクト 家に閉じ込める、食事を与えない、ひどく不潔にする、自動車の中に放置する 重い病気になっても病院に連れていかない など   ④心理的虐待 言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱い、 子どもの前で家族に暴力を振るう(DV)、きょうだいに虐待行為を行う など   2、児童虐待の現状   児童相談所の児童虐待の相談応対件数(平成26年度)は、児童虐待防止法施行前(平成11年度)の7.6倍(88,931件)に増加しています。 虐待死も年間で50人を超えており、児童虐待によって子どもが死亡した件数は、高い水準で推移しています。   児童相談所における児童虐待相談対応件数に内訳は以下の通りです。(平成26年度) ①身体的虐待 29.4% ②ネグレクト 25.2% ③性的虐待  1.7% ④心理的虐待 43.6%   虐待者別では実母が52.4%と最も多く、次いで実父34.5%となっています。   また、虐待を受けた子どもの年齢構成別では小学生が34.5%と最も多く、 小学校入学前の子どもの合計では43.5%と高い割合を占めています。   3、虐待を受けた子どもが発症しやすいPTSDとは?   PTSD(心的外傷ストレス障害)とは、先述の通り、強いショックや精神的なストレスが心の傷となってしまい、そのことが何度も思い出されるトラウマ状態が長く続いて、心身に不調が現れてしまう病気です。   虐待のほかにも、災害や事故、事件や犯罪被害などが原因になると言われています。   感受性の強い子どもたちは、大人よりもPTSDになりやすいと言われています。   その原因が虐待などの場合、複雑性PTSDとなってしまい、人間不信や協調性の欠如、 多重人格などになってしまうケースもあります。 また、回復までに時間がかかったり、すぐに発症せずに大人になってから発症する場合もあります。   4、心的外傷後のストレス反応とPTSD症状   虐待などショックな出来事の後には、一時的にあらゆるストレス反応が現れます。   ①ストレス反応  食欲 食欲不振、吐き気、嘔吐、消化不良 痛み 頭痛、腹痛、筋肉の痛み 睡眠 眠れない、夜中に目が覚める、悪夢を見る 排泄 便秘、下痢、おねしょ 衝動性 落ち着きがない、攻撃的になる、注意力が散漫になる、すぐに飽きてしまう 急に泣き出したり怒ったりする 執着・再現 こだわりが強くなる、体験した出来事を何度も話したり、その体験に関連した遊びに 友達を巻き込む 赤ちゃん返り ぐすったり泣いたりすることが多くなる、離れるのを怖がる 気持ちの低下・無気力 元気がない、気持ちが沈み込む、ボーっとして無気力になる   ②PTSDの主な症状 フラッシュバック 原因となった出来事を何かの拍子に思い出し、恐怖や苦痛、怒りや悲しみなど さまざまな感情が混じった記憶がよみがえりパニックを起こすこともある。 回避 つらい記憶を思い出すきっかけとなる場所や人を避ける。 過覚醒 常に精神的に不安定になり、集中力に欠けたり、極度の緊張状態になる。 よく眠れないことなども起こる。 感覚まひ つらい記憶に苦しむことを避ける防衛反応として、感情や感覚がマヒする。 人の心を許さず、人からも愛情を感じにくくなる。     5、児童虐待によるPTSDには専門的なケアを   このように児童虐待によって心に傷を負った子どもたちにはさまざまな症状が現れることがあります。 これらの症状が長引く場合には専門的なケアが必要となります。   虐待でつらい体験をした後には、生活に支障がでるほどの症状があらわれたり、それが悪化してしまうケースもあります。   このような場合には専門家への相談が必要です。医師や精神保健福祉士、社会福祉士など専門家に相談し、自分だけで抱え込まないことが大切です。   また、虐待が疑われる場合や異変に気付いたときには、児童相談所などの窓口に相談するなど、早期発見と早期対応が虐待から子どもを守ることに繋がるのです。

2020/11/04

精神疾患

うつ病になりやすい人とは?

残業が多くて仕事休めない。休日も返上してプレッシャーの中で働いている人。 同じ環境にいるのに、うつになる人とそうでない人がいます。     「うつ病はなぜ起こるのか?」 はっきりとした原因はまだよくわかっていませんが、 ここではうつ病になる原因やうつ病になりやすい人について考えてみましょう。   1、うつ病の発症   うつ病はストレスやからだの病気、変化などいろいろな要因が重なって発症すると考えられています。 そして、うつ病は1つの原因のみで発症するのではないと言われています。   【環境要因】 ①幼少児の厳しい体験 ②家族や親しい人の死亡 ③仕事や財産の喪失 ④家庭内不和 ⑤就職や退職、転勤、結婚や離婚 ⑥妊娠、育児、引っ越しなどの環境の変化   【身体的要因】 ①慢性的な疲労 ②脳血管障害 ③感染症、癌、甲状腺機能の異常 ④月経前や出産後、更年期などホルモンバランスの変化 ⑤降圧薬、経口避妊薬などの服用   2、過度なストレスがきっかけになる   うつ病は過度なストレスが引き金となり発症することもあると考えられています。 日常の中にはさまざまなストレスがありますが、 特に多いのは「人間関係」と「環境の変化」です。 それは悲しい出来事だけでなく、嬉しい出来事でも環境の変化からうつ病になることもあるのです。 たとえば、以下のような出来事です。   ①仕事に関すること  昇進、降格、失業、仕事でのミス、定年 ②健康に関すること  からだの病気、事故、月経 ③家族に関すること  妊娠、出産、子どもの就職や結婚、家庭内不和、離婚 ④お金に関すること  貧困、税金問題、相続問題 ⑤状況の変化  旅行、引っ越し、転勤 ⑥喪失体験  近親者との死別や離別、病気   3、うつ病になりやすいタイプ   うつ病になりやすいタイプとして、「まじめで責任感が強く、人あたりもよく、周りから評価も高い人」が多いと言われています。 このようなタイプの人は自分のキャパシティーを超えて頑張り過ぎてしまったり、ストレスをため込んでしまうので、こころのバランスを崩してしまいやすくなるのです。   うつ病になりやすい気質はおもに3つあります。   【循環気質】 ・躁状態と抑うつ状態を繰り返す双極性うつ病になりやすいタイプ ・社交的、善良、親切で親しみやすい反面、激しい一面も持っている。   【執着気質】 ・義務感は強く、仕事熱心、完璧主義、几帳面、正直などの特徴がある。 ・仕事の質は高いが量をこなせない。 ・一生懸命完成させるために興奮状態が続いたあとにガクッときて、抑うつ状態に。 ・二者択一で白か黒をはっきりさせたい。 ・優先順位を付けられないタイプ。   【メランコリー親和型気質】 ・常識を重んじ、常に他人に配慮を忘れず、円満な関係を保とうとし、 自己の性格だけでなく、他との関係も重んじタイプ ・他人の評価がとても気になり、何かが起きると悲観的になってしまう。 ・すべて自分の責任だと考えるタイプ     うつ病になった人の多くは自己洞察力が低いと言われています。   入院が必要な重度のうつ病患者こそが、「まだ大丈夫です!」と平気で言ったりもします。 自己洞察力が高い人であれば、「最近、忙しすぎて、調子が悪いな。」と気づき、ストレスも軽症のうちにコントロールしようとするので、うつも重篤化する前に対処できるのです。   自己洞察力を高めるには「アウトプット」が効果的です。 とくに「書くこと」で自分自身の内面を客観的に観察できるようになるので、習慣にするとよいでしょう。   4、うつ病予防に効果的なのは「運動」     先述の通り、「書くこと」は自分自身の内面を客観的に観察できるようになるので、習慣化することがおすすめですが、さらに効果的ともいえるのが「運動」です。   ジョギング、ウォーキング、エアロバイク、水泳、エアロビクスなどの有酸素運動は、うつ病を予防し、不安や落ち込んだ気分を改善してストレスホルモンを正常化することができるという研究結果が示されています。   うつで気力がない人は、普通のウォーキングや散歩など軽い運動でも効果が得られるので おすすめです。   もしも気持ちが落ち込んでしまったら、自分ひとりで抱え込まずに、周りの人に話してみるとスッキリすることもあると思います。   「自分はうつ病になったのかしら?」と不安になったら、心療内科や精神科クリニックなどの専門機関に相談に行ってみるのもいいでしょう。   人間は誰でも心に悩みを抱えたり、気分が落ち込んでしまうことがあります。 そんなときにはぜひ抱え込まずに話してみましょう。