2020/10/29

精神保健福祉士の仕事

精神保健福祉士(PSW)とカウンセラーに仕事の違いとは

精神保健福祉士(PSW)もカウンセラーも、人の心の問題に関わる仕事です。 実際にキャリチェンジを目指すときに、その違いについてわからなかったり、 迷ってしまったりしていませんか?   『どの資格を取ったらいいの?』 『精神保健福祉士とカウンセラーの違いがよくわからない』 『自分に目指している仕事内容だと、どちらがいいの?』 『実際に就職先があるのは?』   今回は精神保健福祉士(PSW)とカウンセラーとの違いについて それぞれどこか違うのかわかりやすく説明します。   1、カウンセラーと呼ばれる資格とは?   「カウンセラー」といっても、国家資格から民間の資格までさまざまあります。 これまで心理の専門職としての国家資格はありませんでしたが、 平成29年に「公認心理師法」が施行し、国内初の心理職の国家資格として 「公認心理師」が誕生しました。   「公認心理師」と似ている職業で、民間資格ではいくつかの資格があります。 一般的に“カウンセラー”として認知されているのが「臨床心理士」かもしれません。   この資格は指定の大学院を修了して受験することなど、 比較的カウンセラーの資格取得のなかでは高学歴とも言える資格です。 心理系の民間資格のなかでは最も高い信頼性として位置付けられてきた 資格と言えるかもしれません。   ただし、あくまで協会認定の資格のため、国家資格ではなく民間資格と いう位置づけになります。   そのほかに、「産業カウンセラー」という資格名をご存じの方もいらっしゃると思います。 この資格は協会の養成講座を修了した方に受験資格があり、 「臨床心理士」とおなじく民間資格になります。   さらに、「認定心理士」という資格もありますが、こちらも学会認定のため、 民間資格です。   このように、「カウンセラー」と呼ばれるにはいろいろな資格があり、 必要な学歴や取得条件にも違いがあるので、それぞれ確認してみるとよいでしょう。       2、国家資格である精神保健福祉士とは?   精神保健福祉士は、臨床心理士など民間資格とは異なり、 資格取得ルートでも違いがあります。 「精神保健福祉士」は国家試験を受験するためにさまざまな方法があり、 高卒の方や福祉系大学を卒業していない方でも、 養成施設に通って国家資格を得ることができます。 「臨床心理士」のように指定の大学院を卒業していないと受験資格が得られず、 さらに資格に取得後に5年ごとの資格更新審査の義務付けということもありません。 国家資格である「精神保健福祉士」は、国家資格ということもあり社会的な信用度もあり、民間資格であるカウンセラーよりも良い待遇で働けるケースが見られます。   3、「精神保健福祉士(PSW)」と「カウンセラー」の仕事内容の違い   精神保健福祉士とカウンセラー(ここでは臨床心理士)は、 精神疾患をお持ちの方から精神的情緒に課題を持つからと接していく という点は変わりません。 ただし、仕事内容には大きな違いがあります。   ①精神保健福祉士の仕事  社会復帰の実現をするために「生活レベル」でのアドバイスやサポートを おこなったり、 地域で利用できる福祉サービスの情報提供をおこないます。  精神科ソーシャルワーカーや精神科ケースワーカーとも言われ、相談援助が仕事です。   ②カウンセラー(臨床心理士)  心理的な側面が強く、カウンセリングを用いたり、個々の患者と 心の問題を解決していくことがおもな業務です。     このように、精神保健福祉士は日常の支援、 カウンセラー(臨床心理士)は臨床心理技法によって相談者の心の問題を 解決することを目的としています。 そのため、仕事内容は別のものとなります。   4、「精神保健福祉士(PSW)」と「カウンセラー」の働く場所の違い   精神保健福祉士とカウンセラー(臨床心理士)では活躍できる場所でも違いがあります。 それぞれのおもな職場について知っておくとよいでしょう。     ①精神保健福祉士の就職先 おもに一般病院、精神科病院、精神科クリニック、心療内科クリニック、障害者施設、 一般企業、公的機関 など     ②カウンセラー(臨床心理士) カウンセリングルーム、病院、NPO法人、一般企業 など     臨床心理士の資格を持ちつつ、さらに活躍の場を広げるために 国家資格である精神保健福祉士の国家資格を取得といったキャリアアップをする カウンセラーの方もいます。   精神保健福祉士はこの資格だけでも専門職として就職できるため、 加えて民間資格を取得しなくても正規雇用はされるケースが多いようです。 なかには公務員試験を受けて行政でソーシャルワーカーとして仕事をしている 精神保健福祉士もいます。   このように、精神保健福祉士とカウンセラーにはそれぞれの仕事内容や就職先に 違いがあることがわかります。 人の心に寄り添う専門職として、どのような関わり方で、 どのような職場で働きたいのかによって目指す資格を考えてみると 整理しやすくなります。   今日の少子高齢化やストレス社会によって精神保健福祉士やカウンセラーの需要は 益々高まっており、これまで以上に教育機関、司法施設、更生施設など 活躍の場が増えることが期待できます。 これからのキャリアアップ、キャリアチェンジの参考にしてください。

2020/10/27

精神疾患

うつ病と自殺について

新型コロナウイルス感染症の影響もあってか、有名人の自殺や自殺者による巻き込まれ死亡など、自殺に関連する痛ましいニュースが報道されています。 うつ病は誰でも発病する可能性があり、決して他人事ではありません。 また、うつ病で一番問題になることは自殺です。 今回は、「うつ病と自殺」について知り、大切な命を守ることを一緒に考えましょう。   1、うつ病の原因とはなにか うつ病の原因ははっきりとしたことはわかっていませんが、脳内伝達物質のバランスの乱れによっておこっていると言われています。 几帳面や生真面目で対人関係に配慮深い性格がうつ病になりやすいとされていますが、しかし、このような性格の方がすべてうつ病を発症するわけでもありません。 また、うつ病を発症した方が同じ性格をもっているわけでもありません。 性格傾向は重要な要素ではありますが、多くの要因の一つと考えておくとよいでしょう。 性格以外でも、環境の変化も要因となり得ます。コロナ禍で自殺のニュースが多く取り上げられているのも環境の変化が影響しているのかもしれません。リストラ、転職、就職、離婚、死別など状況の変化はストレスとなり、うつ病発症のリスクを高めると考えられます。 うつ病になると、どこに、誰かに、など何かに原因を求めがちです。その結果、本人の性格やご家族のせいにされたり、職場のせいにされたり、さらに人間関係がまずくなってしまうこともありますが、これらは治療的には避けたいところです。 うつ病という病気の原因を一つと考えるのではなく、身体面・心理面・社会的側面などが関与する中で発症したものと捉え、家族や友人、職場も治療の協力者として考えていくとよいでしょう。   2、うつ病ではどんな症状がでるのか うつ病は「心の病」であり、「身体の病」でもあるかもしれません。 実際にうつ病となると身体にもさまざまな症状が出てきます。 【自分で感じる症状】 憂鬱、気分は重い、気分が沈む、悲しい、イライラする、元気がない、眠れない、集中力がない、好きなこともやりたくなくなる、細かいことが気になる、大事なことを先送りする、物事を悪い方向へ考える、決断できない、自分を責める、死にたくなる 【周りから見てわかる症状】 表情が暗い、涙もろい、反応が遅い、落ち着きがない、飲酒量が増える 【身体に出る症状】 食欲がない、便秘がち、身体がだるい、疲れやすい、性欲がない、頭痛、動悸、胃の不 快感、めまい、喉が渇く   3、自殺の予兆 うつ病で一番問題になるのは自殺であり、命にかかわる病となります。 うつ病は軽度であっても「死んだ方が楽になる」と考えてしまう人がとても多く、自殺願望へと繋がっていきます。 日本でもここ数年は年間で自殺者が3万人を超えており、なかでも中高年の男性が多いため、男性の平均寿命を下げたとも言われています。 自殺者の約9割に精神障害がみられ、そのうち4割がうつ病ではないかといわれています。このようにうつ病による自殺の問題は社会的にも大きいのです。   自殺が起きる背景には、うつ病のほかにも、統合失調症、アルコール依存症、薬物乱用、パーソナリティ障害などの心の病が隠れています。 自殺という最後の行動に及ぶ前に精神科などの専門医療機関に受診していた方はごくわずかというのが現状です。 とりわけ、心の病のなかでも、うつ病が最も自殺との関連が強いのです。 では、実際に自殺にはどのように行動の変化が現れるのでしょうか。 潜在的に自殺の危険が高いと考えられている人は、何らか行動の変化が現れた場合、自殺の直前サインと考えられます。   【自殺の直前のサイン】  ●情緒が不安定になる。  ●深刻な絶望感、孤独感、自責感、未価値観に襲われる。  ●これまでの抑うつ的な態度と変わって、不自然なほどに明るく振る舞う。  ●性格が急に変わったように見える。  ●周囲から手を差し伸べられた救いの手を拒絶するような態度に出る。  ●投げやりな態度が目立つ。  ●身なりを構わなくなる。  ●これまでに関心のあったことに対して興味を失う。  ●職場や学校を休みがちになる。  ●交際が減り、ひきこもりがちになる。  ●激しい口論やけんかをする。  ●過度に危険な行動に及ぶ。  ●極端に食欲がなくなり、体重が減少する。  ●不眠がちになる。  ●さまざまな身体の不調を訴える。  ●家出、放浪、失踪をする。  ●多量の飲酒や薬物を乱用する。  ●大切にしていたものを整理したり、誰かにあげたりする。  ●死にとらわれる。  ●自殺をほのめかす、自殺についてはっきりと話す。  ●遺書を用意する。  ●自殺の計画を立てたり、手段を用意したりする。  ●自傷行為に及ぶ。   4、うつ病の治療とは このように自殺を予兆するサインがいくつか認められたら、自殺が実行に移される危険は高いと判断して、救いを求める叫びとして真剣に捉えることが大切であり、専門家による適切な治療を受けることが大切です。 うつ病の治療には効果的な薬や心理療法が開発されています。 うつ病になったことを認め、単に悩み事や怠けた状態でなく、心や身体を巻き込んだ深いレベルの病気が起こっているということを認識することも重要です。 うつ病は再発予防までを視野に入れて息の長い付き合いになることを理解することも必要といえるでしょう。   <生きづらさを感じている方々へ> 新型コロナウイルス感染症の影響もあって、今後の生活について不安に感じておられる方も多いのではないでしょうか。 どうかひとりで悩みを抱え込まず、まずはご家族やご友人、職場の同僚など、身近な人に相談してください。 もし、身近な人には相談しづらい、あるいは相談できる人が周りにいないというときは、 「こころの健康相談統一ダイヤル」や「自殺対策のSNS相談」などに、あなたの不安やつらい気持ちを伝えてください。あなたからの相談を待っています。 支えにつながるその一歩を、どうか踏み出してください。 厚生労働省 加藤勝信   ●こころの健康や精神科医療など精神保健福祉全般に関するご相談は、全国の精神保健福祉センターへ

2020/10/22

精神保健福祉士の仕事

精神保健福祉士って独立開業できるの?

  精神保健福祉士というと医療機関や福祉施設など働く場所は多岐に渡ります。では、独立開業することはできるのでしょうか?   結論から言うと、独立開業する人は少ないですが、可能です。   方法は3パターンあると考えられます。     1、NPO法人などの経営   精神保健福祉士としてその専門性を活かしたNPO法人・社会福祉法人を立ち上げ、地域の法人と関わり合いながら事業を作っていくのが最も考えられる方法でしょう。冒頭に挙げた医療機関や福祉施設といった箱を自ら作り、経営するイメージです。   精神保健福祉士の業務の特性は、患者の生活を支えることと各専門家と連携を取ること、退所後の社会復帰までのサポートなどがあげられます。これらは精神保健福祉士一人だけでは成り立たせることができませんので、スタッフと設備などを整える必要があります。   そのため精神保健福祉士の知識だけでなく、経営や経理についても知った上で計画を考えなければならないでしょう。道のりは長いですが、自分の理想とする精神保健福祉の形を実現できる、やりがいのある道だと言えます。     2、成年後見制度の後見人 成年後見制度というものをご存知でしょうか。認知症や知的障害などの理由で判断能力が衰えてしまった方の、財産を保護する制度です。その保護を行う人を成年後見人と言います。家庭裁判所が選任する場合、本人の親族のほか、弁護士や司法書士、税理士、行政書士、社会福祉士、社会保険労務士、そして精神保健福祉士などの専門職が対象となります。選ばれた場合、精神保健福祉士の資格を使って個人的に報酬を得ることが可能です。   しかし、後見人としての仕事は精神保健福祉士としての主な業務とは違うことに留意しなければなりません。財産の保護・管理や生活の見守りなどを行います。また、一般的な独立開業とは違って報酬が見込めないため、後見人の仕事のみで暮らすことは難しいでしょう。     3、別の資格と併用して独立開業する 精神保健福祉士の知識を活かしながら、別の資格を取得して独立開業する方法です。例えば社会福祉士であれば併せて取得している人も多い資格であり、独立型社会福祉士として独立することもできます。精神疾患のある人に限らずより広い範囲で相談業務・相談援助を行いたい方は社会福祉士の取得がおすすめできます。   その他には介護福祉士を取得し介護施設の開所を目指したり、心理カウンセラーやセラピストにまつわる勉強をして独立を目指すこともできます。  

2020/10/22

精神疾患

精神疾患の要因となる誹謗中傷

  今回は、年々増加する誹謗中傷の被害について見ていきましょう。   まず、誹謗中傷とは根拠のない悪口・陰口などを言うことで他者を傷つける行為を言います。近年ではインターネット・匿名掲示板・SNSでの被害が拡大しており、社会問題となっています。大きくは「いじめ」と捉えることができますが、肉体的な加害ではなく言葉の暴力を指しています。   精神保健福祉士に助けを求める方の中に、人に傷つけられたことによって精神疾患を負ってしまった方は多くいます。症状は多岐に渡りますが、うつ病やパニック障害、ストレス障害などが考えられます。また、複合的な理由で不登校やひきこもり、依存症などになり支援を求めていることもあります。今後、誹謗中傷の被害に遭った患者はより増えていくでしょう。   精神保健福祉士として教育機関で働き、いじめや不登校などの問題を解決する場合にはその要因として誹謗中傷は頭に入れておかなければなりません。また、業務では直接的に誹謗中傷の対処といった内容を行うことのない、生活支援サービスなどの職場だとしても、患者の心の病について深く理解をすることは非常に重要です。     誹謗中傷がなぜ大きな問題となるのか   なぜ誹謗中傷が大きな問題となっているのか、怖い部分を見ていきましょう。 1つは、スマホやSNSが生活に密接に関わっていることです。1日に何度も通知が入るなどして生活の中に不快な書き込みが入り込んでいくことで、精神面で追いやられてしまうのです。   2つめは、中傷内容を拡散されたり支持者がいたりすることで実数よりももっと多くの人に責められている・嫌われている気持ちになってしまう点もあります。   3つめは、誹謗中傷を受けても本人が心の傷に気付き難いことです。アプリなどの身近なツールで受けた中傷は「気にしなければいいこと」「誰にでもあること」などと思ってしまい、傷が大きくなるまで放っておいてしまう可能性が高いからです。これにより人に相談し難く思い抱え込んでしまうという悪循環が生まれています。     誹謗中傷要因でのうつ病治療   では、例として、誹謗中傷を要因としてうつ病を発症してしまった患者の場合、どういった治療の方法があるのか考えていきましょう。   まずは誹謗中傷が現在進行形で続いているのであればそれを即刻解決することです。どんな方法で誹謗中傷を受けているのかによって解決策は変わってきますし、それは患者が解決できることもあれば教育機関や警察に協力を仰がなければ解決できないこともあります。誹謗中傷が止められた場合でも、相手からの謝罪や慰謝料などを求めるのであればそこまで完了する必要があります。   そして、誹謗中傷で受けた心の傷は、誹謗中傷が終わっても残ります。実際にうつ病を発症した人は終わってからの方が多いのではないでしょうか。人と関わることに恐怖や不安感を抱いて行き辛さを覚えたり、十何年も経った後に精神疾患として現れる場合もあります。   うつ病になってしまった場合、大切なことは休養です。脳内のエネルギーが少なくなっている状態なので、消耗しないように休みます。休むことは、人によっては学校や会社を長期的に休んだりと大がかりになることもあるでしょう。その際には家族や社会のサポートが必要になります。誹謗中傷が原因である場合、怖い部分の3で挙げたように「そんなことで」と軽く見てしまう人も多いでしょう。本人のみならず家族が「会社を辞めるほどではない」と思ってしまっては休むことができません。家族から理解が得られず精神的に楽にならない環境であれば入院することも手段のひとつです。   そこから、薬物療法もしくは精神療法にて治療をしていく形になります。精神保健福祉士が関わるのは精神療法です。認知療法・認知行動療法といった方法では、誹謗中傷の受け止め方を患者の中で変えていくことを目指します。「自分が悪いわけではない」という思考を持つことが大切なのですが、誹謗中傷被害では特に影響を受けてしまう部分です。匿名もしくは知らない人からの理不尽な攻撃を受けた場合、因果関係がわかる攻撃よりも「自分が悪い」と思ってしまいがちだからです。この考えを払拭できるように導くのが認知療法・認知行動療法です。

2020/10/02

精神保健福祉士の仕事

ストレス社会で活躍できる精神保健福祉士とは

新型コロナウイルス感染症で緊急事態宣言の最中、テレビ画面で「精神保健福祉センター」という文字をご覧になった方も多いのではないでしょうか。 精神保健福祉センターでは心の問題や病気で困っているご本人やご家族、関係者の方からの相談を受けており、東京都内では3か所設置されています。   アルコール依存症や薬物依存症の問題、思春期・青年期等における精神医学的問題について専門の職員が相談に応じています。精神保健福祉士もまたその役割を担っている専門職です。   1、精神保健府保健福祉士とは   精神保健福祉士は、精神に障がいを持つ方を相談業務でサポートする専門職です。 社会福祉士、介護福祉士とともに国家資格であり、「福祉系の三大資格」や「三大福祉士」とも呼ばれています。 職場では、「医療ソーシャルワーカー」や「生活相談員」という肩書で働いていますが、その中でも精神保健福祉士の国家資格を持っている人だけが、「精神保健福祉士」と名乗ることができます。   2、精神保健福祉士の仕事とは   精神保健福祉士が活躍する場をさまざまありますが、おもには先に述べた通り、精神的に障がいを抱えた方や、そのご家族の相談に乗ることです。 相談に乗るということでイメージする職業としては心理カウンセラーを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。 心理カウンセラーは精神疾患を治すことを目的としてカウンセリングをおこないますが、精神保健福祉士は自立した生活を送れるように社会復帰を目的としていることに違いがあります。 精神保健福祉士の仕事は、「生活費に困っている」「職場に復帰したい」など地域での社会復帰に向けて生活面で困っていることに関してサポートをおこないます。 そのためさまざまな支援制度を理解し、その相談者の悩みに対して活用できる支援制度を紹介することも大切な仕事です。   3、精神保健福祉士と社会福祉士の違い   相談援助の資格を目指す方からよく質問をいただくのは、『精神保健福祉士と社会福祉士とはどのように違いがありますか?』や『自分がやりたい仕事の場合、どちらの資格を目指したらいいのでしょうか』という内容です。 どちらも相談援助業務がメインであり福祉の専門職ですが、その支援対象者の範囲異なっています。 精神保健福祉士は、精神疾患を持っている方をメインにサポートします。専門領域は精神障害に特化しており領域は狭く、専門性が高くなります。 社会福祉士は、高齢者・身体障がい者・児童・生活困窮者や幅広い人々の支援をおこないます。専門領域は広く、様々な分野で活躍できる資格です。   一方で、老人性のうつ病や貧困からくるうつ病など、生活に福祉制度のサポートを必要としている方はうつ病など心の病になりやすいため、対象領域が社会福祉士であっても、精神保健福祉士の力が必要なケースもあります。 相談者の抱える悩みはとても複雑なことも多いため、精神保健福祉士と社会福祉士の両方の国家資格を持っていると多方面からの支援をすることができるため、ダブルライセンスを目指す人も多いです。 4、精神保健福祉士の仕事のやりがい   精神保健福祉士の仕事でのやりがいはたくさんあると思いますが、一番はなんといっても、 『人の役に立てること』ではないでしょうか。 人の役に立てる仕事はほかにもたくさんありますが、社会のなかで精神疾患によって働けなくなったり、自信を失ってしまったりした方が、精神保健福祉士の支援によって心の健康や身体の健康を取り戻し、再び社会復帰していく姿を間近で見たときに、大きなやりがいと達成感を感じることができるでしょう。   アルコール依存症、薬物依存症、うつ病、統合失調症などの心の病気は、その病から自殺を選び自死するケースも少なくありません。精神科や心療内科などの医療機関で働く精神保健福祉士の中には、“また来週!”と相談援助を終えたのに、自殺してしまうことも時にはあるのです。このように医療機関でも重要な仕事を担っているのです。   逆に、医療機関では精神疾患が原因で休職している方向けに、復職を目指すリワークもやりがいある業務のひとつです。 リワークプログラムでは、精神保健福祉士だけでなく、医師・看護師・作業療法士などの医療系国家資格の専門家がチーム医療となってリハビリテーションをおこないます。   5、精神保健福祉士の就職先 このように、精神保健福祉士の仕事は『人の役に立つ』さまざまな場所に就職することができます。 精神科、心療内科、メンタルクリニックなどの医療機関のほかにも、冒頭に述べたように精神保健福祉センターといった行政機関、ハローワークなどの就労関係施設、スクールソーシャルワーカーとして教育現場、企業内サポートとして一般企業、認知症や老人性うつ病の専門家として介護施設などが挙げられます。   コロナ禍の中で経済や雇用に不安な気持ちの人も多いのではないでしょうか。 あなた自身のキャリアチェンジのための資格取得であったり、 社会に人に役立つ仕事への挑戦であったり、 この世の中だからこそさらに注目される国家資格と言えるのかもしれません。   >精神保健福祉士をもっと知りたい   >精神保健福祉士の国家資格を目指したい方はこちら  

2020/09/28

精神疾患

薬物依存症を知る―覚せい剤・大麻-

覚せい剤や大麻などの違法薬物が、社会問題として大きく取り上げられています。 違法薬物の使用自体が犯罪であり、人生を壊してしまうほどのパワーがあることはわかっているのに、使用してしまうのではなぜでしょうか?   1、薬物依存症とは? WHO(世界保健機関)が提唱した依存症の概念では、「精神に作用する化学物質の摂取やある種の快感、高揚感をともなう特定の行為をくり返し行った結果、それらの刺激を追い求める行動が優位になり、その刺激がないと不快な精神力、身体的症状を生じる精神的、身体的、行動的な状態のこと」とされています。 依存症は、「脳の病気」であり、「こころの病気」ともいえます。 「薬物」は覚せい剤や大麻などの違法な薬物や危険度ドラックだけでなく、医師から処方される薬や市販されている薬に依存してしまうケースもあります。 薬物を激しく求めるよう脳の中枢神経に作用し、脳の回路が快楽状態を続ける状態になってしまうので、本人の意思で薬物をやめることはほとんどできません。 回復には、時間をかけて自分と向き合い、場合によっては過去のトラウマを克服することで、依存症からの回復ができるということが実証されるなど、とても苦しい病気であるともいえるのではないでしょうか。 2、薬物とその効果 薬物依存症で問題となる薬物は多くありますが、ここではおもに3つに分けて説明します。 ①覚せい剤 覚せい剤で問題になるのは、依存の強さと精神状態の出現です。 覚せい剤を使用すると、精神を興奮させ、気分が高揚したりします。また、疲れがとれたり、集中力がつく感じがします。その効果は個人差にあって、最初から感じる人もいれば、はじめは不快だったのに数回使っていくうちに快感に変わり、やめられなくなる場合が多いのです。 精神状態は使用してすぐに出現して消えていくものや、数週間・数カ月と続き、時には数年続く後遺症となってしまうこともあります。 後遺症には幻覚妄想、不安感、激しい感情の移り変わりなどが起きるため、日常生活が困難になります。断薬しているときにさえフラッシュバックが起こり、強いストレスや不眠がきっかせとなり覚せい剤を使用しているときと同じ症状が出現してしまうこともあります。   ②大麻 大麻がタバコのように紙に巻いたり煙で吸ったり、パイプのようなものを使って煙を吸うなどの方法で使用されます。 大麻の作用は、浮遊感や幻覚などの感覚の変化です。不安感を取り除き、気持ちを落ち着かせるなどの抑制作用があるため、依存症になりやすい薬物です。 大麻の薬物依存症者の間では、他の薬物を比べて安全と思われていることもあるようですが、実際には幻覚や妄想などの後遺症がおきる薬物です。 日本では麻薬に指定されている薬物なので、大麻使用は厳重に処罰されます。 薬物を使うきっかけが大麻からはじまり、最初が仕事のパフォーマンスが上がったり、集中力も高まったりして、最高の道具として使っていたけれど、いつしか大麻がやめられなくなり、対人関係や経済的なトラブルを抱えて苦しくなり、ついには覚せい剤に手を出してしまうといった薬物依存へのきっかけになることも多いのです。   ③MDMA MDMAはエクスタシーとも呼ばれ、その作用は幻覚・興奮状態になることです。 錠剤のため簡単に服用できるため、とくに若者に使用されることが多いのも特徴です。 MDMAはその作用が切れるとひどい倦怠感や不安感に襲われたり、長期で使用し続けると錯乱状態に陥る場合もあります。 また、肝臓や心臓の機能不全が起こるなど体への影響も及ぼす薬物です。 この薬物も使用を止めているときもフラッシュバックが起き、使用している時のような幻覚に襲われる場合があります。 3、薬物依存の症状   薬物依存の症状には、精神面と社会面の2つの症状があります。 ①精神面 ◆本人 ・食事や睡眠を取らず、痩せていくこともある。 ・強烈な妄想を抱き、暴力的な言動をおこなう。 ・過剰摂取によって心身的ダメージが強く、命に関わることがある。 ◆周囲から見た変化 ・イライラしている。 ・気分がコロコロ変わる。 ・落ち着きがない。   ②社会面 精神や身体の影響を受け、家庭や仕事先など社会的な信用を失い、孤立してしまうこともある。 また違法薬物自体も違法であり犯罪のため逮捕されるが、ほかにも薬物を使用したことにより窃盗や傷害などの犯罪を犯し逮捕されることもある。 社会からどんどん遠ざかっていく感覚から自分を責め、自殺をはかってしまうケースもある。 4、依存症からの回復・治療について   このように、薬物依存症は命の危険にもかかわる「病気」です。 本人や家族に治療が必要であることを理解してもらい、中毒症状の治療と断薬を続けていくためのサポートが必要です。 薬物依存症の患者には、脱慣期とされる入院治療をおこなうことが多くあります。 そして退院して間もない時期は、薬物への再使用をする可能性が高い時期です。 そのため、退院後もしばらくは外来で通院を続ける方が良いとされます。 また、治療は通院だけでなく、規則正しい生活も大切となります。 自助グループやデイケアなどを活用して、日中も薬物に手をだしてしまわないようにスケジュールを組みことも大切です。ともに回復していく仲間と、信頼できる医師、精神保健福祉士、弁護士などの専門家と連携していくことも重要です。   ①薬物依存症治療をおこなっている病院やクリニックなど専門医療機関の受診 ②自助グループと呼ばれる依存症当事者ミーティングへの参加 ③精神保健福祉センターや保健所などがおこなっている薬物依存症回復支援プログラムへ参加 ④民間カウンセリングルームの利用 ⑤民間の依存症回復支援施設の利用   このように、薬物依存症は「病気」です。 ただし、回復しない病気ではありません。 回復への道のりは短くはありません。 薬物という依存対象を使わない日々のなかで浮き彫りになる自分自身の「生きづらさ」に向き合い、もしかすると自身の生き方そのものを変える必要が出てくるかもしれません。 本人はもちろん、周りにいる家族、友人、仕事関係者も多岐に渡って影響があるでしょう。 本人の体だけでなく、そのこころも社会的な部分も壊れていくのが薬物依存症です。 依存症は、薬物を止めていても、また再び使用すれば再発します。 回復していくによって、「薬物を止め続けていく」ことで、依存症になる前よりも、よりよい生活と人生を送っていただきたいと願います。

2020/09/23

精神疾患患者の支援

共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育

今回は、インクルーシブ教育について解説していきます。インクルーシブとは英語で、「包括的な」「包み込む」という意味です。障害のある子もない子も包み込んだ教育というイメージでいてください。   日本の教育現場では現在このインクルーシブ教育が提唱されているので、障害があっても特別な支援を行うことで障害のない子供と同様の教育を、なるべく同じ環境で与えることができるようになってきました。   そもそも、江戸時代ごろの日本では精神障害への理解が乏しい社会だったため、教育の対象とはみなされておらず教育を受けることすらできませんでした。そこからスタートして、明治時代には目の見えない人のための学校など、身体障害があっても教育が受けられるように整備されていきます。   そして平成の時代には、養護学校が義務化され重度の障害があったとしても教育の機会が与えられます。しかし、障害がない子供とは別の施設であるため、自宅から離れた学校に通わなければならなかったり、隔離や分離されているという非難は常にありました。   それが今では、インクルーシブ教育にまで発展しました。日本では2010年に文部科学省によって方向性が示されたので、実際に障害のある子どもがインクルーシブ教育を実感するようになったのはごく最近なのではないでしょうか。ひとりひとりの子供が丁寧に扱われ、全員が一緒に学ぶことを両立する教育がやっと始まりました。     インクルーシブ教育を実現する環境   では具体的に、どうやってインクルーシブ教育を実現していくのか。まずは学校の設備が必要です。   ・基礎的な環境(バリアフリーやスタッフなど)を整備する ・障害に合わせて特別支援学校、特別支援学級、通常学級などの場所を用意し、普通の学級と行き来できる体制を整える ・障害に合わせた専門性のある支援体制や教員 ・特別支援学級と通常学級の間での共同授業 ・個別の支援計画の作成   このベースがあって、さらに細かい工夫がされていきます。具体例を列挙していきます。   ・学校の持ち物置き場を、誰もがわかりやすく整理しやすいように変える ・教室に貼る掲示物を減らし、授業中に紙や布で掲示物を覆うなどして、視覚刺激に敏感になる障害があっても授業に集中できるようにする ・5分前に行動することや予鈴など、学校のルールを明確化し優先順位をつけて誰もが守れるようにする ・毎日朝礼にてスケジュールを口頭でも確認し、計画性を持って過ごせるようにする ・あらゆる情報をなるべく文字だけでなく絵や図を使って、感覚的に理解できるようにする ・授業の中で難易度を分けた質問を考え、能力に関わらず参加できるようにする ・難易度別のプリントを作り、能力に合わせて選ぶことでレベルに合わせた教育を行う   言葉にしてしまうと簡単な配慮ですが、なかなかすべてを意識できる教師は少ないでしょう。毎日のルーティンの中で、「これは説明しなくてもわかるだろう」「大体の生徒が先に進んでいるからいいだろう」といった抜けが出て来てしまうためです。   ですが本来、障害があると分類された子供のためだけではなく、教育というものは能力に関わらず全員が理解できるよう配慮されるべきです。明確化されたルールや理解しやすい絵などはどの生徒にとっても有りがたいことでしょう。これまでの考え方では「障害がある子に向けたルールや説明文を作ろう」としたものでしたが、全員平等にいられるために工夫された教育がインクルーシブ教育です。     それぞれの立場とメリット・デメリット   各立場によって、インクルーシブ教育を進めることによるメリットやデメリットは違います。それぞれを理解することで、全員平等な教育を目指すことができます。   ①障害がある子供 今まで受けられなかった教育が受けられ、自宅から通える地域の学校に通うことができるメリットがある。デメリットは、周りに配慮を強いることによる心理的負担といじめなどの被害。同じメリットデメリットを保護者も感じる。   ②障害がない子供 障害者と接することで共生社会の理念を理解することができ、また能力の有無に関わらず学べる環境が整う。しかし、授業の進行が遅れるなどのデメリットもある。同じメリットデメリットを保護者も感じる。   ③教員 多様な子供たちと関わり、社会貢献もできるメリットがある一方、配慮の線引きが難しいことと業務の増加が考えられる。

2020/09/23

精神保健福祉士の仕事

ノーマライゼーションという考え方

ノーマライゼーションという言葉をご存知でしょうか。簡単に言うと、障害の有無に関わらず平等に生活できる社会を作ろうという考え方です。障害者だけに限定されず、高齢者や社会的マイノリティなど対象は様々ですが、全員が生活や権利の保障されたノーマルな生活を作ろうという考え方をノーマライゼーションと言います。     ノーマライゼーションとは   ノーマライゼーションは、北欧諸国から始まった考え方です。今の日本の福祉において基本理念として定着しています。精神保健福祉士を目指す方にとっては馴染みのある言葉かもしれません。   しかし、一般的にはまだまだバリアフリーといった言葉の方が浸透しているのではないでしょうか。バリアフリーは「障害者にも対応可能である」ということを指し、もともとは建築用語でした。バリアフリーな施設や道具を使って、ノーマライゼーションを実現するのが理想です。例えばバリアフリーの代表として車いす利用者専用トイレがありますが、ノーマライゼーションとは全ての人にとって安全で平等という意味合いが強いので、すべてのトイレに車いすでも利用できる設備が備わっているようなイメージです。また施設の設備だけでなく文化や意識の面でも障害者と健常者の障壁をなくしていくことを指します。   似た用語としてもう一つ、ユニバーサルデザインがあります。これは言葉の通りデザインを指し、デザインのコンセプトを「すべての人が利用できるデザインにすること」を意味します。バリアフリーからもう一歩進んでノーマライゼーションの考え方に近いですが、思想などは含まれず建物や製品の設計に使われる言葉です。   ノーマライゼーションの概念は、スウェーデンのベンクト・ニィリエという人によって「社会の主流となっている規範や形態にできるだけ近い、日常生活の条件を知的障害者が得られるようにすること(1969年)」と文章で原理化されました。     ノーマライゼーションの8つの原理   先ほどご紹介したベンクト・ニィリエは、ノーマライゼーションについて8つの原理に整理しました。   【生活リズムやサイクルに関する原理】 ①1日のノーマルなリズム ②1週間のノーマルなリズム ③1年間のノーマルなリズム ④ライフサイクルにおけるノーマルな体験 【経済、環境、自己決定など成文化した原理】 ⑤ノーマルな要求と自己決定の尊重 ⑥異性との生活 ⑦一般市民と同じ経済水準 ⑧ノーマルな環境水準   この8つの原理が満たされることで、ノーマライゼーションの実現した社会が訪れます。それぞれ解説していきます。   ①1日のノーマルなリズム どんな障害があっても、朝に起きて身支度をし、学校や会社に行き、家に帰ってから夕飯を食べてお風呂に入ってベッドで眠るといったような、ごく普通の生活リズムのことです。 これが例えば、一日中ベッドで横になっていてそこでご飯を食べたり、保護者の都合でお昼ごはんが夕方になってしまったりすることがなく、健常者と同じように生活リズムを保っていくことを指しています。   ②1週間のノーマルなリズム 週単位でのリズムとは、一般的に平日は学校や仕事に励み、土日は休みを取ることなどです。賃金の発生する仕事という意味合いでなくても、家の手伝いをする日でもよいでしょう。休日には楽しく友人と遊びに行ったり、のんびり家で過ごしたりします。障害の有無に関わらずメリハリのあるリズムを作ることです。   ③1年のノーマルなリズム 日本においては四季がありますから、四季に合わせた食事をしたりイベントに参加したり、仕事でも繁忙期があったりなどの変化があるでしょう。社会人にとっては学生ほど長い休みでなくとも、夏休み・冬休みといった季節の感覚は持っているものです。   ④ライフスタイルにおけるノーマルな体験 健常者であればあたりまえに行われている、子供の頃に公園で遊んだり、思春期にはおしゃれや恋に興味を持ったり、大人になって責任を持ったりすることを、障害の有無に関わらず体験していくことです。年を取ればその分経験や知識が増え、思い出に浸ることもできる環境が、ライフスタイルのノーマルな体験です。   ⑤ノーマルな要求と自己決定の尊重 普通に生きていれば持つ、自由や希望を持ちたいといった要求を、誰もが主張できることです。誰もが主張でき、周囲もそれを認めて尊重できる社会を指します。 一定の年齢からは住みたいところに住む自由を求めたり、働きたい仕事についたり、好きな時に好きなところへ遊びに行ける権利を持つことです。   ⑥異性との生活 これは現代においては必ずしも異性愛者とは限らないので異性に限定されませんが、子供も大人も、異性との良い関係を築くことを指しています。異性と交際したり、恋をしたり、結婚や同居を意識できるような生活のことです。   ⑦一般市民と同じ経済水準 全員にお金を配るべきだ、というような意味ではありません。誰もが、平均的な経済水準を保証され、公的財産援助を受ける権利を持ち、その責任を全うすることです。社会で設置されている児童手当や老齢年金を受け取ることや、最低賃金基準法がしっかり守られた環境で働くことなどを指します。そしてその上で、自由にお金を使える環境で欲しいものを買えることも含まれます。   ⑧ノーマルな環境水準 住居をはじめとする生活環境を指します。ここまでの7原則が守られないような劣悪な環境は論外ですが、逆に大規模な施設で社会から隔離されて暮らすこともノーマルとは言えません。無人島のリゾートで暮らす姿をイメージしてみてください。普通の場所で普通の大きさの家に住み、地域の人と関わり合いながら暮らしていく環境を求めることです。     精神保健福祉士が気を付けたいこと   ノーマライゼーションは、身体障害者だけでなく精神障害者ももちろん目指していくべき理念です。精神保健福祉士が気を付けたいことは、身体障害に比べると精神障害は目に見えないため、上の8つの原則のどこかが成り立っていなくても気付けないことです。自ら望んでその環境や生活をしているのか、精神障害によってできなかったり不便を感じているのかがわかりにくいためです。   しかし、その悩みごとや困りごとを救いあげ、寄り添いながらサポートしていくのが精神保健福祉士の仕事です。家族や周囲の人間が、精神障害者にノーマルな状況を作れないとしたら、その課題を橋渡しして全員で解決していく必要があります。    

2020/09/01

精神保健福祉士の仕事

精神保健福祉士の仕事と就職先ガイド

コロナ禍のなかで、社会に不安を抱える人が増えてきています。 またその反面で精神保健福祉センターをはじめとして、人々のこころの健康の保持などを援助する機関やそれらを担う精神保健福祉士という専門職が注目されています。 今回は『精神保健福祉士』の役割、仕事内容、就職先についてご紹介します。 精神保健福祉士と目指す方に役立つ情報をご紹介します。 1、精神保健福祉士とは? 精神保健福祉士は精神的障害を持つ方が円滑な日常生活を送れるように支援をおこなう専門職です。平成9年(1997年)制定の「精神保健福祉法」に基づいて生まれた国家資格で、精神科ソーシャルワーカー(PSW)と呼ばれています。 日本では、社会福祉士、介護福祉士と併せて、福祉系三大国家資格(三大福祉士)と位置づけられています。 2、精神保健福祉士の役割 精神保健福祉士の役割は、精神障害を抱える方の生活問題や社会問題を解決するために援助をおこなうことです。具体的には、精神障害者の社会復帰や自立生活のサポートをおこなったり、相談を受けたりします。 そのため、精神保健福祉士は精神障害者の保健・福祉に、関する専門知識や技術が必要とされます、さらにそれだけでなく、冷静さ・包容力・柔軟性・忍耐力など自らの精神面の資質も必要となる専門職と言えます。 また、精神保健福祉士には倫理観について定められた文書があります。 【公益社団法人日本精神保健福祉士協会倫理綱領より】  ①精神保健福祉士の専門職としての価値を示す  ②専門職としての価値に基づき実践する  ③クライエントおよび社会から信頼を得る  ④精神保健福祉士としての価値、倫理原則、倫理基準を遵守する  ⑤他の専門職や全てのソーシャルワーカーと連携する  ⑥すべての人が個人として尊重され、共に生きる社会の実現をめざす 3、精神保健福祉士の仕事内容 先述の通り、精神保健福祉士は精神障害のある方やそのご家族の相談を受けてアドバイスをする仕事です。その相談内容は、社会復帰・生活訓練施設の紹介・就職相談などさまざまです。 就職先によって仕事内容が異なることがありますので、ここでは大きく分けて3つのカテゴリーでご紹介します。 【相談・助言】  ・医療費や生活費、減税措置などの公的支援制度の紹介  ・社会復帰に向けた障害者支援施設の紹介  ・家庭環境の改善や家族の理解を深めるための助言  ・医療機関からの退院後の住まいや就労についての提案 【日常生活訓練】  ・入院生活から退院に向けた日常生活の訓練(規則正しい生活や交通機関の利用など)  ・掃除、洗濯、買い物などの日常生活訓練  ・会話や生活マナーの訓練 【そのほかの支援】  ・休業、休学に関する手続きの援助  ・医療費確保の手続きの援助  ・家庭や学校、職場における受け入れ体制の確認  ・地域の家族会などへの参加や講習会開催など 4、精神保健福祉士の就職先 精神保健福祉士の就職先というと精神科病院など多くの方は医療機関をイメージされていると思います。もちろん多くの精神保健福祉士は医療施設で勤務していますは、ほかにもさまざまな場所で活躍しています。 【医療施設】  ・精神科病院、総合病院の精神科、精神科クリニック、医療機関併設のデイケアなど 【生活支援施設】  ・小規模作業所、グループホーム、ケアホーム、地域活動支援センターなど 【福祉行政機関】  ・精神保健福祉センター、保健所、福祉事務所、自治体など 【就労関連施設】  ・ハローワーク、障害者就労支援施設など 【司法施設】  ・保護観察所、少年院、刑務所など 【介護施設】  ・特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、有料老人ホーム、グループホーム   デイサービスなど 【その他】  一般企業、教育施設など  同じソーシャルワーカーの資格として、精神保健福祉士は社会福祉士と混同されることがありますが、社会福祉士との違いが支援対象者です。 社会福祉士の援助対象者は高齢者、障害者、児童など福祉全分野に対して、精神保健福祉士は精神障害者に特化して援助するという違いがあります。 仕事の幅を広げたいと両方の資格を持って働く人も多くいます。精神保健福祉士と社会福祉士の国家資格では共通科目があるので、併せて取りやすい資格です。 このように、精神保健福祉士は医療施設や障害者支援施設で精神障害者とそのご家族を対象に仕事をおこなうことが中心でしたが、近年ではその活躍の場が大きく広がってきています。 うつ病や心の病などで休職中に方は約50万人にも増えていると言われています。そのため、企業ではメンタルヘルス対策に力を入れています。休職中の社員の職場復帰支援、人事部門のメンタルヘルス対応について支援やアドバイスをおこなうなど企業でのニーズも高まっています。 また、最近では障害のある子どもたちの「放課後デイサービス」でも精神保健福祉士の活躍の場があります。発達の遅れが気になる児童が増えていることもあり、精神保健福祉士を求める現場の声が高まっています。さらに児童分野では、いじめや不登校の問題に対してスクールソーシャルワーカーとして精神保健福祉士がその役割を担うこともあります。 子どもから高齢者まで多くの方と関わり、その症状もさまざまで難しさもある仕事ですが、精神に障害を抱える方や心の問題を抱えた方の人生のサポートをする大きな役割を持つ職業です。コロナ禍で膨らむストレス社会に益々需要が高まる職業として求められる仕事を言えるでしょう。     >精神保健福祉士の仕事に興味のある方はこちらへ

2020/08/21

患者への支援

精神病患者が抱える人間関係の悩み

  今回は、精神病患者が抱える人間関係の悩みについて、よくある内容をまとめます。   精神病の原因となる悩みではなく、生活していく上で関わり合う人たちとの人間関係について指しています。一般の人が同じように悩むこともあれば、精神病を患っているがゆえに悩みの種となってしまうこともあります。精神保健福祉士を目指す方は、患者の悩みについていろんな事例を知ることで将来の相談業務に役立つのではないでしょうか。     Q1、友達が欲しいです   友達が欲しいという気持ちは自然なものです。ですが、精神疾患をわかってほしい、悩みを聞いてほしい、というこちらの要望が先に立ってしまうと友情関係は成り立ちません。お互いに相手を理解して同じ時間を過ごしていきたいと思う必要があります。何かしらの精神疾患がある場合、それを自分の中で受け止め、相手のことを考えて相手を見るという余裕は必要です。   まずは少しずつ共通点のある友達を探しましょう。これまでの友達や趣味が同じ友達、同じ疾患を経験している友達を作っても良いでしょう。そういった友達を作る場は市町村区で開催されていることも多いので、精神保健福祉士が探して提供することもできます。     Q2、近所の人が悪口を言ってきます   精神病患者と近隣トラブルはたまにあることです。もし心当たりがあれば素直に謝り、関係を修復することですが、全く心当たりがない場合は難しいです。大家さんや市町村区の方、民生委員などに相談するのも方法かと思います。ご近所さんが例えば精神病患者について偏見や誤解がある場合、第三者が介入した方が話がうまくいく可能性が高いです。   患者側の問題ではなく、そのご近所さんが少し厳しい人であったり変わった人であるということも考えられます。他のご近所の方に聞いてみて、どんな風に関わっているのか相談に乗ってもらうのも良いでしょう。     Q3、親になまけていると言われてつらいです   精神疾患の治療では「休む」ということも重要な治療方法です。しかし、ご家族にその理解が得られないケースは多いようです。例えば初期のうつ症状を治すためにストレスの原因である会社を一定期間休む、といった場合、家族の理解が得られないと「もっと頑張れ」「なんとか続けながら治療できないのか」などを言われることがあります。また統合失調症の回復期では「回復したのになぜまだ休むのか」「なまけ癖がつく前に働かせないと」という声もよく聞きます。   まずは家族に正しい知識をつけてもらうことです。患者本人が説得しても良いですが、そのエネルギーが出なかったり説得が難しい場合は精神保健福祉士の出番です。正しい知識を得てもらい、一番辛いのは患者本人であること、正しい治療を正しい形で行っているということを理解してもらいましょう。     両親が死んでしまった後が不安です   これは本人のみならず家族も不安に思い、精神保健福祉士へ相談してくることの多い内容です。   まずは具体的に何が心配なのかを考えることから始めます。精神的支柱である家族がいなくなる不安、住むところやお金のこと、通院や服薬のサポートが受けられないこと、食事や料理や買い物が一人ではできないこと、漠然とした寂しさ、など理由は様々です。   支えの中心である両親がいなくなることは大きな不安ではありますが、実際細分化してみるとそれぞれ事前に対策しておけば代替案が見つかります。生活のサポートを受けたり、身の回りのことは自分でできるよう練習したりなどです。精神的支柱に関しても、兄弟や友人に頼れる人を見つけて信頼関係を結んでいくのも準備のひとつです。   住まいや金銭的なことに関しては福祉制度やサービス、医療サービスを利用できるよう検討していきます。障害があっても自立して働くことも可能です。自分らしい生活を続けていけるためにゆっくり準備をしていきましょう。