緩和ケアにおける言語聴覚士の役割~食べる喜び~

2021/07/15

コラム

こんにちは!日本福祉教育専門学校です。
大腸がんのため6月30日に亡くなった元中日、日本ハムで選手、監督として活躍した野球評論家の大島康徳さんの公式ブログ『この道』が注目されています。
4年半の闘病生活をつづったブログには、末期がんを患いながらも明るく前向きで素敵な言葉がたくさん書かれています。
最期は在宅医療から緩和ケア病棟に移行して亡くなったとブログで公表されています。
亡くなる2日前に更新された「生きる」のなかで印象的な言葉ありますので、一部をご紹させていただきます。

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「生きる」
生きるとは
歩くこ
人として

生きるとは
自分の口から

食べたり飲んだり

すること
自分の足で

歩いてトイレに行くこと 
ブログを書くことがきつくなってきました。…
がん患者さんにとって「食べる」ということは生きる喜びとも言えるのではないでしょうか。
今回はがん患者さんとそのご家族の「食べる喜び」を支える言語聴覚士の仕事について考えてみたと思います。

1、がん患者さんにとって「食べる」ということ

がん患者さんにとって「食べる」ということは、ときに喜びを感じ、ときに苦しみやプレッシャーに感じることがあるのかもしれません。
病期の進行で食事の摂取量が20%以下に低下したり、体調が30%以下するとQOLが低下てしまいます。
緩和ケアの食事では、免疫能の低下予防、栄養状態の維持・改善のため必要とされる電解質や栄養を積極的に摂取できるように、口から食べる経口摂取のほかに、経腸・静脈栄養などを栄養士が中心となって食事対応をしていきます。
でも、がんという病気は悪液質、栄養障害と進んでしまう場合が多くあります。困難な栄養障害となるときもあります。

そんなときには、「食べる喜び」が大きな栄養治療のひとつとなるかもしれません。
大島康則さんのことばにもあったように、がん患者さんにとって「生きる」ということは食べること」だと思います。
食べるということは、一歩先へつなぐことなのかもしれません。
病気の進行で食欲不振、悪心、嘔吐など食に関連した悩みは多くあると思いますが、そのなかでも食べたいものを思い浮かべて、「食べる喜び」を感じることも生きる力になるのではないでしょうか。
また、食欲がない中でも笑顔で食べている様子はご家族の幸せな時間でもあります。

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2、緩和ケアにおける言語聴覚士の役割とは

前述の通り、がん患者さんの「食べる喜び」をサポ―トするのは、栄養士とともに言語聴覚士もその中心を担います。
言語聴覚士は「食べることのプロフェッショナル」です。
がんの進行や治療の過程では様々な機能障害が生じることがあります。
特に嚥下障害を生じた末期がん患者さんの嚥下訓練は、栄養管理やQOL低下予防のためとても重要です。
言語聴覚士が緩和ケアに介入して、「口から食べる」という患者さんの希望を叶えるために、嚥下機能評価の可能な限り、安全な摂取方法を検討して、さらには誤嚥のリスクや代償手段を患者さんやご家族、また他職種に情報提供をすることで患者さんのQOLの向上に寄与します。

終末期になっても「自分の口から食べたい」と希望する患者さんに、言語聴覚士は口から食べることに伴うリスクを十分に説明した上で、より安全な摂取方法を他職種と共有し協力を得ながら、がん患者さんやご家族に寄り添い満たすことが嚥下障害のある患者さんの緩和ケアにおける言語聴覚士の重要な役割だと考えます。
がん医療に伴う喜びの低下や消失には、「食べられない」「食べたくない」「おいしくない」という思いもあるのではないでしょうか。
「食べられた」「食べたい」「おいしい」を思えることが、がん患者さんの回復にもつながり、治療を維持する体力や生きる力になると思います。
「おいしい」を味わっていただける仕事。言語聴覚士はそんな職業なのかもしれません。

※こちらの記事は入学検討者向けに掲載しているため、簡易的な説明となっております。
転載・流用はご遠慮ください。

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