吃音症は子どもでは20人に1人が、成人でも100人に1人が吃音を持っているという統計が出ており、非常に身近な症状です。
吃音(きつおん)とは、「どもり」ともいわれますが、話すときに滑らかにことばを話すことができない症状です。
吃音の主な特徴は、
●話し始めのことばが出にくいことが多い
●言いやすいことばと言いにくい言葉がある
●調子が良い時と悪い時があり、話す場面でも変わる
吃音の症状には波があり、軽くなったり重くなったりを繰り返すのも特徴で、ことばがスムーズに出ないときもあれば、スラスラしゃべれるときもあります。
現時点では吃音は治療方法が確立していません。
しかしながら有効とされている療法やトレーニングは存在し、症状の緩和を促がすことができるようになりました。
例えば子ども場合は、海外で開発された手法「リッカムプログラム」を使う医療機関が増えています。
スラスラ話せたら褒め、言葉に詰まったら叱らず中立的に指摘することを1日15分、およそ5:1以上の割合で行います。
要するに、家庭で吃音の子どもの発言に対して声をかけていく方法です。まだ日本に導入されたばかりですが、効果が期待されています。
☆・。・。★☆・。・。★☆・。・。・
▽リッカムプログラム概要
流ちょうに話せたときは褒め、「いまのどうだった」などと自身の評価を聞く。
明らかにつまったときなどには「ちょっと疲れてたね」などと指摘し「さっきのすらすらでどうぞ」と言い直しを促す。
指摘よりも褒める頻度を増やすことが重要ともいわれています。
日頃かける言葉の内容やタイミングなどを言語聴覚士がご家族に定期的に助言しながら進めていきます。
☆・。・。★☆・。・。★☆・。・。・
成長に伴うライフサイクルの変化の中で、会話、音読、発表、面接、スピーチ、自己紹介、電話などの日常生活の様々な場面で支障が出てくることがあります。
子どもにおいては、環境調整のみで改善する例もありますが、吃音の症状が続き、話す上での失敗体験や不快な気持ちが積み重なってくると、吃音の症状が悪化していき、鬱などを誘引する可能性もあります。
これは、学習的な要因ともされ、生活してきた中で話す行為・行動と考え方(認知・認識)が悪いかたちで条件付けされてきてしまったものともとれます。話し方、行動、考え方を良い方向・楽な方向に変えていくためには、言語のリハビリでこれらを再学習していく必要があります。
また、吃音の症状や不安の軽減をめざすうえでは、吃音のある当事者はもちろん、周囲にも吃音に関する正しい考え方や知識、対応を身につけていくことがとても重要です。
例えば、子どもの場合には幼稚園や学校へも症状や対応について相談しておくことをおすすめします。
「からかわれたりいじめの標的にされたりしていないかよく見てほしい」、「発見した場合にはすぐに教えてほしい」、「症状の出やすい状況(朗読や発表など)は避けてあげてほしい」などの要望を伝え、さらに具体的な対応の仕方まで相談しておけるとよいでしょう。
—————————————————————————–
吃音症のかたへのNGワード
吃音の症状が出ても「落ち着いて」と言わなくてよいことは、意外と知られていません。
精神的には落ち着いており、言葉が出ないだけなので、かえって苛立たせたり落ち込ませたりさせてしまうことがあるので注意してもらうことが必要です。
また、吃音には、純粋に吃音だけがみられるという方もいますが、その他の特徴(自閉症、注意・欠陥多動症、知的障害、読み書き障害、構音障害、早口症(クラタリング)、場面緘黙症など)を併せ持っている場合もありますので、吃音かどうか、吃音の種類はどうかの鑑別診断、合併する問題があるかどうかの評価を行うことが必要です。
—————————————————————————–
自分の子どもへの対応方法
1日10分でいいので、安心してゆったりと話せる時間を作る
親は、話しかけるときに言葉の合間合間に時間を取ってゆっくりと話す手本を見せてあげてください。
子どもに「ゆっくり話しなさい」などと、話し方の要求をするのはNGです。
最初の言葉が出ない難発性吃音ならば、話はじめたときに「待っているよ」、「大丈夫だよ」、「次は何のことば?」など声かけして、子どもの話したい意欲を持ち続けるように促がすことが必要です。
相手の言ったことばをそのまま返したり(復唱)、要約して復唱することで子どもが「伝わった」と実感をさせることも重要です。
言語聴覚士の活用
言語聴覚士は、国家資格であり言語リハビリテーションを専門とした職の一つです。
吃音をはじめてとした言語や音声、聴覚の障害に対し、各種検査を通じて症状を把握し、訓練・リハビリを行います。
主に耳鼻咽喉科やリハビリテーション科などに在籍していますが、未だ不足しているのが現状です。