2019/07/07

吃音

吃音症(きつおん)についてご存知ですか

  2016年4月~6月に藤原さくらさんや福山雅治さんが出演していた月9ドラマ「ラヴソング」で話題になった吃音症。 ヒロインが吃音症という設定だったため、会話のシーンが大変印象的でしたが、非常に歌が上手、という設定だったため、吃音症とはどんな症状なのか・・?と疑問を持たれたかたも少なくないと思います。   そもそも「吃音症」とはどのようなものなのでしょうか? ドラマよりも前、2010年の英映画「英国王のスピーチ」でも吃音症の人物は描かれていて非常にセンセーショナルな作品だったことを覚えています。 この作品については別の機会で紹介したいと思います。   非常に簡単なことばで表現すると・・・   吃音とは 「話し言葉が滑らかに出ない発話障害」 です。   主な症状は3つあります。   <主な症状> 1.連発(語音・音節の繰り返し) 「タタタタマゴ」のように音を繰り返す症状で、吃り始めた初期にみられる。 連発の症状があるかたは誰でも吃っていることが分かる。   2.伸発(引き伸ばし) 「タ-マゴ」のように音を引き伸ばす言い方で、これも初期にみられるが、成人になるにしたがって緊張が加わる。   3.難発(ブロック) 「・・・・・・タマゴ」のようにつまって音が出てこない。 ブロックといわれる成人吃音の多くにこの難発がみられる。最初の一音が出れば後は割と話せるので、周りの人は吃音だと分からないことが多い症状。 吃音症は複雑な会話を始める2~5歳ごろに発症する場合が多いです。 3つの症状の中では、あまり周りから認識されにくい難発が一番つらいと言われています。 吃音症をもっていると成長につれ、まわりからからかわれたりすることがあるため話すことが恥ずかしいという意識が芽生え、言い換えたり、無言になることで吃音症であることを隠すようになります。   <吃音の特徴> ・発症:2〜4歳が多い ほとんどが7歳までに発症 ・発症率:約5% そのうちの約50%が自然治癒、もしくは簡単な指導で治癒 ・男女差:男:女=3:1 ・吃音児の約50%が家族に吃音児者がいる ・日本では100人に1人の割合で吃音者   <吃音発症の原因> 詳しい原因はまだ分かっていませんが、7割が遺伝子要因と言われており、脳の神経経路に原因があるそうです。 吃音の分類とその原因について紹介します。   ・発達性吃音 ⇒<原因>幼児期に明らかな原因もなく開始となる。   ・獲得性神経原生吃音 ⇒<原因>脳血管障害や変性疾患、頭部外傷など脳損傷が原因で開始となる。   ・獲得性心因性吃音 ⇒<原因>心理社会的原因で開始となる。     吃音症の改善方法とは?   治療方法大きくは①直接法と②間接法の2種類に分けることができます。   ①直接法:意図的に話し方をコントロールし流暢な発話を目指す発話訓練 具体的には ・流暢性形成法 ・吃音緩和法 ・統合的アプローチ などがあります。   ②間接法:意図的な話し方のコントロールは行わず、正常な発話を促していく訓練 具体的には ・発話環境の調整 ・系統的脱感作法 ・自律訓練法 ・年表方式のメンタルリハーサル法 などがあります。   この2つの方法の中で合うものを選び、組み合わせて改善を図っていきます。

2019/06/23

吃音

吃音症の治療や訓練について知る

吃音症は子どもでは20人に1人が、成人でも100人に1人が吃音を持っているという統計が出ており、非常に身近な症状です。 吃音(きつおん)とは、「どもり」ともいわれますが、話すときに滑らかにことばを話すことができない症状です。   吃音の主な特徴は、 ●話し始めのことばが出にくいことが多い ●言いやすいことばと言いにくい言葉がある ●調子が良い時と悪い時があり、話す場面でも変わる     吃音の症状には波があり、軽くなったり重くなったりを繰り返すのも特徴で、ことばがスムーズに出ないときもあれば、スラスラしゃべれるときもあります。   現時点では吃音は治療方法が確立していません。 しかしながら有効とされている療法やトレーニングは存在し、症状の緩和を促がすことができるようになりました。   例えば子ども場合は、海外で開発された手法「リッカムプログラム」を使う医療機関が増えています。 スラスラ話せたら褒め、言葉に詰まったら叱らず中立的に指摘することを1日15分、およそ5:1以上の割合で行います。 要するに、家庭で吃音の子どもの発言に対して声をかけていく方法です。まだ日本に導入されたばかりですが、効果が期待されています。   ☆・。・。★☆・。・。★☆・。・。・ ▽リッカムプログラム概要 流ちょうに話せたときは褒め、「いまのどうだった」などと自身の評価を聞く。 明らかにつまったときなどには「ちょっと疲れてたね」などと指摘し「さっきのすらすらでどうぞ」と言い直しを促す。 指摘よりも褒める頻度を増やすことが重要ともいわれています。 日頃かける言葉の内容やタイミングなどを言語聴覚士がご家族に定期的に助言しながら進めていきます。 ☆・。・。★☆・。・。★☆・。・。・   成長に伴うライフサイクルの変化の中で、会話、音読、発表、面接、スピーチ、自己紹介、電話などの日常生活の様々な場面で支障が出てくることがあります。 子どもにおいては、環境調整のみで改善する例もありますが、吃音の症状が続き、話す上での失敗体験や不快な気持ちが積み重なってくると、吃音の症状が悪化していき、鬱などを誘引する可能性もあります。   これは、学習的な要因ともされ、生活してきた中で話す行為・行動と考え方(認知・認識)が悪いかたちで条件付けされてきてしまったものともとれます。話し方、行動、考え方を良い方向・楽な方向に変えていくためには、言語のリハビリでこれらを再学習していく必要があります。   また、吃音の症状や不安の軽減をめざすうえでは、吃音のある当事者はもちろん、周囲にも吃音に関する正しい考え方や知識、対応を身につけていくことがとても重要です。 例えば、子どもの場合には幼稚園や学校へも症状や対応について相談しておくことをおすすめします。   「からかわれたりいじめの標的にされたりしていないかよく見てほしい」、「発見した場合にはすぐに教えてほしい」、「症状の出やすい状況(朗読や発表など)は避けてあげてほしい」などの要望を伝え、さらに具体的な対応の仕方まで相談しておけるとよいでしょう。 —————————————————————————– 吃音症のかたへのNGワード 吃音の症状が出ても「落ち着いて」と言わなくてよいことは、意外と知られていません。 精神的には落ち着いており、言葉が出ないだけなので、かえって苛立たせたり落ち込ませたりさせてしまうことがあるので注意してもらうことが必要です。   また、吃音には、純粋に吃音だけがみられるという方もいますが、その他の特徴(自閉症、注意・欠陥多動症、知的障害、読み書き障害、構音障害、早口症(クラタリング)、場面緘黙症など)を併せ持っている場合もありますので、吃音かどうか、吃音の種類はどうかの鑑別診断、合併する問題があるかどうかの評価を行うことが必要です。 —————————————————————————– 自分の子どもへの対応方法 1日10分でいいので、安心してゆったりと話せる時間を作る 親は、話しかけるときに言葉の合間合間に時間を取ってゆっくりと話す手本を見せてあげてください。 子どもに「ゆっくり話しなさい」などと、話し方の要求をするのはNGです。 最初の言葉が出ない難発性吃音ならば、話はじめたときに「待っているよ」、「大丈夫だよ」、「次は何のことば?」など声かけして、子どもの話したい意欲を持ち続けるように促がすことが必要です。 相手の言ったことばをそのまま返したり(復唱)、要約して復唱することで子どもが「伝わった」と実感をさせることも重要です。   言語聴覚士の活用 言語聴覚士は、国家資格であり言語リハビリテーションを専門とした職の一つです。 吃音をはじめてとした言語や音声、聴覚の障害に対し、各種検査を通じて症状を把握し、訓練・リハビリを行います。 主に耳鼻咽喉科やリハビリテーション科などに在籍していますが、未だ不足しているのが現状です。

2019/06/22

資格

言語聴覚士の国家資格を取得するためには

  超高齢社会の日本で、大変注目されていて、なおかつ人材不足のため求人倍率が高い職業と言われている『言語聴覚士』という国家資格があります。 言語聴覚士はリハビリテーションの仕事で、話す・聴く・食べるなどの専門職です。 小児から高齢者まで幅広い方の悩みに応える職業で、医療系国家資格です。   そんな言語聴覚士になりたい方へ どんなルートで国家試験にチャレンジすればよいか、わかりやすくご説明します。 言語聴覚士になるには、年1回の国家試験に合格する必要があります。 全国平均合格率は毎年60~70%くらいです。     この国家試験を受験するには、「養成校」と呼ばれる学校通う必要があり、 そこを卒業(見込み)すると、国家試験受験資格は取得できて、卒業間際の在学中に受験することができます。現在、通信教育では取得できないため、通学で学校に通います。   では、通学で養成校に通う場合、そんなルートがあるでしょうか? これには最終学歴によって選択することができます。   <高卒の場合> ①言語聴覚士の養成課程のある4年制大学に進学する。 ②言語聴覚士の養成課程にある3年制の短期大学・専門学校に進学する。     <大卒の場合> ①言語聴覚士の養成課程のある2年制専門学校に進学する。(一部大学もあり)   一般的に言語聴覚士の国家試験合格率の上位を占めているのは、大卒を対象とした専門学校2年制が多いと言われています。   言語聴覚士に必要な医療系幅広いカリキュラムを修得するため、『大卒以上の学力+2年間の学び』が、この結果をもたらしているのかもしれせんね。   そして、社会人からのキャリアチェンジ組が入学してきます。   クラスメイトは20代~60代と幅広く、目指す職業に向かって切磋琢磨されています。 将来、言語聴覚士として様々な患者様と関わりを持つ仕事になるため、これまでの社会人経験が強みになることは間違いありません。     そんな、社会人からの学び直しを検討する方が、次に知りたいのが、「仕事をしながら通えるの?」です。   答えが、「正直なところ、ちょっと難しいです…。」です。   まずは、養成校の主流は『昼間部』です。   日中は学校に朝から夕方まで通って、夜も課題などの学習時間の確保が必要です。     『夜間部』を開講している学校もありますが、現実には、病院などへの実習は日中で、 長期間仕事を休んで実習に行くことはハードルが高いです。 また、実際に通っている学生の声を聞いてみると、アルバイトは難しいそうです。   そうなると、入学前には「学習時間」と「学費」の用意が必要になりそうです。 あとはご自分の最終学歴によって、養成校を選択することになります。 ここまで読むととても大変な資格に感じますよね。 でも、臨床現場で多くの患者様に寄り添える医療人となるために、必要なカリキュラムとも言えます。   いつか、あなたの前にいる、悩める患者様を、あなた自身が支援できたら… 『すべては、患者さまのために』 とても素敵な職業です。

2019/06/09

失語症

失語症と構音障害のちがいとは?

  脳梗塞や事故によって脳の特定の部位に破損が生じると、言語機能に障害が出ることがあります。     後遺症による言語障害の症状や、言語聴覚士によるリハビリ方法などはそんな手法があるのでしょうか? もしご家族や大切な人が脳梗塞や事故にあったとき、そして言語障害を発症したら…   言語障害で代表的な「失語症」と「構音障害」の2つの違いをご説明します。     「失語症」と「構音障害」のちがい   話すことが難しくなる2つの脳の後遺症。 2つの違いは、何の能力に課題が生じているかどうかです。 話すための筋力が低下する構音障害は、脳梗塞や事故によって運動機能に影響を受けた時にあらわれます。 一方で、言葉を理解できなかったり、自分の頭の中でまとめられなかったりという症状が出た場合には、高次脳機能に障害を負ったことも考えられます。 失語症か構音障害かを診断するためには、医師や言語聴覚士が患者様の話し方や理解力に関する項目をチェックします。   声の大きさや話すリズム、声を出すときの様子から身体機能判断をするのが構音障害、 「挨拶できるか」「とっさに言った言葉を復唱できるか」という理解度をチェックするのが失語症です。     ・失語症とは?   失語症とは、大脳の言語をつかさどる領域が損失を受けて、ことばをうまく扱うことができなくなる症状です。 失語症の患者様は、「聞いて理解する」「話す」「読む」「書く」といった言語にまつわる4機能のいずれか、またはすべてに障害を受けています。 その障害の程度は、脳の損傷の程度によって差があります。   ≪失語症の種類≫ ・ブローカー失語症(運動性失語) 脳の前頭葉側に障害が起きた場合に多く、会話や文章の意味は理解できるが、うまく話すことができない。話し方がぎこちない。   ・ウェルニッケ失語症 (感覚性失語) 脳の側頭葉に障害が起きた場合に多く、話し方はなめらかであるものの、単語の間違いなどが多く見られる。聞いてその内容を理解することも困難。   ・健忘失語 話す内容は理解できるものの、単語や物の名前が出てない場合があり、話し方が回りくどくなってしまう特徴がある。   ・全失語 失語症のなかでもっとも重症な症状で、「話す」「聞く」「読み書き」のすべてに重度の障害はみられる。     ・運動障害性構音障害とは?   運動障害性構音障害とは、脳幹または脳幹につながる神経線維が損傷を受けて、その結果として、唇や舌などに麻痺が出て、ことばをうまく発音できなくなる症状です。運動障害性構音障害は、発声がうまくできないのは機能性の問題のため、耳で聞いて理解する能力・目を読んで理解する能力に問題はありません。ですので、利き手に麻痺が出ていない限りは、運動障害性構音障害で言葉が発することができなくても、筆談でコミュニケーションを取ることは可能です。   ≪構音障害の種類≫ ・弛緩性構音障害 大脳や脳幹にダメージを受けた時に現れる後遺症。失語症とは違い、相手の話を理解したり、頭の中で伝えたい言葉をまとめたりすることはできますが、舌や唇をうまく動かせないため、声という形で相手に伝えることが困難になります。   ・失調性構音障害 発話に関わる筋力が低下することで、話す時のリズムが不規則になったり、「ますます」「ジャラジャラ」など繰り返す音が言えなかったりする症状があらわれます。声の大きさにバラつきが出たり、震えたりして聞き取りにくい発語になります。     失語症や構音障害など言語障害が出た場合は、言語聴覚士の指導のもとリハビリをおこない機能回復を目指します。 文字を見せる、呼びかけるなどをおこないって言語機能の障害の程度を確認します。 どの能力を向上させる必要があるかを判明してから、話すための訓練へとステップアップしていきます。 言語障害の患者様は、言語聴覚士とのリハビリでのコミュニケーションや、ご家族との会話を増やし、できるだけ話してもらう機会を増やすこともリハビリになります。 また、患者様とのコミュニケーション方法に不安や悩みのあるご家族に寄り添い、ともに支えていくことも言語聴覚士の仕事といえます。

2019/06/09

失語症

「失語症」とは? ~「失声症」・「構音障害」・「学習障害」との違い~

  『失語症』とは?   『失語症』とは、言語障害の1つで、脳の言語中枢に損傷を受けることによって、言語を操る能力に障害が残った状態です。   その名称から話すことができなくなる障害と誤解されがちですが、失語症になると、話すことだけでなく、聞くこと、読むことといった言葉に関するすべての機能に困難が生じます。   具体的な症状や特徴には、 ・言いたい言葉が浮かんでこない ・思ったことと違った言葉を口にしてしまう  ・ことばが理解できない ・文章が理解できない、書けない ・声帯、口唇、舌の機能に問題がない などがあります。     『失語症』と症状が似ている障害・疾病との違いとは?   先にも書いた通り、「失語症」になると言葉の引き出しと、意味の引き出しの繋がりが混乱してしまいます。 そのため、言いたい言葉が浮かばなくなったり、「テレビ」と言いたいのに「メガネ」と言ってしまったりします。   また、よく「言葉のわからない国に放り出された状態」ともたとえられます。 私たちが外国に行ったとき、現地の人と言葉が通じず、相手が何を話しているか言葉は聞こえていてもその内容が理解できないことがあったり、看板に書いてあることはわかるけれど、音読したり意味がわからなかったりします。 現地の相手に伝えたいことはあるけれどそれをスラスラと伝えることができなかったり。   そんな状態と失語症はよく似ています。   ①『失語症』と『運動障害性構音障害(構音障害)』との違いとは? 失語症と構音障害は、同じ言語障害で、「言葉が出にくい」という点がよく似ています。 ただし、失語症と構音障害ではダメージを受けている脳の部分が異なります。 失語症は話すための言語中枢にダメージがあるのに対して、構音障害は話すという行為のときの呼吸筋や口を動かす運動中枢を使う部分にダメージを受けています。 そのため、『構音障害』は、言葉を話すために必要な唇、舌、声帯などの発声・発語に関わる器官の麻痺などによってうまく話せない状態をいいます。 『失語症』の場合は、言語中枢にダメージを受けている状態のため、麻痺がなくて口を動かすことができても、脳の言語中枢からの指令がうまく届かないため言葉が出なくなったり、正しくない単語が口から出たりするという違いがあります。     ②『失語症』と『失声症』との違いとは? 一般的に話せなくなる症状としてよく間違えられている『失声症』は、おもにストレスや心的外傷などにより心因性の原因によって声を発することができなくなったりする状態をいいます。   “発声器官に問題はないが、話すことができなくなった”という点では失語症と共通していますが、『失語症』は脳の損傷であるため、『失声症』のように心理的なショックや精神的ストレスが原因でないという違いがあります。     ③『失語症』と『学習障害』との違いとは? 『失語症』とおなじく、読む・書く・話す・計算するといった能力に困難が生じる症状のひとつに『学習障害』があります。 『学習障害』は、知的発達に遅れはないものの、「聞く」・「話す」・「読む」・「書く」・「計算・推論する」という能力のいずれか、または複数に著しい困難がある発達障害のひとつです。   学習障害の原因はまだはっきりと解明されていませんが、 『学習障害』は、先天的な脳の機能障害があるのに対して、『失語症』は、脳の言語中枢に何らかのきっかけで損傷を受けた後遺症であり、症状もその脳への損傷を受けた後に現れる後天的なものであるところが学習障害とは違いがあります。  

2019/06/09

失語症

「失語症」とは? ~『失語症』になると、どんな症状になるの?~

  『失語症』になると、話すことだけでなく、聞く、読む、書く、計算することすべての能力に困難が生じます。 その症状や重さは、脳の損傷した場所と大きさによって違ってきます。   では、具体的にどのような症状があらわれるのでしょうか? 「話す」・「聞く」・「読む」・「書く」・「計算する」の5つに分けて説明します。   『失語症』になると、どんな症状があらわれるの?   1.「話す」   ①言いたい言葉が浮かんでこない   自分の思ったことが言葉としてスラスラと出にくくなります。 特に人名や地名などの固有名詞が出にくく、もどかしさを感じることは多いです。 また、「茶碗」と言いたいのに言葉が思い浮かばず、「ご飯を盛るやつ」と言うなど、回りくどい表現になることがあります。     ②思ったことと違うことを言ってしまう   「みかん」を「りんご」のように単語そのものを言い間違える場合と、 「トイレ」を「トレイ」というように違う音に言い間違える場合もあります。 言葉の言い間違いがひどい場合は、まったく意味不明な言葉が続くようになります。     ③文章で話すことが困難になる   「オトーサン…カイシャ…ヤスミ…」のように、単語でポツポツと話すようになったり、 「お父さんは会社へ休みでいます」というように、すらすら話せても正しい文章で言えなかったりすることもあります。     ④同じ言葉が言えたり言えなかったりする   前に一度言えた言葉でも、もう一度言おうとすると言えなかったりすることがあります。 その反対に、さっき言えなかった言葉が次には言えるようになっていたりすることもあります。     ⑤前に言った言葉が続いて出てくる   いったん言葉が出始めると、その同じ言葉ばかりを繰り返してしまうことがあります。 例えば、名前を聞かれて答えると、そのあとに住所や年齢を聞かれても、名前を繰り返して言ってしまうような状態になったりします。     ⑥発音がたどたどしくなる   唇や舌に麻痺がないのに、すんなりと正しい発音ができなくなり、たどたどしい話し方になります。     2.「聞く」:耳は聞こえているのに、聞いた言葉の意味が理解できない   ①大勢の人が集まっているところでは会話が聞き取りにくい   失語症の症状が軽い場合、日常生活で聞き誤ることはあまりないですが、 大勢の人が集まっているところで集中して人の話を聞き取ることが難しくなります。     ②回りくどい言い方、早口、複雑な文章の理解が困難になる   たとえば講演会などの複雑な内容の文章の理解は難しくなります。 さらに症状が重症になると、「冷蔵庫から麦茶と牛乳を取ってきて」といった文章の長さでも理解が困難で、「冷蔵庫から麦茶を取って」と伝えて、麦茶を取り出したところで、「牛乳も取って」と分けて伝えると理解しやすくなります。     ③身の回りにある品物の名前を言われても、意味がわからない   失語症の障害が重くなると、身の回りの品物の名前を言われても意味が理解できず、 きょとんとしたり、間違った理解をしてしまうことがあります。 ただし、判断力は低下していないので、言われた単語の意味がわからなくても、その状況から察して適切な行動をとることができたりします。 そのために周囲の人からは失語症の症状であることが気づかれなかったりもします。     3.「読む」:目は見えているのに、文字や文章の意味が理解できない   ①複雑な内容の文の場合は意味を読みとれない   失語症の症状が軽い人の場合は、簡単な読み物などは楽しむことができますが、複雑な内容になると文の意味を読み取ることが困難になります。     ②単語の意味が理解できない   失語症の症状が重くなると、文章だけでなく単語の意味そのものを理解することが困難になります。     ③かな文字よりも漢字が理解しやすい   失語症の患者は一般的に、かな文字に比べて漢字の方が理解しやすい傾向にあります。 かな文字は表音文字であり、発音を表しているだけなので、その文字を見ただけでは意味を理解できません。一方で漢字は表意文字のため、文字を見ただけで大まかな意味を読み取れることが多いので、かな文字よりも漢字のほうが理解しやすいです。     4.「書く」   ①難しい漢字が思い出せない、文法を間違える   失語症の症状が比較的軽い人の場合、文章を書くことはできますが、難しい漢字を思い出せなかったりします。また、濁点や拗音が抜けることがあります。また、助詞を誤るなどの文法上の間違いがあったりします。     ②自分の名前が書けない   失語症の症状が重くなると、自分の名前も書けなくなることがあります。 自力で自分の名前を書けないときには、漢字のへんやつくりの部分を書き示したりすると、あとから続けて書けたりします。また、見本を見せると書き写すことができる場合もあります。     5、「計算する」   ①数字を言い間違える・聞き間違える 失語症の人にとって数字は聞き間違えたり、言い間違えたりしやすい物の筆頭です。 たとえば電話番号、金額、日付、時間など数字の桁数が増えるものは、言い間違えたり、聞き間違えたりすることがよくあります。     ②計算が困難   日常生活でも九九を使うかけ算やわり算が難しく、たし算やひき算でも繰り上がりや繰り下がりがあると難しくなります。 このような失語症の方の評価や訓練、ご家族への助言などを言語聴覚士は支援します。