精神保健福祉士のテレワークについて

vol7
 
新型コロナウイルスの影響で、世の中が大きく変わりましたね。社会人にとって身近な影響は『テレワーク』ではないでしょうか。
 
元々テレワーク環境が整っている職種はもちろんのこと、緊急事態宣言下においては様々な仕事で、できる限りテレワークができるよう推し進められました。
 
半永久的に基本テレワークを認める方針の会社も出て来ています。今後は、就職・転職の検討材料のひとつとして「テレワークが可能かどうか」は重要視されていくでしょう。

 

そんな中、精神保健福祉士の仕事はテレワークが可能なのか・可能であればどのように行っているのかを、ご紹介していきます。

 
 
1、産業別では医療・福祉のテレワーク率は低い

 
在宅勤務はどこまで進むか|みずほ総合研究所
 
みずほ総合研究所のサイトで公開されているデータによると、テレワーク可否の調査において医療・福祉は割合が低いという結果が出ています。製造業、娯楽・生活関連サービス業、運輸・郵便業などと同程度にテレワーク率は低いようです。
 
福祉業界はどうしても対面の業務が多いため、テレワークが不可能な業務が多くあります。また、個人情報保護の観点から自宅に持ち帰ることのできない仕事が多いことも理由の一つでしょう。

 
 
2、テレワークに移行できる業務のみ対応

 
テレワーク率の低い福祉業界ですが、緊急事態宣言下ではテレワーク対応をした精神保健福祉士も多くいます。勤務している場所によりますので、あくまで傾向としてですが、病院や施設では業務の一部をテレワークにし出勤人数を減らすという対策を取っていたようです。

 

例えば当番制で事業所に出勤する人と、自宅で事務作業や電話対応を行う人とに分ける。事業所内での会議や多職種との会議はすべて自宅でTV会議とする、などです。訪問診療の場合も電話相談をこまめに行うことで、最低限の患者のケアを行うことができます。

 

前からテレワークへ移行していた事業所も少なからずあります。スマートフォンやタブレットを貸与し、利用者についての情報共有や診療計画書の立案業務などに活用し、業務効率化を図っているそうです。医療・福祉業界でのテレワーク導入プロセスや手引きについては産業労働局よりハンドブックが出ています。
 
テレワーク業界別ハンドブック「TELEWORK活用ヒント」(医療・福祉)

 

カウンセリングや傾聴は在宅の環境でできる場合も多いため、他の福祉業の中ではテレワークが不可能ではない職種にあたるのではないでしょうか。
 
そのため、求人サイトでは「在宅ワーク可能」と記載している募集も増えています。オンライン相談所のような業態事態をとり、完全テレワークを目指す福祉ビジネスも出てきました。

 
 
3、自己研鑽の勉強や仕事の見直しなど

 
普段の職場で行っている仕事をそのまま自宅で行うことは難しくても、自己研鑽のための勉強や仕事の見直しを行うことはできます。自宅待機という形でそういった内容を推奨した職場も多いようです。

 

精神保健福祉士は資格を取得して終わりではなく、常に勉強することが必要な仕事です。自宅でセミナー動画を見る、書籍を読んだりするなどの時間を取ることも有用です。また、社会福祉士や介護福祉士など他の専門職の勉強をすることも精神保健福祉士としての知見を広げることに繋がります。

 

 

4、精神保健福祉士のテレワーク実施の課題

 
精神保健福祉士もテレワークが可能であれば、多様な働き方のひとつとして選択したいという方も多いのではないでしょうか。
精神保健福祉士がテレワークを実施する上で課題となるのが、以下の点です。

 

・精神保健福祉士として専門性の発揮される仕事がしにくい

⇒電話カウンセリングや事務仕事のみでは、これまで通り精神保健福祉士として患者と向き合うことは難しいでしょう。あくまでテレワークでの業務は補助的な役割にとどめ、うまく組み合わせて使っていく形が望ましいでしょう。

 

・高齢者患者にスマートフォンやタブレットが普及していない

⇒電話やオンライン対応をしようとしても、患者側の環境が整っていないことが予想されます。高齢者分野においてはそれがとくに見られます。実際に顔と顔を合わせてこそ悩みが引き出せる・心を軽くできるという面でも世代間のギャップがありそうです。電話やオンライン対応は、それに慣れた世代であれば有用でしょう。

 

・個人情報保護や守秘義務を伴う仕事

⇒精神保健福祉士の業務における患者の個人情報保護については、厚生労働省にてガイドラインが出されています。原則、患者のカルテなど個人情報に関わるものを自宅に持ち出すことはできないため、自宅でできる業務に制限が出ます。これは当然厳守されるべきことなので個人情報を含めない事務仕事としっかり切り分けることが求められます。

 

・職場内コミュニケーション不足による生産性の減少

⇒生産性の減少は精神保健福祉士に限らずあらゆる業界で懸念されていることですが、社外で自由な場所・時間に働く場合、労働時間や労働内容が職場内で把握しにくく、生産性が下がるということが考えられます。

 

 

このように、精神保健福祉士の仕事をテレワークで行うにはいくつかの課題があり、すべての職場で自由にテレワークが選択できるようになるのは難しいでしょう。

 

しかし、テレワークは多くのメリットがあります。就業場所に捉われず、働く時間を都合に応じて決められ、通勤時間の短縮にもなります。仕事と生活の両立を考えるワークライフバランスの実施にも繋がります。

 

また、フルタイムで働くことが難しい人や自宅での作業しかできない人などを雇用することで、人手不足の解消や長時間労働の解決にもなります。精神保健福祉士の現場でも新しい働き方が選択できるように変化していくことが今後求められていくでしょう。

※こちらの記事は入学検討者向けに掲載しているため、簡易的な説明となっております。
転載・流用はご遠慮ください。

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