近年推進されている、「地域包括ケアシステム」をご存知でしょうか?地域包括ケアの構築によって社会福祉士の仕事の仕方も大きく変わっていくでしょう。
地域包括ケアとは、厚生労働省が構築を推し進めているシステムです。これまで高齢者や児童など対象者ごとに専門的サービスを充実させようとしてきましたが、そのような従来の支援の垣根を超え、地域で総合的に支援をコーディネートしていこうという考え方です。
具体的には、例えば要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい生活を行うために「住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される」ことを目指すことが地域包括ケアシステムです。
それぞれ別の施設に都度行かなければならなかったり、施設が地域になかったりした場合に自分らしい生活を行い続けるのは難しいためです。中学校区程度の地域の中ですべてが提供されることが理想です。
社会福祉士は、ソーシャルワークの専門職として、地域包括ケアの構築に向けて他の専門職や地域住民との協働、福祉分野をはじめとする各施設や各機関との連携といった役割が期待されています。
地域包括ケアという考え方が浮かび上がってきた背景に、支援を求める人の多様化があげられます。高齢単身世帯の増加よって生活に困窮する高齢者が増えました。教育分野ではいじめや不登校問題の他に性的マイノリティなど新たな問題への対応も求められています。この方たちは社会福祉士が支援すべき対象であり、また社会福祉士だけでなく他の専門職と地域施設とが一体となって支えていくべき事例です。
地域包括ケアシステムが推進される中で、社会福祉士が担う役割をみていきましょう。
まずは、複合化・複雑化した課題を受け止める多機関の協働による包括的な支援体制の構築があげられます。福祉だけでなく、医療・保険・雇用と就労・住まい・司法・商業・工業・農林水産業・防犯と防災・環境・教育・まちおこし・多文化共生など多様な支援関係機関が連携する必要があります。
これらのサービスを包括的に充実させることで、今の地域では解決しきれない難しい課題もカバーできると考えられています。社会福祉士はこの一連の支援のコーディネートを担うことが期待されています。
そして、地域住民等が主体的に地域課題を把握して解決を試みる体制の構築が必要です。専門職だけでなく、地域住民が一体となって見守りや日常の地域活動での気付きをすくい上げていける体制です。
社会福祉士は、地域住民との信頼関係を築き、地域のアセスメントを行うことや、地域住民が自分たちの強みに気付き前向きな気持ちで体制づくりに取り組めるよう活動の支援や立ち上げの協力を行うことなどが求められます。