高齢化が進行中の現在、介護福祉士は業界を支える中心的な役割として期待も集まっています。介護業界の中で唯一の国家資格ですから、「介護福祉士になって年収を上げたい!」と思う介護職の方も多いのではないでしょうか。そこで、今回は介護福祉士の年収についてみていきましょう。年収だけでなく月収や手取り、求人状況や年収を増やす方法についても解説していきます。
介護福祉士の年収は、一般的に正規職員の月収は基本給で25~35万円前後です。年収は350~450万円となります。月収を手取りにすると20~30万円ほどがボリュームゾーンと言われています。
平均月収 | 20~30万円 |
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平均年収 | 300~400万円 |
手取り月収 | 18~25万円 |
実際に、厚生労働省の「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」を見てみると、平均月収は331,080円と出ています。ここから年収と手取りを計算すると、令和4年度の平均年収は以下のようになります。
令和4年度 平均月収 | 331,080円 |
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令和4年度 平均年収 (月収×12) |
3,972,960円 |
令和4年度 手取り月収 (月収×0.8) |
264,864円 |
同じ調査の前年度データを見てみましょう。比較すると、平均月収は2,360円増加しています。年収で計算すると12倍ですから28,320円が増えたことになります。
令和3年度 平均月収 | 328,720円 |
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令和3年度 平均年収 (月収×12) |
3,944,640円 |
令和3年度 手取り月収 (月収×0.8) |
262,976円 |
発表されている平均月収から、平均年収・手取り月収を算出しています。事業所や雇用形態、役職の有り無しによって大きく異なりますことをご留意ください。
参照:厚生労働省の「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」
介護の現場で働く人は、介護福祉士だけではありません。介護の仕事は無資格でも行うことができるため、保有資格のない介護職員の方もいらっしゃいます。キャリアパスとしては、そこから介護職員初任者研修を取得するとできる仕事が増え、年収も上がります。次にその上位資格として、介護福祉士実務者研修があります。
実務経験を積んでおり実務者研修を修了している場合は、介護福祉士の国家試験を受けることができます。実務経験や実務者研修を修了していない方でも、養成施設を卒業していれば受験することもできます。これらの年収をそれぞれ見ていきましょう。
介護職員(保有資格なし) 平均年収 | 3,224,160円 |
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介護職員初任者研修 平均年収 |
3,602,880円 |
実務者研修 平均年収 | 3,629,160円 |
介護福祉士 平均年収 | 3,972,960円 |
このように、キャリアパスを辿っていくことで年収を上げていくことができます。
また、介護福祉士と似た資格には、介護支援専門員と社会福祉士もあります。介護支援専門員はケアマネジャーとも呼ばれ、ケアプランの作成や管理を中心とした仕事を行います。社会福祉士は介護の知識だけでなく支援が必要な全ての方の相談役として働きます。
介護支援専門員 平均年収 | 4,521,240円 |
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社会福祉士 平均年収 | 4,201,440円 |
どちらも介護福祉士よりも年収が高いため、介護福祉士から介護支援専門員にキャリアアップする人もいます。実務が減りデスクワークが増える傾向にあるため、将来的に長く続けやすい仕事内容であることも魅力のひとつです。
社会福祉士については、養成施設で学ぶ必要があるため取得の難易度は高いですが、取得することで就職の幅もぐんと広がります。介護の実務をしていく中で医療や福祉など幅広い分野に興味を持った人が取得しています。
関連記事:厚生労働省の「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」
介護福祉士は、様々な介護の現場で活躍しています。今度は、介護福祉士の勤務先別の年収をみていきましょう。
介護老人福祉施設 平均年収 | 4,330,080円 |
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介護老人保健施設 平均年収 | 4,198,200円 |
介護療養型医療施設 平均年収 |
3,483,720円 |
介護医療院 平均年収 | 3,986,760円 |
訪問介護事業所 平均年収 | 3,881,640円 |
通所介護事業所 平均年収 | 3,481,440円 |
通所リハビリテーション事業所 平均年収 | 3,761,160円 |
特定施設入居者生活介護事業所 平均年収 | 3,967,800円 |
小規模多機能型居宅介護事業所 平均年収 | 3,639,240円 |
認知症対応型共同生活介護事業所 平均年収 | 3,650,280円 |
たくさん勤務先がありますが、この中で年収400万円を超えているのは「介護老人福祉施設」「介護老人保健施設」の2つです。これらは介護現場のなかで給料が高い傾向にあると言えるでしょう。
「介護老人福祉施設」とは、「特別養護老人ホーム」とも呼ばれる施設です。利用対象者は自宅での介護が困難な方であり、重度であったり緊急性が高い場合は優先して入居ができます。
「介護老人保健施設」は、病院での入院治療を終えた方がリハビリをして家庭に復帰することを目的とした施設です。介護老人福祉施設との違いは、軽度な方もリハビリ中であれば利用できる点です。また、リハビリを行う一定期間のみの利用になるので半年以内ほどで退去をすることが前提となっており、あまり待たずに利用ができます。
「特定施設入居者生活介護事業所」は「特定施設」とも呼ばれる、介護付き有料老人ホームのことです。医療体制の充実した施設が多い印象です。
施設による年収の高い・低いは、複雑な要因が重なり合って変わってきます。特に個人が気を付けてみていくべきは待遇面ですね。年収が高いけれども24時間勤務で人数が少なく、夜勤が多いといった条件も中にはあります。どういったメリットデメリットがあるのかは勤務先別に考えていかなければなりません。
参照:厚生労働省の「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」
介護福祉士の年齢や性別ごとの年収についてみてきましょう。こちらも月収から12か月分をかけて算出しています。
年齢帯 | 男性 | 女性 | 差額 |
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全体 | 4,011,000円 | 3,706,560円 | 304,440円 |
29歳以下 | 3,480,600円 | 3,397,800円 | 82,800円 |
30~39歳 | 4,048,320円 | 3,708,840円 | 339,480円 |
40~49歳 | 4,310,160円 | 3,823,560円 | 486,600円 |
50~59歳 | 4,068,480円 | 3,804,360円 | 264,120円 |
60歳以上 | 3,358,560円 | 3,493,080円 | -134,520円 |
男性の方が年収が高い傾向にありますが、前年調査に比べると差額は縮まってきています。男女ともに年収ピークは40代です。
参照:厚生労働省の「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」
介護福祉士の年収を調べる上で知っておかなければならないのは、「介護職員等特定処遇改善加算」です。この制度は介護人材の安定確保に向けて作られました。2019年にでき、現在94%の事業所が届け出をしており80%が加算を取得しています。
この介護職員特定処遇改善加算により、介護福祉士の給与はより改善されています。
制度の内容は、介護サービス事業所にて勤続年数10年以上の介護福祉士について、月額平均8万円相当の処遇改善を行うというもの。もしくは改善後の賃金が年額440万円以上となる改善が実施されます。介護職員の賃金改善を目的とした加算で、介護サービス事業者が、加算の届け出を申請し受理されると、国から報酬を受け取る仕組みになっています。
94%の事業所が「介護職員等特定処遇改善加算」を申請しており、実際に給与に加算される人は今後一層増える予定です。この加算により介護福祉士の平均年収額は増加しており、他職種の看護職員や理学療法士・作業療法士などと比較しても増加幅は大きいです。
求人情報でも、加算申請をしている事業所の給与欄には「処遇改善加算手当」と記載されているので、長期間勤務すれば給料がアップする可能性があります。就職や転職を検討中の人は「処遇改善手当」があるか必ず確認しましょう。
他にも年収を増やす方法がいくつかありますので紹介します。
先ほど紹介した処遇改善手当は、最近新しく設けられたものですが、基本給の他にも様々な手当があります。
夜に勤務したときに支給される手当。夜勤のある施設では、夜勤1回あたり5,000~8,000円の夜勤手当が出ます。月に平均で4~5回くらいの夜勤が一般的ですが、回数を増やして夜勤手当を多くもらう職員もおり、中には夜勤専従(夜間帯のみ勤務する正社員)を選ぶ人もいます。
1年365日体制で介護サービスを提供する事業所では、年末年始手当というものが支給されるところもあります。事業所によって様々ですが、1日につき2,000~4,000円程度、時給でいうと100円程度賃金がアップするようです。
一般職員よりも、リーダーや主任、施設長などの役職を目指す道もあります。介護業界では、元店舗の店長やサービス業でリーダーを務めていた人など異業種からの転職者が多く、年齢よりも業界で培ったスキルを重視する傾向があります。異業種からの転職で給料アップを狙いたいなら、一般職員よりも役職を目指してみるのも良いでしょう。
介護福祉士として活躍しながら、さらなる給与アップを狙うのであれば、上位資格を取得するのがよいでしょう。前述したように、介護支援専門員(ケアマネジャー)がそれにあたります。
ケアマネージャーは、介護福祉士をはじめとした、医療・福祉系の国家資格を持っている人や、介護に関する相談援助の実務経験がある人を対象とした資格です。直接介護をするわけではなく、ケアプランを作成することが主な業務です。ケアマネージャーとして働く介護職員は、介護福祉士と比較して、平均給与額が3~4万円ほど高くなる傾向にあります。
また、同じく上位資格にあたる認定介護福祉士を取得するのもひとつの方法です。これは民間資格ですが、介護現場においては最上位に位置する資格のため、今の仕事内容をほぼ変えずにステップアップを望むのであればベストな方法です。
関連記事:介護福祉士とケアマネージャーの違い
今の職場で給料アップが難しいなら、待遇の良い施設への転職もひとつの方法です。運営する法人や規模によっても差はあるようで、利用者が多い大規模な特別養護老人ホーム、介護老人保健施設は収入も安定しており、介護福祉士の給料も高い傾向があります。
もし転職を検討中なら、(1)手当の種類の多さ(2)賞与の前年度実績(3)勤務時間(4)残業時間を確認し、現在と比べてどの程度の給料アップが見込めるのか、また、給料に対する労働時間が適切かどうかをチェックしましょう。
介護業界といえば、「現場がきつくて給料も低い」イメージがあるのも否めません。しかし、高齢化が進行中の今、介護福祉士は業界を支える中心的な役割で期待度も高く、働く人の環境や賃金改善も進んでいます。
また、転職市場も盛んなため更なるキャリアアップも狙える業界でもあります。将来、介護福祉士として活躍したいなら、35年以上の実績と高い就職率を誇る日本福祉教育専門学校への入学がおすすめです。授業の学びを実習先ですぐ実践する「現場体験実習」を重視し、就職後、いち早く即戦力となる人材を育てています。
就職率も100%を誇り、全国から10,000人分もの求人数が寄せられ、特別養老老人ホーム、介護療養型医療施設、病院などで活躍しています。より詳しく知りたい方は、日本福祉教育専門学校の介護福祉士をご覧ください。