介護福祉士として働いている方が保育士の資格を取得する場合、保育士試験の一部科目の免除制度があることをご存知でしょうか。具体的には、「社会的養護」、「児童家庭福祉」、「社会福祉」の3科目の受験が免除されます。つまり、介護福祉士の資格を取得しておくことによって、保育士も目指しやすくなるというわけです。ここでは、介護福祉士の方が保育士の資格取得を目指すうえで知っておくべき内容について解説します。
まずは介護福祉士と保育士における仕事内容の違い、資格取得方法の違い、勤務する場所の違いについて見ていきましょう。
まずは介護福祉士の仕事内容についてです。介護福祉士の仕事は、高齢者などを対象に家事や日常生活のサポートをおこなうことがメインの業務になります。施設の利用者が通所するケースもあれば、介護福祉士が訪問して介護するケースもあります。そのほか、利用者のご家族の相談支援業務もおこないます。
次に保育士の仕事内容です。保育所で働く場合、子どもとの遊びはもちろんのこと、着替えやトイレの介助などをおこないつつ、保護者の相談支援なども担います。そのほか、保育日誌の作成や保育園の掃除なども含まれます。
介護福祉士の資格取得における条件です。介護職として現場で3年以上(実務日数540日以上)の実務を経験したうえで、実務者研修を修了することで、受験資格を得ることができます。また、養成施設や福祉科、介護福祉科のある高校を卒業することによって受験資格を得ることも可能です。
一方、保育士の資格取得方法です。保育士の養成課程のある大学、短大、専門学校を卒業することが条件になります。卒業と同時に保育士資格を取得することができます。また、保育士試験に合格する方法もあります。この方法であれば、保育士の養成課程のない学校を卒業していた場合であっても受験資格を満たせば受験することが可能です。
介護福祉士の働く場所は、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、身体障害者療護施設、デイサービスセンターなどがあります。また、役所の介護福祉の相談窓口などで活躍している介護福祉士もいます。
保育士の働く場所は、保育所を含む児童福祉施設です。児童福祉施設には保育所のほかにも、児童養護施設や児童発達支援センターなどがあります。さらに学童保育や認定こども園などでも働くことが可能です。
介護福祉士から保育士になる場合、冒頭でもお伝えしたように保育士試験の一部科目の免除制度があります。具体的には「社会的養護」、「児童家庭福祉」、「社会福祉」の3科目の受験が免除されます。また、介護福祉士養成施設の卒業者が指定保育士養成施設で保育士資格を取得する場合、福祉職の基盤に関する科目に該当する科目の履修が免除されます。具体的な履修科目は「児童家庭福祉(講義)」、「社会福祉(講義)」、「相談援助(演習)」、「社会的養護(講義)」、「家庭支援論(講義)」、「社会的養護内容(演習)」などがあります。
ちなみに保育士試験の科目免除が適用される福祉系国家資格は、介護福祉士のみでなく、社会福祉士、精神保健福祉士もあります。
「免除になるのはなぜ?」と疑問に感じた方もいるでしょう。実は介護福祉士の養成課程における履修内容と、保育士養成課程における福祉職の基盤に関する科目は、共通する点が多く含まれています。その結果、免除になっているというわけです。
介護福祉士にとって資格取得がしやすい保育士になりますが、両方を取得するメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。やはりなんといっても大きいのは、働き方の選択肢が広がることでしょう。漠然と「福祉の仕事がしたいけど、具体的な分野までは決まっていない」と考えている方は意外と多いはず。介護福祉士は高齢化が進む近年において非常に需要は高いですし、保育士についても人材不足の影響もあり、求人倍率も高い傾向にあります。どちらの資格も取得しておくことで働き方の選択肢が広がることでしょう。
いかがでしたでしょうか。ここまで介護福祉士が保育士の資格取得を目指すうえで知っておくべき内容について解説してきました。介護福祉士にとって保育士は取得しやすい資格になるものの、必ずしも仕事内容が似ているわけではありません。介護福祉士は高齢者との接点が多いですが、保育士は子どもにかかわることが多いです。対象者が異なれば、コミュニケーション方法も違います。また、当然のことながら働き方も異なります。そのため、両方の仕事について深く理解したうえで、資格取得を考えましょう。